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第二十二章の施設、道具、魔術

今回は、二十二章でいろいろと施設や道具、魔術が登場したので整理してみました。

◆施設、機材、道具



【賢者が創造して見せた銀竜の鱗】

本編でも語られていたように、リアの手の中で儚い雪のように消えた、賢者が創造した銀竜の鱗は、その見た目よりも遥かに重要な事実を明確に表現していた。これまでより遥かに少ない魔力をもって、より長時間存在し続けることを可能とする品を創造することができたのである。


これは単なる一つの術式の改良ができたのではなく、世の(ことわり)、物の(ことわり)についての理解が大きく深まったことによって、化学反応における触媒のように、より小さな力で同じ結果を得る事に成功できたということなのだ。逆に同じ力を用いれば、これまでより大きな結果を得られる事も意味する。


それも、恐らくは全ての魔術、分野において、だ。


妖精界においては、あらゆる事象に誰かの意思が介在してしまい、純粋な物理現象への研究が酷く滞っている状況だった。同じ状況を用意すれば同じ結果が得られる、という科学の基本も、その「同じ」という状況を作り出すのが至難なせいで、研究が進んでいないのだ。しかも、魔力の強い者であれば容易に結果を得られてもしまう。だからこそ、物事は魔力の絡んだ現象として、魔力で如何に効率よく結果を引き出せるか、といった視点での研究が主となっていた。


この結果は、シャーリスや賢者が語ったように、妖精界のみでは辿り着く事は至難だっただろう。妖精達にとっては歴史的偉業と言えるが、きっと周辺諸国からすれば悪夢以外の何者でもないだろう。



【麦を焙煎して作る妖精さんの麦茶】

焙煎する道具自体持っていなかったので、安定して焙煎ができる道具作りから始まったのだが、ロングヒルで現物を見せて貰い、実際に焙煎する様子も実演して貰えば、そこは自分達サイズで再設計して製造するくらい容易にできるのが妖精族の持つポテンシャルの凄さだった。安定した火力も、ゆっくり回転させる動力も魔力仕掛けであり、そのサイズも子供用のおままごと用と言って良いもの、焙煎して作る麦茶もコップ一杯といったところだが、妖精族からすれば、それは樽一杯ということになり、大勢が集まってお祭り騒ぎになるのも無理のないことだった。本編でも紹介されていたように、焙煎する様子だけでも大勢が集まって興味津々、見学するくらいであり、焙煎の香りもまた皆の鼻を大いに刺激することにもなった。妖精達は見つけた麦の栽培をして、安定した収穫をしようと考えている。また、周囲の人族と交易を通じて、様々な穀物を手に入れることも検討中だ。



【妖精族が建造している飛行船という場違いな出土品(オーパーツ)

妖精族はその身が小さい事、圧倒的な機動力、視認性の低さ、高度な魔導師としての力量もあることから、やりたいことはだいたい魔術で実現できてしまい、大規模施設と言っても、人族のように重さを利用した設備が作られることはなく、自然に大きく手を入れて望むように作り替えるような真似とも無縁だった。

その為、家は草木を編んで作った籠のようなもので、それが妖精族にとっての最大規模の建造物だったし、道具類も自分達で持ち運べる程度の小さなモノがせいぜいであった。

パーツを組み合わせた道具の運用はしていたので、道具同士を組み合わせて高度化するという発想が無かった訳ではない。ただ、必要がなかったのである。

人からすれば自動車サイズの飛行船、有人とするのも困難な規模だが、妖精達ならばそれなりの人数が乗って長距離任務に就くことができる本格的な大型船である。3Dプリンタのような技法で継ぎ目なしの立体巨大構造物を作れてしまうのはやはり強い。しかも、未経験の巨大規模でありながらも、大規模化した際の構造計算は、街エルフ達が大型帆船で培った技術を惜しみも無く提供したことで実現することができた。


街エルフ達からすれば、大型の空飛ぶ模型作りを一緒にやってるようなノリだったのだ。それが継ぎ目なしの三次元構造体などをぽんぽん作ってくる妖精達に逆に圧倒されるような始末であり、街エルフの飛行船好き達もがっつり嵌ることになり、自分達の側でも妖精達のような3Dプリント技術を導入していくような事にもなった。


