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絵物騙り女王  作者: キャッツフード
第一章「お菓子の国の危機・バットエンディング」
3/3

2.希望の女の子・謎の不安感

 拝啓お母さんお元気ですか?

 あの時はケンカしたまま出て行っちゃってごめんなさい。

 私も反省しました、しかし今私は家に帰ることができません。


 

 なぜなら―――――



「GAOOOOOOOOO!!!!!!!!」



 目の前に絶望的な光景が広がっているからです。



……助けてえ。







 さっきから膠着状態が続いていて何もできない現状。

 たぶん私が動いた瞬間にあの熊も動き出し私を襲うのだろう。

 熊は私みたいな運動ができない女子高校生なんかが全力疾走してもすぐに距離を詰められてしまうくらい速い。


  

 つまり私がこの場でできることは何もないのである。

 下手に動けば殺される、動かなくても私は疲労で倒れてしまう。

 やばい、死ぬ未来しか見えない。

 後ろ向きに走ろうとしてもすぐにケーキの木があってそれ以上逃げることはできないだろう。

 


 なら最後の希望にかけるしかない。

 それは…



「助けてええええええええええええ!」



 大声で叫ぶことである。この木の近くは幸い森の出口に近い。森の近辺に人がいればもしかしたら助けてくれるかもしれない…!

 また大声という手段を選んだのはおそらく熊が私を襲うことはないだろうからである。

 さっきの私の悲鳴で襲ってこないのを見る限り声では動き出さないだろう。

 大きく体を動かさないことが大事だ。



 しかし体感20分たっても助けはこない。時折熊は吠えるが私がおびえて動き出すことを狙っているんだろう。

 今更大声ではビビッて動かないけど動くことができない以上何もできないのがつらい。



 もう一回大声で叫ぶか…それとも必死に耐えるか…

 このまま熊が動かないという保証はない。声では動かない…ていうか動くならもうすでに襲われているはずである。ただ時間で動き出す可能性はある。

 緊張から内心焦りだしている。足ががくがくふるえている。



 私の心が絶望に染まり……



 





「そこにいるの?!今助けるよ!」



 えっ?今人の声が聞こえた?

 つまり助けが来たってこと?

 いったい誰が来たんだ…そう思ったときにまた人の声が聞こえた。



「いっけ―!クッキーの兵隊!熊を押さえつけて!」



 すると…



「ラジャー!カクゴシロクマ!」

「オサエツケル!オサエツケル!」

「オマエオスナヨ!イッセイニイクンダロ!」

「ウルセエ!ジャマスルナ!」

 


ちっちゃい影が4つ。熊を押さえつけた!

 その影の頭はクッキーの形をしていた。



「…!クッキーの騎士!」



 見覚えがある。「お菓子の国の危機」に出てくるパテリーヌの兵隊の中で一番数が多く、ある意味マスコット的存在のクッキーの騎士。彼らに命令した女の子はつまり…



「大丈夫?そこの女の子。怪我とかない?」



「パテリーヌ?!」



 大きなコック帽に真っ白なコックコート。コック帽からは長くきれいな金髪が伸びている。大きくクリっとした赤い目に比較的幼い顔。

 絵本そのままではなく現実に合わせられた感じでドラマ風な印象を受けるが彼女は絵本でのパテリーヌの容姿の特徴そのままだ。



まさか絵本の主人公が助けに来てくれるなんて…!



「オラー!コノケーキヲクエ!」

「ギャー!カマレルー!」

「オマエオスナヨ!カマレルダロ!」

「ウッセー!オサレタオマエガワルインダヨ!」



クッキーの騎士は熊にケーキを食べさせていた。

…あれって物語に出てきた正気に戻す薬草の入っているケーキなのかな。

後食べられそうになってるのはいいの?



