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脱獄

 あかりの牢屋の前に立つ藤田はフードの男を見て驚く。



「どうやって入ったんですか!? しかも、ここの看守が私に見向きもしなかったんですけど、あなたの仕業ですか?」



 男は藤田の質問を軽くいなしながら、あかりに指示を出す。



「まぁ藤田さん、細かい事は脱出したら教えます。とりあえず、関口さん立って格子に近付いて下さい」



 男がそう言うと、フラフラになっているあかりに手を貸して立たせた。そして、あかりの手を引いて格子に近付かせ、藤田とあかりは向かい合う様に立った。それを疑問に思った藤田は問い掛ける。



「何をしようとしてるんですか?」



 藤田がそう言うと男は淡々と説明し始めた。



「よし、じゃあ、収容所出たらあとは自分達の力で脱出して下さい。あなた達は一心同体です。ただ、関口さんの体がかなり衰弱してるのですぐに能力が解除される可能性が高いです。だから、急いで下さい」



 この言葉を聞いた藤田は首をかしげながら聞き返す。



「能力が解除?」



 フードの男は質問に答えず、藤田とあかりの間に立ち、2人の背中に手を当てた。次の瞬間、男はあかりを藤田に向けて思い切り押した。すると、あかりは藤田の体の中に入り、1人になった。

 自分の身体の中にあかりが入った事に驚いた藤田は取り乱す。



「うわ!! え!? なに? なんか、あかりさんの声が頭の中で聞こえる!!」



 男は再び淡々と話し出す。



「これはボディフュージョンっていう能力です。1人の人間に別の人間を差し込む事が出来る能力で、中に差し込まれた人間が能力者であればその能力を差し込まれた人間が使う事が出来ます。あとは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚は中の人間と共有になります」



 その説明を聞くと藤田は自分の身体の至る所を触って無事を確かめる。



「私の中に関口さんが……」



 すると、中に入ったあかりが藤田に問い掛ける。



「(藤田……さん聞こえますか?)」


「あっ聞こえます! 私は透明化出来るって事ですか?」



 そう言うと、男は手を叩いてテンションを上げて返事する。



「お! そうです。関口さんにやり方聞いてやってみてください」



 藤田はあかりに透明化の仕方を聞く。



「関口さん、私どうすればいいですか?」


「(えっと、透明になるっ! って思えばなれます!)」


「分かりました。透明になるっ!」



 藤田が胸の前で両手を握り、目をギュッと瞑ると、藤田の身体は透明化した。藤田は目を開けて自分の身体が見えなくなったのを見て驚いた。



「おっ! 本当に透明になってる!」


「(おー! 出来ましたね!)」



 藤田は透明化出来た事に驚くと共に喜ぶ。そして、自分が透明化出来ている事を男に確認する。



「あの! 私見えてますか!?」



 すると、男は食い気味に答える。



「はい。見えてますよ」


「えっ」

「(えっ)」



 あかりと藤田はまさかの返答に驚く。男は「フッ」と笑い、藤田の中のあかりに質問する。



「透明化の能力は同じ透明化の能力者には見えるんですよ。知りませんでした?」


「(初めて知った……っていうか、透明化の能力も持ってるんだ)」



 あかりの言葉を藤田が男に伝える。



「初めて知ったそうです……」


「まぁ、この施設に透明化の能力者は居ないので安心して下さい」



 すると、男は何かを思い出したかのようにハッとし、こう続けた。



「あ、今の内にGPS取り出しますね」



そう言うと、フードの男は藤田の首元に手を伸ばした。すると、手が藤田の首の中に入り込み、埋め込まれていたGPSを掴んで取り出して潰す。藤田は自分の首に手が入り込んだ事に動揺する。



「へっ!? 今、首の中に手が入った……」



 それと同時にあかりも呆れた様子で疑問に思う。 



「(この人本当に何なんだろう……)」



 藤田のリアクションを見た男は「フフッ」と小さく笑うと話を続けた。



「相変わらずリアクションが良いですね。GPSも取り出しましたし、バレるのも時間の問題なんで脱出作戦開始しますか!」


「はい! どうやってここから脱出したらいいですか?」



 この質問に男は軽い雰囲気で答える。



「まぁそこは自分で考えて下さい。俺はそろそろ行きます。じゃあ、頑張って脱出して下さい! 収容所出たらスタートです! では!」



 男の予想外の返答に驚く。



「え!? 待っ……」



 フードの男は再び藤田の言葉を待たずに消えた。それを合図に藤田とあかりは覚悟を決める。



「はぁ……関口さん、もうここまで来たら引き返せないです。準備はいいですか?」


「(はい! もうやるしかないです)」



 藤田は収容所の出口の扉の前で深く深呼吸をして覚悟を決め、扉を開けた。




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