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25-5.ロングヒル王家とエリーと銀竜と(前編)

<前回のあらすじ>

久しぶりに鬼族の武、重機レベルのソレを堪能することになりました。同時に、魔法盾シールドの凄さも再認識。あと、それを揺らがせたケイティさんの炎の槍(ファイアランス)が高等魔術であることも意識することになりました。で、そんな鬼の武を完全に防ぎきる魔法盾シールドを軽く両断する、僕の幻影の竜爪は用取り扱い注意だよ、と。ただ、だからこそ練度を高めておこうと言ってくれたのは嬉しかったです。(アキ視点)

セイケン達とのお話も終わり、連邦大使館から戻ってきたところ、エリーから歓談の申し出が舞い込んできた。


 おや。


小型召喚した老竜の福慈様が空前面の雲を竜の吐息(ドラゴンブレス)でかき消した件で、ロングヒル王家は対応に奔走してるとは聞いてたけど、一段落着いたのかな?


「僕は構いませんけど、えっと、イズレンディアさんも同席、ですか。珍しいですね」


そう。ロングヒル王家の王女にして魔導師としては僕の姉弟子でもあるエリーと、僕を庇護下に置いてくれている天空竜の雲取様、その縄張りに住む森エルフ達から、ロングヒルに派遣されてきた護衛の皆さんの代表であるイズレンディアさんは、同席することは合っても二人揃って、というパターンはこれまでに無かった。


「はい。銀竜に関連して今後の話をしたい、とのことです」


ケイティさんは、ある程度、どういう意図なのか推測できているようだね。まぁ、消去法でいけば、だいたい想像はつく。


「では、準備をお願いします。予定をねじ込んできたくらいだから、それなりに急ぎなんでしょう?」


「はい。緊急というほどではないにせよ、できるだけ優先度は高いと判断して、場を設けて欲しいと明言されています」


空中に浮かぶ通信文にさらさらと目を通してケイティさんが要約してくれた。うん、ほんと便利だよね。僕は魔導具に触ると過負荷で壊しちゃうから利用できないけれど。


「では、セッティングをお願いします。内容からすると、他の人は誘う必要はないですよね?」


他の人、つまり僕の家族であったり、長老のヤスケさんだったり、師匠だったり、ということなんだけど。


「はい。先方からも、他の方々は結果だけ知れば十分、との見解も添えられていました」


 おや。


何とも手回しの良いことで。なら問題なし、ということで午後に歓談の場を設けて貰うことにした。ふぅ。





今日は外は寒いので、居間でお話をすることに。気温や風を制御してくれる魔導具もあるけど、いきなり言われてセッティングするというのは大変なので、まぁ妥当な判断だ。これが鬼族も同席とか言うならもう外の庭でお話するか、連邦大使館のように鬼族の背丈に合わせた巨大な建物に出向く以外に選択肢は無くなるんだけどね。


ほどなくして、エリーとイズレンディアさんが伴ってやってきた。


「急かしちゃって悪かったわね」


「調整できる範囲だったから問題ないよ。イズレンディアさんも同行お疲れ様です。珍しい組み合わせですよね? 話題は銀竜絡み?」


そう問うと、その通りと頷いてくれた。


「エリザベス殿から、アキの銀竜が与える影響について、竜神の巫女の仕事に支障がでないか考察に付き合ってくれ、と申し出があったのだ」


アイリーンさんが紅茶とミニケーキの並んだケーキスタンドを並べてくれた。


 おー。


かわいらしい一口サイズのミニケーキが三段に並んでいて、これは何とも嬉しい。


「例の雲を消し飛ばす騒ぎがあったでしょ。それで対応にこれまで手を取られてたのよね。ただ、先の事を考えるとイズレンディア殿に詳しく話を伺っておきたいと思ったのよね」


なんて感じに、エリーが饒舌に今回の歓談に至った経緯を説明してくれた。イズレンディアさんにも状況の把握をしておいて貰いたいってとこなんだろうね。


エリーが整理して語ってくれたのは、福慈様が見渡す限りの雲を全て、竜の吐息(ドラゴンブレス)で吹き飛ばした件は今回とは直接的な関わりはない、ってこと。なら何かというと、やっぱり、話の主題は銀竜だった。ただの幻影術式で僕が銀色の竜の姿を出現させてそれを演じてみせていた筈が、自律して動く銀竜という意識が発生し、幻影の筈の銀竜が地面に足跡を残すなど、物理的にも影響を与えるに至り、単なる幻影術式の範疇から大きく逸脱していることが明らかになった。


そして、銀竜の在り方は、心の中に精霊を住まわせる森エルフの精霊使いのそれに酷似しているとして、熟練の精霊使いであるイズレンディアさんに僕が師事をするに至った訳だね。


「それで、似て非なるモノである、森エルフ精霊の関係と、僕と銀竜の関係ってところはいいとして、エリーは何が気になるの?」


僕の問いにエリーは、同じだと仮定した場合の僕の今後の身の振り方がどうなのか、ある程度見通しを得ておきたい、と話してくれた。


「見通し?」


「そう。イズレンディア殿から伺った話では、自身の精霊を見出した森エルフは、他の人との交流を避けて森の奥で一人暮らして、己の精霊と向き合う静かな生活をするとのことだわ。ならアキはどうか。銀竜との関係が、精霊とのソレと同じなら、アキもまた、俗世から離れて暫く一人で静かに暮らして、心のうちの銀竜と向き合う生活をしなければいけないかもしれないでしょう?」


