元勇者、依頼主の正体を知る
『元』勇者ショックから立ち直ったオレは、さっそく依頼内容について詳細な部分を詰めていった。
「そうえいばメリエちゃんはロメリアまで何をしにいくの?」
「……お使いです。届け物をしに」
「お使い!? 別の大陸まで!?」
「旅の泉がありますからね」
旅の泉とは遠く離れた地まで一瞬で移動できる、古の神々が作りだしたとされる泉だ。
もちろんそこに行くまでにも魔物に襲われる危険はあるが、海を渡っていくよりは安全だし時間もかからない。でもそれにしたって……
「それって親御さんから頼まれたの?」
「はい、父に」
「それは何と言うか……」
メリエちゃんがどれほどの実力かは分からないが、ずいぶんとムチャなことを言う父親だ。
(元)勇者であるオレでさえ、旅の泉を通ってロメリアまで行くのに苦労したってのに。
え、それはお前が弱いって? それほめ言葉ね。
「……アタシは父に嫌われているんです。愛人の子なので」
「えぇ……」
自分で不倫して産んどきつつ嫌うなんてなんたるクズ親。
まったく顔が見てみたいぜ。
「でも、そんなお父さんの為にもメリエちゃんは行くんだ?」
「……そんなでもアタシの父親ですから」
なんて……なんて健気なんだ……。
「うぅ……うおおぉぉぉーーんん!!」
「ちょっ、どうしたんですかいきなり!」
突如男泣きし始めたオレに、ドン引きのメリエちゃん。
でもね、男の子だって泣きたい時はあるんだい!
「かならず……かならずオレがロメリアまで送ってあげるから……なんなら帰りも送るから……」
「そ、それは有り難いですけど……あーん、もう、リンカ! アレンさんなんとかして!」
このあとメチャクチャ泣いた。
「えー……で、実際に旅の泉までなんだけど、正直そこまでは魔物はほとんどいないと思う」
「え、どうしてですか?」
「ほとんど倒しちゃった」
「え……」
メリエちゃんがオレの言葉を聞いて絶句する。
当たり前だ。いくら弱いやつしかいないからってこの大陸は結構な広さだ。
それをほとんど倒すなんて、常識的に考えて不可能な話だろう。
まあ正確に言うと倒したんじゃなくて、弾き飛ばしたんだけど。
というのも走るのが速くなって無駄に走り回っている時に気付いたのだが、途中で何かにぶつかっていると思っていたのは実は魔物だったのだ。
不運にもオレと衝突事故を起こした魔物たちは、当たった瞬間に水平線の彼方まで飛んで行ってしまった。最初は何か悪いなー申し訳ないなーと思ってたんだけど、なんか段々弾き飛ばすのが楽しくなってきて気付けば地上から魔物の姿が消えていた。
ちなみに空を飛ぶ魔物に関してはジャンプでどこまで飛べるか試すために跳ねまわっていた時に、下から頭突きをかましてしまい空のお星さまになってしまって姿を消した。
……とまあそんなことがあった訳だけど、そのまま言うのもカッコ悪いので、
「やっぱ……オレ(元)勇者じゃん? なんつーか、見過ごせないっていうか(ドヤァ)」
とそれっぽく言っておいた。
そうするとほぅら、メリエちゃんのオレを見る目がちょっと尊敬のまなざしに。
「……そんな立派な人なのに、どうして勇者をクビになったんですか?」
「よくぞ……よくぞ聞いてくれました!」
これを言いたかったのよ。いや、リンカちゃんにも聞いてもらったけど、是非ともこの理不尽な決定をメリエちゃんにも聞いてもらいたい。
「もとはと言えばさーあのハゲ(王)がさー」
そこからオレは語彙の限り王を罵った。
いやもう王とか知らんし。どうせ城も出禁になってるからもう会うこともないだろうし。
何かメリエちゃんもやけに真剣に聞いてくれてるし、ついつい饒舌になってしまう。
気づけはたっぷり一時間かけて王への文句を垂れ流し、それを聞いたメリエちゃんが一言。
「それは酷いですね。この旅が終わったら父に伝えておきます」
「うんうん、お願い……うん?」
「むしろ今からでも勇者クビを撤回してもらいましょうか?」
「あの……メリエちゃん? つかぬことをお聞きしたいんだけど……」
「はい?」
「キミのおうちはどこ?」
「あそこです」
その指先がさした方向には店の窓……から見える城下町の家々……から突き出る煙突……よりもさらに高い位置にあるアジアハン城の尖塔。
このあとメチャクチャ土下座した。
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なまえ:アレン なまえ:メリエ
しょくぎょう:無職(元勇者) しょくぎょう:剣士(アジアハン王女)
HP:999 HP:47
MP:999 MP:24
ちから:255 ちから:33
すばやさ:255 すばやさ:42
たいりょく:255 たいりょく:18
かしこさ:255 かしこさ:39
うんのよさ:255 うんのよさ:22
日間ランキングに上がるためになんとか60pt貯めたかったけど30が限界だったよ……。
情けない作者をどうか許してくだせぇ。こんなことなら書きためしとくべきだった。
それでもいつか成し遂げるんだから!!