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第二十三章の人物について

今回は、二十三章で登場した人物や、活動してても、アキが認識しないせいで登場シーンがなかった人の紹介ページです。二十三章に絞った記述にしています。二十三章は七日間しか経過してないので記載情報なしの人が多いです。

◆主人公


【アキ(マコト)】

第二十三章では、妖精達が他文化圏への使節団派遣に妖精を合計三名も同行させることが決まり、召喚体の妖精と本人の心の隙間を利用した世界間通信を二組組み合わせることで、他文化圏に派遣する使節団とロングヒルの間で、転移門のような大規模な設備なしで、いつでも連絡を取り合える体制の確立ができる見通しとなった。これは大航海時代に新大陸発見をする使節団に、常に本国とやり取りできるスマホを持たせましたくらいの超飛躍であり、冒険大好きなアキは大喜びしている。

また、妖精がそこまでして他文化圏の使節団に加わりたいと言い出した事も喜ばしいことで、それをアキに後押ししてもらうために、妖精族の国民総出で心話と魔力共鳴の大規模検証までしてくれるというのだから、ニコニコである。

それに比べれば、福慈様の思念波再暴発はオマケみたいなもので、それもさした苦労無く片付く目処が立ったので一安心だ。

その対応に伴い、伏竜がとても稀有な性格、資質を持つと確信したので、これはもう竜族代表となっている雲取様に匹敵する二枚看板に育って貰うしか無い、と大張り切りしているところだ。

そして、それらの好意の前払いも気前良く盛大に行ったのだから、色々と手札が増えてきた次元門構築に関する研究もがっつり進めていくぞ、と気合十分なのだった。



◆アキのサポートメンバー



【ケイティ(家政婦長ハウスキーパー)】

アキは福慈様を指して、すぐ思念波を怒りで暴発させたりと心に余裕がなさすぎ、ストレス解消して、QOLをもっと高めないと、などと力説していて、たしかにそれはそうなのだろうと感じていた。ただ、アキ自身がマコトの時より涙脆くなった、アキになったからだ、と話していたが、その本人こそ福慈様並に心に余裕が無いのだろうと思わずにはいられなかった。涙脆いのも、感情の落差が激しいのも、心に余裕がないからだろうと。

実際、起きていられる時間がかなり短い問題はあるものの、ある程度、余裕を持たせようと配慮はしようとはしているのだ。ただ、今は忙しいのでそれ程でもないが、空き時間があると少しでも何かしようとそこを埋めようとする意識がアキには常にあると感じていた。何もしていないでいられない、何かできるはずだ、しなくてはならない、と。

伏竜の事をアキがかなり気に入っているので、その交流がアキの寂しさを少しでも埋めてくれれば、と思うケイティだった。


【ジョージ(護衛頭)】

福慈様の思念波暴発の再発防止策として、小型召喚をしてストレス解消をして貰おうという考えは理解できる。だが、竜神と称されるのも当然と思える災害級の猛威を前に、障壁シールドがあれば防げますね、なら安心と何の気負いもなく言い切るアキには、探索者気質とは決定的に違う何かがあるのではないか、という疑念があった。探索者とて結果としては同じ判断はするだろう。だが、それはやるべきことはやった、後はもう神のみぞ知る、というある種の割り切りによって平静さを保つのであって、本能的な恐怖を感じていない訳では無いし、恐怖が麻痺している探索者なんて使い物にならないのだ。

だが、アキは脅威に対して、感覚が麻痺しているのではないが酷く希薄に感じることがある。自暴自棄なのとは違う。まるで竜族が地の種族と対峙するときのように、決定的な差があると理解しているからこそ、恐怖を覚えることがないのではないか、そう思えてしまうのだ。

そんな事など無いというのに。


【ウォルコット(相談役&御者&整備係)】

馬車を操り、第二演習場との行き来をする程度なので、彼が発言するシーンは無いものの、実際にはアキともあれこれ話をしたりと、交流はあるのでご安心を。何せウォルコットが馬車を操るからこそ、彼が常にそこにいて、どうぞお乗りください、と促すから、アキは安心して馬車に乗れるのである。

そして、ウォルコットからすれば、激動の時代の震源地に間近で立ち会える事に無上の喜びを見いだしているのだ。立ち会っていながら、当事者ではないという、最高の観覧席なのだ。

おかげで彼はいつも上機嫌で余裕があり、他のサポートメンバーにもあれこれ聞いたり、支援してあげたりとメンバーを陰で支える事も増えてきた。今ではそれも本業として認められているのだが、それは半分は彼の趣味からきているのだから、仕事を実益を兼ねているといったところだろう。羨ましい話である。


【翁(子守妖精)】

他文明圏に派遣される三名だが、実は選抜は翁に任されることになった。というのも、物質界(こちら)については翁が第一人者だからだ。使節団に同行するとなれば、当然、役割はある程度決まる訳だが、妖精の国としては、使節団に加わることで、周辺諸国との交流とは本質的に異なる他文化圏との交流、それを三か所も同時に行えるというのだから、これほどのチャンスは二度とないと意気込むのも無理のないところだった。つまり、同行する妖精とは、物質界(こちら)への尽きない興味を持ち、他文化圏との交流に理解と興味があり、使節団の他種族との交流も苦にならない、そしてその為なら、毎日八時間の召喚時拘束と、同期率を低下した後は、必要な量の運動、食事、睡眠などを適切にこなすという宇宙飛行士のようなある種、禁欲的(ストイック)な生活を何年も行うことの厭わない、そんな人材の発掘、選抜である。

なので、必要なのはそれに向いた資質であり、必要な技能は訓練して鍛えればいいという割り切りであり、そのため、選抜に翁が選ばれたのだった。

妖精の国で周辺諸国偵察へと出航する飛行船の乗員を選抜するのとは根本からしてまるで違う基準である。なんで翁はマコト文書に詳しいケイティなどとも相談しつつ、どうやってこの任に適した人材を選び抜くか今後苦労していくことになる。


【トラ吉さん(見守り)】

アキが伏竜と話をしている最中にボロ泣きして抱き着いた時には結構慌てたものの、それは危機感からではなかったものの、アキが抱き着いたのは感激させる元となった伏竜であり、トラ吉さんには当然のことながら、アキが魔力に触れたことで読み取った様々なことなど知るよしもなし。わかるのはアキが平静さを失うくらいに酷く感激して、トラ吉さんに意識を向けることなく、伏竜に抱き着いて暫く泣いてたということだけである。なので、帰りの馬車の中ではトラ吉さんはアキの膝の上に乗るなど、癒しのアピールをするといった普段はない行動を見せることになった。なかなか悩ましい立場なのだ。


