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ガチャリとドアが開く音がして、男が一人部屋に入ってくる。
私は仕事から帰って来て、何となく居間でボーッとしていた。
「今日も早いね」
「あんた、学習能力無いの?」
彼は右の口角を上げた。
「……また晶君か」
「愛する孝一じゃなくて悪かったな。ほら」
晶君はカカオ含量が高めのチョコレートを畳に放った。
「また盗ってきたの?」
「当たり前田のクラッカー」
彼は死語を口にした。全然面白く無い。私はチョコレートから目を逸らした。
「これは戦いだ。あんたが満足するまで俺は毎日何かしらを盗って来る」
「本気で怒るよ。孝一に迷惑掛けるつもり?」
「心配要らない。俺の万引きスキルは神をも凌ぐレベルだ。昨日は久々にやったけど完遂出来た」
「神様は万引きしないでしょ」
「冷めた女だな」
「晶君がおかしいんだよ」
✳︎
今日は孝一が夕食当番だ。彼は冷蔵庫の残り物や、冷凍庫に常備してある食材をチェックして、大抵炒め物にする。
食卓につき二人でいただきますを言う。おかずは豚バラとニラの卵とじだ。少し味が濃いけれどご飯が良く進む。
「また晶君が来たよ」
「うん。あいつも他のところへ行けばいいのにここばっかりだな」
「今日はチョコレートくれた」
「食後に食べようか」
「うん。また来るって」
「ふうん。それより、入籍はいつにする?」
晶君の事から話が逸れ、また万引きの事を言いそびれた。
その夜、孝一は最近仕事が捗らないからと遅くまで居間で仕事をしていた。