「うーん?君見たことのない格好してるね。どこの人?」



「あっ、えーと何て言えばいいのかな…」



 ここで正直に言って信じてくれるかな…

 …少しぼかして話そうか。



「私はここから遠く離れた国にいたんですが、気が付いたらこの森にいて…」



「…へえ、あとなんで私の名前を知ってたの?」



「あっ、それはお菓子の兵隊を従えているパティシエがいるって話を聞いて…」



「…なるほどお。」



 そう言って彼女は恭しく頭を下げ、



「ようこそいらっしゃいました。我らが二番目の主さま。「知るもの」よりあなた様のことを聞いてからずっとお待ちしておりました。」



…へ?



「あっ、あの、二番目の主ってのは?あと急に丁寧語になったけど…」



「あっ、違和感を感じちゃった?じゃあ自由にしゃべらせてもらうね。」



 話し方を戻してくれた。さっきのよりかは話しやすくていいな。



「それで二番目の主なんだけどそれは君が私たちのいる「絵本」の一番の持ち主だからだよ。」



 そっか、私は知らない姉の「小雨」が一番目で私が二番目なのか。



「二番目の主はわかったけど、なんで私のことが分かったの?あなたには絵本を持っているところは見せてないはずだよね?」



「うーん、それに関しては国に向かいながらでいいかな?このことに関しては最初から話したいんだ。それにあなたは家がないでしょ?だったら私の家に招待するよ。」



「えっ!パテリーヌの家ってことはあのデザートプリンセス?!あそこに行かせてくれるの?!」



「まあ、あそこが私の家だしね。せっかくだし私のスイーツもふるまうよー」



「ホント!?やったー!あのパテリーヌのスイーツを食べられるなんて!」



「あはは、喜んでもらえてうれしいよ。じゃあそろそろ森から出ようか。いつまでもいると日が暮れちゃうからね。」



 私、なんて幸運なんでしょう!絵本の中の人だった人と出会えて、しかもすいーつまでふるまってくれるなんて!


 

 でもこの時点で私には疑問がいくつかあった。


 

 まず一つ目、なぜ彼女はこの世界が絵本の世界でありそれを認知しているのか。


  

 二つ目、なぜ私をここまで受け入れてくれるのか。


 

 三つ目、なぜこの世界で「知るもの」という名前が出てくるのかである。



 私は「知るもの」という名前を知っている。しかしそれはこの「お菓子の国の危機」の世界で出てくる名前ではない。

 この名前が出てくるのは「夢の塔」の世界のはずだ。



「知るもの」…それは「夢の塔」において最も重要な位置にいるキャラクターの通称だ。

彼(「知るもの」は男だから彼と呼ばせてもらう。)は「夢の塔」と呼ばれる人間が睡眠時の夢の中で稀に訪れることのできる塔の最上階にいるキャラであり、「夢の塔」の管理者兼預言者である。

 彼は世界の事象や過去、そして未来について何でも知っており、訪れた人に最も良い未来を伝える…それが彼のキャラとしての設定だったはずだ。

 


 確かにパテリーヌが夢で「夢の塔」に行った可能性はある。しかし、「夢の塔」から出た人は夢のことをほとんど思い出すことはない。しかしなぜかこうしたほうが良いといったような感覚が起こることがある…といった状態になるため「知るもの」の名前を思い出すことはないのだ。



 だからこれは憶測だけど、たぶん彼がパテリーヌになんかしらの方法で接触を図ったのではないかと思っている。

 それならあり得る…というかそれしかありえないのである。

 彼ならパテリーヌに接触する方法を「知る」ことができたかもしれない。

 だけど彼が行動に移すことはほんとに稀である。正直彼が動くとするなら…









 彼が何らかの危機に陥っているとき以外ありえないのである。



 彼は作中で人に頼る時が来るならそれは彼が過去味わったことがなく予想外な出来事があったときのみと言っているのだ。

 しかしすべてを知ることのできる彼がそんな危機に陥ることはないはずだ…なのだが、



もしかしたら私はとんでもない事に関わろうとしてるのかもしれない。



…いやだあ、帰りたいよお。



「ナンダコイツケーキクワネーゾ」

「ヤメロ!クワレル!」

「イヤー!タスケテー!」

「ソノママクワレチマエ!」

「…あれはいいの?」

「うん、遊んでるからあとでお仕置きだね。」

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