【マサト(財閥の家令、財閥双璧の一人)】

第二十三章は僅か一週間ということもあり、財閥としての仕事には特に変化はなかった。ただ、福慈様の二度目の思念波爆発とそれに伴い緊急招集された長老衆の会合は明らかに雰囲気に怪しい部分があり、急遽、ロゼッタと共に、|七人の将官級魔導人形達セブンシスターズを集めて、長老達の意識の人格模倣(エミュレート)を実施。事態を放置するのは悪手と判断して、マサトが財閥としての働きかけが必要と判断した事をアヤに伝えると、アヤも同様の認識にあり、それでSS⑫でアヤがロゼッタ達、合計八名もの魔導人形達を引き連れての論戦へとなったのだった。確かにアキの行動は周りの全てを大きく巻き込んではいるが、半分以上はアキの好意の前払い、次元門構築を行いたいアキからすれば、副業みたいなモノなのだから、文句を言うどころか感謝しても良い話だろうとマサトは思うのだ。可能なら、ミアの心話に専念して仕事はマサトにお任せしていた時のように、アキには専念して貰うつもりでいたので、今の状況は実はマサトからすると結構、不本意なところはあった。

アキがこちらで行う活動を十全に支えること。それをミアから頼まれた際にも、財閥の力をもってすればミアの望みは叶うでしょう、と自信を持って答えたのだ。

……ただ、今から思えば、あの頃の自分は無知だったとマサトは思うのだ。アキの全力の活動を支えるなど財閥「程度」ではとても手が回らないのが現実なのだから。



◆魔導人形枠



【アイリーン(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で料理長)】

伏竜がロングヒルに頻繁に通い、アイリーンが用意した魔力を含んだ米粉パン山盛りを食するようになって、アイリーン率いる料理部門はまた新たな活気を呈することになってきた。食べる量だけで言うと、実のところ、伏竜はその身の大きさに対して案外小食だというのも面白い発見である。というのも、単なる食事ではなく、それは体内に魔力を取り込むという意味合いが強い事が大きいためなのだ。魔力を多く含んだ米粉パンは、魔力を吸収するのに時間がかかる「腹持ちの良い食事」ということなのだ。この新たな視点が得られたことで、地の種族の食事についても、食材に含まれる魔力量は各種族の食事には違いがあり、鬼族はより多く魔力を含んだ食事をしていないと、魔力失調とでもいうべき状態に陥って健康を害してしまう。つまり魔力は栄養素の一つ、と考えても良い必須要素なのだ。その点では小鬼族も体は小さいものの、魔力依存度はそれなりであり、実は人族が魔力依存度が一番低かったりする。杖を用いて体内魔力を一点に集束、更に圧縮までしないと魔術を発動できないのはそのためだが、逆に言えばそれ故に魔力の乏しい地域に進出して、そこを居住地をするような事もできるのだ。こうした観点から栄養学についての見直しなんてとこにも手を伸ばし始めたアイリーンであった。


【ベリル(女中三姉妹の一人、ケイティの部下でマコト文書主任)】


【シャンタール(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で次席)】

毎日、アキの服装を用意しているシャンタールは、実はちょっとした発見をしていた。竜族と会う場合、アキはケイティなどにも意見を聞きながら見栄えをそれなりに気にするのは前々からわかっていたのだが、どうもそれぞれの竜に対してだと、ちょっとずつその意識の持ち方が違うようなのだ。アキは自覚していないが、雲取様は自分を庇護してくれている親的な要素を持つ兄といった庇護者枠、雌竜達や桜竜は女友達、黒姫様と白岩様は親戚の叔母、叔父枠、それ以外は知人枠と言ったところのようだ。そして、伏竜はというと、どうも男友達枠、それもちょっと御洒落をして会うような相手、といったスタンスのようなのだ。

勿論、それは淡い認識であり、アキも自覚しておらず、よくよく見比べないとわからないくらい、アキは竜族全体に対して常に溢れる好意を示してているから、気付いたのはまだシャンタールくらいなものなのだが。なので実は伏竜相手の服装についてシャンタールはちょっと新作を入れてみたりと、特別感をそっと入れてみたりしているのだった。さりげない心遣いであり、密かな楽しみなのだ。


【ダニエル(ウォルコットの助手)】

ウォルコットが許可していることもあり、ダニエルは依代の君の対応を行う比率が増えてきた。何せ、降臨せし神なのだから優先度を高くせざるを得ないといったところなのだが、ウォルコットからすれば、自分の助手を現世を楽しむ神の傍に置いて、その一挙手一投足を後から報告と称して聞けるとなれば、許可しない訳がないのだ。そして、ダニエルは報告書作成という業務の一環として、毎日、その日を振り返ってあれこれ考察することも増えた。その中には依代の君とは何なのか、という問いも含まれる。彼は「マコトくん」から分かれ、依代に降りて実体を得た神である。ただ、その言い方は単なる設定を読み上げた程度の意味でしかない。

日々、降臨した彼が行った、彼だけの経験は、それをして依代の君を日々、「マコトくん」から遠ざけて独立した別の確固たる存在へと変化させていっているのだろう。ただ、ダニエルは誰よりも面倒を見ているせいか、他の神官達と違い、依代の君からの神託が聞こえなくなるということもなく、強い繋がりも感じるのだ。

そして、この繋がりとは何かと自らに問うた時思うのだ。これは信仰ではないデスネ、と。



【護衛人形達(アキの護衛、ジョージの部下)】

→特筆すべき内容はなし。


【農民人形達(別邸所属、ウォルコットの部下)】

→特筆すべき内容はなし。


【ロゼッタ(ミアの秘書、財閥双璧の一人)】

前回から頻繁に事あるごとに長老衆の集まりに呼ばれることが増えてきたので、ロゼッタ自身は長老衆達の心の変化が手に取るようにわかっていた。なぜなら、そうした変化は、片手で溢れるくらい経験があるのだから、間違えようがない。ミアに尽き従い、全力で支えた日々が懐かしく思えるが、そんなことを言ってられるくらいには状況はまだまだ余裕がある、なんて判断も終えていた。とはいえ、マサトが介入すべしと言うのも理解できるし、長老のジロウ、クロウの二人が現時点での状況の一掃を望んでもいるようだったので仕方なしと判断したのだった。少し介入が早い気もするがソレはマサトが少し過保護に動いたからではないかとも感じていた。

同時に、確かにアキの行動を邪魔されるのは面白くないので、余計な雑音は奏でないで貰うために釘を刺すのは良いことだとも。アキが感じたように、次元門構築の研究に新風を吹き込む要素が入ってきたことにロゼッタもまた大いに期待をしていた。それだけに、長老衆の杞憂は確かに邪魔だった。


【タロー(小鬼人形の隊長の一人)】

彼は異種族である小鬼族の文化にも詳しくなってはきているものの、仮想敵部隊アグレッサーを担当する魔導人形達が、小鬼族が好きでその仕事を選んだとアキが思ってる節があることにちと、頭を悩ませていた。そもそも、彼らが小鬼人形としての道を選んだ時には、小鬼帝国と友好関係が成立するなどという話は全くあり得ない夢想というか戯言の類だった。銃弾の雨の時代にもっと頑張れば小鬼達をこの弧状列島から駆逐できただろうなどという馬鹿話が出るくらいには、考えるまでもなく互いを排除しあう敵だったのだ。

