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強盗

 デパートで万引きをした日、聖哉に最後のお願いと言われ「4日後、銀行の近くの喫茶店の前で透明化して待っていて欲しい」とお願いされていた玲奈。あれから4日、あかりは怖くて聖哉に会うことが出来なかった。

 しかし、この日は約束通りに喫茶店に向かわなければならない。行きたくない気持ちを抑えながら、「もう、これで本当に最後にしてもらおう」と心に決め、自宅で出発の準備をしていた。

 だが、あかりはテレビであるニュースを見て絶句した。



「先日、能力者による窃盗事件が発生しました。犯人は逃走中で現在、能力者対策本部が捜査中との事です。尚、犯人は透明化の能力者との情報が入っております。」


「うそ……ニュースになってる。しかも、なんで能力の事までバレてるの……?」



 思わず言葉が漏れる。あかりの準備する手が止まり。全身から冷や汗が出て鼓動が早くなり、頭の中を様々な考えが駆け巡った。



「(警察に捕まっちゃう……収容所に送られちゃう……なんで、能力の事まで……)」



 あかりは急いでケータイを取り出し、聖哉に電話する。しかし、何度電話しても出ない。約束の時間が迫り、とりあえず会ってから話すことにしたあかりは自身を透明化し、家を出た。

 喫茶店の前に着いたあかりは警察や周りの目にかなり敏感になっており、手汗が止まらずソワソワしながら待っていると聖哉から電話が来る。



「おい、着いたか?」


「着いたよ、どこにいるの? ニュース見た? 大変な事になってるんだよ!」


「あー、ごめん。あと少し待ってて」



 聖哉の一方的な電話にあかりは深い溜め息をつき、聖哉が話を聞いてくれない事に対し、怒りと焦りが同時に沸いてきて涙目になっていた。




――――銀行の裏路地――――


 そこには黒ずくめの男が3人で話し合っていた。その3人は赤の覆面の人物、青の覆面人物、そして、黒い覆面をしている聖哉だった。それぞれ防弾チョッキを着用し拳銃も隠し持っている。

 聖哉は2人に向けて話し出す。



「よし、計画はシンプルだ! その前にコードネーム決めるぞ! お前は赤の覆面だから、アカな! お前は青の覆面だからアオだ! 銀行に押し入って金を全部奪う、その後は俺が用意した秘密兵器で逃げる! 分かったか?」



