元勇者、謎の建物を発見する
筋肉モリモリのマッチョマン、そう聞いてオレの頭の中に1人の人物が浮かび上がってきた。かつてお袋からいやっていうほど聞かされたノロケ話。その中に出てきた親父の風貌にそっくりなのだ。
ちなみに親父は魔王を倒した後、魔王城の近くにあった大穴が気になると行って出て行ったきり帰ってこないらしい。オレが生まれる直前だったというのに何をやってるんだかと思うが、お袋はまだ生きていると信じているみたいだ。
「アレンよ、どうかしたか?」
「えっ、いや、何でもないです、はい……」
まさか「その盗賊、うちの親父にそっくりっすね!」と言う訳にもいかず、誤魔化すように答えるしかなかった。
謁見が終わり、再び城下町に戻る。とりあえずメリエちゃんのお使いが終わったので、盗賊退治の前にアジアハンへ送り届けようと思っていたのだが、
「いえ、アタシもアレンさんに同行します! 盗賊退治の勇姿を見届け、父への説得材料にしようかと」
そんな答えが返ってきた。
個人的には野蛮な盗賊たちのところに可憐な彼女を連れていきたくはないんだけど、この分だと簡単に聞き入れてはくれなさそうだ。
とりあえずロメリアの北にガザーヴの村というのがあるらしいので、まずはそこを目指すこととなった。
だが旅というものは予定通りになるとこは少なく、不確定要素に満ち溢れているのだ。道中もリビングアーマーを始めとする魔物に出くわしつつも、魔法戦法を覚えたおかげで、特に大きな問題もなく進んでいるように思われた。
しかし、それは突如としてオレたちの前に現れた。
一見して砦のように見えるソレは、平原の真ん中にポツンと建っており異彩を放っていた。魔物たちも何かを感じ取っているのか、そこに近付こうとはしていない。
「な、何なんですかね、これ?」
「何だろう……?」
メリエちゃんと二人で訝しげに眺めていると、オレたちが辿ってきたロメリア方面の道から馬車が走ってきた。馬車は砦の前で停まると、中から老若男女バラエティに富んだ人々が降りてきて砦の中へと入っていく。
「アレンさん、人が入っていきますよ?」
「うん、しかも見るからに一般人だね。危険なところって訳ではなさそうだ」
「ちょっと聞いてきてみます」
そう言うとメリエちゃんは身なりの良い老婦人に話しかけに行き、しばらくしてから戻った来た。
「アレンさん、どうやらここはすごろく場という娯楽場みたいね」
「すごろくって、サイコロ振ってコマを進めていくあれ?」
「はい。ただここのすごろくは挑戦者自身がコマになって進むようで、日常では味わえないスリルが体験できると人気なんだそうです。どうやらロメリア王国が経営してるらしく、国の財源にもなっていると仰ってました」
「へぇー。そう言えば、城下町にも娯楽施設っぽいのがあったな。なるほど、ロメリアはそうやって儲けてるのか」
「アジアハンは娯楽施設などが皆無ですから、こういった部分は見習わないといけませんね」
そういうメリエちゃんの視線は、すごろく場に釘付けだった。そういえば城からはあまり出してもらえないんだっけ。だとすると、日頃から息苦しい思いをしているんだろうなぁ。
「メリエちゃん、少し遊んで行く?」
「えっ、良いんですか!? ……いえ、でも大丈夫です。今はロメリア王の依頼の最中ですから」
「期限なんて決められてないから大丈夫だよ。それにオレ、こういう所で遊んだことなくてさ。1人だと緊張するから、悪いけどメリエちゃん付き合ってくれないかな?」
「アレンさん……有難うございます」
「よし、じゃあ行こう!」
まだ少し遠慮がちなメリエちゃんの背中を押してすごろく場へと足を進める。これがデキる男なら、さっと手を取ってエスコート出来たのだろうけど、オレにはハードルが高すぎる。
それに遊びたいという気持ちにいつわりはない。もしかしたらタネパワーで楽に景品をゲットできるかもしれない。はてさて、どうなることやら。
久しぶりに評価ポイントを頂きました、有難うございます!
またしばらく後書きに何か忘れていると思っておりましたら、肝心なこれを書くのを忘れておりました。
いつもお読み頂き有難うございます!