表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

あかりとクズ

――――2日後――――


 2人は大型のデパートに居た。対に配置されている靴屋と服屋の間に立つあかりは隣に居る聖哉に確認をする。



「聖哉の欲しいのってあの靴とあの服だよね?」


「そうそう、頼むわ。んじゃ、先に帰るわ」



 そう言うと、聖哉は大きな足音をたてながら去っていく。あかりは自分勝手な聖哉に呆れながらもトイレに行き、個室に入る。大きなエコバッグを取り出すと自身と持っている物を透明化した。人の気配に気を配りながらトイレから出る。

 透明化しているとはいえ、接触してしまえばバレてしまう可能性がある為、人を避けながら、また音も立てぬ様に進まなければいけない。その緊張をしながら服屋と靴屋に向かう。


 そして、何とか問題なく目当ての服屋に入り、目当ての服を見つける。あかりは服の前に立つと周りを見渡し、服が誰の視界にも入っていない事を確認すると服に触れる。

 すると、その服は2秒程で完全に透明になった。その服エコバッグに突っ込むと、そそくさと靴屋に入り、同様にお目当ての靴に触れ、透明化を始める。

 しかし、その瞬間に死角から店員が歩いて来てしまい、透明化の瞬間を見られてしまう。



「えっ!? 靴が消えた!! なんで!?」


「(ヤバイ! 見られた!)」



 あかりは予想外の事に動揺するが、靴をエコバッグに入れてその場から音を立てないように走って逃げた。透明化のお陰で顔を見られる事も追われる事も無いが初めて透明化の瞬間を見られた為、かなり焦っていた。

 なんとか聖哉の家に着き、部屋の前で透明化を解く。そして、部屋に入るなり、聖哉に盗んだ靴と服を乱雑に投げ渡した。



「おー! さすが俺のあかりちゃん! そういう所大好きだぞー」


「うるさい!! 今日みられちゃったんだよ!! 透明化する所!」


「別に大丈夫だろ、気にすんなって」


「捕まったら収容所送りになるんだよ! 実験台になんかなりたくない!」


「さっきからうるせぇよ、実験台とかただの噂だろ」



 あかりは怒りと虚しさに挟まれ、今にも泣き出しそうになりながら床に座り込んだ。

 すると、聖哉はその状況を完全に無視して再びあかりにお願いをする。



「またお願いがあんだけどさ、透明化して立ってるだけでいいから協力してくんね?」



 この言葉を聞いたあかりは大きく目を開けて驚く。そして、涙をこぼしながら怒鳴り散らす。



「なんで、このタイミングでまたお願いできるの!? おかしいでしょ!」



 あかりが怒鳴り散らすと聖哉が眉間にシワを寄せ、あかりに近付く。そして、胸倉を掴み拳を握って低い声で脅す。



「は? 殴られたいの? じゃあ、これで最後にするから、それなら良いだろ?」



 涙を流し、震えるあかりは恐怖を感じていたが、「これで最後」という言葉に妥協する。



「……本当に最後だよ?」





――――一方、靴屋では――――


 靴屋には20代前半くらいのスーツを着て身長が高く、短髪でスポーツ万能そうな男性と私服で茶髪のショートカットの女性が立っていた。そのスーツを着た男性は少し怯えた様子の靴屋の店員に話し掛けた。



「すみません、通報されたのはこのお店で間違いはないですか?」


「あ、はい! ここです!」


「私は能力者対策本部の澤口と申します。こちらの女性は部下の藤田です。何が起こったか教えて頂けませんか?」



 そう言って、警察手帳を見せた。そこには能力者対策本部(psychic countermeasure headquarters)と書いてある。



「あ、はい! 私が靴の並びを直そうとここに来た時に、あそこにあった靴がスーッと消えたんです。明らかに不自然だったんです!」



 それを聞いた澤口と藤田は顔を見合わせ、靴が置いてあった棚の近くに寄る。澤口は観察しながら質問した。



「それ以外で何か不審な点はありませんでしたか? 怪しい人物が居たとか」


「いえ、特にありませんでした」



 澤口は腕を組み、アゴに手を当て考え込む。そして、少し間を置いて藤田に命令する。



「分かりました。藤田、お前の出番だ」



 澤口がそう言うと、藤田は手に嵌めていた茶色の手袋を取り、棚や周辺の壁、地面などに触れた。藤田は触れた物の過去を見る事が出来るサイコメトラーだ。

 一通り周辺の物を触り、過去を見た藤田は澤口にこう告げた。



「確かに靴が消えるのが見えました。地面を触れた際にも、見えない何が歩いている感覚がありました。恐らく、透明化する事が出来る能力者かと思います」



 澤口はそれを聞くと、再びアゴに手を添えて少し考え込む。すると、何かを思い付いた様子で再び藤田に指示を出した。



「そうか、捜査を続けてくれ。」



 澤口は指示を出すとポケットからケータイを取り出し、能力者対策本部に電話を掛ける。



「お疲れ、通報の件なんだが、相手は透明化の能力者かもしれない、とりあえずマスコミに流せ、目を増やせば見つかり易くなるし、被害に会った人や目撃したという人が名乗り出てくれるはずだ」




――――数日後――――


 とある場所の地下深くにある部屋で、ある男がテレビを見ていた。その男はフードを被り、ロングコートの様な服を着ている。左手にポテチの袋を持ち、バリバリと食べながら足でゆっくりと一定のリズムを刻む。



「先日、能力者による窃盗事件が発生しました。犯人は逃走中で現在、能力者対策本部が捜査中との事です。尚、犯人は透明化の能力者との情報が入っております。」


「ほう、透明化か。良いね! ちょっくら見に行ってみるか!」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