なお、飛行船だが地球(あちら)の情報はマコト文書から得て、大型船舶建造技術は街エルフから得て、その運用や注意点、例えば船体全体での重量バランスがかなりシビアであるとか、強風によって船体が歪むことも考慮した、船体に無理をさせない運用などというのも予め情報を強いれることができた事はかなり有利に働いた。建造してから手探りで不具合を探すような話を大きく減らすことができたのだ。


妖精界にも優れた魔導具があるので、船体を安定させる程度の制御であれば自動化もできている。後世の歴史家が妖精族の飛行船史について触れたら、困惑すること間違いなしの場違いな出土品(オーパーツ)っぷりだった。



【二階席を増設したドワーフ謹製馬車】

アキに自然観察させるため「だけ」の為に普段使いしている馬車に屋根なし二階席を増設するという荒業を敢行したものなのだが、SS⑩では大活躍することになった。そもそもトップヘビーな馬車に対して、更に軽量化して屋根もなし座席も二名限定と絞りに絞った仕様としたとはいえ、更に二階席を追加したことで安定性はかなり悪化した。運用面では、徐行運転以外での二階席利用は厳禁という有様である。まぁ、利用するのがアキ&ケイティだけであり、いざとなれば下の客室に乗り換えればいいだけなので、緊急時の対応も安心だ。


なお、取り外し可能となっているので、予め予定されている時以外には二階席セットは取り外されている。


アキが第二、第三演習場や連樹の社に向かう際によく利用しているので、取り外せる機構とすることは必須だった。


アキが触れると付与術式に大きな負荷がかかることから、手摺りも含めて、アキが触れることができる部分はわかりやすく色分けされていたりする。一応、軽く触れた程度で壊れるほど脆くはないのだが、魔術で耐久力を引き上げて強引に耐えているだけなので、可能なら触れないのが一番なのだ。


次の出番は多分、冬、風の穏やかな日となるだろう。冬にしか見られない鳥も多いのでアキも次の野鳥観察を楽しみにしているのだ。



【街エルフの秘密の部屋】

SS⑪でも紹介されていたように、外部と完全遮断された状態でも何十日と過ごすことができるという、分厚い装甲に覆われた部屋であり、実はこれはプロトタイプの外洋帆船の船殻モデルの再利用品だったりする。完全密閉、耐圧、耐衝撃、魔術耐性など、尋常でないレベルの堅牢さを達成しているのも当然であった。その堅牢さは海竜の体当たりでも、戦略級術式のつるべ打ちを食らおうと耐え得るというのだから、控えめにいっても頭がおかしいレベルである。ただし、当然だが投じられている技術も資金も材料も異常なレベルであり、こんな部屋を一つ作るくらいなら、城砦を作った方が安いわ、とかツッコミが入る程であった。


また、あまりに堅牢に作り過ぎたせいで解体するのも容易ではなく、さりとて正式な外洋帆船に用いるには小さ過ぎるとあって持て余す状況となり、これほど堅牢で外部と完全遮断できるなら、内緒話をするのにちょうどいいだろう、なんてノリで、秘密の部屋として採用されることになった。


扉も分厚い機械動力補助のついたモノであって、街エルフの外洋帆船と同様、分厚いチタン合金製である。銀行の金庫室の扉だってここまで頑丈かつ密閉するような作りにはしないだろう。


なお、ここまで完全に外部と隔離したとしても、それなら内部の情報を本当の意味で完全に秘密にできるかと言えば、実のところ、こちらや妖精界の例で言えば、知られてしまう可能性もゼロではない。占術や神術といった、世の(ことわり)を超えた域の技が必要になるので、そこまでの域となると、もうある程度は仕方ないと諦めるしかない。それと占術、神術を防ぐ、妨害する、惑わせるといった技もあるので、そこまでいくと知ろうとする側と、知らせぬよう防ぐ側の力比べとなる。



