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二十二章の各勢力について

二十二章は七日間という短期間なので、各組織側の動きは殆どありません。ただし、影響があった組織、財閥、共和国、探査船団、まぁおまけで竜神子支援機構については結構な動きがありました。まぁその多くはアキの目には映らない部分、本編だとちょろっと紹介される程度な部分なのですが。

各勢力の基本説明は八章の「第八章の各勢力について」をご覧ください。このページでは、二十二章での状況を中心に記載してます。



【ミアの財閥】

財閥は東遷事業に備えた人材の確保をしつつ、他文化圏育成計画を担う魔導人形の選別作業に着手していた。これは財閥に属していない人形遣いの魔導人形を含めた大々的なものであり、共和国の総力をあげて取り組むべき、前代未聞な「魔導人形のみにより構成される使節団」の海外長期派遣、という任務を担えるだけの魔導人形がそもそも揃うのかどうか、不足部分を教育で補うことも考慮した大規模な人物評価作業となっていた。


勿論、共和国で最大の民間企業群である財閥に所属している人形遣いや魔導人形は、他企業に比べればその量と質のどちらも優れており、使節団への採用候補となるのは間違いなかった。


選考基準としてはまず能力的に必要を満たすかどうか。そして本人の意向と主である人形遣いがどの程度、それを許容できるか、といった話になってくる。必要な時に備えて空間鞄内に入れておくような魔導人形と違い、使節団を構成する予定の魔導人形達は専門家集団であり、自律的に魔導人形のチームを管理し、整備し、運用できなくてはならない。これは多層構造を構成する軍団レギオン規模を担う指揮官級の能力が最低でも求められるので、共和国に魔導人形は何百万といても、該当する魔導人形はそう多くなかった。人間の軍隊において士官の割合が一割にも満たないのと同じだ。


しかも、通常、魔導人形は人形遣いの元で働く。良き部下であることがこれまでは求められてきた。だが、今回の長期任務では、未知の病原菌への感染を防ぐため、人形遣いは同行できない。魔導人形は主なしで、魔導人形のみで構成されたチームを機能させなくてはならないのだ。


良き部下であれ、とされてきた者に自主的に考えて行動せよ、と指示するのは簡単だが、染み付いた思考、行動スタイルはなかなか改めるのが難しい。現実世界においても指示された範囲内、決められた手順を正確に実行することが求められるオペレーターの仕事をしてきた人に対して、大まかな要求内容とマニュアルだけ渡して、いつまでに作業目的を満たす操作手順書を作って、と命じても、会話は通じるのに、自発的に行動ができない、という驚愕の状況が発生するくらいである。


そのため、探索者や特殊部隊のように、目的に対して、かなりの裁量を任されて、結果だけ求めるといったスタイルに適合できるかどうかという選別をまずはしなくてはならない。現実の軍隊でも身体能力や技術的には合格ラインに達していても、自由度の高い任務、孤独を強いるような任務に向いている兵士は驚くほど少なく、合格率はなかなか上がらないのが実情だった。


ある意味、魔導人形としての特性、良き部下として命じられた事を正確にこなす、という部分について、わざわざそれを不得手とするような個体を探すか、或いはそれもできるが、自由裁量での行動もできるという上位互換な個体を探すか、といった話なのだ。


この選別及び、調整作業と、使節団に求められる行動スタイルを確立するための訓練が共和国の人形遣いと魔導人形達のこれまでの関係に一石を投じることになるのだが、それは暫く先の話。街エルフの文化にまで関わってくる大変革なのだ。


なお、家令マサトと秘書人形のロゼッタは、大まかな選別をした時点で、これはかなり手間取りそう、と頭を抱えることになっていた。人形遣いの指揮のもと、魔導人形達はまるで一つの生き物のように連携して高度な戦術を駆使することが求められてきたのだ。なのに、刻々と変化する未知の状況に対して、大まかな方針以外は全部自由にしていいから、善きに計らえ、と言われても魔導人形とて困惑するというモノだろう。そんな雑な指示をする人形遣いは、人形遣いとして失格なのだから。命令はシンプルで誤解せず実行できる内容が望ましいとされてきたのだ。


ロゼッタも、自身が秘書人形として多くの試行錯誤を経て、異様に広い自由裁量に対しても、計画立案、実行、検証、改善のサイクルを回せるようになったのであって、いくら他の魔導人形十体分などと言われる高性能でも最初からできた訳ではなかった。マサトも長年、財閥を支えてきた相棒たるロゼッタがかなり異質な魔導人形であることを理解していた。


そして二人とも、ロゼッタのような自律性の極めて高い魔導人形達が何百と増えていった場合に社会に何が起こるのか、予想しきれなかった。二人とも街エルフ的に何でもできるよう全分野をカバーする学習を終えている。そんな二人でも、共和国の社会が激変していくだろうことを漠然と予感するのが精々だった。


