一人の少年
時は大正。移ろう季節は色濃く咲き誇り、綺麗な春の花が咲いた日、私は生まれた。
姿形は父母とは似て非なる者が誕生し、そんな私を父母は蔑み、「忌み者」と呼んだ。
瞬く間にそれは広がり、いつしか「お家唯一の恥」と使用人達、父母と仲のいい良家、
そして噂は噂を呼び、会ったことのない者さえも化物と呼ばれる日々であった。
唯一いいことといえば、部屋に閉じ込められていたものだから、誰も私の顔を知らないことであった。
時々こっそりと抜け出し、街へと行った。そこで見る景色は閉じ込められていたからだろうか。とても綺麗だった。
歳も十になった頃だろうか。深い雪の日だった。いきなり父が現れたと思えば、
「ここまで育ててやったんだ。これ以上恥を晒さぬよう、家を出ていけ。
生まれて初めてお家の役にたったんだ。光栄だろう」
と外に投げ出された。私は泣いた。何が悪かったのか分からなかった。
街で見た親子でさえ、情というものがあった。温もりが欲しい、とてつもなく欲しい。
いつの間にか私は一歩一歩と街へ近づく道を歩いていた。
嗚呼、私の欲している温もりは一生手に入ることはないだろうに。
私はそう自覚しながらも温もりを欲してやまなかった。
偶然落ちていた草の編み物を被り、少しでも雪が被らないようにした。
なぜ、こんなことをするのだろう。明日に希望なんてないのだ。
そう思うが、そう思えば思うほど、希望も捨てきれなかった。
物乞いもした。自分でもなぜするのかわからなかった。そして耳を傾けてくれるものは誰もいなかった。
そりゃあ、私のような孤児はごまんといる。その者一人一人に手を差し伸べる者が果たしているのだろうか。
嗚呼、やはり私の生きている意味はないのだろう。こうして凍え死んでも誰も悲しむ人なんぞいないのだから。
そう思って目を瞑った。
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父母=ふぼ 十=とお 主人公は男