勿論、個人的に交流が増えれば小鬼族に結べるくらいに良い者もいるというのは実感できはした。ただ、だからといって、異文化大好き、異文明大好き、探索者向きとか思われても困るのだ。


仮想敵部隊アグレッサーの小鬼人形達】

→特筆すべき内容はなし。


仮想敵部隊アグレッサーの鬼人形、改めブセイ】

彼にとって鬼人形としての道は、必要性があり適正があったからといったところであり、自ら望んでという話では特になく、それに深い意味もさほど持ってはいなかった。まさか自分が鬼族の文化を学び、連邦大使館に足しげく通い、滞在している鬼族の諸兄らに学び、女衆の手ほどきを受けて鬼族の男の嗜みだと言われて、料理に精を出すなどとは考えても見なかった。そしてそれは鬼族の武を学ぶことと合わせて、彼に充実感を与えており、だからこそ、アキにこれまで接触のない他文化圏に使節団として行くとしたらどう?と聞かれた時に、それはないな、と即答したのだった。というか、アキが誰でも他文化圏との接触は大喜びするだろう、と思っていることに何とも衝撃を受けたのだった。幸い、他の者達、どの種族や人形達に聞いても、皆がブセイの驚きに共感してくれたので、自分の驚きは正当なものだったと納得できたのだった。


【大使館や別館の女中人形達】

→特筆すべき内容はなし。


【館(本国)のマコト文書の司書達】

→特筆すべき内容はなし。


【研究組専属の魔導人形達】

→特筆すべき内容はなし。


【リア麾下の魔導人形達】

→特筆すべき内容はなし。



◆家族枠



【ハヤト(アキの父、共和国議員)】

ハヤトにとって、今回のアキが提言して決まった、福慈様を小型召喚で喚んでストレス解消させよう、最悪、地の種族への怒りで暴発しちゃうかもしれないけど、それなら撃たれても防げる体制を取っておけば問題なしという策、これに対して、強い違和感を覚えていた。アキの主張がおかしいというのではない。当たれば蒸発してしまうような天空竜の熱線術式、それを実際に第二演習場で白竜、紅竜が実演してみせたのに、障壁シールドで防げる様子を見て、これなら問題ありませんね、と全く脅威に感じている様子がない事に、である。勿論、アキの言うように、誰もが自分より遥かに強い、そんな会議の場でも気負うことなく出席できるのは、護衛がいるからではなく、皆を信頼しているからだという言葉に嘘はないのだろう。だが、実際に撃たれた地面が高熱に焼かれて陽炎を揺らがせても、一切揺らぎを見せる事もないのはおかしいのではないか、と。そんなアキの反応、意識を見て感じたのだ。まるで天空竜や妖精族のようではないかと。ただ、それが何を意味しているのかまだ形となってはいないので、彼の口からそれについて、何か語ることはまだ暫くはなさそうだ。


【アヤ(アキの母、共和国議員)】

外伝⑫で長老衆相手に論戦でけちょんけちょんに叩きのめして、アキへの恐れ、迷いや忌避感についてある程度、払拭することに成功することができた。アヤも最後に語っていたように、中立と見せつつ、長老のクロウ、ジロウが他の長老達と衝突させることで、彼らの意見がそもそも誤りであると気付かさせるよう誘導していたことには、まぁ、ちょっと思うところも無いではなかったが、二人が敵に回る困難さを思えば、いいように使われたとしても、結果オーライだと思っていた。

これが人形達を率いての集団戦だというのなら、長老衆全員と通し稽古をして全員這いつくばらせてしまえばいいので遥かに気楽なところなのだが。リアが魔術が使えず荒れていた頃に色々と動いてはみたものの上手く行かず、ミアやロゼッタ頼みになってしまったように、やはり人には向き、不向きがあるのだ。

今回も予めミアから、ロゼッタ達を率いての論戦についてのレクチャーはがっつり受けていたから何とかなったものの、戦いで人形達を率いるのとは全く勝手が違い、疲労困憊する有様だったのだ。ミア曰く慣れとのことだが、全然慣れる気がしなかった。


【リア(アキの姉、研究組所属、リア研究所代表)】

アヤの活躍もあって、何とか長老衆の迷走も止まることになり、アヤと二人、ロングヒルに戻ることになったものの、早急に竜族絡みで何かあった場合に対処するための即応体制を整えねばならず、研究所からも少なくない人数の職員や魔導人形達を引き連れての帰還となる。今回、アヤが長老相手にロゼッタ達を率いての論戦を行っていたが、リアは母がソレを引き受けてくれてホッとしていた。一つの事を深く考えるのは得意なのだが、多くの人形達を率いたり、ましてその人形達に膨大な思考を並列処理させてその結果を元に論戦するような曲芸染みた真似は、一応、ミアからレクチャーは受けたものの、好んでやりたいものではなかったのだ。

リアも人形遣いとして、実際、多くの人形を率いて戦える技能は持ってはいるのだが、それは人形達にかなりの自由裁量を任せて、大方針だけ定めて各自に目的を遂行させるといったスタイルなのだ。そのために事前に入念に訓練と方針決めを行うが、実戦では自身が完全無色透明な魔力と言うこともあり、相手の虚を突いて倒すことに酷く偏重していたのである。アヤからもそのバランスの悪さは指摘されていて、鍛え直すとまで言われて気が滅入ったりもしている。そんな訳で、人には向き、不向きがあるのだ。アキは街エルフは何でもできる、と全然疑ってなくて、リア姉は街エルフだから何でもできるんだね、と無邪気に喜んだりするものだから、結構頑張っちゃうのだが、やはり苦手なものは苦手なのである。


【ミア(アキ、リアの姉、財閥当主、マコト文書研究第一人者)】

外伝⑫で明らかになったのは、ミアがロゼッタと組んで、長老衆各自の人格模倣(エミュレート)まで行って反応を予め想定し、それも踏まえた問答集まで備えておくという用意周到さをもって、長老衆全員相手に論戦で真正面から対決して、相手の議論の拠り所たる基盤部分を打ち砕くような論法を用いていた事だった。当時はまだ、七人の魔導指揮官達(セブンシスターズ)も揃っておらず今より実力も低かったが、ならば手が足りていなかったかと言えばそんな事はない。当時のロゼッタはミアからリアのことを任されており、子を守る母の如き強さを発揮していたのだ。当時のミア&ロゼッタを知る者達からすれば、今のロゼッタは随分と丸くなっているのである。それと、ミアは魂入れ替えの秘術を実行する前に、家族三人に対しても、ロゼッタと共に行ったそうした論戦での戦い方について、いざという時は誰がロゼッタ達と組んでも十全に実力を発揮できるよう、一通りの引継ぎも終えていたりする。その辺りは徹底して用意周到なのだ。アヤがロゼッタ達を引き連れて論戦に挑めたのも、そうした事前準備があればこそなのだ。



