表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
700/769

23-22.先ずは雲取様に連絡と相談(前編)

<前回のあらすじ>

参謀の皆さん達について、ちょっと誤解していました。軍師みたいな方々と思ってたけど、王の視点、意識まで求めるのは酷だと。なかなか難しいですね。(アキ視点)

なんだかんだと色々あったけど、取り敢えず関係者の皆さんとの意見交換も終えることができたから、先ずは雲取様に連絡と相談を行うことにしよう。どちらにしても伏竜さんの所縁ゆかりの品はまだ貰ってなくて、心話ですぐ話をするって訳にもいかないからね。


同行して貰っていたベリルさんの纏め資料を見つつ、記憶に抜けがないことも確認。


そうしてちょっと休みつつ、お茶している間に奥の心話魔法陣の準備も完了した。


 さて。


では、雲取様との心話を始めよう。


<雲取様、ちょっとお時間よろしいですか?>


<どうした? 急ぎの用事か?>


 ふむ。


伝わってきた感じからすると、特にお忙しかったとか、取込み中ではなさそうで何より。


<えっと、昨日、福慈様がお怒りになったでしょう? その件でちょっと相談があるんですよ>


<聞かせて貰おうか>


 あー、うん。


予想してはいたけど、福慈様と聞いただけで、腰を落ち着けて話を聞こう、といった感じに意識が切り替わったのが伝わってきた。何気ない会話の時に比べると、居住まいを正してしっかり僕の発言に意識を向けようとした感じだ。


<雲取様も感知された福慈様の思念波暴発の件ですけど――>


伏竜さんと幼竜向けの家を建てようという話で盛り上がった件は寝る前に報告してあったから軽く流して、その話を伏竜さんと福慈様が恐らくは行って、その話の中で福慈様が怒りを爆発させただろうことも、雲取様からリア姉が聞いた話だから軽く触れる程度にして、ソレが竜族の間ではあまり問題とはならなかったこと、そして地の種族の側では、竜の咆哮(ドラゴンズロア)に匹敵する恐怖を広い地域の多くの都市の人々が感じることになり、騒ぎになったり、病院に担ぎ込まれたりとそれなりの騒動になったことを伝えた。


<だから、問題があると?>


あー、雲取様ももう終わった事という認識なのと、尾を引くような害も出てないって感覚か。ただ、地の種族が騒ぎになったと聞いて、それは雲取様の感覚としてもちと不味いと言う意識は持って貰えたようだ。


<今回の思念波が届いた範囲については、竜からの直接の発言を伝えるほどではなく、騒ぎを起こすつもりはなかった、と福慈様も話されていたと間接的に伝えれば十分かなと思います。誰だって不注意はありますからね。きっと代表の皆さんもあぁ、それならばと納得するでしょう>


<うむ。今回はその話を私から福慈様に伝えるよう願う為……ではなさそうだな>


 お、鋭い。


<はい。ご推察の通り、弧状列島は今後、「死の大地」の浄化作戦を行う予定であり、同地にいる祟り神に対して可能な限り何の刺激も与えず、こちらの動きを察知させず、必勝の準備を整えて、祟り神が対応できないよう畳みかけるように浄化していき、呪いを分断して、力を削ぎ、各個撃破していく予定じゃないですか。今回の件はたまたま実害はなかったけれど、祟り神に対して刺激を与えかねない危険性があったということで、再発防止策を講ずる必要があると考えたんですよ>


ここで、イメージとして、単に反省しました、もうしません、と福慈様が意識されるだけでは再発防止策足りえないことを伝えることにした。じっくり考えて行動するような件なら、考えていく過程で問題点を思い出して、失敗行動を繰り返さないよう注意することができる。ところが今回のような意図しないタイミングで思わず感情的になってしまった、というようなシーンでは、思わず激高してしまった、それをしてしまった後でしまった、と気付くけどもう怒った後だった、となってしまい、再発防止にならないのだ、と。


<言うことはわかる。だが、思わず高ぶるのが心というモノ。どう再発防止をしようというのだ?>


流石、雲取様。何せ心の問題であって、その発動はある意味、瞬間的だからね。誰かと話す前に予め、話す内容が見えているなら、不快な感情になりそうな話題でも、短絡的に怒らないように、様々な角度から物事を眺め直して、盗人にも三分の理、相手の言い分を考慮すれば怒りも抑えられるってことにもなりやすいと思う。


ところが、話の内容がわからない中、会話をしている時に不快なネタを踏んでしまったとしたら、そこで多少不快な気分になる程度ならいいけど、思わず怒鳴り散らすような内容だったなら、そうしまいと思ってたとしても、どれだけ抑制効果があることやら。半端な怒りじゃない。福慈様の心の内にはかなうなら相手を八つ裂きにしてやりたいというくらい沸々と煮え立つ溶岩のような怒りが満ちているんだから。


表面的に落ち着かれているのも、年老いて体が休みを、眠りを欲しているからこそ意識の活動レベルが下がってるから、という部分が結構ありそうなんだよね。


 あー。


となると、今回の策で福慈様が元気さを取り戻すと、それはそれでちと危うい要素を新たに抱えることになりそうな気も。


<アキ?>


おっと、いけない、長考し過ぎた。


<すみません、そこそこ複雑な話なのでどう話そうか、順番を確認してました。えっと、まず福慈様なんですけど、感情が一気に跳ね上がるような振舞いとなるのは、心の内に秘めた感情があまりにも大き過ぎて、それがパンパンになっていて余裕がなく、ストレスを常に多く抱えたままであるせいだと思ったんですよ。誰だって余裕がない時だと、落ち着いた時よりも反応が雑になりますから>


