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アレクとローズと優しい魔女  作者: 笹之葉サラサ等
毒と薬の魔女
1/13

王子と王女

新しく物語を始めました。

作者として読者として、楽しい物語にしたいと思います。

皆さまのご意見・ご感想を頂けると嬉しいです。


Twitterもやっていますので、そちらも覗いて頂けると幸いです。

@Sarasa_MilkyWay

 今日は特別な日らしい。

 いつもなら寝ている時間に起こされ、僕とローズはバルコニーに出た。

 国の繁栄も、夜になると眠りにつくみたいだ。


「あっ、見てアレク。流れ星!」

「えっ、どこどこ?」

「ほら、あっち。もう……、すぐ消えちゃうんだよ」

「残念……。そうだ、ローズ。お祈りをしないと!」

「じゃあ、次のが来たらね」


 その日は数十年に一度、天に異変が起きる日だったようだ。

 これが吉兆なのかどうかは分からないけれど、僕とローズは多分同じことを願ったと思う。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 小さな頃から絵本で見てきた魔女たちは、この国では恐ろしい女性と語られている。

 ある魔女は大きなかめで毒薬を作り、ある魔女は天候さえも操るらしい。


「アレク、早く続き続き!」

「しぃー、ローズ。お父様はカンカンだし、お兄様たちも呆れ顔だったんだよ」


 朝ベッドで目覚めると、ローズは僕の顔を覗き込んでいた。

 隣に並んだベッドはもぬけのからで、僕を起こすには忍びないものの、起きるのを待ちきれなかったようだ。

 その日はお兄様の誕生日間近で、ローズが突然手作りクッキーを焼きたいと言い出した。

 ローズは思いついたら一直線だし、そんなローズの事を一番に理解しているのは双子の僕だ。


 日頃、僕たちの面倒を見てくれるミランダをいて、調理場で作業している大人達に手を出さないように命令する。

 順調に進んでいた調理も火傷しそうになった所で、早々にミランダに見つかりとがめられた。


 ミランダは何故正確に、僕たちのいる場所を把握してくるのだろう?

 僕たちは今、お仕置き部屋で反省しているフリをしている。

 それでも優しいミランダはランタンに灯りをともし、一冊の絵本を持ってきてくれた。


「もう、アレクは何でも遅いんだから」

「ローズ……。仮にも僕は、君のお兄様なんだよ」

「あら、そうかしら? 双子の産まれは、先に出た方が……」

「しぃー……」


 僕は自分の唇に指を当て、大きな声を出そうとするローズに『今、何処にいるか』を再確認させる。

 更に声を上げそうになったローズも、その仕草で状況を理解出来たようだ。


 お互いに五歳の身では、有意義なプレゼントなど出来はしない。

 お金を出せば買える物もあるだろう。

 でも、そのお金も出掛けるすべも今はなかった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「それにしても、何でこの部屋なんだろう?」

「でた! アレクの何でだろう」

「でも、ローズ。いくら王族だからって、『子供専用のお仕置き部屋』があるのは、おかしいと思わない?」

「うーん……。確かに物置代わりにしては、おかしいわね」


 僕はランタンを目線の位置まで掲げ、ローズの首の動きに合わせて移動をさせた。

 ミランダはさっさと戻って行ったし、いつまでここで反省していれば良いかは分からない。

 いつもなら僕たちはいつの間にか寝てしまうみたいで、その時は毛布に包まれて『ごめんなさい』を言う事が多かった。


「ねえ、ここを片付けたら褒められないかな?」

「ハァ……、ローズ。僕たちのする事は反省であって、点数を稼ぐことじゃないよ」

「アレクは本当に、そう思ってるの?」

「……モチロンだよ」


 ジーっと覗き込む視線に、思わず目を逸らしてしまう。

 そんな僕からローズはランタンを取り上げると、仕掛けを解除して展開した。


 このランタンはガラスの外側に四方の木片が覆っていて、上下にスライドさせて光を遮ることが出来る。

 仕掛けを展開すると、周囲を大きく照らす事が出来るようになる。

 逆に一辺だけ灯りを出す事も出来れば、四方を囲ったまま仕掛け2に当たる、針の穴くらいの細い光を出す事も出来た。


「何でこんなに、物が点在してるのかな?」

「アレク、これはもしかして?」

「ローズ、仕舞ってある物だからプレゼントには向かないよ」

「でも、お宝があるかもしれないわ」


 少し考えれば分かる。

 ローズが絵本一冊で、満足出来るわけがない事を……。


 ミランダがいない時、ローズは少し大胆になる。

 その代わり、彼女がいる時は絶対服従だ。

 それはお父様・お母様と一緒に居た時にした約束。

 お母様はやまいせっているので、僕たちに課せられた一定のガイドラインだった。


「ハァ、じゃあ見るだけだよ!」

「うん。良い弟を持ったお姉様は嬉しいわ」

「ローズ、僕がお兄様なのは譲らないからね!」

「もう、そこは乗ってこないのね」


 双子にとって、そこは外せないアイデンティティーだ。

 まだ似た顔でも、男女の違いがあって良かった。


 ローズからランタンを受け取り、僕が先頭になって部屋を移動する。

 無駄に広いこの部屋も、物を片付けて行けば何かに使えるかもしれない。

 背の高さくらいの何かが、布におおわれて点在している。

 その内の一つの布を手に取り、そーっと捲ると……。

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