◆妖精枠



【シャーリス(妖精女王)】

今回、妖精の国が多くの決断を行い、具体的に国として関与を強める決定を行ったのは、シャーリスの意思もあったが、国民全体の意識の変化によるところも大きかった。召喚された先で、異世界の広さを見聞きし、世界地図を眺めるようなこともあって、自分達の国の外、さらに惑星ほし全体がどうなっているのか、といった知的好奇心を多くの民が示すようになってきたからだ。同時にマコト文書の知に代表される異世界の知についての意欲も凄まじく、これらを勘案して、周辺国の理解を深めるより、三界を繋げることこそが国益に叶うと長命種らしく長いスパンで物事を考えて判断したのだった。

そもそも、妖精の国の周囲にある人族の連中の振舞いや技に、さしてみるべきものを見出していなかった点も大きい。それに比べたなら、アイリーンの料理一つとっても異世界の方が遥かに魅力的なのだ。


【賢者】

賢者にとって、今回の研究組の各種実験は非常に心躍る体験であった。妖精の国においても竜族のような派手な技を基本としたような実験など夢また夢であり、魔力を考えるとそうそう行えるような話でもなかった。それに余計な魔力がなく希薄な世界なので、魔術を行使した際の観察が非常にやりやすいのもお気に入りなのだ。

ただ、小鬼族の研究者取り纏めのガイウスから、時空断絶術式について熱心に聞かれ、魔法談義に花咲かせることになるとは思わず、またその中での多くの意見はとても心躍るやり取りだった。やはり世界を超えた交流はいい。ソフィアと同様、賢者もまた、いまはまだ見ぬ逸材との交流に胸膨らませる一人なのだった。


【宰相】

今回の三か所の他文明圏に使節団に参加する判断は、妖精の国としても大きな決断であり、宰相にとっても賭けに近い判断でもあった。ただ、長期拘束案件ではあるものの、本人は妖精の国に居続けるのだから、本当に長期間、遠距離に派遣するのに比べれば相当にハードルは低い。それより、召喚体との同期率を高めている間は異世界、同期率を下げれば妖精の国という毎日の落差に耐えられる人材、その発掘が難関だと感じていた。

ただ、その人材の目利きにこれ以上ない適任者がいたので、丸投げすることにした。そう、翁である。

いつも、後は任せた、儂は隠居の爺じゃからのぉ、などと言って逃げるのだから良い気味だ、などと思う宰相であった。


【彫刻家】

→特筆すべき内容はなし。


【近衛】

福慈様の思念波再暴発を発端とした「死の大地」への影響や、潜伏している他の老竜の暴発可能性など多くの考慮すべき内容があり、単なる迎撃部隊を率いる隊長に過ぎなかった近衛からすると、何もかも広範囲かつ重層的で、ついていくのも難儀する困難な事態だった。しかも、そうして苦慮して悩み抜いた結果の結論は「そもそも竜族をもっと知るべきだった」という、作戦立案とはかなり毛色違いの話になったのだからそれも驚きだった。

ただ、そうした中でも、決して折れることなく鋭く意見を出し合う仲間達を得て近衛は高い満足感を得ていた。他種族との交流の恩恵とはこういうものなのか、と。


【賢者の弟子達】

→特筆すべき内容はなし。


【一割召喚された一般妖精達】

→特筆すべき内容はなし。



◆鬼族枠



【セイケン(調整組所属、鬼族大使館代表)】


【レイハ(セイケンの付き人)】

→特筆すべき内容はなし。


【トウセイ(研究組所属、変化の術開発者)】

研究組のトウセイにとっては、今回の研究組の活動はとても刺激的なものであり、伏竜の褒め倒しには何とも居心地の悪さを感じてしまうくらい小市民な振舞いを披露することにもなった。とはいえ、そこは研究組に招かれるだけのことはある生粋の研究者。竜族の術式や、創造術式の贅沢な乱発騒ぎにも、派手さに目を奪われることなく、目の前で起きる現象をつぶさに観察し続ける態度はさすがである。そして小市民と思ったトウセイですら、そうした振舞いをすることで、スタッフからはあぁ、トウセイ様もやはりあちら側なのだ、などと思われるのであった。


【レイゼン(鬼王)】

アキから届いた返書を見ると、賢者が創った銀竜の鱗はとても綺麗で、手の中で溶けていく様は初雪のようで、などと感動を素直に表現していたり、伏竜がすっごく当たりな竜で、こういうとこが凄い、こういうとこが賢い、こういうとこはもっと伸ばすべきだ、きっと雲取様に並ぶ二枚看板になりますよ、というかそう育てますから、なんて話が書いてあって、何ともほんのりとした気分にさせられてしまった。

アキからすれば、福慈様の思念波暴発など、もう対処案もできて後は終わるだけ、という案件でありその程度の粒度なのだ。それに海外へと探査船団を派遣すること、それもこれまでに知られてない未知の他文化圏だと言い出しても、まぁ春先に会ったら説明しますから、だ。もう色々と感覚のズレはあるとは思っていたが、これほどとは笑うしかない。おかげで、アキの返書は見せられる範囲は上層部で読みまわすことになり、呆れたり、驚いたり、困惑したり、と随分と上層部の面々に百面相をさせることにもなった。その辺りの顛末も春先には笑い話として聞けることだろう。


【ライキ(武闘派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【シセン(穏健派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の女衆(王妃達)】

→特筆すべき内容はなし。


【セイケンの妻、娘】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族のロングヒル大使館メンバー】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の職人達】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の竜神子達】

→特筆すべき内容はなし。


【ブセイの兄弟子達】

→特筆すべき内容はなし。



◆ドワーフ族枠



【ヨーゲル(調整組所属、ロングヒルのドワーフ技術団代表】

ヨーゲルも今回ばかりはアキにビシッとあれこれモノ申すことになった。普段とて遠慮はしてないが今回は特に念入りに、創造術式で出されると困るんだ、とアキが誤解しないようきっちり伝えることになった。ある種の敗北宣言とも取れるが、その程度のことで、ずっと創造術式の品質を現実の品に求められる誤解が続くなんてことに比べれば、大した話ではない。それにぽんぽん作られていることで、創造術式の特徴や制限、限界などもかなり見えてきた。今後は、更に術式行使をせず済むよう、目を光らせることになっていくだろう。