◆魔力泉の術式

本編でもがっつり説明されているように、これまでは懇々と湧き出る魔力源などという存在がなかったので、誰も創ろうとしなかった、召喚術式を応用して、魔力に満ちた疑似宝珠を生成するという新しい術式である。妖精族の高魔力域技術と、街エルフの魔法陣の高度な制御があればこそ可能になった術式である。術式と言っているが、実際には固定式の魔法陣を用いる大規模術式であり、専用の魔法陣なしには起動することはできない。

発動すると、魔力に満ちた疑似宝珠が形成され、そこの魔力が減ると、その分を足して維持するという、やってる事と言えばそれだけの術式である。ただし、膨大な魔力を形成した疑似宝珠内に留めており、一度、術式が発動して疑似宝珠が形成されてしまえば、以降の維持には殆ど魔力を必要としない省エネ設計でもある。

なお、皆が懸念した通り、この魔法陣内に誰かが立って、発動した疑似宝珠内の濃密な魔力に包まれるような真似をするとしたら、それは自殺するのと変わらない。

例えるなら、沸騰水に満ちたタンクの中にどっぷり浸かるような真似といったところだろうか。何らかの手段で自身の体温を正常範囲内に留め、周囲の暴力的な熱量から自身を隔離できなければ、待っているのは釜茹でによる熱死だ。



案山子かかし

一見すると、日本あちらでも見かける人ような服装をした案山子なのだが、実際にはその虚ろな目が捉えた相手に対して低レベルの熱線術式を叩きつけて追い払うという、かなり物騒な鳥除けの魔導具なのだ。普通の鳥除けの品と違い、一定範囲に入り込んだ鳥に対して問答無用に熱線を放つという意味で攻撃要素マシマシであり、何度か熱線に身を焼かれた鳥は、この案山子が立つ場には近づかなくなるという。まぁ学習能力があるなら近付く馬鹿はいないってモノだろう。ただし、何でもかんでも撃ち落とすわけではないし、オールシーズンで撃ち落とす訳でもない。小鳥が食べる量より駆除してくれる害虫の方がよほど益になるので、その運用期間と対象となる駆除対象の鳥は厳密にコントロールされているのだ。





◆魔術、技術



経路(パス)を通じた魔力供給】

本編でも紹介されているように、使い魔に対して主が経路(パス)を通じて供給するといった事は行われており、そう珍しい技という訳でもない。それに召喚術式で降臨した対象に向けて、経路(パス)を通じて、降臨状態を維持するための膨大な魔力を供給し続けてもいるので、実はアキ、リアは常時、これを行っているとも言える。


ただ、今のところ、アキ、リアからは召喚体以外に対しては、経路(パス)を通じての魔力供給は行われておらず、師匠のソフィアが予想した限りでは、相手が天空竜だとしても碌な事にはならないだろう、とのこと。二人は出力制御不能、常に最大出力&最高位階で魔力をぶっこんでくるので、召喚体のような仮初の存在ならいざしらず、普通の生物でソレに耐えきれるかかなり疑問があるとされており、試してみるのは怖過ぎるので、二人とも経路(パス)を通じた魔力供給は絶対やらない、と言っている。


なお、術式による経路(パス)を通じた供給以外でも、虫の報せといった形で、本来なら届く筈のない情報が届いた、と言った事例がこちらでも過去から多く記録されており、それは経路(パス)を通じて微量な魔力が行き来していて、それを伝って情報が届いたのではないか、という仮説がある。これまでであればあまりにも微量過ぎて計測不能とされていたが、アキ&リアの膨大な魔力であれば、検出できる程度の差異が出るかもしれないと言うことで、いずれ、検証してみようということになった。


もし、実際に経路(パス)を通じて魔力が届くとなれば、地球(あちら)にいるミアに対しても微量であっても届くということを意味するだけに、この検証作業は重要だった。



【拡大術式】

遠く離れた地点の光景を拡大して映し出す術式で、妖精族は望遠の術式と読んでいるのだが、竜族が同じ術式を応用して、人族サイズのモノを拡大してみるのに頻繁に使うようになったことから、両者を含めて、望んだ対象の姿を大きく映し出す術式、ということで拡大術式と呼称されることが多くなった。鳥のような超視力を得るような身体強化術式と違い、近場に疑似的な鏡のような表示領域を構成し、そこに遠隔地の光景を拡大して映し出すという仕組みであり、望遠鏡と表示ディスプレイが一体化したようななかなか凝った術式と言える。妖精族や竜族は簡単な技のように使っているが、地の種族であれば、最低でも魔導師級でないと使えないような高難度技である。

