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第七十三話 護衛

 第一印象というか、それを見た率直な感想は、「なにこれ」だった。


 滑るように坂を駆け下り、宗泰の隣りに並びながら振り返る。


「来たか?」


 朱鷺の様子からそれを察し、確認するように呟くと、宗泰は身構えた。


「来たは来たけど……、鬼じゃ無い、負気溜りがドロドロと纏まった物みたい」


 異様な気配が強くなり、様子を窺う為に坂の上まで進んだ朱鷺が見た物は、縦横概ね二間ほど、長さは果てしない、黒い靄を放つ負気の固まりだった。

 頭に当たる部分も特徴(とくちよう)は無く、蛇と言うより、まるでミミズ。

 遠目に窺うと這っているようにも見えるが、大きさから(さつ)するに人が走る程度の早さはある。


「ああ、そう言えば負気が液状化して流れているとの連絡があった」

「教えなさいよ、そういう事は」

「いや、しかし、聞いた話では、その状態で谷に溜まっているとの事だったが……、液状のままで、こんなに速くここまで来たのか?」


 運び屋から届いた報告書には、まるで溶岩が溢れるように研究所から流れ出ていると書かれていたと思う。

 当初は、それから小鬼が湧くかと考えられており、また、流れに呑み込まれた生き物が鬼に成るだろうと言う、ある種、まだ当たり前に近い推測が為されていた。

 それがそのまま来るとは思っていなかったし、そもそも、重さを持って地面を流れるそれが、幾つも峠を越えて湯川の町に到達するというは、完全に想定外だ。


「液状、と言えばそうも思えるけど、街道に沿って大きなミミズみたいに成ってたわよ」

「ほう」


 そんな報告は受けていない。


「変化したか、いや、そういう形の鬼なのか」


 宗泰は振り返り、山吹に指示を出す。


「少し下がれ、観察して拠点に連絡、任せるぞ」

「はい」


 実のところ宗泰も、既に山吹を戦力として数えていなかった。

 自分ですら戦力になるかどうか、ぎりぎりの所であると判断している。

 だからこそ、無理に攻撃に加わるよりも、他の事で役立って貰いたい。


「あの、剣山、縦に並べられる?」


 朱鷺の言う剣山とは、宗泰の技による溶岩の剣だ。

 文字通り、広範囲に発生させ剣の山と為す。


「やった事は無いが、多分出来るだろう」

「じゃあやって。(あと)は、斬り刻む」


 坂の上に、のそりとそれが姿を現した。


 それと同時ぐらいに、町の門が開かれる。

 第二陣が、出発しようとしていた。




 トントントン。

 扉を叩く音に、即座に反応する。


「はい。どちら様?」


 応えながらも、すぐに戸を開ける。

 不用心ではあるが、この町では当たり前の対応だった。


「衛士の者です。郷司様より、更なる鬼の襲撃があり、町に留まるのは危険であるとの判断が下されました。荷物などは持たずに、即座に町の入り口へ向かっていただきたい」


 丁寧ではあるが、その言葉の中に、拒否は認めないとの意味が含まれている。


「はい。解りました。すぐに参ります」


 大浦屋の婦人はその指示に何ら疑問を持たなかったようで、ガラリと戸を大きく開けると、奥にいるのであろう家族を呼びに行った。

 こうも簡単に、素直に従って貰えるのは、衛士としてはありがたい。

 ここに来るまでの数軒では、色々と押し問答があったりもした。


「では、よろしくお願いします」