<ふむ>


<そこで考えたのが、福慈様を小型召喚して自由自在に空を飛んで貰ったり、美味しい食事を楽しんで貰ったらどうかな、って。頭を空っぽにして空を自由に飛ぶと皆さん、ストレス解消になるでしょう? 白竜様も小型召喚したら、こちらが声をかけるまで延々と飛び続けてたくらいですからね。皆さんにとって、空を飛ぶということは楽しいこと、考え事をせずに楽しめる娯楽でもあるのだろうと>


<アキの言う通り、我らにとって空を飛ぶということはそれだけでとても心躍るものだ。それにアイリーンの出してくれる料理もまたとても美味しく、それもまた心が癒されよう。だが、召喚となると危ういのではないか? 小型召喚にすれば力の総量は減るだろうが、それでも福慈様ほどともなれば、その気がなくとも、地の種族に術式を放ってしまいかねん>


 ふむ。


雲取様も福慈様が抱えるドロドロした心の奥底に眠る怒りの溶岩流の激しさを理解していて、無意識レベルですら術式を発動させかねない、と危惧されたか。なるほど、そこまで理解してくれているなら話が早い。


<はい。なので、小型召喚で喚ぶ際に、視界に入る街エルフが僕一人になる段取りにしておこうと思うんです。結局のところ福慈様の心の持ちようの問題なので、可能な限り、拒む意識が起きにくい状況を予め用意しておくことで、暴発の可能性を徹底的に下げるつもりです。僕が立つ理由は――>


僕がイメージを通じて伝えたことで、しっかりと外見をみて識別できる恐らく唯一の街エルフであること。完全無色透明の魔力属性なので、魔力感知をして無意識に反応する可能性を排除できること。見た目が華奢で弱そうで小さな女の子となれば拒絶感も減るだろうこと。これまでの交流を通じて僕だと認識した上で拒絶意識が湧く可能性は少ないだろうこと。


 あー、依代の君に念押しされたし、これも伝えないと。


僕が竜神の巫女として、弧状列島の諸勢力を束ねる要であり、竜族や妖精族も参加して統一国家を樹立する意味でも、僕を損なうことは竜族の未来に大きな影を落とすことになるので、そうした意味からも害してはならない、という意識を持ちやすいだろうこと。


<あと、当日の衣装を着た姿も召喚前に予め伝えておくことで、見知った対象だと意識付ける工夫もします。それと僕の両脇には白竜様、紅竜様に控えていただきますし、僕の前には依代の君が立つことにもします。これによって、第一印象として排除する意識が湧く可能性を徹底的に減らすんです>


<……確かにそこまでの条件が重なれば拒む意識が湧く可能性はとても小さくなるだろう。だが、それでも無意識に拒む意識が湧けば、それによって熱線術式が発動し一瞬でアキを焼き消してしまうだろう>


雲取様の今の意識はジョージさんと同じセキュリティ部門目線ってことだ。可能性が少なくなってもゼロでないなら対策しないと駄目だ、と。


<はい。可能性は低くとも万一の事態は想定しないといけません。何より避けるべきはそうして対面する街エルフ、つまり僕にその意識がないのに福慈様が危害を加えてしまうこと。ですので、白竜様、紅竜様に予め小型召喚体の福慈様と、僕の立ち位置の射線を塞ぐ形で強固な障壁シールドを重ねて展開して貰い、そうした前準備をしてから福慈様を喚びます。これなら熱線術式が放たれてから防ぐのが難しい問題を回避できますし、二重に重ねた障壁があれば、その二つを雑に放った熱線術式で貫通するのは防げるでしょう>


<事前確認をしておきたいところだ>


<その点はご安心を。白竜様、紅竜様もそこを気にされて、実際に範囲を絞って強度を高めた障壁シールドの二枚重ねを、本体の福慈様が雑に放った熱線術式で防ぎきれるか予め検証してくれる手筈となっています。そこで防げなければそもそも実行はしませんのでご安心を>


<そうか。ところで依代の君はなぜアキの前に立つのだ?>


<それは、二枚の障壁シールドを一瞬で貫通ということはないだろうということで、もし熱線術式が放たれたならば、三つ目の守りとして、攻撃を防ぐための助力をしてくれるそうです。どう防ぐのかは聞いてませんけど、彼なら神術で熱線術式そのものの存在を消滅させることとて容易でしょう>


或いは目の前の障壁シールドを強化するよう手を貸す、という選択肢もあるかもしれない。まぁ、いずれにせよ、害があると認識した上で、依代に降り立って現身を得た神である彼が守ると言っているのだから、どうにかして守ってくれるのだろう。それは確定だ。


<事故が起こる可能性を極限まで減らし、更に万一に備えて三重の守りを敷く、か。確かによく考えられた案だ>


<そう言って頂けて良かったです>


雲取様は言葉ではそう言ってくれたし、それなりに感心もしてくれたのも確か。でも触れ合わせた心から伝わってきたのは、何とも煮え切らない感情、行うべきではないのではないか、という迷いだった。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


さて、久しぶりに心話で雲取様と交流スタートです。説明には納得し感心もしてくれたものの、いまいち乗り気ではない、そんなとこからスタートです。


次回の投稿は、十月二十日(日)二十一時十分です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