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第1話 300年後

 魔王の体は不死身とまではいかないが、不老らしい。

 おかげさまで、ナオヤはいつの間にやらこの世界で300年という月日を過ごしていた。

 年を数えるのも億劫になり正確な年齢もわからない。


 ナオヤは300年という長い年月の中で、魔王になるという目標は遠い昔に達成してしまった。

 もちろん現在も魔王を継続しているのだが―――

 過ごす日々のほとんどが暇だった。魔王になる前はこの世界中を旅して回ったというのに、今では魔王城から出ることはほとんどない。

 本来魔王は人間を襲ったり、侵略、戦争、略奪などを行うのだろうが、平和な日本で育ったナオヤにその気は全くなかった。

 そのためこちらから襲うといったことは一度も行ったことがない。

 時々訪れる勇者たちを蹴散らす程度。

 そんなわけで特に何かをするわけでもなく、魔王としての時間は過ぎていった。


「魔王様、いつまで寝てるんですか?」

「あと10分だけ……」


 ナオヤを眠りから覚ます艶っぽい女性の声はナオヤにとっては当たり前のものだった。

 警戒する様子もなくナオヤはふかふかの布団の中にさらにもぐりこみ、寝返りをうち声の方に背をむける。

 声の主はそんなナオヤの姿に小さくため息をついた。


「そんなこと言って……」


 そう小さく言うと声の主である女性はナオヤの耳元に顔をよせる。


「いつまで会議を引き延ばすんですか!」

「のわあっ!!」 


 突然、耳元で大声で叫ばれナオヤの体は反射的に飛び上がる。

 見れば銀髪を腰まで垂らした美女が、胸の前で腕を組んで立っていた


「おはようございます、魔王様。良く眠れましたか?よく眠れましたよね?これで起きなければ窓から落としてしまおうかと思ってたんですが……」


 冗談ですけど、と最後に付け加えくすくすと笑う。しかしその目は笑っていない。

 ナオヤはちらりと部屋にある窓を見た。見えるのは雲1つない青空。

 魔王城には地下に階段、隠し部屋などが入り組み複雑な作りになっており、この自室が何階にあるのかはわからない。

 ただ、頑丈な魔王の体をもってしても、ここから落ちればただでは済まない。

 魔王だって痛みは感じるのだ。


「ルクリア……目が笑ってないんだが」


 彼女はルクリア、種族サキュバスでナオヤの補佐役みたいなことをしている。

 ちなみにサキュバスという種族は皆、異性を誘惑するために整った容姿をしている。

 ルクリアもその例にもれず、大きな胸にほっそりとした足腰を持っている。


 ナオヤはずっと部屋に閉じこもっていたため気づかなかったが、いつの間にか定例会議の日になっていたらしい。

 

「さあ、皆さまがお待ちですよ」

「えー、めんどくさい……」


 ナオヤがそのことを言い終わるやいなや、ルクリアが笑顔をナオヤに向けたまま壁を軽くたたいた。

 そう、もう一度言おう。軽くたたいたのだ。

 しかしその壁は激しい音を立てて崩れた。壁には大穴が開き、風が吹き込んでくる。


「準備しましょう?」


 ルクリアは微笑みながらこちらを見る。


「……すみませんっ!すぐに準備しま、いえ、準備させていただきます!」

「うふふ、皆さまを会議室に集めておきますので、ご支度が済みましたらいらっしゃってください。魔王様がいらっしゃいましたら会議を開始いたします。それでは」


 ルクリアは嬉しそうにそう言うとパタパタと部屋を出て行った。

 部屋にナオヤ1人になり静かになる。

 風が吹き込んで来る大穴を見て大きくため息をつく。

 面倒だが後で修理しておかなければ、今夜はまともに寝ることもできそうにない。


「昔はもっと可愛げがあって、大人しかったのになぁ」


 昔のルクリアはどこに行くにもナオヤの後ろについて回り、まるでひよこのように可愛かった。

 それがいつの間にやら成長して反抗的な態度ばかり。


「反抗期か?」


 ぽそりとそう呟き、ナオヤは着替え始めた。


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