【常駐するドワーフ技術者達(アキの使う馬車の開発者達)】

→特筆すべき内容はなし。


【各分野の専門家達】

→特筆すべき内容はなし。


【ドワーフの職人さん達】

ヨーゲル経由で持ち込まれた、幼竜向け家屋の話は彼らをして無理難題のオンパレードだ、と頭を抱える案件だった。何が守るべき条件で何ができるのかできないのか、それらの洗い出しだけでも一ヶ月単位でかかる案件だろう。それに庇護してくれる竜達への献上品となれば、最高の品を、良い品だったと言って貰える品を提供したいのだ。ただ、この感覚は雲取様への感謝と尊敬の念から出ているものなので、他の竜種全部にソレを適用するのはどうか、という観点もあったりする。今は過渡期なので、いずれは竜族相手と言えども、適切な品質というものはあるのだ、と彼らも悟ることになる。例えば地の種族の感覚で作られるような細工の品は綺麗ではあっても竜族からすれば細か過ぎて、普段使いには向かない、とかである。



◆森エルフ族枠



【イズレンディア(調整組所属、ロングヒルの森エルフ護衛団代表)】

アキと調整組の会合でも語ったことだが、雲取様は長年、森エルフやドワーフを庇護下に置いていることもあって、かなり地の種族の流儀を理解し、配慮してくれていたのだと痛感することになっていた。白竜、紅竜は十分理性的だが、それでも、魔術を瞬間発動できる自分達の感覚で、一声かければ何かあれば瞬間対応できるから問題なし、といった感じですぐ魔術をぶっ放す真似をするのは、本当に心臓に悪かった。

精霊とて、竜種の圧倒的な暴威に対しては、何かしても防御なんて何もなしで素通しするのと変わらない、と匙を投げるような有様である。しかし、精霊を愛でるイズレンディアはそれに文句を言うようなことはないし、あんなのに個人が対応できる方がどうかしている、とさえ感じていた。


【森エルフの文官、職人さん達】

→特筆すべき内容はなし。


【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】

今回、福慈様の発した怒りの思念波について、彼らは一回目と同様浴びることになったが、それが前に比べればかなり小さかったこと、混乱とはならなかったことに安堵していた。それくらいに彼らは認識していて、駐在いsているロングヒルでも、やはり前回に比べれば随分混乱は減ったと聞いて、やはり自分達の感覚は正しかったと考えていた。それだけに続報として遠隔地から届いた報では混乱がそれなりに起きており、頻繁に竜族と会うことである種の耐性がついてきているのかもしれない、と考える切っ掛けとなった。確かに選抜されてロングヒルに来ているメンバーは元々、精霊力や武力に優れた者達なのだが、里に残った者達と比べてもやはり竜の圧に対して、ある種の耐性が育ってきていると判断できるだけの明確な差が出てきていたのだ。この事を受けて、常駐メンバーを少しずつ入れ替えて、里に残る者達にも耐性を身に着けさせるべきではないか、などと言う話も出始めていた。



◆天空竜枠



【雲取様(森エルフ、ドワーフを庇護する縄張り持ちの若竜)】

今回の福慈様の思念波の再暴発について、リアから緊急の問い合わせがあり、アキからも問題なのだ、と切々と訴えられては認識を改めるしかなかった。しかも、アキが小型召喚で福慈様を喚び出すという一連の計画も聞かされ、しかも今行うのがベストであり、先延ばしは悪手だと理解もさせられた。

そう、「させられた」のだ。本音を言えば、やはり危ないのでやらない方がいいのではないか、と今でも思うのである。ただ、それは悪癖だと言われればその通りだし、この件で自身が関与できることも少ないとも自覚はしていた。なので、後はせめて伏竜と相談して、福慈様が穏便に今回の策について受け入れてくれるようできるだけ助力しようと思うのだった。


【雲取様に想いを寄せる雌竜達】

白竜、紅竜は今回の騒ぎで、お二人が協力してくれて安心です、と言い切るアキに何とも頭を悩ませていた。確かに二柱が協力して、しかも数々の心の縛りや暴発に至らない配慮などを思えば、アキと小型召喚体の福慈様が対面したとして、いきなり熱線術式で消すような意識が生じる可能性はほぼゼロと言っても良いとは思うのだ。

だが、だからと言って、地の種族の脆弱な身で、他者が展開する障壁シールド頼みで、熱線術式を撃たれる可能性に身を晒すかといえば、竜族目線なら当然NOだ。だからこそ二柱は福慈様のもとに向かい、実際に無意識レベルで放たれる熱線術式を自分達の密度を高めた小型障壁シールドで防げるか念入りに検証するつもりだった。


【福慈様(他より頭一つ抜けた実力を持つ老竜)】

頻繁にロングヒルに通うようになった伏竜からは、毎回報告を聞いていて、それはそれで得るものがあったのだが、地の種族が作った家屋に幼竜を住まわせると聞いた時、もうその時には怒りが爆発して思念波を広域に撒き散らした後だった。暴発させてしまってからすぐに、そのように一方的に怒りを向ける態度は大人げなかったと改めて、その場で取り繕い、その後は普通に話を終えたのだった。なので、実は福慈様の中では、あーミスったなぁ、くらいな意識でありさほど重い認識はなかったりする。他の竜達と同様、終わった事扱いなのだ。

なので伏竜はしっかり説得する、と約束したものの、実は新たな取り組み扱いと捉えた方が良い話だったりする。


【白岩様(雲取様の近所に縄張りを持つ成竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【黒姫様(雲取様の姉)】

→特筆すべき内容はなし。


【アキと心話をしている竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【炎竜、氷竜、鋼竜(他種族登山に名乗りを上げた雄竜達)】

→特筆すべき内容はなし。


【牟古様他(登山先の主達)】

→特筆すべき内容はなし。


【福慈様の部族の竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【桜竜(白岩様に果敢にアタックをかける乙女竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【伏竜(帝国領での東遷事業に参加する最初の成竜)】

東遷事業について、色々学んでいくぞ、腹一杯食事もできて魔力取込みもできて、と彼の生活はそれまでの退屈な日々からは激変したと言っていい。それだけに福慈様の思念波暴発は、理不尽な騒ぎではあったものの、老人故の癇癪だ、くらいにしか思ってなかったので、ソレが地の種族にとって、そして「死の大地」の祟り神対策を考えると放置できない問題だ、と知らされた時は衝撃を受けた。

地の種族と自分達の意識の差、文化の差というのはとても大きいのだと。そして、アキについても何ともアンバランスというか幼さと聡さ、稚気など、様々な面があって、なんとも竜族目線からすると、不思議な存在と感じていた。雲取様はそんなアキを庇護対象としてある意味愛でている訳だが、伏竜からすれば、アキは愛玩動物のような振舞いはしていても、そんな生易しい存在じゃないぞ、と意識を引き締めるような有様だった。

結局、必要性を自ら認めて、心話に用いる所縁ゆかりの品も渡すことが決まってしまった。どこまでが計算で、どこまでが偶然なのか、それすらよくわからない。それが伏竜から見たアキの評価だった。



