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電車忍者

作者: Jamus1234

やあ。よろしく。君たちは僕のことを知らないだろうけど、僕の名前は太郎だ。いや、次郎でも、海斗でも何でもいい。僕は今、人生で12回目の春を迎えている。まあ、そんなかっこつけたことを言わなくてもいいんだけど、要は僕は11才です。僕は、毎週土曜日午後の二時に学校が終わった後歩いて十分の家に帰る。そこで着替えて、お母さんと一時間ほど電車に揺られて、遠くの町にいる父に会いに行く。銀色の車体に緑と黄緑の線が入った普通の急行だ。この時間、なぜかなかなか座れないので壁にもたれかかり、窓の外を見ている。いつもの町の風景がいつもどおり風のような速さで流れていき、電車はリズムを刻んで何本もの電信柱の横を通り過ぎる。


あっ。あそこでなにかが閃いた。動いている、いや、走っている。僕は僕にしか見えない忍者を見ている!オレンジ色の服を着た男の忍者だ。疾風のような速さで屋根を次から次へと飛び移っている。あっ、こっちに近づいてくるぞ。だんだん家の屋根から巨大倉庫の屋根、また家の屋根、屋根..と近づいてくる。一瞬見えなくなった。ぱっ。電車に沿って走る忍者がとうとう僕の隣の電車の高架の上に飛び移った。すさまじい速さで走る。電信柱を飛び越えて。僕と競争しているつもりか。電車をなめるんじゃないぞ。と思っていると、オレンジの帯を締めてオレンジの装束に身を包んだ忍者は大きく飛翔した。とその瞬間、電車はトンネルに入った。僕はトンネルの何メートルか上のほうを走る彼を想像する。おっ、電車がトンネルを出た。忍者も視界に戻ってきた。疲れた様子はちらりとも見せず、僕に並行して走る。彼は実際、全くつかれていないのだろう。


オレンジの忍者をしばらく見ていると、黒っぽい、ちょっと青っぽい服を着た敵の忍者たちが家の影から飛び出し、正面から高架を走る彼に向い走って行った。どうなる。いや、きっとやつのことだから何とか勝つに違いない。どんどん距離が縮んで行く。お、お、お。ぶつかるかと思いきや、紫の敵は彼と闘いながら並行して走っている。乱闘だ。一人倒した。二人倒した。残るは一人だ。おい!手裏剣は汚いぞ。でも彼はうまくよけて敵を倒そうとすきを窺っている。ん。何をやってるんだ、彼。変な踊りを始めたぞ。敵も思わず横を見て彼の様子をうかがう。その間も電車は進む。鈍い音がして、紫の忍者が消えた!なるほど、彼に気を取られていたすきに電信柱にぶつかってしまったのだ。そういうことだったのか。オレンジの忍者、やるな。


そんなことを思っているうちに、電車はスピードを徐々に落とし始めた。おっ。もうすぐ父に会えるぞ。お母さんもスマホをしまい降りる準備を始めた。オレンジの忍者が山の向こうに向かって遠ざかってゆく。ありがとう。じゃあな、電車忍者。

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