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第二十四章の施設、道具、魔術

今回は、二十四章でいろいろと道具、魔術が登場したので整理してみました。

◆施設、機材、道具

反転鏡(リバーサルミラー)

二対の鏡を90度に組み合わせた立体的な鏡である。鏡像を更に鏡に映すことで、左右反転を打ち消してくれる優れものだが、鏡面をガラスの裏面ではなく表面側に作る必要があったり、立体的に組み合わせるのでやたらとかさばる構造なのが玉に瑕といったところか。ただし、これにより他者が観た自分を正確に認識できるようになる。アキのそれは、高透過(ピュアクリア)ミラーでもあり、色合いの再現も完璧だったりする。しかも若竜の全身を映せる巨大サイズで一切歪みなし。もはや神器とか呼ばれる品だ。

人の身体は左右対称といいつつ、実際にはかなり左右で印象が違って見えたりするので、鏡面に映る姿と、左右反転を打ち消した姿では印象が大きく異なるのも当然なのだ。

そして、極めて高品質で色合い再現も正しいこの鏡に、己の全身を映して認識したことで、伏竜の魔力は劇的な変化を迎えることになった。これまでは全身を映すということ事態が困難、湖面に映すくらいしかないものの、完全平面とは言えず、色合いも違い、空の天候や明るさにも影響がでる中での自己認識だった。それらが全てクリアされたのだから、伏竜の自己認識の精度は各段に良くなったと言えるだろう。なお、伏竜の上昇具合を見て、皆も自分達も似たような恩恵がでないか、と試してみたが他の種族にはそこまでの上昇効果は確認できなかった。竜のこれまでがあまりに制限付きな状態だったから、大きく伸びたように感じた、というだけの話なのだろう。



◆魔術、技術



【召喚体の維持コスト軽減とスタンドアロン動作の両立】

高機能な召喚体、同期率を極端に下げることで翁は本体と召喚体がそれぞれ個別に動くことができるが、この動作は翁に用いているコスト度外視の召喚体だからこそ可能な高機能である。通常の召喚で妖精女王シャーリスや賢者などで用いている召喚体では、この機能は実現できず同期率を下げると召喚体の動作は停止してしまう。妖精であればまるで碌分の一スケールの人形といった感じになってしまうのだ。24章で行っている改良は、翁に用いている召喚体の高コストを、最低でも通常の妖精を召喚する程度に抑えよう、できればもっと低減したい、という意欲的な挑戦である。


【変身体と自身の心の共有コスト】

鬼族の大人なら問題ない、とか言ってるように、二つの身体を一つの意識でカバーしようというのに何も負担がない訳がないのでした。まぁ子供なら駄目だが大人なら問題ないという、トウセイの言う感覚は当然ですが鬼族視点。きっと地の種族だと負担に耐えられないでしょう。一部の高位魔導師が何とかできる可能性が出てくる程度かもしれない。なので、この共有コスト軽減はかなり重要なのです。広く普及させるには皆が使える容易さ、負担の軽さ、安定性がないと駄目ですから。


樹木の精霊(ドライアド)系の召喚は厳禁】

根を張っている台地込みでの召喚でなければ、どれだけの大樹だろうと、細い根は自重で折れて倒壊してしまうだろう。本作においてはまだ出てきていないが、もし動物のように動き回れる植物系モンスターの類が出てきたとすれば、本編でも語られているように、それは植物のように見えるだけの動物という扱いになる。また、本編でも語られているように、連樹の神様は山全体が繋がることによる超並列によって実現されている存在なので、連樹一本なら単なる樹木の精霊(ドライアド)だが、連樹の神様を召喚ということになれば、山全体の連樹を全部纏めて召喚ということになる。当然、アキやリアですら、まったく必要魔力量の供給はできないに違いない。それから世界樹。アレも完全に別格であり、樹木の精霊(ドライアド)系というが、普通の樹木とアレを同じカテゴリーにするというのは随分と乱暴な話である。何せ、世界の外に根を張るという存在なのだ。その在り方からして、通常の生き物からは結構逸脱している。なので、アレを召喚なんぞした日には、当然ながらまったく必要魔力量の供給はできないだろう。

なお、ソフィアたちが懸念している、召喚術式自体は成功したが魔力が足りないので、不足分を召喚者から奪って補う、というのはあくまでも仮説である。これまでにそんな惨事が起きた記録はないのだ。まぁ、失敗事例となるとそもそも記録に残さないことも多いので、それが起きてないとは言えないのだが。