◆人類連合枠



【ニコラス(人類連合の大統領)】

福慈様の二回目の思念波暴発に、三大勢力で最も頭が痛くなったのは人類連合であり、ニコラス大統領だったのは間違いない。前回の騒ぎでどの勢力よりも魔導具が多く損傷し、社会の混乱が結構長引いたのだから。今でも制約が入っている分野、地域は多いのだ。そこに更なる後追いである。といっても、大統領から働きかけるほどの緊急事態ではない。何か要請があれば、すぐ動けるよう指示をしておく以上のことはする状況ではなかった。

そして、今回の件を受けて、彼はレーザー通信の必要性を痛感していた。今後、東遷事業が本格化すれば、帝国の皇帝直轄領がその事業先となるが、何をするにも遠く、それでいて竜族であればさして時間を掛けず飛んでいける距離であることから、竜族絡みの騒動があれば、東遷事業区域であっても何らかの働きかけをする必要性が出てくるかもしれないからだ。近場の連邦と帝国で対処できることが殆どだろうが、遠いからと連合が他の二組織にお任せでは蚊帳の外ともなりかねない。

一年前には、最前線のロングヒルを超えて、連邦や帝国と連絡を密に取り合いたいなどと思うことなどありえなかっただけに、状況の激変を痛感する思いだった。


【トレバー(南西端の国ディアーランドのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【二大国の一つラージヒルのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【ナタリー(二大国の一つテイルペーストのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【エリー(ロングヒルの王女)】

今回の福慈様の思念波暴発騒ぎに、エリーは多くの民に対して慌てず、騒がず指示に従うよう真っ先に声をかけて、王家の健在をアピールし、そのフットワークの軽さを見せつけることになった。また、多くの他種族の関係各所にも連絡を入れて、まず仲間の安全の確認、確保を優先するよう働きかけ、必要に応じてロングヒルの警備部隊も助力する旨を伝え、連絡要員まで付ける徹底っぷりだった。その辺りまでやったところで、後は二人の兄に役割を引き継いで、今度は共和国の大使館領に赴いて、大使ジョウに面会をして、竜族側の状況確認をするという働きっぷりで、実は何気に東奔西走してる有様だった。

仕方ないことなのだ。誰もがエリーが来て笑顔で大丈夫、慌てないでと話しかければ、それだけで不思議と騒ぎも落ち着いていくのだから。それだけロングヒル王国内において、エリーは有名人であり、その人柄や能力を誰もが認めているということなのだろう。必要があれば竜族にも連絡を入れて調整するから、とエリーが言えば、彼女ならそれくらいの事は確かにするだろう、と誰も疑問に思わないし、それを実際にやれるだけの影響力もあるのだ。


【ヘンリー(ロングヒルの王様)】

福慈様の思念波暴発騒ぎも二回目ということで、前回の教訓を元に再発した場合の対策が予め取られていたのが功を奏した。移動車両の全停止など、魔導具故障で事故が起きそうなところは全部、停止、或いはそれに近い状態にする徹底っぷりである。本来、最前線の防衛の要であるロングヒルでそのような措置はあり得ないのだが、今では弧状列島において最も争いから縁遠い、多くの種族が集いし王国、それがロングヒルなのである。ならば、人々の安全確保こそが最優先と方針を変更したのだ。ロングヒル王国建国以来、あり得なかった優先度の変更であった。そしてその判断に対して異論を延べる者はおらず全会一致で採択されたのである。ロングヒル王国は王政ではあるものの、関係各所にはそれなりに権力が認められており、必要があれば反対を申し出ることもあるのだ。ただ、まぁ、流石にロングヒルの民もすっかりこの新しい日常、状況に慣れたのである。


【セシリア(ロングヒルの御妃様)】

福慈様の思念波暴発もあって、王族総出で国内対応に奔走している状況だ。ヘンリー王が外向けの指揮に出ている中、内を統制しているのはセシリア妃となる。両トップ状態で、更に二人の王子を王とは別の地点に向かわせることができているからこそ、王国内はどこよりも混乱を防ぐことができていると言えるだろう。エリーは最初から、何かあったらアキの対応、と手を敢えて空けている状態だったりする。竜族関連の騒ぎなら心話で直接働きかけられるアキに繋ぎを入れておくのが最も効果があるからと皆が認めているからである。まぁ、今回はアキが寝てる時間帯だったので、共和国にいるリアが対応したのだが、その場合も共和国にすぐ連絡を入れられる共和国の大使館領に出向くのが最善なのだ。今回もリアが対応した件は、大使ジョウを経由してすぐさまロングヒル王家へと連絡が届くことになった。


【エドワード、アンディ(ロングヒルの王子様達)】

福慈様の思念波暴発もあって、王族総出で国内対応に奔走している状況だ。エリーは何よりも最優先すべし、ということでアキの呼びかけに対応してくれているが、治安維持に軍も出動しているし、非常事態宣言が出されて国内の移動を落ち着くまで制限するなど、それなりに緊迫した状況になっていたのである。ただ、大使館領や離れた第二演習場しか行き来してないアキはそうした騒動があることは届かないので、エリーから大変だったのよ、と言われたことを鵜呑みにするしかない。まぁ、知ったところで何かできる訳でもないのだが。ただ、頻繁に天空竜が飛来しているせいか、民も多少慣れてきているのか深刻な被害が出ていないのは幸いだろう。

なお、前回の思念波騒ぎと同様、魔導具の故障は相次いでいて、なかなか泣ける事態だったりする。人は耐性がついてきても、魔導具はそうはいかないのだ。


【ザッカリー(研究組所属、元ロングヒル国宰相)】

今回の大規模実験にはザッカリーもスタッフエリアで参加していたのだが、改めて感じたことは竜族が竜神と呼ばれるに相応しい生ける天災であるという事実であった。行使された術式の何もかもが地の種族の常識からすれば、気軽に溜め無しで放っていた熱線術式ですら、地の種族換算なら戦術級術式であり部隊が壊滅するような技なのだ。それをまるで剣士が素振りでもするような気軽さでばんばんぶっ放してくるのだから、もう常識などそこらの草葉の陰で泣いているに違いなかった。

また、アキがバンバン使っていた創造術式も頭が痛かったし、ケイティが使っていた常闇の術式とて戦略級術式である。そして、見回してみれば研究組の連中は誰もがその術式の行使を酷く熱心に眺めている始末だった。研究組の中でトウセイくらいだろうか、腰が引けていたのは。そんな彼とて腰は引けていても観察は続けているのだから、やはり研究組にいる連中は、そういう連中であり、自分のような常識人から遠く離れた存在なのだ、などと思うのだった。