なお、鑑賞に堪える映し方ができるようになるにはそれなりに修練が必要であり、下手な使い手が映し出した光景を眺めていると、映像酔いをしてしまう点は地球(あちら)と同じだ。



【中継術式】

遠隔地にいる術者との間でリアルタイム通信を可能として、情報共有をする為の基盤を確立する術式である。SS⑩では、空を飛びながら拡大術式で遠い場所にいる鳥を映し出した結果を、中継術式を経由して、離れた場所にいる翁やアキ達の手元に表示することを実現していた。

偵察部隊が観察している光景を後方にいる指揮官が確認するのに使っとる連絡術式の一種などとサラリと紹介していたが、当然だが視覚情報だけでなく、聴覚情報を伝えることもやろうと思えばできる。

妖精達は隠し芸のように披露してくれていたが、送り手側は、飛行しつつ、拡大術式で鳥を観察しながら、中継術式を翁との間に確立、翁は中継術式で情報を受け取って拡大術式でその光景を目の前に表示しつつ、アキと普通に会話してる、というように何とも多芸で高難度な事をしているのだ。こちらの魔導師達なら、そんな曲芸染みた真似をするくらいなら魔導具を使うわ、と唖然とするしかない話であった。


【伝話】

妖精族が教えた伝話は、経路(パス)を利用して意思疎通を行う方法であり、見える初見の相手に警告を与えるといった場合のように、相手との経路(パス)が希薄な時に魔力でゴリ押しして意思を伝えるのは、応用技の範疇に入る。いずれの場合も、肺活量という意味では爪の先ほどしかない妖精族の声が、広い地域で高速飛翔しながらも必要な相手に届くという意味では、妖精族にとっては基本技であり、自分達の領空に入り込んでくる相手に、しっかり伝わるようにハッキリとした警告の意思を伝える意味でも重要な技ではある。


ただ、アキは初手の段階から、見える範囲の初見の相手、つまり経路(パス)が殆どないような相手に対して、言葉を届けるという技を使い倒してきた。これは、アキの保有する魔力が余りに膨大で、妖精族であれば多くの魔力を投じたゴリ押しが、アキにとっては意識せずできる通常技になっている、といったところなのだ。


しかも、ざっくり教わって、ふわりと庭先を飛ぶ翁に、小声でも声が届く、おー、凄い、なんてノリですぐ使いこなしてしまった為に、妖精族が本来用いている親しい関係にある相手との経路(パス)を利用した意思疎通、という手法はすっかり手付かずになってたりする。


そして、エリーもがっつり明言していたが、物理法則を覆して、小声で遠くにいる大勢に声を届かせる、などというような真似が、簡単な技な筈がない。この世の(ことわり)自体に干渉して、望むように捻じ曲げるという意味では、指定範囲内での物理法則を捻じ曲げて光が存在できないようにする常闇の術式のような戦略級の高難度技なのである。竜族も頑張れば真似ができるだろうが、地の種族がやるとしたら魔導杖の支援や魔法陣を駆使する必要が出てくるだろう。それもケイティのような高位魔導師級でやっと手が届くかとうか。


なお、依代に降臨して現身を得た神である依代の君であれば、この技を使うことはできる。そもそも深い信仰心で神と繋がった信者とは、神と信者の間に深い経路(パス)が確立できていると看做せるからだ。ただし、そうした場合の神からの言葉は、普通、神託と呼ばれる事象となる。そして、ロングヒルにいると常識が崩れさってしまうが、神託を得た、などという出来事は普通、歴史書に記されるような稀有な出来事なのだ。

<今後の投稿予定>

二十二章の人物について       七月三十一(水)二十一時十分

二十三章スタート          八月四日(日)二十一時十分

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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