 そう言って立ち去ろうとする衛士に、上がり框から声が返される。


「あ、お隣の飴釜屋さんはお留守ですよ。子供たちはこちらでお預かりしています。それと、荷物は持たずにという事ですが、水筒ぐらいは宜しいでしょうか?」

「ああ、ありがとうございます。荷物を持たずにと言うのは、すぐに避難しろという事です。水筒ぐらいでしたら」

「もう用意してあります」


 そう言って大浦屋の婦人は、衛士が立つ戸口の脇を指し示す。

 数本と竹筒と子供が持つような小袋が、そこに並べられていた。


「あ、はい。大丈夫です。ではすぐに避難をお願いします」


 言っている間に、奥から子供たちが姿を現した。

 寝間着では無い、明らかに、避難する事を前提に待ち構えていたようだった。


 衛士は僅かに疑問を持ったが、今、気にする事でも無い。

 夫がいない、且つ、隣人の子供を預かっている為に、予備的対応を取っていたのだろう。


 町人町の(かみ)は湯治客向けの商店街になっている。

 一応、町区分では飴釜屋を含む(あと)数軒までが町人町の本通りに含まれ、次の避難対象は南通り、つまり川の対岸だ。

 仲間と声を掛け合い、数人が残りの家に声を掛け、他の者は下手橋に向かう。

 その頃には、大浦屋の婦人が子供たちを連れて歩き出していた。


「対応が早いな、あの家は」


 誰かがふと口にした。

 同時期に声を掛けた家々からは、まだ誰も姿を見せていない。


 婦人は両手にそれぞれ小さな子供を引き連れ、その後ろに、少しだけ大きな男の子と女の子が続いていた。




 門前に集まった第二陣は、既に百名ほどになっていた。

 不安げに屯する一団を、主政たちは川端から眺めていた。


 多すぎるか?

 余りに多いと、集団の移動速度は遅くなる。

 ただ、いざという時、楯にしようと考えるならばこのくらいは居てくれた方が良い。


「よし、お前。先頭は任せる。お前は最後尾に付け。他の者は全体に指示が出せるよう、列の中央に入るぞ」


 そうは言うが、実は鬼の襲撃を恐れての事であるのは、同じ文官たちも解っている。

 だからこそ、先頭に立つ者も最後尾に立つ者も、自分の家族は主政の居る中程に残して行った。


 町の門が開かれると、その先頭に立つ文官は兵士に依頼し、予備の槍を受け取った。


 ほう、やる気があるな。


 主政はそれを嬉しそうに眺めている。

 いざという時、彼は身を挺して守ってくれる事であろう。


 郷の文官には、出世という概念がほぼ無い。

 心太式(ところてんしき)に、先の者が抜ければ、次が放り込まれる状態で、大体は子が親の後に付く。

 だが今後、彼の待遇は、ほんの少しだけ良い物になるであろう。

 それくらいの配慮も、(たま)には為される。


 先ずは集まった町人の半分ほど、五十人ほどが町を出た。

 そこに、主政たち、文官とその家族が続く。

 はずだった。


 突然、前方で消魂(けたたま)しい悲鳴が上がった。




「溶岩百剣陣っ!」


 術と違い、技はある程度応用が利く。

 勿論、いつも”その辺り”に適当に出している物を、綺麗に並べようと思えばそれなりの集中力が必要になり、場合によっては少し威力が落ちる。

 だが、今回は問題なく目的は達成された。


 坂を下ってくる負気が余り早くは無かったので、出の遅い宗泰の技も、じっくり練って、狙って放つ事が出来た。


 ドドドドドドドッ!!


