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23-25.伏竜様と相談する(前編)

<前回のあらすじ>

雲取様との心話を終えた後、まつりごと系関係者三名(父さん、ヤスケさん、ジョウさん)にあれこれ報告することになりました。まぁ、手間を省くことは必要ですよね。ただ、雲取様をじゃれあった話を伝えたら、なんかドン引きされたのは意外でした。(アキ視点)

今日は伏竜さんと対面できる日だ。 ロングヒルに彼がやってくる時 出ないと話ができないのはやっぱり不便だよね。今回はその件も含めてだからこそ心話が必要だ、という方向でちょっと攻めてみようかな。


「アキ様、今朝はリア様とのレーザー通信にまずは対応をお願いします」


「リア姉?何か急ぎの話とかありましたっけ?」


僕の疑問にケイティさんが苦笑しながらも 理由を教えてくれた。


「アキ様、昨日一日であれだけ多くの物事が動いたのですからリア様も心配されているのですよ」


 あぁ、なるほど。


確かに 研究組に合わせて紅竜さんも呼んで検証作業を行って、その後は調整組や参謀本部の皆さんとあれこれ 話し合って、雲取様と心話を行って、最後に ヤスケさんたちと 情報共有を行ったからね。 確かに 昨日は 盛り沢山過ぎた。


「それで、すぐですか?」


「いえ、伏竜様は食事や 魔力の取り込みといった作業を先に済ませますので、 アキ様は朝食を取られてから、館とのレーザー通信を行い、それから 第二練習場に向かっていただきます」


 ふむ。


「それなら余裕がありますね」


通りで、身支度も急かされないし、食事もちゃんと食堂で落ち着いていただける訳だ。毎回、時間がないからと、打ち合わせをしながら軽食で済ませると言うのもお行儀が悪いからね。


今朝は 焼き鮭定食ってところかな。 焼いた鮭の香ばしい香りや 炊きたてのご飯のつやつやとした輝き、それに 味噌汁の 穏やかさが何とも心を落ち着かせてくれる。


お新香 がまた 良いアクセントになってくれて 食べ飽きないんだよね。焼き海苔のパリパリした食感も最高だ。


「ご馳走様でした、アイリーンさん」


「お粗末様デシタ」


そう言って、少し渋めの緑茶を淹れてくれた。


うん、うん。


口の中がさっぱりして、頭もクリア。最高のスタートだ。


「美味しそうに食べるのぉ」


お爺ちゃんもニコニコと笑みを浮かべている。小指の先ほどの小さなマグカップに注いで貰った適温の味噌汁を飲んで、お爺ちゃんもご満悦だ。


「味噌も醤油も、大豆から生まれた調味料は発酵食品だから円やかなのかもね」


「儂らも再現を目指しているが、どちらも難しくてのぉ。それに時間もかかる。じゃが、こちらでこのように儂らに合わせて適温で出して貰えた味噌汁を飲んだ者達の意欲は空を貫かんばかりの勢いよ」


 ほぉ、ほぉ。


「大豆は見つかりそう? 日本あちらだと、大陸から伝えられたものなんだよね」


「うむ。入念に探したんじゃが見つからなかった。儂らの領地にも世界樹があればそれに頼む事もできたんじゃろうが、こればかりは仕方ない」


 ありゃ。


「それでどうしたの?」


「うむ、森に出入りしている村人と接触して、尽力して貰っておるところじゃ」


 おー。


「無事、協力を得られたようで何よりだったね。おめでとう。でもすぐ分けてもらえないって事は近場の村には無かったの?」


「いや、あるにはあったんじゃよ。ただ、その質がのぉ。皆がアイリーンが出してくれた味噌汁や醤油を食したじゃろ?」


 あー。


「つまり、舌が肥えてしまった、と」


「そうなんじゃ。村人も分けてくれたんじゃが、味噌も醤油も色々と残念でな。協力を得て、上を目指すことにしたんじゃよ」


製法はアイリーンから教えて貰ったが、そのままいきなりは難しいと言う事で、あちらの村にある設備でできる方法を試している、と教えてくれた。


いやはや、それは何とも大変だ。自分達に実際の経験もなく、現物も目にできず、間接的に村人に指導して、味噌、醤油の改良をしていくなんて。


「それは何とも大変だ。でも、やる気のある村人さんに巡り会えて幸いだったね。何か意欲(モチベーション)を高める工夫でもしたの?」


「アイリーンに頼んで、醸造施設の見学や体験学習もさせて貰った。その時の経験と記憶を元に、幻影術式で具体的に示して、注意すべき点なども伝えた事もあって、単なる戯言ではなく、実際に手の届く技法だと理解して貰えたんじゃ」


 おー。


実物大の幻影を出して、本職も納得できるだけの受け答えをして、手順の手直しを話せるなら、確かに試してみようというかにもなるだろう。


「あー、ただ、人族は侵攻をしてくるくらいだから、妖精さん達との接触って、何かトラブルのもとになる心配はない?」


「儂らもそれは懸念しておったんじゃが、今回伝えている技法は、小さな工夫の積み重ねじゃからな。村人達が自分達で試行錯誤して編み出した事にすれば、そう荒事にもならず済むという塩梅じゃ」


