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 ガチャリとドアが開く音がして、男が一人部屋に入ってくる。


 私は仕事が休みだったので、ホットケーキミックスと牛乳と夕食の材料を買って、炊飯器の予約と洗濯をした以外はテレビを見てゴロゴロしていた。


「ごめん下さ〜い。こんにちは、美紀」

「……?」

「何、怪訝な顔してんのよ」

「……もしかして、摩耶(まや)さん?」

「そう。久しぶりね、ここまで来るのに迷っちゃった」


 彼を居間に招き入れ、お茶を淹れる。

「この前会ったのはいつでしたっけ? 確か一昨年……いやもっと前ですか?」

「ちょうど三年前よ。私、三年周期で活動してるから」

「オリンピックとかそういうのみたいですね」


 私は、彼……彼女と言った方が良いのだろうか、彼女に初めて会った時の事を思い出す。このアパートに越して来たばかりで、食材の安い店を開拓する事に命を懸けていた頃だ。彼女は突然現れた。外見は男なのに喋り方が女性だから驚いたが、サバサバとしていて悪い人では無さそうだった。


「それよりさ、孝一と結婚するんだって? 本人に聞いたよ。今日はおめでとうを言おうと思って。丁度休みで良かった。手ぶらで申し訳ないけど」

「……ありがとうございます」

「何だか元気無いね。もしかしてマリッジブルーってヤツ?」

「そういうのじゃないんですけど……」

「私に話してみなよ。楽になるかもよ。今なら孝一も聞いてないしさ」

「そうですか? じゃあ……実は私、晶の事がちょっと気になるんです」

「あちゃ〜、そうきたか。彼、ちょいワル親父っぽい雰囲気だもんねぇ〜」

ちょっと嬉しそうな摩耶さんはちゃぶ台に肘をつき、前のめりになった。

「古いですよ。それに晶はまだ中年じゃないです」

「で、美紀は彼とどうなりたいの」

「……わかりません。ただ、気になるんです」

「もうさ、いっそヤっちゃえば?」

彼女の目がキラリと光る。いたずらを考えついた子どもみたいだ。

「……何でそうなるんですか。返ってややこしくなりますよ」

「ヤれば見えてくる事もあるかもよ?」

「適当に言ってるでしょう。茶化さないで下さい」

「まぁまぁ。モヤモヤしたまま結婚するよりいいでしょ」

「そういう問題ですかね……?」

「そろそろ私行くわ。眠たくなってきたし」

「もうですか。会うのはまた三年後ですね」

「うん。三年後、家族が増えてたりしてね。じゃあ、グッドラック!」

「摩耶さんも、お元気で。良い眠りを!」

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