表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アレクとローズと優しい魔女  作者: 笹之葉サラサ等
毒と薬の魔女
7/13

ミランダ①【閑話】

ここまでが一章となります。

次回は……何の魔女になるか、ご期待頂けると嬉しいです。


※作者は英語が苦手です

ワンダーミラーじゃない? という指摘もお待ちしております。

 私には秘密があります。

 ですが、それ以前に結んだ契約があるのです。


「お二人は、無事に戻りました」

「うん、報告ありがとう。ミランダ」

「旦那さまは、責めないのですね」

「事前に聞いていたからね。でも本当に、そんな世界があったんだ」


 小さな王家の小さな双子の帰還。

 裏を返せば、こんな小国でも命の危険があるということだ。


 今回の事件は、いわばデキレース。

 魔女たちとの協定にも関わって来る。

 そして私は、みんなを結ぶ・・・・・仲介役だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 鏡を通して見守っていたから、二人がリンダの所へ向かったのは知っている。

 魔女と言っても性格は千差万別で、『毒と薬の魔女』であるリンダは比較的大人しい方だった。


「ミランダ、そろそろ迎えに来てくれないかしら?」

「もう良いの? 迎えにって事は……」

「ふふふ、とても面白い二人だったわ」

「では、二人の侍女として向かいます」


 鏡越しの会話は、魔女たちの間では一般的な通信手段である。

 リンダの招きに応じて、双子がいる場所へ向かう。

 魔女の世界には細かなルールがあり、それは魔女自身を守るのに必要な事だった。


「よく来たわね」

「お招きに感謝します。それで二人は?」

「よーく眠っているわ。少しくらい時間はあるのでしょ?」

「長時間居ても大丈夫なのは知っているわ。二人は眠ってるから、変化の少なさに気が付かないでしょうけど」


 まるで隠れ里のような魔女の住処すみかは、ある種の結界に守られている。

 その結界の中なら時間の進み方も自由に設定できるので、二人とリンダが過ごした時間はかなり短かい筈だった。


 魔女とは世界から、『祝福』と『呪詛じゅそ』を同時に受けた者。

 ある者は不老不死もどきに酔いしれ、ある者はちぬ体に絶望する。

 その感覚は私には分からないけれど、時々下界に降りてイタズラする魔女は多いようだ。


「で、どうだった?」

「二人とも本当にかわいくて、いっそ私が育て……」

「ダメよ、リンダ。それは協定に反するわ」

「ふふふ。それで、ミランダが知りたいのはアレね」


 リンダが指さした先には、あからさまな二つの毒が見えた。

 最後の工程を終えると無色透明になるようで、私は無造作にお玉レードルを使ってコップに入れて飲んでみる。


「最初にアレクくんが選んだのがそっちね」

「これは……、お腹をくだす毒ですね」

「そう、ある意味当たりの方ね」


 確かに脱水症状に苦しむ事にはなるかもしれないけれど、死に至るような毒ではない。

 適切な処置をほどこせば、数日もしないうちに元気になるだろう。


「今、アレクさまが選んだ方って言いましたよね」

「そう。仲良しさんの二人は、それぞれ別の毒を飲むつもりだったみたいね」


 私は真剣な顔で、リンダの顔を凝視ぎょうしする。

 そこにはイタズラに失敗した少女のような、ある意味ローズさまの姉的な存在がいた。


「貴女らしくない毒……ですね」

「だって、仕方ないのよ。ローズちゃんったら、勢いで素材を採取するんですもの」

「適量を使う事も出来たでしょ?」

「そこをアドリブで仕上げるのがプロの魔女よ」


 部屋の中は、クッキーと紅茶の甘く香ばしい香りで満ちている。

 テーブルに突っ伏しているアレクさまもローズさまも、口の中をモゴモゴしていて幸せそうな夢を見ているのだろう。


「確かにプロの技だわ。どうやって眠り薬にすり変えられたのか・・・・・・・・・?」

「うんうん、そこが最っ高に二人のカワイイ所だったわ。まさか頭を働かせて、二人で同じ物を飲むだなんてね」

「まさか……、二つを混ぜたの?」

「正解! 魔女の毒は、それ程ヤワではないのに……。殺すと決めたら、一滴でも殺せるわ」


 幼い頃から絵本で読み聞かせていたのに、二人には恐怖心はないのだろうか?

 兄妹愛の勝利と言えばそれまでだけど、魔女を相手に博打が過ぎると思う。


 そもそも魔女に会ったら、『死』を覚悟しないといけない。

 どんな無様でも生を拾えたなら、二人にとっては勝利に等しかった。


「久しぶりのお客さまだけど、上手くオモテナシ出来たかしら?」

「本当、心臓に良くなかったわ。今までが今までだったから……」

「すすり泣く子が多かったイメージね。さすがに顔までは確認出来なかったけど」

「今回は彷徨人ロストが誘ったみたい。あの子たち寂しがり屋だから」


 リンダとしんみりした話になってしまったけど、彼女は本当に感情が読めない。

 ただこれで、二人の運命に魔女が関わっていく未来が加わってしまった。


 そして国王さまではなく、旦那さまへ報告する義務が発生する。

 私が仕えているのは国王一家ではなく、あくまでこの土地を守護する一族の長だった。

 特別に子供達の教育係兼お目付け役をたまわることが出来た。


「たまには、魔女の恐ろしさを知らしめないとね」

「きっと『七つの盟約』は発動されるでしょう」

「貴女には辛い役割を押し付けてしまうわ」


 私も過去に『魔女』と呼ばれていた。

 ただ人由来の生粋の魔女ではなく、器物から人化の術を経た比較的若い魔女だった。


「相変わらず無茶ばかりする神聖国、争うばかりの帝国」

「この地方の六つの国は協力していますから」

「私達の為にも」

「そして、この国の為にも」


 リンダがパチリと指を鳴らすと、アレクさまとローズさまが浮かび上がる。

 紙袋にザっと詰めたクッキーを一袋分、ローズの懐に忍ばせたリンダは静かに私の別名を呼んだ。


「二人の健やかな成長を期待しているわ。『鏡の魔女ミランダ:Mirror Of Wonder』」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミランダも関わっていたのですね。 今はまだ詳しいことはわかりませんが、物語の背景には何やら秘密があるようですね。 これからどんな魔女が登場し、双子ちゃんたちはどうやって切り抜けていくのでし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