【伝話】

経路(パス)を通じて声を届けるという妖精族特有の技である。アキは翁から教えて貰い使えるようになったと思っていたが、実はアキのソレは似て非なるものだった。経路(パス)を使ってないのだ。声に意識を乗せて、音に+αの性質を付与するという、どちらかというと常闇の術式のような世界の(ことわり)を改変する技法と化している。

それと、シャーリスも実際に見せていたが、多数に対して同時に伝話を用いて声を届ける場合、送り届ける相手との経路(パス)の太さに応じて、乗せる声の大きさを変えないと酷いことになるため、多数への声を送り届けるために調整を自動で行う魔法陣なんてものを妖精族はわざわざ開発していたりする。これは、多数が入り混じって行われる妖精族の空中戦において、管制官が多数の味方の指揮を執り行うためにどうしても必要となって編み出されたのであろう。戦場において一対一でしか心話ができません、では不自由過ぎるからだ。そして魔力の出力調整がまったく不可能なアキ、リアについては本来の伝話については、試すのは厳禁とされた。これは日本あちらにいるミアに対して試みたりすると、超出力の声が心に叩き込まれる惨事になると予想されるためだ。碌な事にはならないので禁止して正解である。


【V字編隊飛行の難度】

実は渡り鳥が前の鳥が羽ばたいた時に生じる翼端渦、それに上手く乗る斜め後方位置に陣取ることで、飛行エネルギーの節約をしている話だが、渡り鳥に並行で飛びながらその羽ばたきを観測した記録からわかったことは、それぞれの羽ばたきのタイミングまで上手く合わせないと飛行効率が落ちると言う事、そして鳥たちは見事に飛行速度に応じた距離の調整や羽ばたきの同期を行っていることがわかった。では、竜族の場合はどうかといえば、彼らは飛行する時に翼を羽ばたかせることはない。翼を広げて揚力は発生させるが、移動する力は、自らにかかる重力を偏向することによって前方に落ちることで生み出しているのだ。なので、鳥のように羽ばたきのタイミングを調整する必要はない。

た・だ・し、飛行速度がずっと早いので、高速で飛行しつつ互いの距離はかなり詰める、という曲芸飛行のような真似をずっと強いられることにもなる。まして、自動操縦オートパイロットみたいな能力はないのだ。なので、何気に難度が高い上に長時間続けるのも事故の元である。

それと似た事を帆船で行うことも原理的には不可能ではないが、船に急ブレーキ機能はないので、位置調整の難度が更に酷くなる。そのため、船舶同士の帆の制御を艦隊全体で完全に同期させて、一つの個体として全てがタイムラグなしで動くようなことでもしないと、とてもじゃないが実用するのは無理だろう。


【心話の欠点】

今回のV字編隊飛行において、飛行中の三柱に対して心話を使って連絡を取ってみたところ、最小限のやり取りだけしてすぐ打ち切る流れとなった。これは心話が相手の心との触れ合いに集中する関係で意識を全て自身の内に向けてしまう事から生じる欠点が露骨に表れた事例といえる。前を飛ぶ竜と距離や速度、位置関係を気にしながら飛んでいるところに、目隠し飛行しろ、と言われれば、それがどれだけ危険な行為なのかは、連絡に応じた三柱もすぐ理解していた。これまでの多くの心話で、竜達がすぐ応じていたのは、竜が殆どの時間を飛行をせず、巣で休むなど地上にいて、心話をしても問題が無い状態にあったから、という話であった。かくして、飛行中の竜同士の連絡、それも視界外との連絡となると、竜達の使う思念波では全然ダメで、これはもう妖精達が使う伝話を使うしかないな、という結論にもなったのだった。

なお、伝話は妖精族同士では普段使いしているが、彼らは全員が高位魔導師級の実力を持つというかなり平均から逸脱した種族である点は要注意。アキも何度も指摘しているように各種族の常識は他の種族の非常識となりうるのだ。

では、伝話は竜族にとってどの程度の難度となるか。これは今後の章で明らかになってくるだろう。心話の特性を考えれば大変わかりやすい。簡単に言えば無茶振りである。

それと、言葉で説明するより心話のほうが楽でいいからと、参謀本部の面々にさぁ、僕と心話をしましょう、とアキが提案、皆がだいぶ躊躇していたのは理由がある。彼らとて一流と認める魔導師のケイティですら、かなり慎重な手順と安全面を考慮した魔法陣を用意し、さらに心の距離の調整という肝心の部分は全部アキに丸投げ、という酷い方法で心話を行っていると彼らも知っているからだ。しかも馴染みが無い心話である。かなりの無茶振りだった。