 アオとアカは頷き、了承するが秘密兵器の事を気にする。



「オッケー! 前から気になってるんだが、その秘密兵器ってなんだ?」


「そうだよ! 教えてくれよ!」



 2人はしつこく聞くが、聖哉は教えない。



「後でのお楽しみだよ! 楽しみにしてろ! よし、行くぞ!」



 聖哉はそう言うと、2人に気合いを入れる。そして、3人は銀行の正面の入り口から勢いよく押し入った。

 そして、聖哉が大声で叫ぶ。



「おい 全員動くな!」



 アオは銀行員に銃口を向け、台の上に大きなカバンを3つ置き、金を要求する。

 アカは客を人質にし、通報させないように見張る。

 聖哉は裏口に行き、逃走ルートを確保する。

 人質にされた客は角に集められ地べたに座らされていた。突然の事に驚き、泣く客や恐怖で震える客、「殺さないで下さい!」と叫ぶ客など、その場はパニックになった。

 そこで、アカは天井に銃口を向け引き金を引き、脅す。



「てめぇら黙れ!! 次騒いだら殺すぞ!!」



 アカがそう言うと人質の客は声を押し殺し、声を出さないようにした。

 しかし、銀行員はその騒動の中で、アオの気が逸れたのを見て、すかさず机の下に隠されているボタンを押し、通報する。

 アオはそれに気付かず、お金を早く詰めろと言うが銃口を突き付けられている女性は恐怖で手元がおぼつかない状態になっており、時間がかかった。

 そして、サイレンが遠くから聞こえてくる。通報に気付かなかったアオが切れる。



「ちっ 誰が通報したんだよ!! 早く金突っ込めよ!! ぶっ殺されてぇのか!?」


「すすすいません!! 今すぐ!! もうすぐ終わります!!」



 怒鳴られている女性は口元がおぼつかない程、恐怖を感じていた。それでも、なんとかお金を詰め終わり、アオの所に聖哉とアカが集まり聖哉が2人に指示を出す。



「計画通り俺がカバンを持つ、お前らは俺をカバーしろ!!」


「分かった!」



聖哉達は計画通り強盗し、聖哉が確保した裏口から出る。しかし、銀行に到着していた2人の警官が裏に先回りしていた。その警官は銃を構え、聖哉達の行く手を阻んだ。



「手を上げろ!!」



 行く手を阻もうとする警官が声を張り上げる。しかし、聖哉はうろたえずに突き進み、攻撃を仕掛ける。



「クソ! 撃て撃て!!」



 その指示を受け、発砲するアカは聖哉に言葉を返す。



「分かった! お前は先に行け! 俺達がカバーする!」



 それに続いてアオも言葉を続ける。



「ちゃんと、秘密兵器とやらを見せてくれよ!」



 そうして、聖哉達が警官に発砲した事により、銃撃戦が始まった。聖哉はダッシュし、あかりが待っている喫茶店に向かった。アオ、アカもそれについて走るが、警察の応援が到着し、銃撃が激しくなり物陰に隠れた。

 しかし、聖哉はそれでもお構い無しに走って行く。それを見た青の覆面が聖哉に大声で呼び掛ける。



「おい!! お前死ぬ気か!? どこに行く気だ!!」



 しかし、聖哉は2人を一度振り返っただけで返事もせずに走り去っていく。アカはそれを見て裏切りの可能性を示唆する。



「マジか! アイツ1人で逃げる気か!?」



 それに釣られてアオは立ち上がって裏切りを阻止しようと走り出す。



「くそ! 追うぞ!」




 その頃、あかりはやけにパトカーが騒がしいなと思い、自分が万引きした犯人とバレているのではないかと思い、ヒヤヒヤしながら待っていた。そこに、怪しい黒い覆面をして大きなカバンを3つも持っている男がダッシュで近付いてくるのを見て驚く。周りの人達の注目も集めていた。

 そして、その男は叫んだ。



「あかり! 俺に触れろ!」



 それは、2人を裏切って走ってきた聖哉であった。あかりはまさかの事態に動揺する。



「(聖哉!? なんで!?)」


 あかりは目の前を通り過ぎようとした聖哉の腕を掴み、透明化する。それを見ていた道行く人達は目を大きく見開いて驚く。



「今の見たか!? 消えたぞ!?」

「え!? 消えた!?」

「ほう、まぁまぁだな」



 そこに、聖哉を追っていたパトカーが迫る。聖哉の言う秘密兵器とはあかりの透明化の能力の事であり、最初から裏切るつもりだったのだ。



「よし! ナイスあかり! 早く逃げるぞ!」



 聖哉の指示を受けるあかりは突然の事に驚き過ぎて頭の中は疑問でいっぱいになっていた。



「え? なんなのその格好!? 何をしたの!?」


「うるせぇよ! とにかく逃げるぞ!」



 聖哉は荒々しい顔つきであかりの手を引っ張り、逃げようとするがあかりは動かない。

 あかりは好き勝手に自分の能力を利用する聖哉に限界が来て、今まで溜まっていた怒りが爆発し、泣きながら大声で叫び、透明化を解く。


「もうやだ!! 何したの!? 私をもう巻き込まないで!!! いつも自分勝手に利用して!! 今日が最後って言ってたけどもう嫌だ!!!」



 透明化を解いた事により場所や姿が丸見えになり焦る聖哉。



「えっ!? おい! 早く透明化しろよ!! てめぇぶっ殺すぞ!!!」



 あかりは聖哉の言葉を無視して号泣しその場に座り込む。聖哉はパトカーがすぐそこまで来ている事を確認すると大きな溜め息をつき、諦める。カバンを下ろし、あかりを睨む。

 そして、座り込むあかりを蹴り、馬乗りになって殴った。何度も何度も。



「ゔゔっ!! 痛い!!! 止めて!!!」



 あかりはいきなりの暴力に抵抗も出来ず、叫ぶしかなかった。



「てめぇのせいで捕まるじゃねぇか!!! 使えねぇクソ女が!! 死ねよ!!」



 そこにパトカーが到着し、聖哉は3人掛りであかりから引き離され連行される。

 あかりは気絶し、傷が酷かった為、そのまま“ある病院”に搬送された。






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