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夢守ノネットシンフォニア  作者: 鳥路
Album2:精霊王と愛し子の独奏曲
10/32

Track1:森の迷い道

三波兄さんがクリアした「LEクエスト」

その舞台となる、精霊の森に僕らはやってきていた

木々が深く茂り、幻想的な雰囲気を生み出す森が目の前に広がる


「ツカサ、オトハ。キノコが光ってる」

「本当だ・・・食べられるかな」

「無茶だと思うよ音羽姉さん・・・」


今回、攻略メンバーとして抜擢されたのは、僕とルル、音羽姉さんと築茂。そして・・・


「准教授、無事だといいんですけど・・・」


三波兄さんの教え子である薫さんの五人で攻略を行うことになった


僕らが三波兄さんのクエストを攻略している間、政宗をはじめとする残留メンバーはレベル上げと情報収集をしてくれている


僕らは道を歩きながら、築茂が調べた条件を満たすために「第一ポイント」がある石碑の場所まで歩いていた


一つ目は、この森のどこかにある石碑に花を添えるという隠しミッションらしい

それをこなした後、精霊王の杖のクエストが本格的に開始されるらしい


「ところで築茂。なんでこのメンバーなの?」

「司は前衛としてやね。能力が解放されていないメヌエットでどこまでできるのかっていう試しもあるけど、純粋に前衛不足って言うのも大きい」


築茂に言われるまであまりピンとこなかったが、前衛をこなせるのは今のとこと僕と政宗、志夏姉さんしかいない

僕と志夏姉さんは攻撃特化の前衛なので、ヘイト管理などはできないから・・・今回のような探索型ではまだ活躍できるが、踏破型のクエストは政宗がいないと難しいだろう


「防御特化でヘイト管理もしてくる政宗。ただでさえ高い瞬発力で攻撃を繰り出して、能力解放さえあればメンバー全員の能力強化のバフが出せる司・・・組み合わせたら楽しかったなぁ」

「早めに騎士長クエストはクリアしておきたいと思うけど・・・築茂の予定は?」

「当分先やな。そもそも墓地に辿り着くまでが大変やから戦力を揃えな・・・本来は司みたいに無我夢中で走ってたら辿り着いていたみたいな場所じゃないんやで?」

「・・・おっしゃる通りで」


築茂は今ある情報で、優先順位を付けて攻略をすることを僕らに提案した

三波兄さんはプレイヤー同士の繋がりが多く、なおかつ武器が強力で攻略が容易だからという理由で一番目の攻略に選ばれたらしい・・・それ以降も、戦力や回収のしやすさで順番を付けていた


逆に、踏破型のクエスト・・・深参兄さんや双馬兄さん。そして志貴さんのクエストは最後の方。最低条件でも、僕がメヌエットの能力解放を済ませてからと考えていた


「次にルルちゃん。彼女は「修道女」やから聖魔法が使える。つまりは回復役やな。残念ながら現状ルルちゃん以外全体回復を使える人がおらん。彼女にはレベルもあげてほしいし、連れてきたって感じやな」

「ここはレベルも低めだし、ルルでも僕らが支えれば十分倒せそうだもんね」

「その通り。全体回復はシンフォニアの固有スキルの一つでもあるらしいけど、双馬さんやったっけ?かなり後半になりそうやし、しばらくはルルちゃんのお世話になると思うで」