【幻影術式の現実浸食】

ケイティが説明したように、あまりに高度な幻影は現実すら浸食し、幻影が現実に影響を及ぼすような現象が起きてしまう。今回の例で言えば、幻影の銀竜が着陸した際の足跡で地面に残り、振るった竜爪が地面を抉り消したことなどがこれに該当する。ちなみに、この現実浸食現象だが、実は実際に確認された事例はない。理論的にはそうした事も起きるだろうと言われているといった程度である。あまりに真実に迫った幻影を相手にすると、それに襲われた事で生物がまるで本当に怪我をしたように傷ついてしまう、ということは起きているが、これは幻影が精神に及ぼした影響によって、幻影→精神→身体、と影響が連鎖して身体が傷ついた、という話だろう。そして今回の銀竜は、幻影の銀竜→地面、と間に精神を介さない形での現実浸食現象が起きた。そんなわけで、アキの使う幻影術式は、この時点をもって禁術扱いされることが決まったのである。

まぁ、真似をしろと言われてできる魔導師がこの世界にいるかといえば、過去の歴史を紐解いても辿り着けた存在はいないので厳しいところだろう。妖精族の賢者や竜族ならワンチャンあるかもしれない。それとアキの幻影が全てこの現実浸食現象を起こすかどうかはまだ今後の検証課題と言える。今のところ、幻影の銀竜は完全にアウトだ。


【アキの古典魔術】

古典魔術とは結果を思い描いて術式を発動、そして術者の思い描いた結果に合わせて現実を塗り替える、というとてもシンプルなものだ。師匠のソフィアが言う通り、実はシンプルだけれど、魔術の神髄はこれ、といっても過言ではない一事が万事、何でもできる技法でもある。ただし、咄嗟の発動がまず無理であるとか、実用面では問題が多く、術名をキーワードとして発動できる現代魔術の方が広く普及しているのは当然と言えるだろう。何より現代魔術は魔法陣と組み合わせることでかなり精緻で複雑な制御ができる。その点、古典魔術はそうした緻密さや、少ない魔力で大きな結果を得る触媒のような魔導理論における工夫の入る余地がない。賢者やソフィアも語っていたように、アキが発動した古典魔術は、確かに結果を叩き出す。だが、それは現代魔術視点で言えば、多様な魔術が複雑に混在して入り混じった闇鍋のような発動であり、銀竜の幻影術式も、幻影とか言っているが、その維持に経路(パス)から魔力を常時提供して行うなど召喚術式のような現象が起きており、また現実を浸食することからやはり召喚術式のような実体を出現させる要素もある程度含まれていそうだ。問題はアキはそうした内訳は何一つ理解していないこと。なので結果は出てる。けれどどう実現されているかは説明できないという何とも困った状況に陥っているのだった。今後、研究組がこの面倒臭い状況の整理、分析もしていくことになるだろう。


【銀竜の幻影術式】

召喚者と出現対象を経路(パス)で繋ぎ、魔力をそれを経由して供給することで維持するという一般的な幻影術式からすると、かなり異端な実現方法となっている。召喚術式の亜種と言ったほうが近いのではないか、とすら思える有様だ。ただ、召喚術式と違い、銀竜の姿を思い描き出現させているのはアキであり、召喚対象から情報を引っ張ってきて術式が自動で銀竜を形成しているのではない。なので、召喚術式とも違うといえば違う。これが悩ましくも面白いところだ。

賢者とソフィアが気付いたように、これは経路(パス)を利用した数少ない術式の別パターンであり、経路(パス)を用いる術式は世界間すら超えるのだ。ならば、経路(パス)やそれに絡んだ魔術への理解を深めることは次元門構築においても大いに役立つことだろう。まぁ、研究組が目の色を変えて喜ぶわけである。

そして、必要に迫られて、24章の中でも術式の強化が行われることになった。そう、銀竜への五感付与である。五感を備えて独自の意識を持って自由に動き回る銀竜、しかも現実世界に影響も及ぼすとなると、創造術式と何が違うんだ、と思うところもあるだろう。だが、創造術式は本来、非生物しか創り出せない制限がある。銀竜のソレは創造術式の制約を超えていると思えなくもない。ただ、なら、召喚体と同じかと言えばそうではない。きっと銀竜の手足を傷つけても血は流れないだろう。なぜなら内部構造まで再現はしてないからだ。