なお、もし、彼の独白をソフィアが聞いていたなら、常識人? 誰が? 冗談言ってんじゃないよ、と鼻で笑われたに違いない。



◆小鬼帝国枠



【ユリウス(小鬼帝国皇帝)】

アキからの返書が届き、そこに書かれていた内容に何とも驚くことにもなり、それでも、答え合わせができたと安心もすることになった。街エルフ達が帝国領の詳細を把握しており、それを帝国側が一切察知できていなかったことは国防上、懸念事項としてずっと残っていたのだ。そして今回の話から推測すれば、探知できない隠蔽手段を持って、帝国領上空を飛行して観測した、と言う話ではなく、遥かな高空、恐らくは世界儀のように眺められるほどの遥かな高高度から観測する、何らかの方法があるのだろう、と理解できたのだ。そして、それは帝国の技術ではどうにもならない相手であり、だからこそ、ソレへの対処は命じる必要がなくなったのである。

種明かしは次の春に会った時にするというのだから、それまで待てばよい。賢者が見せたという銀竜の鱗を創ったという術式の改良にも興味があったし、アキが記していた新たな天空竜、東遷事業に深く関わることになる伏竜の性格についても多くを知ることができて、これは何とも会わねばならないと考えてもいた。東遷事業が行われるのは帝国、それも皇帝の直轄領なのだから、よしみを結ぶのは自然なことなのだ。

そして、ここまで考えて、ふと自分の認識に笑うことになった。あの天空竜に対して、前に立つだけでも決死と言われる竜神に対して、これはよしみを結ばなければ、だ。歴代の皇帝とてここまで気軽に交流相手として竜種のことを認識したものなどいないだろう。竜族は良き隣人ですよ、とアピールするアキに随分と毒されたものだと思い、そうした変化を心地よく思うのだった。


【ルキウス(護衛隊長)】

→特筆すべき内容はなし。


【速記係の人達=ユリウス帝の幕僚達】

→特筆すべき内容はなし。


【ガイウス(研究組所属、小鬼チーム代表)】

理論魔法学のチームを率いる彼にとって、今回の白竜、紅竜、それにアキが行っていた各種術式の乱舞は、多くを考えさせられることになった。特に妖精族が使えるといった空間断絶術式、それは結局、実演されることはなかったものの、その術式の(ことわり)は何とか情報を手に入れたいと強く感じていた。地の種族のこれまでの魔術体系にはない術式なのだ。それに妖精族との交流をしている中でも聞いた事すらなかった術式でもある。ソレは次元門構築への何かのヒントになるかもしれない。今はとにかく未知を少しでも削って行かなくてはならないのだ。そして、空間断絶術式は世界そのものに対して干渉する特性がある。これは既存の術式体系にはない特徴だ。常闇の術式のように(ことわり)を少し歪めるのとは訳が違う。というわけで、ガイウスは賢者に接触して、その技法について何とか知ろうと画策するのだった。


【ユスタ(小鬼研究チームの紅一点)】

彼女は他種族の振舞いに興味を持ち研究しているだけあって、今回の各種実験における竜達の振舞いにも、その興味を強く向けていた。会話ができても、本質的に何かズレがある、そういう印象を抱いたからだ。一応、声はかけてくれるから配慮する意識はあるのだろうけれど、返事を聞く前に術式をぶっ放す様は、地の種族とは意識の持ち方が根本から違うのだろう、とかあれこれ考えていたりする。それに竜神子でもあるので、他のメンバーよりもずっと平静を保っていられて、その様は余裕と言って良い落ち着きぶりであり、なんだかんだと他の研究メンバーからも、特に竜絡みでは呼ばれることが多かったりする。


【小鬼の研究者達(小鬼研究チーム所属)】

白竜や紅竜が集いし研究の場には彼らも参加していたが、魔力こそ少ないものの、理論魔法学の専門家として抜擢されるだけの連中なだけあって、戦術級術式が吹き荒れる様子もなんのその、障壁シールドに連射される様や、アキが創造術式で生み出した品や、それへの数々の魔術行使に食い入るように凝視して、それらが理論視点だと何を意味するのか、そこから何が導けるのか、何を示唆しているのか、と目を輝かせて観察し続けることになった。当然だが、そんな様子を見ていたスタッフ達からは、あぁ、やっぱり研究組の連中は色々とぶっ飛んでるわ、とか思われてるのであった。



◆街エルフ枠



【ジョウ(ロングヒル常駐大使)】

ヤスケが戻ってきてからというもの、アキとの対応に共に出席する事を求められることが増えてきた。それだけ重要性が高いということもあるのだろうが、ヤスケに試されている、丁度良い学びの場だと働きを見せろ、と圧を掛けられていると強く感じていた。ジョウ自身が感じたようにそれは被害者妄想でも何でもなく、ヤスケが未来の長老候補としてジョウをちょいと鍛えようと考えただけである。なのでジョウが積極的には発言することを推奨しているし、それで何かミスがあったとしても、それで何か得られれば問題なし、という長命種らしい認識すら持っていた。そして、ジョウもそういった街エルフの流儀は重々承知しているので、逃れ得ぬ立場に至ったのだ、とそこはもう受け入れることにしたのだった。一年前には定例業務ばかりで退屈だなどと嘆いていたのだから、今の状況は願ったり叶ったりではないか、などと自嘲気味に思ったりもするのだった。それにまぁ、苦労は多いものの、ちょっとそれより多いくらいには遣り甲斐と楽しさがあるのも事実だった。


【ヤスケ(ロングヒル駐在の長老)】

ロングヒルに舞い戻ってすぐ、福慈の奴がまた思念波を暴発させおった、と苦虫を嚙み潰したような顔をしたものの、ここで上が慌てても意味がない。平静な態度を僅かとはいえ崩してしまったことに内心、忸怩たる思いを持ちながらも、ジョウ、ハヤトの二人にできるだけ仕事を任せて自分は少し下がる位置にいる事で目立たぬよう振る舞うのだった。二人には経験を積んで、ヤスケと共に並ぶところまで育って貰わねば困るのだ。街エルフも人口はそれなりにいるものの、長老衆に加えてもよいと思える逸材となるとなかなかいないのが実状なのだ。伸びしろがあり届きそうだと思うなら、褒めてやらせて伸ばして、とやらなければ後任が育たない。

そんな長老としての悩みとは別に、近頃のアキは本気で遠慮がなくなってきているように見えて、何とも扱いに困っていた。自分自身が自覚しているように、どう見ても誰かに好かれるような眼差しなどしていない。死んだ泥のようなどす黒い目だと自分ですら思うのだ。なのにアキは、まぁそれはそれとして、などと横において、お爺ちゃんと絡んでくるのである。嫌な訳ではないが困る。それが正直な思いだった。


