表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一人の少年

作者: 優鈴-ゆうり-

時は大正。移ろう季節は色濃く咲き誇り、綺麗な春の花が咲いた日、私は生まれた。

姿形は父母とは似て非なる者が誕生し、そんな私を父母は蔑み、「忌み者」と呼んだ。

瞬く間にそれは広がり、いつしか「お家唯一の恥」と使用人達、父母と仲のいい良家、

そして噂は噂を呼び、会ったことのない者さえも化物と呼ばれる日々であった。

唯一いいことといえば、部屋に閉じ込められていたものだから、誰も私の顔を知らないことであった。

時々こっそりと抜け出し、街へと行った。そこで見る景色は閉じ込められていたからだろうか。とても綺麗だった。


歳も十になった頃だろうか。深い雪の日だった。いきなり父が現れたと思えば、

「ここまで育ててやったんだ。これ以上恥を晒さぬよう、家を出ていけ。

生まれて初めてお家の役にたったんだ。光栄だろう」 

と外に投げ出された。私は泣いた。何が悪かったのか分からなかった。

街で見た親子でさえ、情というものがあった。温もりが欲しい、とてつもなく欲しい。

いつの間にか私は一歩一歩と街へ近づく道を歩いていた。

嗚呼、私の欲している温もりは一生手に入ることはないだろうに。

私はそう自覚しながらも温もりを欲してやまなかった。

偶然落ちていた草の編み物を被り、少しでも雪が被らないようにした。

なぜ、こんなことをするのだろう。明日に希望なんてないのだ。

そう思うが、そう思えば思うほど、希望も捨てきれなかった。

物乞いもした。自分でもなぜするのかわからなかった。そして耳を傾けてくれるものは誰もいなかった。

そりゃあ、私のような孤児はごまんといる。その者一人一人に手を差し伸べる者が果たしているのだろうか。

嗚呼、やはり私の生きている意味はないのだろう。こうして凍え死んでも誰も悲しむ人なんぞいないのだから。

そう思って目を瞑った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

父母=ふぼ  十=とお  主人公は男  


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