【銀竜という存在】

その在り方は、森エルフと精霊の関係に近い。森エルフは自身と対となる精霊を仲間としてるが、この精霊、本人にしか認識できない特性がある。物理的な影響を出すこともない。ただし、精霊を通じて用いる精霊魔術は、通常の魔術と違い、かなりお任せで自由度の高い結果を叩き出してくれる凄技でもある。なので、精霊という存在がいるかといえば、いると研究組なら断言するだろう。ソレがどこに存在しているか、という些細な差だと。これは召喚術式で異世界からやってくる妖精達なんて実例があるからこそ持つことができる柔軟な発想だろう。銀竜の場合も同様で、アキの心の中に銀竜は存在していると言える。森エルフの精霊との違いは、アキが幻影術式を行使することで、銀竜が誰からも認識でき、コミュニケーションすら可能な形で出現できることだ。しかも24章の間に体感まで備えるに至った。

なので、精霊と銀竜もまた似て非なるものと言えるだろう。そして、最初は希薄だった銀竜としての意識も、出現させて行動させて、とやっているうちに、白竜と銀竜の間で心話を行うといったことすら成功した。また、その際に多くの竜としての経験にも触れたことで、希薄だった銀竜の存在を強く安定させる結果ともなった。

もはや、アキは銀竜ならこう考えるだろう、と認識するのではなく、銀竜はこう考えている、と認識している状況だ。両者は完全に異なる意識に分かれ始めたと言って良いだろう。それとイズレンディアも危惧した通り、こうした形で心に別の存在を住まわせることは負担が大きいようだ。森エルフの実例からして一体までなら許容範囲だろうが、それを超える数は止めておけ、といったところか。それと主従が逆転すると、精霊憑きと呼ばれる厄介な病に陥ることも示された。今回の例でいえば、銀竜がアキの身体を自身のもののように扱い、アキは自身の身体を動かす主体性を失っている、といった具合だ。

ただし、銀竜は既に竜族としての身体性を得るに至ったので、この精霊憑き現象は恐らくは起きない。なぜなら銀竜にとって街エルフの身体は異種族の身体であり違和感だらけなのだから。そうそう乗っ取って自由に動かして、とはならないだろう。アキが竜としての身体意識に酷く苦労したように、あぁ、なんでこんなに首が短いのか、尻尾がないのか、翼すらないぞ、ってな具合だ。


【伏竜の擬態】

伏竜は自身の魔力量や鱗の光具合などを、自身の意識の切替によって完全に擬態することができる。いつもの艶消し(マッドな)灰色で抑えた魔力としているのは、目立たないように、という涙ぐましい努力の結果なので、アキもこの事について触れる時は細心の注意をしているくらいだ。本来、力を顕示して他の竜に対しても、甘く見られないようにと、力を誇示し合うようなところが竜族社会にはあるのだ。それを最初から目立たないように、としているというのは、もう勝負にならないので気にしないでください、という負けました、というポーズを示していると言える。ただし、そうした過去があればこそ、今回、色再現完全な高透過(ピュアクリア)ミラーで、左右反転を打ち消す反転鏡(リバーサルミラー)で、さらに若竜の全身を映せるだけの巨大で完全平坦なサイズという、現実にはまず不可能な鏡を得て、自身をこれまでにない高精度で認識したことで、伏竜の魔力は急激に質の変化を伴うこととなった。アキ曰く、森の中の澄んだ空気のような印象に変わった、とのこと。そして、竜眼で自身を視た伏竜もまた、一発でコレは不味いと認識するほどの変化だった。そして、今はまだ変化を示すタイミングではないとして、現在の身体状況に合わせた魔力量と鱗の色合いへと変えることになった。四六時中、擬態を続けられるそうで、ようは慣れとのこと。悲しい慣れである。ただし、その経験があったので、当分、伏竜の身に起きた劇的な変化は隠し通せるだろう。どうせ、変化を明かすならもっと劇的なシーンで示したい、と考えるあたり、やはり伏竜も男の子なのだ。


【福慈様の炎の吐息(ブレス)

通常の対竜向けの竜の吐息(ドラゴンブレス)と違い、瞬間的に対象を燃やせる程度の火力に抑えてその代わり射程延長、範囲拡大を図ったという福慈様オリジナル技である。勿論、アキも看破した通り、これは地の種族に対して使うために編み出した戦略級殲滅技であり、竜族に対しては火力が弱すぎて驚かせる程度の効果しかないという代物である。アキが雑魚掃討技だと言ったのも間違いではない。ただ、こちらの世界にはコンピューターゲームはないし、無双系ゲームの概念もないので、枯れた藁を刈り取るかのように大軍を蹴散らしていく、みたいな概念は少なくともエリーやソフィアにはなかった。まぁ、鬼族なら地の種族を鉄棍で薙ぎ払って五人、十人と纏めて片付けるのがデフォだから、案外、雑魚敵掃討と言う概念は通じそうではある。

