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25-15.三大勢力の代表、ロングヒルに再集結(後編)

<前回のあらすじ>

列島横断エコレースについて、直接確認せねば埒が明かん、と三大勢力の代表がロングヒルに押しかけてくることになりました。僕からすれば会えて嬉しい話ですけど、距離的にも新幹線に乗って2時間ではい到着というわけにはいきませんからね。ほんと、ユリウス様の言われる通り、直通通信網(ホットライン)の開設が待ち遠しいです。(アキ視点)

はて? なんでこんなに諦めの表情が浮かぶのだろう?


「えっと、他に何か期待している方法ってありましたっけ?」


僕の問いに、レイゼン様が答えてくれた。


「リア殿から話は聞いているのだが、実際に行ったアキの口からも聞いておきたいと思ってな。飛行中の竜族との心話はどれくらい駄目なんだ? 心話でアキが若竜の視界のイメージを認識できれば、どちらに飛ぶべきか指示もできたりしないか?」


 あー。


リア姉に視線を向けると、一応説明はしたよ、って顔をされた。なるほど。まぁ、心話に縁がない方々への説明となると、なかなかピンとこない部分があるのかもしれない。


「そうですね、まず竜の側が心の内に意識を向けて、触れてくる僕を認識する時点で、外界への認識がゼロになってしまうんですね。五感全部を失ったまま、竜の速度で大空とはいえ、飛行を続けるとなると、かなり怖い状況のようです。前方に何もいない状態でも最低限のやり取りをしてすぐ心話を打ち切られました。慣れの問題はあるとは思いますけど、試した若雄竜の三柱、炎竜、氷竜、鋼竜の皆さんは、ソレを慣れてまでやりたいと考えることはないでしょう」


目隠しをして全力疾走をするような簡単な話じゃないんだよね。目隠ししているだけならまだ聴覚や肌感、重力、それに着地するたびに全身に伝わる衝撃といった様々な感覚の補助がまだ期待できるから。でも、心話は意識を心の内側に向ける行為だからね。五感全部をカットすると思った方がいい。というか、考えてみたら、それで僕との心話に応えてくれたのは今考えてみると、かなりの無茶を強いていた気がする。


 んー。


まぁ、空だからそのまま飛んでも数秒後程度なら安全という意識があるから、地上を走るよりはマシ、かもしれない。とはいえ、できるだけ手短に済ませたいと思うのは当然だろう。


 そうだ。


「お爺ちゃん、空を飛んでる最中に心話をするのって、やれと言われたらどう?」


僕の問いに、お爺ちゃんは顔を顰めた。


「そんな危ない真似はできん。相手が触れてきてもどこか安全なところに降りてからでなければ、心話をするなど無茶じゃよ。心話をするには周囲の安全確保、それなしには無理じゃ」


 まぁ、そうだろうね。


「それだと、妖精さん達って、召喚に応える可能性があるお仕事の時って、ずっといざ喚ばれた時にも安全を確保できるような場所で待機してる感じ?」


「その通りじゃ。だから、そうそう安請け合いはできん」


以前、緊急時対応とか言って対応して貰った時、だいぶ負担を強いていたんだね。あまりぽんぽん気軽に頼まないよう気を付けよう。





すると、ユリウス様から、お爺ちゃんへの質問が飛んだ。


「翁に聞きたい。妖精族が使うという伝話という技法であれば、距離に関係なく相手の心に言葉を届けることができると聞いた。それを今回のレースに用いることはできないだろうか?」


 ほぉ。


「死の大地」に対する浄化作戦遂行時には、大勢の竜達が飛び交うことになるし、作戦範囲が広大過ぎて、竜達の会話手段である思念波のような視認できる距離の相手にしか使えない技法では足りないんだよね。その点、妖精族の用いる伝話は、相手との経路(パス)を利用して、相手の心に直接言葉を送り届けることができる。まるで空中管制機のように、多人数が入り乱れるような空中戦においても、妖精さん達の指揮官は的確に指示を飛ばせるそうで、それは彼我の位置関係に関係なく、言葉を届けられる伝話があればこそ、という話だった。


 うん、うん。確かに期待できそうだ。


「期待しておるようじゃが、春までの期間では到底、時間が足りんじゃろうて。互いのことをよく知り合わなくては経路(パス)の確立なんぞ期待できんからのぉ。ある程度の太さと安定がなければ、声は届かんよ」


 ん。


「お爺ちゃん、シャーリス様は見える範囲のあまり馴染みのない人たち全員に伝話で声を届ける公開演技(デモンストレーション)をしてくれていたけど?」


「それは見える範囲にいるからできたんじゃよ。見えぬ位置にいる相手に声を届けるには、相手との経路(パス)が十分に確保されておらねば話にならん」


 なるほど。


というか、お爺ちゃん、やっぱり不特定多数相手の伝話とか使う立場の人だったんだね。どういう制限があるのかとか当事者みたいな答え方しているし。


「そうか。では、今回は心話、伝話は使わぬ前提とせねばならんか」


ユリウス様も結構残念そうだ。


「そうですね。一応折衷案としては、若竜が地上に降りてから心話をするというのがありますけど、僕から心話をするならまだしも、逆に若竜からというのは難度が高いでしょう。完全無色透明の魔力を持つリア姉との心話を成功させたのがミア姉一人だけでしたから」