 地響きを立てながら、溶岩の剣が眼前から坂の上まで、更にその向こうまで街道に沿って突き上がる。

 (あと)で街道の整備が大変だろうが、今、それを気にしている余裕は無い。

 剣が直撃したとこは吹き飛ばされ大穴が空き、分断は出来ているが、消滅させる事は出来ていない。


 その様子を、朱鷺は睨むように見つめていた。


 やはり問題は祓い清め。

 あれが全て、濃厚な負気溜りであるというなら、間違い無く処理しきれない。


「小鬼一万の方が、遙かに楽ね」

「間違い無い。十万でもまだマシだ」


 刻む事で祓える小鬼は、甲種隠密にとっては蠅叩きより(やす)い。


「取り敢えず、分断出来るだけ分断しましょうか」


 背後では避難しようとしていた町人たちが、悲鳴とも叫びとも言えない声を上げているが、朱鷺はチラリとも振り向かない。

 軽やかに駆け出し、ミミズの頭の部分を縦に割った。




 大混乱に陥った町人たちを、その場に並んでいた兵士たちが落ち着かせようと宥めにかかる。


「落ち着いてください。あれは味方です。鬼じゃありません」


 そう言い聞かせながら、心の中では人間業じゃ無いよなぁと、誰しもが思っていた。

 濃厚な負気に相殺され、溶岩の剣はすぐに崩れて消えたが、発せられた熱は離れた場所に立つ兵士たちにも感じられた。

 逆に、あれが鬼の業であるなら、自分たちも町人たちも既に全滅している。


「朝廷の術者が、守ってくださってるんです、安心して……っ」


 必死に語りかける兵士を無視して、町人たちは山津方面へ向かって駆け出した。

 先頭を歩くはずだった文官も、流れに押し退けられて川縁へはじき出され、最早、統率は取れそうに無い。


「何だ今のはっ! 何が起こった、何をやっているんだ!」


 自分を守るはずであった肉の楯が逃げていく。

 それ以前に、何か恐ろしい物が、そう、恐ろしいと言われている鬼が、もうすぐそこに迫っている。

 主政は声を荒げつつ、どうするか判断に迷っていた。


 町人に続いて山津へ逃げるべきか。

 いや、今、表に出るのは自殺行為か。


 二の足を踏む間に、町人たちはどんどんと離れていく。

 憎々しげに歯噛みしつつ、それでも、一刻も早くここを離れなければいけないとの思いは強くあった。


 咄嗟に、町の門を守っていた組の、伍長と思しき若者に掴み掛かるように問い掛けた。


「何だあれは、あれが、あれが鬼なのか!?」

「落ち着いてください。あれは味方です」


 慌てふためく主政とは対照的に、伍長は妙に落ち着いた調子で答えた。


「あれが、味方だと?」

「はい。現在、街道から来る鬼を迎え撃っている所です。ですが、主政様。もう余り時間が無いように見受けられます。どうか早くご避難を」


 掴み掛かった手をゆっくりと離し、街道の北に目を向けた。

 空は白んで来たが、ただの人間である主政には、未だによく見えない。

 黒い何かが蟠っている、そこに人が斬り掛かっているのが、辛うじて判別出来るぐらいだ。


「ああ、そうか。あれが主力か」


 それが何であるかは主政は知らされていない。

 ただ、軍以外の、恐ろしい鬼に対処する為に、控えさせておいた主力が存在すると聞いてはいた。


「しかし、今のは、何だというのだ……。あれを人が為したというのか」


 あんな物を叩き込まれたら、城でも陥落する。

 それどころか、本陣が丸ごと全滅で、戦にも成らない。


「私も先ほど初めて知りました。皇儀の隠密に関わるそうなので、余りお気に為さらないように」


 皇儀の隠密事。

 無理に詮索するなら、あれが敵になりかねない。

 そうなると、暗殺……どころではないだろう。