 なるほど。


「そもそも、妖精さん達は公益と言っても量を必要としないから、村の外からだと変化も分からないだろうね。それで妖精さん達はそれでいいの?」


「良い、良い。わざわざ儂らのために村人達が窓口になってくれるなら、相応の旨味があった方が関係も長続きするじゃろうて」


 ん。


「村が裕福になれば、妖精さん達の欲しがるモノも手に入りやすくなる。村人も質の高い特産品を生み出せて豊かになる。良い関係だ」


「そう言う事じゃ」


取引は互いに益がないと長続きせん、とお爺ちゃんも感慨深げに頷いた。





本国の館とのレーザー通信の部屋は僕が触るとアウトな魔導具だらけなので、ケイティさんに指を一本ずつ絡めた恋人繋ぎで連行され、立ち位置でも肩を掴まれて、ここから立ち位置を変えないように、と念押しされることになる。


「やぁ、アキ、昨日は随分と色々あったね」


リア姉の感じからすると、昨日の件の情報共有は終わってるようで何よりだ。


「うん、まぁ、細かい話はあったけど、伏竜様か雲取様が福慈様を説得してくれて、ストレス解消に向けて召喚して、僕と対面する方向で纏まってくれたよ。雲取様も伏竜様と同性の友達同士として仲良くしてくれそうだから、後は伏竜様次第だね」


そう言うと、リア姉は一応頷いてくれた。


「竜族に対して、引っ込み思案兄達とか言い出すのはアキくらいだと思うけどね。それでも、紅竜様、白竜様、雲取様と話の折り合いがついて良かった。それで、今後なんだけど」


 はて。


「今後?」


「当初の予定では私と母さんは暫く、本国で仕事をするつもりだったけど、明日にはそちらに戻る事にしたから」


 おや。


「随分早いお帰りだね。勿論、二人が戻ってきてくれるのは嬉しいけれど、何かあったの?」


僕の問いに、リア姉は大げさに肩を落としてから、一言、一言、岩に刻むように理由を教えてくれる。


「長老達の技術的、知識的なフォローをするつもりだったけど、そんな()()()()()()に拘っていては駄目だと悟ったんだよ。今回の件もそうだけど、竜族社会への介入が早すぎて、全然手が追いついてない。三大勢力との直通連絡網も速やかに開通させないといけないって話になってね。研究所の技術支援と専門技師、魔導人形達も引き連れておくことにしたよ」


 なんと。


「なんか、凄いことになってるね。リア姉はこちらで陣頭指揮をするのかな? お疲れさま」


僕が労いの情感たっぷりに伝えると、リア姉は肩を落としながらも、疲れた笑いを見せてくれた。


「色々と議論もあったんだけどさ、結局、私達は竜族の影響力の広さ、早さを余りに理解してなかったと痛感したよ。しかも竜族に問題意識を持てというのは無茶で、あの方々は彼らなりに十分、善処してくれている。……ただ、それだけに竜族への対応を行う体制はもっとずっと分厚くすべきだった。その先鞭をつけると言うことで、私と母さんはそちらを優先することにしたって事」


 ふむむ。


なんか、かなり言葉を選んでる臭い。それに色々と限界そうだから、今はそっとしておこう。


「二人も移動は安全第一でね。詳しい話はまた明日。今日は伏竜様と話をするだけで、そんなに物事が動くことはないから」


「そうなる事を祈ってるよ、それじゃまたね」


リア姉はそう話を切り上げると、レーザー通信を終えた。何とも慌ただしい話だったね。竜族のための体制が分厚くなることは嬉しいことだけど、何か僕への風当たりの強くなりそうな気がする。気を付けよう。


いいね、ありがとうございます。やる気がチャージされました。


伏竜との話の前に、急ぎで本国にいるリアから、急遽戻る旨の連絡が飛び込んできました。

リアも話しているように、竜族と言う存在への理解、危機意識が足りてなかった、と猛反省することになったんですよね。今回の出来事も客観的な事実を並べてみれば、アキの不手際と言えるところはなく、それどころか迅速に最善手を打った、とさえ言えるわけで、アキを攻めるのはお門違い。

……という結論に、散々、振り回されて、愚痴を言って、そもそもアキが悪手を打ったのか、なんてとこから検証し直して、結果、軽い変更すら大きな社会変革になるほど竜族社会がシンプルなことが大元の問題であって、アキがやってるような交流程度、誰がやっても大きな変化を生むのは不可避なのだ、と長老衆やアヤ、リアも理解するに至りました。あー、この辺り、SSで補足した方が良さそうですね。

アキからすると、なんか母さん、リア姉が早めに帰ってくるのか、家族が近くにいるのは良いことだね、くらいで軽くスルーされてしまう話なんですけど、組織としての街エルフの国の関与の仕方が大きく変わった節目だったりするので。地味ですけど。


次パートからは、伏竜様とのお話、それが終われば23章も終わりということになります。なんか随分と手間がかかりましたね。


次回の更新は2024年10月30日(水)の21:10です。


<宣伝>

エッセイ「【奇跡的タイミング】韓国が掴んだノーリスク・ハイリターンの好機 ~ウクライナ勝利を決定づける立役者へ~」(全10パート)(完結)を公開しました。北朝鮮がウクライナに派兵する事に伴い、韓国がウクライナに武器・弾薬提供を解禁するか、という件に関する深い考察になります。


第一章が現在状況をChatGPTと二人三脚で分析した内容の紹介と、意外な顛末。

第二章が生成AI(ChatGPT)を利用する上で浅く問う場合と、深堀りする場合の差に関する紹介になってます。


ご興味がありましたら、一読してみてくださいませ。

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