第一話
人気もなくなった真夜中の裏路地を、一人の青年が歩いていた。
フードを深くかぶり、その隙間からは、まるで病気のような真っ白な髪と、見る相手を不安にさせるような深紅の瞳が覗かせる。
夜の路は青年を怖がり、人ひとり、動物すらも彼の前には姿を現さない。
青年はある1つの家の前に立ち止まった。
鍵も簡易ですぐに開けられてしまうようなボロ家な上、何日も風呂にも入っていない獣の臭いがしている。
しかし青年はそんなことにためらいを見せず、鍵をこじ開けると静かに家の中へと入った。
「何者だっ!」
青年がここへ来るのが分かっていたのか、こんな夜中まで主人は起きていた。
「ファルセム・アルデカンド。さる人物から依頼を受けお前に会いに来た」
「! ファルセム……あの、何でも屋ーーーッ!」
男が逃げ出そうとするその前に、ファルセムと名乗った青年は男を蹴飛ばすと、瞬きの内に蹴飛ばした男へ間合いを詰め踏みつけた。
「……お前がきちんと金を出せば許すと依頼主様は言ってるが。さあ?どうしたい?」
「……ッ」
身もがく男。
もちろん金などない。
ファルセムは静かに懐から首輪を出すと、暴れる男に取り付けた。
「ま、待ってくれ、明日には、明日には払うから!」
男の常套句にファルセムはクスリと笑う。
妖しくも美しいその笑みは、男に更なる恐怖を感じさせた。
「お前に明日は来ない、と言いたいところだがな。依頼主様は寛大な方だ。……お前がきちんと返済するまで働かせてやるそうだぞ。良かったな。返済できて」
男の悲鳴はすぐに、彼の魔法で妨げられてしまった。
男はこの後、借金と俺への依頼料をすべて返す、果てのない労働まで、暫しの間、眠りについたのである。
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