ちなみに、通常の竜の吐息(ドラゴンブレス)もそうだが、竜の肺活量=射程距離でもないし、攻撃範囲でもない。その性質は吐息ブレスをいう行為を伴うものの、明らかに現実を改変する魔術のソレである。だからこそ、大型乗用車程度のサイズしかない小型召喚体の福慈様が放った技が、ロングヒル全域の空を薙ぎ払って雲を消し去るような真似ができたのである。威力的には浴びれば重度の火傷は免れず、戦闘能力などその時点で皆無となり、早晩、亡くなるしかないだろう。ただし、建物を薙ぎ払うような威力はない。対歩兵軍団殲滅技といったところだ。普通の戦略級術式は対象が軍勢、要塞、都市などという大目標となるが、その全てを屠れるわけではなく、そういった大目標相手に使うものだ、という意味合いが強い。ところが福慈様の炎の息吹ブレスは、城塞都市処からその周囲の田畑などの広域も含めて全てを焼き尽くす広域殲滅技となっている。エリーが恐怖を覚えたように、ただ一柱の天空竜によって国が焼き滅ぼされる、それができることが証明された瞬間でもあった。

なお、今後は威力を更に徹底して抑えて、使う高度なども考慮して、雨雲を消す息吹ブレスとして、広く普及していくことになる。本来の目的ではなく、平和利用が主となるとは福慈様も全く想像していなかったことだろう。


【竜爪だけ再現した幻影術式】

アキが地の種族サイズの反転鏡(リバーサルミラー)の処分で、ふと思い立ってやってみたらできてしまった根絶技である。幻影の銀竜の腕が現れて対象を薙ぎ払いながら竜爪を発動すると、対象は実際に竜爪に切り裂かれて抉られた部分はこの世界から消えてしまうのだ。本来の竜爪との違いについては要検証といったところ。まぁ、アキの創り出した物体を消せる時点で、通常の魔術より遥かに凶悪な威力を示したのは間違いない。アキの創造術式で出現した品は高位魔導具相当の強度があり、半端な事では傷一つつかないのだから。だからこそ、竜達がばんばんひっくり返して遊ぶような真似をしているリバーシの大きな駒がいまだに遊ぶのに不自由しないほど完全な原型を保ち続けているのである。ソレを一撃で切り壊した。なので、コレもアキはわぁ、便利とか言ってるけれど、取り扱い要注意の禁術指定確定なのだ。



◆その他



【竜族初、長距離エコレース】

ホンダが毎年行っている省エネレース「ホンダエコマイレッジチャレンジ」を参考に、ちょっと弧状列島の広域を使って、竜達に予定コースを飛んで貰い、魔力の減り具合が一番少ない、エコな飛び方ができた竜を優勝としよう、というアキが思いついた大イベントである。まだアイデア段階と言いつつ、もうかなりのところまで実現イメージができているところは、皆が溜息をつくのも仕方ないところだろう。一年前には集団での行動など歴史的な出来事でしか見た事がなく縁遠い存在だった天空竜達。それをアキはまるで自動車レースのエントリーのようなノリで、じゃ、ある程度の頭数を揃えて、この距離を飛んで、と平然と連邦、連合、帝国領をぶち抜くようなコース取りを提案してくるのだから頭が痛い。とはいえ、いずれは一つの国として手を取り合っていこうというのだから、国家群の枠を超えた活動にも意義はあると思うんですよー、などとアキは言うわけだが。

当然だが、これ、三大勢力の代表達にも提案は届くことになる。反対する理由はないが、意見は言わせろ、というか、聞け、ってとこだろう。代表達も大変だ。

はい、投稿が1日遅れてすみませんでした。二十四章は魔術系の技がかなり多く出てきましたね。それに一般から逸脱した技がゴロゴロと。それから取り扱い注意な禁術も増えてきてるし、知った情報の漏洩は厳禁とか口止め必至など、なかなか怪しい感じになってきました。まぁ、異世界と繋いでしまう次元門を創り出そうとか言ってる連中ですからね。それくらいのギリギリラインを攻めず、どうしてソレが為せようか、ってなもんです。あと、何気に精霊使いとして、イズレンディアにスポットが当たったのは予想外でしたね。少なくとも当初の想定プロットには無い流れでした。でもまぁ、そりゃ師事を頼むよなぁ、と。


<今後の投稿予定>

旧:二十四章の人物について       三月十二日(水)二十一時五分

新:二十四章の人物について       三月十六日(日)二十一時五分

二十五章スタート          三月十六日(日)二十一時五分

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