「そうだね。じゃあ、音羽姉さんは?」


今回同行するメンバーで一番意外な人物が音羽姉さんだった

一番戦いから遠そうな音羽姉さんが同行した理由は素直に気になった


「音羽さんは銃士として、遠距離の攻撃やな。精霊種には魔法攻撃は効かんし、同じ遠距離でも桜さんは魔法攻撃やから相性悪いし、今回は音羽さんに頼んだんや」

「桜姉さん行きたがっていたでしょ?」

「ああ。でも、事情を説明したらわかってくれたけど・・・桜さんと三波さんって仲ええの?」

「うん。桜姉さんと三波兄さんは年子だから特に仲がいいんだ。三波兄さんが海外にいた時も桜姉さんが毎日のように連絡していたらしいし」


桜姉さんは九重家の四番目の子供

三波兄さんは九重家の五番目の子供

年子として生まれた二人は、三波兄さんが海外に留学するまで常に一緒だったらしい

互いが互いの片割れのように大事にしている様子はきっと、すぐ上の兄たち三人の影響だとおもう

三波兄さんが帰国してからも、桜姉さんと三波兄さんはよく行動を共にすることが多く、仲がいい印象を僕も持っている


「なるほどなあ・・・だからあんなにも行きたがってたんか」

「その代わり、教え子さんが来てくれたので」

「私のことですか?」


薫さんが声に反応して振り返る


「そういえば、薫さんの抜擢理由は?」

「補助やな。彼女の召喚者としての能力も気になるんよ。今まで召喚者に出会ったことないから・・・」

「膨大なコネクションを持つ築茂でも、出会ったことない役があるんだ」

「桜さんの人形師とか、薫さんの召喚者とかレア職の一つやからなぁ・・・なかなか出会えないんやで?」

「へえ・・・」


身近にいる分、よくあるものだと思って気に留めていなかったがレア職なのか


「でも、築茂は凄いよね」

「どうして?」

「運営さんとか、三波兄さんとか色々なところにコネクションがあるからさ」

「・・・親の七光りなだけやで。家は老舗料亭やし、お偉いさんとかよく来るんや。そのおかげで色々な人と関わりがあるだけで」

「それでも、だよ」


築茂はあまり家の事を語りたがらない

それに苦手意識を持っている節もある

けれど、そのお陰で今の僕らがいるのだから、築茂にはそれを誇りに思ってほしい


「築茂の家にはお偉いさんが来るけどさ、そのお偉いさんと話したのは築茂の意志だよね?」

「親から挨拶しろって言われた人もおるけど・・・まあ、半分ぐらいは」

「話しかけるだけでも凄いと思うよ。僕と政宗じゃ絶対緊張して話せないし、良好な関係なんて絶対に築けないと思う」

「そう、やろうか・・・」

「そうだよ。それに、情報を手に入れられたのも築茂のお陰だし、築茂はもう少し自分に自信を持つべきだと思う」

「司・・・」

「ありがとう築茂。築茂が誰かと関係を作り上げるのが上手なお陰で、僕らはこの攻略に動ける。全部、築茂のお陰だよ」


築茂の手を取って、改めてお礼を言う

僕らがこうして動けているのは、築茂が起点になってくれたお陰だから


「・・・こちらこそありがとうな。家の力もあってよかったって今は思える」

「よかった」

「これからも参謀兼情報屋兼魔術師として頑張るからな!よろしゅうな!」

「こちらこそ、よろしく頼むね。築茂」


明るくなった政宗に手を引かれながら、どんどん先に進んでいく

それを後ろから和やかに見ている音羽姉さんと薫さん


「可愛らしいですね」

「そうですねえ・・・」

「私も、司君みたいなお友達がいれば何か変わったでしょうか・・・」

「薫さん?」


薫さんの一言は音羽姉さんにだけ聞こえたようだが、音羽姉さんはそれ以上の追及はしなかった

一方、ルルは森の前を飛ぶ蝶々を追いかけていた


「退屈そう・・・」

「確かに、迷わないように慎重に歩くだけやからなぁ・・・」

「そろそろ石碑の場所だっけ?」

「と、思う。位置情報も問題ないし、そろそろかと思うけど・・・ギミック解除忘れたポイントあったかな」

「大丈夫だと思うけど、どう見ても分かれ道の一つもない一方通行の道が延々と続いているよね」

「そして、後ろを振り向けば・・・」

「オチは見えているから言わなくていいよ。現実逃避ぐらいさせてよ・・・現実じゃないけどさ」


そう。僕らは現在ループ空間に囚われている

一方通行のループを解除するためには、ある条件があるそうなのだが・・・現在、僕らはその条件を調べている状態だ

なんせ、三波兄さんはそのループの解除情報だけは話していなかったらしいから


「ツカサ、ツカサ・・・」

「どうしたの、ルル」

「後ろ、元居た場所」


ルルが蝶々を追っている間に後ろを振り向いたのだろう

この手の道ループによくある、振り返ったら出入口の法則はこのゲームにも搭載されているようだ


「・・・冗談やろ」

「音羽姉さん・・・汚れ役だけど一つ頼んでいい?」

「勿論。ここは私が・・・」


音羽姉さんはルルの動きを固定するために彼女の肩を掴んで前に押す

そして、耳元で一言


「後ろ、また向いたらお化け出るよ」

「ゴースト!?」

「そう。ゴースト。だから後ろ振り向いたらダメだよ。ルルちゃん」

「はううううううううう・・・・・」


ルルには悪いことをしたと思うが、後ろを振り向かれると今まで起動させた「ギミック」すら元通りになってしまう

また一から探し直し


「・・・長い道のりや。もう一度いくで、司」

「了解。築茂」


僕らは再び、森の道を歩き始める

今度こそ第一ポイントである石碑へ辿り着くために

永遠に続く、地獄のような道のりへと足を進めた

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