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24-14.白竜お姉様(前編)

<前回のあらすじ>

鋼竜さんと話を聞いてみたけれど、観察眼「だけ」ならやってきてる竜達の中でも一番かもしれない、というのは驚きでした。評価基準が竜のおおらかさなせいで、ソレが活かされるタイミングが無かったようですけれど。面白いものですね。(アキ視点)


<一言>

前パートですけど、読み返してみたら、特に修正しなくてもいいや、という結論に。はて、あの書き終えた後の物足りなさ、要修正と決断した感覚は何だったのか。謎です。

若雄竜三柱によるV字編隊飛行は想像以上に順調な滑り出しを見せてくれて、大変嬉しい結果となった。スタッフ席に控えていた参謀本部の方々も、三柱が起きて帰る際には挨拶をしておくと語ってくれていたから両者も今後は交流が増えていくことだろう。


大変話が盛り上がって、僕の褒め攻勢にもそれなりに余裕を持って対処していた鋼竜さんだったけど、それでも疲れたといい、炎竜、氷竜と同様、休んでから帰ると言い出していたんだよね。これについて、鋼竜さんに何故か聞いてみたところ、僕との心話は密度が異様に濃く、竜同士の交流に比べると、精神的な疲労は何百倍にもなってしまうのだ、と説明してくれた。


流石に大げさじゃないかと思ったんだけど、そもそも個で暮らし縄張りの外に出て誰かと会ったら軽く世間話をする程度な竜同士の交流からすれば、僕と行うほどの深さで誰かと話すこと自体が稀であり、なおかつ心話の利点である言語化しないことの超高速性には、誰も慣れていないのだ、と説明してくれた。


<アキはミア殿と長年、心話をしてきて慣れているのだろうが、我々はそうではないのだ>


なんて感じに、あくまでも場慣れしてない、深い会話をする機会自体が乏しいことを強調していたけれど、文字はあってもマーキング程度、道具も用いず、建物も必要とせず、縄張りを構えていればそこで生活も完結しているとあっては、そりゃ、深い会話なんてのもそうそう出てこないだろう、と僕も納得することになった。


共同作業すらしないし、その必要がないし、敵もいないし、台風が上陸して暴風雨が吹き荒れようと、洪水が起きようと、雷が激しく落ちていたとしても、派手だなぁ、とか少し騒がしいとかしか感じないんじゃ、危機意識なんてのもそうそう持てないんだろうね。


子育てを担当している若竜とか、母竜とかくらいじゃないのかな。共同作業的な話や、その為の取り組みをしているのって。


後はつがいになった雄竜もまぁ、縄張りを抱えてつがいと共に暮らしていくという点では共通話題もあるか。


それに竜族同士の会話に使う思念波となると、ちまちまとだけど魔力を使うからね。竜の口の構造からして、人語を離すのは難度が高く、地の種族との交流に思念波は欠かせない。だけど、竜同士なら魔力を用いず普通に発声する竜語とかで会話するんだろう。


 っと。


『鋼竜様、疎いので教えて欲しいのですけど、竜同士、空を飛んでいる時は思念波を使うとしても、普段の会話にまでそれを使うことはないですよね? 普通に声を出して、その竜語みたいなのでお話するのでしょう?』


言葉にイメージを乗せて、竜の口から、魔力なしで発声して近い距離なら話をするんだろう、と伝えてみると、その通りと頷いてくれた。


<GYAalaRu?>


 おっ。


思念波を使わない発話をしてくれた。魔力に触れているから、挨拶を口にしてくれたとはわかるけど、重低音だし使ってる波長帯が違うのか、抑揚の変化もあるね。あぁ、そうか、竜は表情変化が乏しいから、それを補うのが声の調子や抑揚なんだ。


『挨拶をしてくれたのだ、とは魔力に触れているのでわかりましたけど、竜語を僕達が使うのは厳しそうですね』


低音が出ないし、音量がかなり足りない、という思いを言葉に乗せると、鋼竜さんは目を細めて笑った。


<声量はさほど重要ではない。幼竜の声は地の種族と大差がないのだから。ただ、其方らは首が短い分、声の厚みに乏しいから無理をして我らの言葉を使わないのが無難だろう>


地の種族の首の「短さ」は、彼ら竜族からすれば、なんて可哀想な、と感じてしまうほど詰まって見えるんだね。体の作りが違うのだから無理はしないことだ、と労わるような気持ちで語ってくれたのが感じられた。


 なるほど。


竜族の美意識的には、首の長さや太さ、それに筋肉の張り具合や鱗の滑らかさなど、審美眼に適うための条件が多岐に渡るっぽい。


『ちなみに理想の雌竜というと、どんな感じの首回りなんです?』


<言葉にするのは難しいが>


などと言いつつ、こういう雌竜ならドストライクだ、というイメージを思い描いてくれた。どうも首から翼や腕に至る外見なども拘りがあるようだ。……で、白岩様の思い描いてくれた銀竜だけど、かなり現実にはそんな子はいないよ、というくらい理想を突き詰めたような姿だったっぽい。全身の筋肉や骨格、不随意筋に至るまで全てに意識を通し、把握し、それらの集合体としての全身像を細部に至るまで妥協なく思い描ける白岩様だからこその拘りってとこか。


というか、審美眼的な意味では、白岩様、実は銀竜の姿を幻影で出してくれた時、何気に気を使ってくれていた感じだった訳だ。まぁ、ミア姉は僕からみても十分過ぎるほど美人さんであり、その外見を十分に評価して、それを当然として心話でも振る舞っている僕の態度からして、白岩様も綺麗で若い雌竜として幻影を描くのが妥当と判断されたんだろうね。