 あー。


「うん、言いたいことはわかるよ。今みたいに暮らせるのか、離れてひっそり暮らすのか、結構、影響大きいものね」


そう告げると、そうなのよ、と力説してきた。


「アキが竜神の巫女として、諸勢力を束ねる要としてロングヒルの地にいるからこそ、ロングヒルは多様な種族が暮らす先進的な国として認識されるに至っているわ。でも、そうなってからまだ日が浅い。今、アキが抜けると、リア様が同じく竜神の巫女としてお仕事はしていただけてはいるけれど、リア様も認められているように、到底、アキがいる時と同じという訳にはいかないと思うの」


 まぁ、うん、そうだろうね。


リア姉は、僕と同じように魔力共鳴によって魔力総量が激増していて、竜族との対面をしてもさほど負担はなく対応はできる。


「リア姉、天空竜が苦手だものね。彼らとの相手をして心が安らぐなんて、そんな意識は到底持てないとか断言してるし」


残念だよね。ロングヒルにいらっしゃる竜族は皆さん、紳士淑女といったところで、大変好感が持てる方々なのに。そりゃ、攻撃ヘリ並みの巨体だから威圧感は半端ないけどね。それでも、身体に沿わせた尻尾の上に首を乗せて、すぐ動けない会話モードですよ、怖くないですよ、と気遣いしてくれる姿勢はほんと嬉しいとこだ。彼らの目がまたね、カワイイんだけどなぁ。


ケーキをぽんと口に放り込んで、美味しいくいただき、紅茶を一口。ふぅ、やっぱり美味しい。


イズレンディアさんもケーキを食してて、その上質な味わいを堪能してる。森エルフというと、殊更、神秘的な存在と捉えて飲食などの好みも偏ってるようなイメージを持つ人もいるけど、同じ森エルフであるケイティさんを見てもわかるように、食事にそうした偏りはないからね。むしろ、何でも食べる感が強い。好き嫌いなんて言ってては森林活動なんてやってられないものね。


 さて。


「僕はイズレンディアさんからは、特に他人との接触を控えてとか、静かに向き合う時間を増やした、とは言われてませんけれど、その辺りどうなんでしょう?」


言われてみれば気になるところ。


僕の問いに、イズレンディアさんは指導方法の違いについて説明してくれた。


「それは、アキの中の銀竜の在り方と、精霊のそれは似て非なるモノだからだ。精霊は自身でその在り方を育んでいく必要がありその作業はとても繊細なモノだ。精霊使いとなる本人も対話を通じて成長を促していくことになるが、どう育つのかは精霊任せと言える。あまり口を挟んでは成長が歪んでしまう。だからと言って放置していてはやはり歪んでしまう」


 ん。


「そこが銀竜は違うと」


「そうだ。アキの銀竜は、そもそも幻影術式という手順を踏むことで、外にその姿を現すことができる。また、心話を通じて他の竜との交流すらできる。そして最初から銀竜という存在として方向性は確定していて、白竜様という頼れる導き手も得られた。心話を通じて、竜としての在り方の多くを学び、今もそれを自らの血肉としようと取り組んでいるのだろう?」


 うん。


ちょっと心のうちに意識を向けてみるけど、相変わらず、銀竜は一気に得た白竜さんの竜としての体験、記憶の数々を自身の経験として取り込もうと向き合っていて微睡んでいるような状態だ。


「はい。白竜さんが竜族のイロハを全部教えてくれると言っているのでほんと助かっています」


その通り、と頷いてくれた。


「本来は自分だけで取り組むべきところを、天空竜という完全に成立している存在を手本として、自身の在り方を定義できる。これは銀竜の在り方を精霊のそれより遥かに早く確定、安定させるだろう。そして確立して安定してしまえば、俗世を離れて静かに暮らす必要性も薄れるのだ」


 なるほど。


その言葉を聞いて、エリーはそれならば、と問い掛けてくた。


「それであれば、アキの暮らし方、竜神の巫女としての仕事に支障はなさそうですね」


「断言はできないが、当面はそう考えていいだろう。だが、アキ。森エルフにとっての精霊と違い、アキの銀竜は竜族としての在り方で確定する。そこは理解せなばならないぞ」


 ん?


「そう思ってましたけれど、ソレで何か懸念するような事が出るんですか?」


敢えて念押しする必要があるとも思えないのだけど。


「精霊は主である森エルフのために、それを第一に考え行動してくれる。だが、銀竜はアキの心の中に住まう事からアキを尊重はするだろう。だが、第一に考えるとは限らないということだ」


 うん? うん。


なんだろう、なんか凄く哲学的な物言いだ。それが何を意味するのかもう少し深く伺っていくことにしよう。

いいね、ありがとうございます。やる気がチャージされました。


はい、そんな訳で、ロングヒル王家としては、竜神の巫女アキがいてくれないとまぁ困るわけです。姉リアも代行としてそれなりに頑張ってはいるものの、やはり本人も認めているようにかなりの力不足ですからね。アキみたいに竜とお話するのが大好き、気が休まるとか言えませんし。

そして、銀竜ですけど、元々の精霊と違い、速やかに安定した状態に達する事が出来そうです。が、それは利点ばかりじゃないんだよ、という話のようですね。次パートからそこに触れていきます。


次回の更新は2025年4月2日(水)の21:10です。

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