表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

第12話 偶然の出会い(2)

 第2級地と第3級地にまたがるようにデルメリア学院は立っている。

 魔王を討伐する勇者を育成するために作られたこの学校。

 入学する資格を持つのは16~18歳の少年少女だけ。

 しかも毎年たった40人しか入学できず、その中でも本当に勇者になれるのも一握りだ。

 デルメリア学院には中等部と高等部があり、それぞれ敷地に門があるのだが、その高等部の門から2人の少女が出てくる。

 1人は肩まで伸びた金髪に、控えめな性格がにじみ出るような優し気なライトグリーンの瞳。

 もう一人はポニーテールの真っ赤な髪に、気の強そうな黄色い瞳の少女。


 優し気な少女はふわふわとした髪をさらにふわふわと揺らしながら、嬉し気に歩いている。

 その様子はどことなくウサギを連想させるほどに愛らしい。

 赤髪の少女はその様子を微笑まし気に見つめながら、その後を追いかける。


「アンリちゃん、本当に、ほーんとなんだよね?夢じゃないんだよね」


 そう言いながら一枚の紙を開く。

 紙に書いてある()()の2文字を見ると金髪の少女は顔を緩める。


「本当よシーファ。その紙にそう書いてあるでしょう?」


 そう答えたのは先ほど「アンリちゃん」と呼ばれた少女、本名はアリアナ・ダール。

 シーファと呼ばれた金髪の少女は、本名をシーファ・バロウズ。

 この2人は先ほど入学の手続きを終え、来年からこの学院の1年生として入学する予定だ。


 デルメリア学院の入学試験の倍率は毎年高く、今回だってアリアナとルクリアが一緒に入学できたのも奇跡だと言ってもいい。


(まさか本当に入学できたなんて。あんまり自信なかったんだけど……)


 そんな考えがアリアナの頭をよぎるが、すぐにそんな考えを振り払うように頭を振る。


「そうだシーファ、いつものあの場所行こうよ!」


 アリアナは前を行くシーファに追いつくと、シーファの腕を引っ張るように走り出した。

 シーファはライトグリーンの瞳を大きく見開きアリアナを見る。


「ア、アンリちゃん?」


 2人が向かったのはお気に入りの展望台。

 この展望台は第3級地にある知る人ぞ知る秘密のスポットだ。

 展望台からは第1級地と第2級地の煌びやかな建物、そしてその奥に見える人界1の高さを誇る白亜の城、ラスラム城が見える。

 日も傾き空もオレンジ色に染まり、まるで一枚の絵画のように美しい景色が一望できる。。


「そういえばさっき学院の中にいた銀髪に女性、すっごい綺麗だったよね。あんな美人初めて見たかも。スタイルもすごくよかったし……」

「それあんたが言う?」


 アリアナはシーファの普通よりかなりふくよかな胸元を見た後、自分の物足りなさを感じる胸元を見る。

 同い年なのにここまで差があるなんて、と暗い気持ちになる。


「でも、本当に一緒に入学できてよかったよね。私魔法の試験でうまくいってなかったでしょう?だからすごく不安だったの」

「シーファ、前からデルメリア学院に入学したいって言ってたもんね」


 すると突然柵にもたれ、景色を見つめていたシーファはアリアナを見る。

 しかしシーファの表情はどこか浮かない。


「……アンリちゃん、入学するのホントは嫌なんでしょ?お家の事情で入らないといけないって言ってたもん」

「別にそんなことないわよ」

「でもあんなにお家の言いなりになるの嫌だって言ってたし……」

「だから気にしてないって。利害の一致っていうか、偶然私と家の意見が一緒だっただけ」


 そう言うとアリアナはシーファの額をトンっと軽く押した。

 シーファは驚いたように額を片手で押さえる。


「シーファは気にしすぎ。今は入学できたことを素直に喜びなさい」


 アリアナは優しく微笑む。

 しかし、シーファは変わらず不安げだ。


「でも……」

「はい、この話は終了。今はぱーっとお祝いしましょう。そうだ!ここの下に新しいアイス屋さんができたんだって。私買ってくるからちょっと待ってて」


 アリアナはシーファの言葉を遮ると、くるりと振り返ると下に降りる階段へ駆け出して行った。


(そういえば、シーファは何味のアイスがいいのか聞いてなかったわ)


 そう思いだすと駆け足のまま後ろを振り返ろうとする。


「シーファ、アイスはーー」


「わっ!」

「えっ」


 階段の曲がり角から突然人影が現れる。

 急に止まることなど不可能で、そのまま相手に体当たりするようにぶつかってしまう。

 相手は大きく体勢を崩すと、階段を転げ落ちるように落ちて行った。

 落ちて行った青年は階段下でピクリとも動かないまま倒れている。


 あまりの一瞬のことでアリアナは茫然と立ちすくむことしかできない。


「え、え……」


(わ、私、人を殺しちゃったかも……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