まず、完全無色透明の魔力を持つ僕やリア姉のことを認識するというのが無茶らしいんだよね。目の前で竜眼で凝視してやっと僅かな差異を認識できなくもないというくらい難度が高くて、雲取様も難儀していたくらいだからね。


「その場合、どの竜が地上に降りて、心話が可能なのかアキに伝える手段が必要だ」


 それが難題。


の「竜の飛行速度はまちまち、コース取りが安定しないとなると、地上側に道案内役、いざという時に備えた方々を配置するのは、あまり筋の良い策とは言えないでしょう」


「地上の広い敷地に何か描いて目印とするのはどうだ?」


 ん。


「そうですね、第二演習場程度の広さだと、高空から眺めたら点にしか見えないので、視覚的な印を設けるのは意味が薄いと思います。あ、そうだ、お爺ちゃん。妖精さん達が召喚されると魔力属性が僕達と同じ完全無色透明になってしまう事の問題を回避するために、他の魔力属性を真似るという話が以前あったよね。あれ、どうなったの?」


「あれは難度が高く実用性がないと賢者は話しておった」


 ほぉ。


「実用性がないってどういうこと?」


「魔力を真似るということは、近い属性に真似るほど楽なんじゃよ。その点、完全無色透明という魔力はどの属性からも遠い。故に術者の力量にもよるが、お任せで周囲に溶け込めるような簡便さは無理で、術式の制御にかなり集中せねばならんらしい」


 んー?


「その難しさってどういう意味で難しいとかもう少し具体的に聞いたりしてない?」


「聞いておるぞ。強い側に寄る方向で状況が変化してしまう、つまり、妖精の纏う完全無色透明の魔力に合わせて、周囲の側の魔力属性が薄れていってしまうそうじゃ。それを逆転させるの酷く手間がかかると話しておった」


なるほど。


「周辺に溶け込むというのならそれで問題ないけど、もともとの発端が魔力感知できないのは問題が大きいから、何らかの魔力を術式で纏わせようって話だったものね。あー、それだと今も魔力感知するには、属性を強く付与した宝珠入りの鞄を背負って貰うことになる、と」


「うむ、そういうことじゃ」


ニコラスさんが残念そうに口を開いた。


「今の話からすると、アキやリア殿の魔力を用いて魔力的に目立つ印を用意するというのは困難ということか」


「そうなりますね」


 んー。


「リア姉、街エルフのほうから船舶用宝珠をそれぞれに貸し出すってのはどう?」


僕は良いアイデアと思ったんだけど、これには渋い顔をされた。


「そもそもそう余ってるものじゃない。それをするくらいなら、まだ中継予定地点に天空竜の誰かに当日、地上で寛いでいて貰った方が目印になるよ。成竜に三柱お願いすれば、若竜よりは目立つから」


リア姉の言葉にユリウス様が難色を示した。


「成竜というと白岩様のような方に頼むということか? だが、連邦領への白岩様の訪問では対応に難儀したと聞いているぞ」


 え?


「そうなんです?」


「白岩様が降り立った場所の周囲からは市民を避難させていた。それもやってくる時間をあらかじめ聞いていて、だ。今回のレースとなると丸一日は退避させる必要が出てくるだろう。はっきり言えば厳しい」


レイゼン様がそう断言した。


 そっかー。


確かに洗礼の儀でも、選び抜かれた鬼族の皆さんが時間限定だから対面できていたけど、終わったらすぐ解散してたものね。なるほど。


「となると、リア姉、連絡が取れる魔導具を付けてもらうというのは?」


「数が多過ぎて無理。道に迷うのが問題なんだから、地理に詳しい若竜、雲取様や雌竜の方々にお願いして誘導役として速度を合わせて飛んで貰えばいいんじゃないか?」


 ふむ。


マラソンや駅伝における先導役の白バイみたいな感じか。まぁ、それはそれで悪く……悪い気がする。


「リア姉、それは一応、次善の策とするけど、多分、レース参加の若竜達の賛同は得られないよ」


「あー。自分たちより目立つ先導役がいるなんて嫌か」


「そう。自分たちが目立つ晴れの舞台なのに、誰もが知っているような、同期の中で抜きんでているような竜達が先導してたら見比べられちゃうからね。そんな話になったら、参加する竜が激減しかねない。駄目だと思う」


「なら、残るは一つ」


うん、そういうこと。


「春までの間に、レースに参加する竜達に飛行ルートを覚えてもらう、だね」


僕がそう総括すると、万策尽きたという感じで代表の三人は深い溜息をつくことになった。まぁ、ルートを覚えるまでの間、想定コースを頻繁に竜が飛ぶことになるからね。特に周囲に竜の縄張りが少ない小鬼帝国の帝都に頻繁に竜が飛来するというのは、ユリウス様は難色を示されている感じだった。

いいね、ありがとうございます。やる気がチャージされました。


はい、というわけでいろいろと検討してみましたが、やはり、地の種族側で何とか対策を取るというのは無理っぽく、レースに参加する若竜達に地図を頭に叩き込んでもらうしかないだろう、ということになりました。では、はい、頑張りましょう、で終わればいいんですけどね。


次回の更新は2025年5月21日(水)の21:10です。

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