【街エルフの長老達(本土にいる面々)】

外伝⑫でも描かれたように、長老衆の多くが頻繁に大きな騒動を起こす竜族の動向に警戒感を露わにし、アキのことを制御不能な存在として恐れる意識すら持っていることが明らかになった。ただ、ジロウ、クロウの誘導もあって、アヤやロゼッタに散々、論破されることになって、自分達がいつのまにか酷く守りに入っていたのだとも気付かされることになった。ジロウ、クロウがアキに対してそうした感情をあまり持たなかったのは、やはり直接接点を持って、アキがそもそも、そんなことは気にもしてないという本質を見抜いていたからだろう。アキが今回やったこととて、好意の前払い程度、サービスに過ぎない、そうアキは思っているんだろうなぁ、とか察するくらいには二人はアキのことを理解しているのだ。


【ファウスト(船団の提督、探索者支援機構の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【船団の皆さん】

→特筆すべき内容はなし。


【ミアの親友達】

→特筆すべき内容はなし。



◆その他



【ソフィア(アキの師匠、研究組所属)】

今回は色々と引っ張り出されることが多かったが、やはり一番楽しかったのは妖精達が次元門構築を最優先課題と明示したことだっただろう。三界を繋ぐことの利は、彼女自身が語ったように、とても強く感じていたからだ。それに召喚された妖精と、妖精界を経由することで、惑星ほしの反対側とも直接通信を可能とするというアイデアも何とも素晴らしい。今いる研究組のメンバーに全く不満はないが、弧状列島だけでこれだけ逸材が集まるなら、世界に視野を広げればまだまだ在野の突き抜けた逸材はいるに違いないのだ。ぜひ交流してみたいものだ、これまでに接点がない文化圏、大いに結構、こちらにない発想、技法なんてのもあるかもしれない。なんて楽しい世の中になってきたんだろうねぇ、とご満悦なのだ。


【街エルフの人形遣い達(大使館領勤務)】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の神様】

福慈様の思念波暴発のエリアにはがっつり入っているので、ヴィオに聞けば何か反応を聞けるかもしれない。ただ、連樹の神様から何か言ってきたという事はなさそうなので、大したこととは認識してない可能性は高そうだ。


【ヴィオ(連樹の巫女)】

ヴィオは研究組の集まりに出席し、二柱の天空竜が熱線術式を派手にぶっ放す様を見せられて、強い恐怖と、彼らが竜神と言われている所以を改めて理解することになった。戦略級術式のような大火力を前に、おー、凄いなどと喜んでいる研究組の態度の方がおかしいのである。スタッフ席にいる大勢が超遠距離砲撃の実演に顔色を青くしていたのを見て安堵してしまったくらいだ。あぁ、これが普通の反応だ、と。ただ、そんな「私は一般人枠です」という意識とは裏腹に、試練大好きと隠そうもしない依代の君に対して、ダニエルと二人、これはきっちり言い聞かせねば、とか決意を燃やすのだから、十分一般枠から逸脱していると知るべきだろう。依代の君だって見た目こそ子供だが、抑えている今ですら一流魔導師に匹敵する神力を常に身に纏っているのである。ヴィオが幼少の頃から、連樹の神様と親しいからこそ起きている認識のズレである。


【連樹の神官達】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の民の若者達】

→特筆すべき内容はなし。


【世界樹の精霊】

福慈様の思念波暴発のエリアにはがっつり入っているので、誰か話を聞きに行けば何か反応を得られるかもしれない。とはいえ、アキが心話で接触した際の感触からもわかるように、非言語系の比率が高い事もあって、仲介をしてくれる巫女がいる訳でもなく、話が聞けるとしたら頻繁に通っている黒姫様くらいなものだろう。ただ、その黒姫様自身が、今回の暴発は大した話ではなく終わったこととして、多分もう記憶からも薄れているくらいだろうから、世界樹の反応を誰かが知ることはないだろう。


樹木の精霊(ドライアド)達】

→特筆すべき内容はなし。


【マコトくん(マコト文書信仰により生まれた神)】

→特筆すべき内容はなし。


【依代の君(世界樹の枝から作りし依代人形に降りたマコトくん)】

彼は前々から話には聞いていたものの、ずっと接点がなく気になっていた福慈様が小型召喚でロングヒルに喚べること、そして、激しい心の葛藤に追い込まれ、それでもなお、地の種族への激しい怒りを理性でねじ伏せられるかどうかという、恐らくは老竜の長い生涯においても一、二位を争うだろう精神的葛藤を抱えて、それに挑む様に立ち合えることを大いに喜んでいた。きっと福慈殿は試練を乗り越えるに違いない、などと最前列でその様を観戦する気満々なのである。なお、そうした振舞いは決して褒められたものではないとヴィオ、ダニエルからがっつりお小言を貰う事にもなり、一応、表面的には殊勝な態度を取ることを約束させられたのだった。

試練を克服した福慈殿を労うくらい良いだろう? などと食い下がって、二人からも呆れられることになったが、依代の君からすれば、神の名において賞賛するに値する行為を為したなら、褒めるのは義務とさえ思っていて悪気はゼロである。こういう態度を取るから、雲取様からアキと根は一緒だ、などと称されるのである。


【樹木の精霊ドライアド探索チームの探索者達】

→特筆すべき内容はなし。


【多種族による「死の大地」観察登山の参加者達】

→特筆すべき内容はなし。


【邪神、祟り神(「死の大地」の呪いに対する呼称)】

今のところ、状況に変化なし。ただし、変化がない事は、福慈様の二度目の思念波暴発について検知しなかった事を保証するものではない。何せ、精神的な被害を出すエリアは「死の大地」まで届かなかったものの、思念波暴発を検知した術者の分布領域はそれよりずっと広く、その領域までの距離は、「死の大地」を余裕でカバーする範囲だったのである。ただ、祟り神を構成する膨大な量の呪いの挙動はまだ多くが未解明であり、外部からの刺激に反応をするといっても、何に対してどの程度、どういった反応をするのか、そのレベルですらまだ帝国領に残る呪われた地で調べ始めたばかりなのだ。


【マコト文書の神官】

→特筆すべき内容はなし。


【心話研究者達】

アキが雲取様と心話ができるのを羨んで始めた研究は進捗も捗らず、小型召喚で無理なく雲取様と話ができる状況になった事もあって、作業は後回しにされがちだった。ただ、そこに飛び込んできたのが、妖精の国の国民総出での心話、魔力共鳴の大規模検証の話である。そこでこれまでにない新たな知見があれば、突破口になるかもしれないと彼らも色めき立つことになった。とはいえ結果待ちである。暫くはのんびり待つしかないのだ。

ふぅ。普段の投稿の5倍とかの分量なのでやはり大変でした。こうして書いてみると心境、意識の変化を迎えた人がとても多かったですね。福慈様の思念波暴発2回目はそれだけ大きなイベントだったのでしょう。まぁ、アキからすると寝ている間に終わってしまった話なので、いまいち実感がない話でもあったのですが。


<今後の投稿予定>

二十四章スタート          十一月二十四日(日)二十一時十分頃

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