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アレクとローズと優しい魔女  作者: 笹之葉サラサ等
獣と魔女
9/13

凸凹コンビ

 ゆるやかに開いたドアから、不意にドンとつまづきながら出てきたのは……。


「こ、こんにちは。アレクさま・ローズさまにおきましては……」

「こんにちは、ユーリッドくん。ん~……それと、もう一人いるんでしょ?」

「あっ、そうだ。ちょっと、危ないじゃないか!」

「ガーハッハ。ユーリッド、鍛え方が足りないんじゃないか?」


 やってきたのは上品そうな商人の衣装を着たユーリッドと、短パンに革のベストを羽織ったガオールだった。

 二人は近隣の国の要人の息子たちで、僕とローズと同等の地位にいる。


 何かあると集まるのがこの国で、お父さまが忙しいと言っていた原因はコレだろう。

 何の話し合いかは分からないけど、二人が来ているって事はそれほど・・・・緊急事態ではないのかもしれない。


「せっかく遊びに来たのに、勉強中だって聞いたからな」

「ガオールくんは、もっと勉強した方が良いんじゃない?」

「あ~? うだうだ言う奴は、ぶっ飛ばせばいいんだよ」

「二人とも、変わらないね」


 現在『獣人の国』を治めているのは、ガオールの父親だ。

 ここ数代は虎人族の王が武力で支配しているが、細かな政治は農政省という所で行っている。

 いつか来る獅子族による理想郷ハーレムを夢見ながら、争いがない世界を目指して体を鍛えているようだ。


 そんなガオールとよくコンビで現れるのが、『貿易の国』の会頭の息子であるユーリッドだ。

 大国と対等に渡り合えるのは、ある意味ユーリッドの国による所が大きい。

 どこも小国だけあって得意分野と農業を頑張っており、お互い足りない者同士で補ったのが僕たちが住む六か国だ。

 何故か『七つの盟約』という名前で締結しているけど、内容は「みんなで仲良くしましょう」というものらしい。


「ところでよ、さっき魔女って言ってなかったか?」

「ちょっと、ガオールくん。『魔女を話題に出したら呼び寄せる』って言われてるだろ!」

「実際のところ、どうなんだ?」


 ガオールとユーリッドの二人も対等な立場だけど、年齢で言えば僕たちより2~3つくらい年上だ。

 地位的には対等な立場でも、年齢やその他で敬う場合とそうではない場合がある。


 そして、ガオールの質問には素直に答える事は出来ない。

 でもこの世界共通の認識として、『魔女』は危険な存在だった。


「どうする? アレク。嘘はいけないんだよ」

「みんなを危険にさらす訳にはいけないよ」


「なんか怪しいなぁ……。俺がそんな弱そうに見えるか?」

「ガオールくんは、正規兵百人分の力があるの?」

「あぁ? その辺の兵士には負けねぇぞ」


 ここで『じゃあ、大丈夫だね』という訳にはいかない。

 僕とローズの中ではリンダさんは良い人だし、魔女だからと言って討伐に行く気にはならなかった。

 むしろクッキーの御礼をしなきゃいけないと思っている。


「僕から言えるのは、『魔女は絵本の中の存在』だよ」

「そうそう。だから危ない事は止めようよ」

「ガオールくん?」

「わぁった、わぁった。じゃあ、とりあえずあの部屋・・・・に行こうぜ。二人の所にもあるんだろ?」


 当たり前のように、ピンポイントで場所まで特定出来るのが怖い。

 実際はどの国にもある場所のようで、『貿易の国』では商工会館の一室がそれにあたる。

 ただ、ガオールの国では父親に逆らう事は死を意味し、ユーリッドの所では多くの会頭の子息・子女が遊びに行く場所ではない。

 気分は『他国だから出来る肝試きもだめし』みたいなものだろう。


「もう、しょうがないなぁ。いないからって文句は言わないでよ」

「アレク、良いの?」

「ローズ、何もいない場所を案内するだけだよ。念のため、ランタンを二つ持っていこう」


 正直、リンダさんともう一度会った時、何と言えば良いかは分からない。


 ただ家の中にある脅威の原因は調べたいと思っていた。

 王家うちに突然攻め込まれた場合、都市の防衛なんかは関係なくなる。

 場合によっては王家だけを落とし、何事もないまま毎日が続くのかもしれない。


「そんな顔しなくても、俺が守ってやるって」

「え? ガオールくん?」

「何か決意を決めた顔をしてましたよ、アレクさま」

「じゃあ、アレクは木剣を持っていこうよ」


 思い返せば、最初に襲われたのは道化師ピエロみたいな奴だった。

 あれについても出来れば捕らえたいと思う。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 目の前の扉を眺めて脚が止まる。

 僕がローズを見た瞬間、ローズも僕を見たから思う事は一緒だと思う。


 通称『おしおき部屋』は、悪い事をしたら入れられる場所だ。

 進んで入りたくなるような所ではない。


「ここか? よっしゃ、者ども行くぞ」

「ちょっと、ガオールくん。余所さまの家だよ」

「おっ、そうだな。さすがに俺さまはわきまえているぞ」


 並んで立つ僕たちの中で、二人は一歩下がり『どうぞどうぞ』と手を出している。

 意外に思ったのは、ユーリッドが思いの外ノリノリだったこと。

 ローズと一緒に手を添えると、あっけないくらいに扉が軽く開かれていった。


「んー……、なんか埃臭ほこりくせぇな……」

「アレクさま、ここで合ってますか?」

「うん。ローズ、ランタン……あっ」

「ふふーん。実は……」


 あの日からたった数日・・・・・しか経っていないのに、僕らに訪れた変化はいくつかあった。

 その中でも最たるものは、ローズの魔法だった。


 魔法も魔道具もあるこの世界。

 それでも使える資格・財力があるのは一部の人に限られている。


 王侯貴族は魔法に目覚めやすく、特に女性が回復の魔法に目覚めた場合『聖女』と呼ばれることになる。

 そんなローズが自慢気に覚えた魔法は……。


「もしや?」

「もしかして??」


 ローズはパチッと指を鳴らすと、一瞬だけ火花が飛ぶ。


「なんだ……、発火かよ」


 ガオールの残念そうな言葉と共に、一つのランタンに火が灯った。

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