「皇儀……、(みやこ)とはなんと恐ろしい」


 それは誤解であるが、(いくさ)に参加した事の無い彼からすれば、あれが皇軍の力に思えたのだろう。

 伍長は特に否定も訂正もしない。


「主政様、早く、町人たちの避難を」

「お、ああ、ああ、そうだ、今の内に」


 振り返れば、町人の数はまた少し増えている。

 だが、楯とするには心許ないか。

 ()りとて、ここでもう少し増えるまで待とういう気には成らない、当たり前だ。


「そうだ、お前。お前の組で、避難する町人たちの護衛をするのだ」

「え?」


 初めて伍長が驚きの表情を見せた。


「恐れながら、我々は町の入り口を死守しなければ成りません」

「なに? (わし)の命令が……」


 言い掛けて、止める。

 主政に、兵士に対する命令権は無い。

 軍毅である郷司か、忌々しい兄の指示を貰わなければ動かす事は出来ないのだ。

 そして、郷司からは兵は出せないと既に言われており、兄はどこに居るのかさえ判らない。


「ちぃっ」


 いや、だがしかし、今の自分は”避難に関する全権”を郷司から委任されている。

 この権利を使えば。


 主政は素早く辺りを見回し、広場の真ん中に立ち、兵士たちに整列を促している隊長に目を付けた。


「おいっ! そこの隊長っ!」


 呼んで手招きする。

 そちらへ踏み出す勇気は無い。


 声を掛けられた隊長は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ嫌な顔をするが、即座に取り繕う。


「はいっ、何か?」


 応えて駆け寄りつつ、嫌な予感を覚えていた。


「すまんが、避難する町人の護衛に、何組か借りたい」


 予想通り、無茶な事を言い出した。


「恐れ入りますが、こちらに割ける人手はありません。既に二隊が壊滅しており、町の防衛すら難しい状況です」


 その言葉に、主政は驚愕の表情で応えた。


「なっ!? に、二隊が壊滅、だと?」

「はい」


 逆に隊長は、そんな事すら知らされていなかったのかと驚いた。


「駄目では無いかっ!!」


 まあ、確かに駄目な状態だが、主政に怒鳴られる()われは無い。


「はい。現状、駄目になりそうな所を、辛うじて支えております」


 だから、兵を貸す事は出来ない。


「くう、ならば仕方が無い。一組だけで我慢しよう。こいつらを借りていくぞ」

「は?」


 思わず間抜けな声が出てしまった。

 ふと見れば、指名された伍長も呆れた表情を見せている。


「儂は郷司様より、避難に関する全権を委任されている。これは依頼では無く命令だ。拒否は許さん」


 なんと、そうきたか。

 隊長も、言葉に詰まった。


 避難に関する全権が、何を指すのか明確では無い。

 だからこそ、これを拒否出来るのかどうかが判断出来ない。

 平常時であれば郷司様に確認しますのでと答える所であるが、今はそんな事を言ってはいられない。

 目の前で、既に皇儀の隠密たちが戦っているのだ。


「解りました。主政様。ですが、せめて他の組にしていただきたい」


 幾つかの言葉を飲み込んで、隊長は妥協案を出した。


「何故だ」

「彼は、彼の組は鬼に対して戦果を上げております。町の防衛の為に……」


 言いながら、主政の瞳がキラリと光った事に気が付いた。

 余計な一言を言ってしまったらしい。


「ならばこそっ! 町人の避難には、護衛には打って付けでは無いか!」


 思わず歯噛みしそうになる。

 いや、事実、口は閉じたまま、強く奥歯を噛み締めた。


 町人のでは無く、自分の護衛にしたいのだろう?