そして、一切の妥協をせず趣味に走った、と。


多分、銀竜の姿は、僕と心話で触れ合わせた感触から年齢層を想定、僕の髪の色から、鱗の色を銀色に決めて、後は適正ラインぎりぎり程度の運動量をこなす程度の身体に、僕らしい印象を加えて、って感じでアレンジしたんだと思う。白竜さんより小柄で少し華奢な印象なのはそのせいだ。


『なお、こちらに来ている七柱の雌竜の方々や黒姫様はどんな感じです?』


<難しい事を聞かないでくれ>


などと苦笑されてしまった。あー、なるほどね。触れている魔力から感じられた印象からすると、七柱の雌竜達は将来が楽しみな美少女枠といったところであり、黒姫様はつがいとするならば是非と三顧の礼で迎えるようなお相手だ、と。ただし竜族の文化的に、つがいというのは釣り合いがとても大切らしい。黒姫様と自身では到底釣り合わない、という諦観も感じ取れた。


なら、雌竜達はと言えば、将来が楽しみ、といったところで、つがいの相手とするにはまだ成長が足りない、との認識だと。


 ふむ。


地の種族と違って、評価基準が身一つ、余計なモノが何もない分、凄くストレートな判断になる訳だ。心技体が揃って初めて、つがいの候補と成り得るんだぞ、って。


こりゃ、伏竜さんが屈折した思いを抱えているのも仕方ない。人なら足りない分を他で補う事もできるけど、竜族にとって「他」という概念は存在しないんだから。心技体合わせて合格ラインに達していること、多少劣る部分があっても他がカバーできて、それぞれ八十点が合格ラインとして、三つの軸で評価した合計が二百四十点で縄張り持ちなら、つがい候補としても良いか、と。


……伏竜さんにはもうちょっと優しく接してあげよう。


保有魔力が足りず、体が同年代に比べると見劣りしていて、縄張りも持ってない。うん、これで将来は楽しみ、雲取様と双璧と呼ばれるまでになりますよ、と僕が言っても、幼子の夢を壊さないように、と困ったような笑顔で返されたのも無理はない。


そんな訳で、この日は丸くなって休んでいる三柱を眺めつつ、僕は第二演習場を後にしたのだった。





そして、翌日。


焦っているというほどでもないけど、明らかに急かされる感じで、着替えなども全部用意してスタンバイしていたケイティさんに起こされることになり、身支度を手伝って貰いつつも、鏡に映るケイティさんに聞いてみた。


「それで、今日は何があったんです? 竜族絡み、ですよねぇ、やっぱり」


そう問うと、ケイティさんも苦笑しつつも理由を教えてくれた。


「はい。例の銀竜について、研究組としての活動として主軸に据えるべきだ、との意見がソフィア、賢者両名から提案があり、これにトウセイ様やガイウス様達、理論魔法学の研究者の方々も賛同したことから、リア様が白竜様に研究組の一員として、この件に参加をするよう心話で促されたのです」


 ふむ。


「素早い対応でそれは良かったと思うんですが、それでこの慌てた対応になったのは?」


「それは心話ということもあり、リア様自身が観た銀竜の様子や振舞いについてその印象や感情的な戸惑いなども含めて、白竜様が知るところとなり、それほどまでに竜種に近いなどと言うのなら、この目で確かめる、と言い出されまして」


 あー。


「つまり、研究組として僕の銀竜についてあれこれ皆で議論する前に、竜族の一柱として、銀竜を評価してやる、と」


なんだろ、紛い物は気に入らない的な話だろうか。でも幻影術式で出してるんだよ、という話も伝わってる筈なのに。評価というけど、明らかに、幼竜の拙い芸事を眺めて愛でよう、とかいうスタンスじゃない感じだ。


「はい。そんな訳で、実はもう第二演習場に白竜様がいらしてます。急ぐ必要はないとは話されてますが、あまり待たせない方が良いと判断されました」


 うん。


「それなら待たせない方がいいですね。とはいえ、別邸から心話で白竜さんに話しかけるほどではなし、と。では手早く準備を済ませて向かうとしますか」


白竜さんと会う、というか竜達と会うのなら、小奇麗に身支度を整えるのは欠かせないし、栄養不足で倒れても困るから、軽食くらいは済ませてから行くべきだろう。


「にゃー」


トラ吉さんも、大変だなー、くらいに労いの声をかけてくれた。ありがと。いやぁ、なんだろうねぇ、竜達のこのフットワークの軽さ。ロングヒルへの来訪予定のスケジュールはちゃんと守るといいつつ、必要とあれば近所に行く程度のノリでやってくるんだもんね。まぁ、竜側からの連絡手段がないから、飛んでくるしかないという現実的な話もあるけどさ。きっとエリー達、ロングヒル王家も心労が絶えないことだろう。ご愁傷様。

いいね、ありがとうございます。やる気がチャージされました。


はい、鋼竜から竜としてのあれこれを聞いて、アキもまた一つ賢くなりました。同時に竜語は竜の身体がないと話すのは無理だ、ということも明らかに。地の種族は首が短すぎますからね。声の共鳴器官が貧弱過ぎて重低音が出せません。可聴域にも違いがあって大変です。竜族が思念波を使えて幸いでした。


次回の更新は2025年1月12日(日)の21:10です。

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