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部屋にわたしは男と一緒に座っている。男はうつろな表情で、目の前のちゃぶ台には空の湯呑みが一つ。
「晶?」
「……あぁ」
わたしは服を脱ぐ。晶は驚いている、当然のことだけれど。わたしは構わず脱ぎ続ける。彼は何も言わずただわたしを見ている。
そしてわたしは下着だけの姿になって、晶に微笑んだ。
「早く抱いてよ」
「……」
晶は動かない。仕方がないのでわたしは彼ににじり寄り、彼の手を取って自分の胸に、下着の上から押し当てた。それでも動かない。わたしは下着を全て脱いで、彼を畳に押し倒す。彼は抵抗しない。
「いいから抱きなさい」
晶に馬乗りになってわたしは言う。晶はされるがままだ。
「……お前、誰だ?」
うるさいのでわたしは晶の唇を唇で塞いだ。やっと彼はわたしの背中に腕を回してごろりと横に回転し、わたしを下にした。ほらね、男なんて。
わたしは数年ぶりで男とそれをしたが、勘を取り戻すのは簡単だった。アパートの壁が薄いらしく隣人の咳払いが聞こえたけれど、構わずわたしは声を上げた。とろとろに溶けて、めちゃくちゃに混じり合うまで、わたし達は――。
✳︎
夕食はお通夜みたいだった。夕食と言っても白いご飯とインスタントの味噌汁と沢庵しかないけれど。
「ごめん、疲れてるからこれだけ」
「……食欲無いから別にいい」
会話もこれだけ。私も孝一もお互い目を合わせない。
シャワーを浴びてすぐに布団に入る。何かを考えるのには疲れ過ぎていた。孝一は襖を隔てた隣の部屋でまだ起きている。
長年恐れていた事が起きてしまった。よりによってこんなタイミングで。
孝一は勘付いているようだし、勘付いた事を私が気付いた事も知っているみたいだ。私は弁当箱が孝一の鞄に入ったままだと思い出したが、再び起きて洗う気力もなかった。
目覚めたら全てが解決していたら良いのにと都合の良い事を思いながら、私は眠りに落ちた。