 そんな言葉を、隊長は噛み殺した。


「連れて行くぞ」

「……承知致しました」


 伍長は言葉を発しないが、驚きの表情で隊長を見つめてきた。

 何を言わんとするかは、よく解る。


「そういう事だ。すまん。町人たちを無事山津へ届けるのがお前の使命だ。よろしく頼むぞ」

「……はっ! 必ず」


 思えば、先ほどの鬼と戦うに際し、山吹色の隠密は唄太にも下がるようにと言っていた。

 恐らく、いや、間違い無く、唄太でも対処出来ない鬼が現れるのだろう。


 鬼に対する攻撃力があっても、鬼の攻撃に対する耐久力は、他の兵士と変わらない。

 隠密の言う所の「強い鬼には瞬殺される」に、彼も含まれている。

 ならば、いっその事、この青年を町から逃す事が、今後の町の為になるやも知れない。


 半ば無理矢理考えを変えて、隊長は自分を納得させる。


「なるべく早く戻って参ります」


 走って行っても戻っても、今日の午後になる。

 間違い無く、山津からの援軍の方が早く着くだろう。

 だが隊長は笑顔で応えた。


「ああ、待っているぞ」




 集まった町人は、更に増えていた。

 これでは逆に多すぎる。

 隊長の説得に時間が掛かった事に恨みを覚えながら、主政は町民に声を掛ける。


「軍から説明があった。朝廷の術者が鬼と戦っているらしく、先ほどの爆発は、その術者の技だそうだ」


 文官とその家族たち、そして既に集まっていた五十人ほどはそれを見ている。

 爆発と言う言葉に疑問を持った者もいるが、あれが町を守ってくださる術者の技だというなら、恐ろしくはあるが、安心でもある。


「彼らが門前を守っている間に、我々は山津を目指し、安全な所まで避難する。良いなっ!」


 良いも悪いもありはしない。事実、鬼が来ているのなら、そうするしか無い。


「では、出発するぞ」


 主政は今回も、集まった町人の半数ほどに前を歩かせる事にした。




「不本意ではあるが、我が組は町を離れて避難者の護衛に当たる」


 唄太は自分の部下を前に言い放った。

 仲間が命がけで町を守っている時に、自分たちが比較的安全な任務に就く事が後ろめたく、申し訳ない。


「永助、通照は集団の最前列に立ってくれ。元春、久成は最後尾に。俺は主政の横に付かなくちゃ成らんだろうが、何かあればすぐに声を掛けてくれ」

「はっ!」


 だが、部下を死なせずに済みそうだと安心する自分も居る。

 自分の命を()けるのは(やぶさ)かでは無いが、反面、部下を死なせたくないとも思う。


 隊長は、苦しいだろうな。


 指揮する人数が多くなればなる程、責任は重くなる。

 そして、死者を出さない戦いは難しくなっていく。


「山吹さん」


 二人の隠密が黒い何かに斬り掛かっている後ろで、少し距離を取り、様子を窺っていた隠密に声を掛けた。


「ああ、唄太さ……」


 振り返り、応えかけてふと止まる。


 ズビシッ!


 手刀が唄太の額に叩き込まれた。


「だから、それは言わないの」


 そうだ、正体を隠しているらしいのに、名前を呼んではいけなかっただろう。


「すみません」


 謝りながら、槍を差し出す。


「これを、お返しします。俺は避難する町人の護衛に回る事になりましたので」


 山吹は、頭巾の隙間から見える瞼をパチクリと瞬いた。


「ああ、そうなの? まあ、そうか」


 町人の護衛は必要だと山吹は考えた。

 余り人数を割けない状況であるなら、唄太は適任かも知れない。


「なら、それは持って行って」


 それがあるからこそ、町人を守る能力があると判断されたのだろうから。


「でも」

「大丈夫。正直言って、私ももう役立たずだから」


 言って、視線を前に送る。

 二人の隠密が健闘している、らしいが、唄太にはよく判らない。

 ただ、あの戦いには、山吹でも参加出来ないのだろう。

 見た目からはまったく想像出来ないが、非常に高度な、危険な戦いに違いない。


「あの子によろしく」


 振り返らずに、山吹はそう言った。


「はい」


 答えて、唄太は確信を持った。

 やはり、小鞠もそうなのだ。




「遅いぞ、馬鹿者っ!」


 戻った唄太を主政の罵声が出迎えた。

 既に半分以上が出立しており、彼にとっては後ろの楯が薄くなる心配が出てきていた。


 早くもうんざりしながら、唄太は素直に謝罪して見せた。


「申し訳ありません。すぐにお供致します」


 永助、通照の姿はもう見えない。

 残った元春、久成の二人に目配せして、唄太は主政たち文官の列に加わった。

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