【共和国(街エルフの国)】

三大勢力が同盟を結び、食料の相互供給を約束したことも、穀倉地帯を大きく増やすことに繋がる東遷事業も、所詮は他勢力のこと、共和国との関係という視点で見れば、緩やかに変貌していくのに合わせて、対処方法を編み出していくのは十分可能なこと、として、検討済みとして、意識の外に押し出す程度の案件扱いになっていた。


「死の大地」の浄化作戦ですら、参謀本部を設立して、専任者を割り当てたのだから、後は進捗状況を適宜確認する程度でいい、とこれもまた、意識の外に押し出していた。


とにかく、長老衆は道筋の見えた案件など意識から消して、()()()()()()()、もっと重要な案件、未来を見据えた計画にどう向き合っていくのか、それに専念する必要性に迫られていた。


ヤスケが自分だけで抱えてなどいられるか、と長老衆に情報を横展開して、皆で考えるべき重要案件だ、としたからにほかならない。その重要案件とは、一つは他文化圏育成計画であり、そしてもう一つは、妖精達が自信満々に持ち込んできた、次元門構築のための研究の加速だった。


他文化圏育成計画は、街エルフが占有している人工衛星を利用した惑星規模の観測システムの存在やその成果を、これまで秘匿してきた不倶戴天の敵である竜族に対して開示していかなくてはならないこと、それと他文化圏に派遣する使節団を魔導人形達だけで構成する必要がある、という二点が大変厄介だった。どちらも共和国、街エルフの文化や歴史を大きく変えていくことになる重みがある。反発も大きいだろう。極めて難しい舵取りを迫られる案件である。


そして、次元門構築の研究加速、これが妖精族によって押し込まれてきたことで、他文化圏育成計画すら小粒と感じられるほどの精神的な衝撃を受けることとなった。なにせ、妖精界、こちら、地球あちらという三つの世界を結び、異なる世界を繋ぐ事による莫大な恩恵を今、掴むべきであり、それは国力を十倍に増やすことなどより遥かに重大だ、と実例込みで語られたからである。他文化圏育成計画が国家百年の計なら、三界を繋ぐ次元門構築は千年先を見据えた超大国成立の策である。


本来なら、そんな話は荒唐無稽だ、実現性が乏しい、優先度は低い、と言って五秒で終わる話だった事だろう。少なくともアキがやってくる前、僅か一年前なら、間違いなく、もっと現実を見ろ、と言って終わってた話だった。


だが、街エルフの文化、技術力では理論すら構築不可能だ、と匙を投げていた次元門構築も、竜族や妖精族、世界樹といった高位存在達を巻き込み、三大勢力が手を取り合ったことで、できない部分と、まだ試してない膨大な部分がだいぶ見えてきた。自分達が不可能だ、と言った常識は狭い範囲を照らす蝋燭の炎に過ぎなかった。


そして、長命種ならば千年先の未来を見据えて動くべき、などとアキの言葉を引用してヤスケが長老達を煽り、同じように長命な妖精族や竜族、世界樹の協力も得られるとあっては、長老達もソレが現実として検討しうる案件に昇格してきたことを認めるしかなかった。


高位魔導師相当の実力を持つ妖精達が、万を超える規模で集って行う心話、魔力共鳴に関する基礎研究、それが闇を払う強力な灯火となるであろうことはもう疑う余地がない。それはもう確実にくる未来であって、それがいつくるか、というだけの話なのだ。


かくして長老衆は、ひたすら情報封鎖を行って、限られたメンバー達と共に、未来を見据えた検討作業にどっぷり浸かり続ける羽目に陥ったのだった。


結果は本編でも明かされた通り、どちらの計画も推進していく事が了承された。運用面の細かい話はあるが、どっちも真面目に取り組んでいくべき案件として、まつりごとのリストの上位に載ったのだった。


今後待っているのは資源リソース配分地獄である。それも素質のある魔導人形を集めて大勢育てるとか、未知を既知にする研究を推進していく、なんていうかなりフワッとした内容なのだ。これを現実的な時間軸と規模に落とし込んで、着実に進捗状況を把握できる粒度に落とし込まなくてはならない。その基準も合格ラインもこれから決めるのだ。


かくして共和国は激動の時代を迎えることになった。


【探索船団】

アキが提案した他文化圏育成計画と、それを実現する探査船団、魔導人形達だけで構成された使節団といった話について、同船団を率いるのに相応しいとされる候補の提督達に対して、内々に計画の概要が伝えられた。それまでは交流祭りが行われたり、各地で竜神子と竜達の交流が行われたりと、世界で一番面白いのは弧状列島となってる為、早く帰国したい、という船員や探索者達を宥めつつ仕事を早めに完遂して合法的に帰国しよう、なんて話が多かったのだが、この件は提督や副長といった極一部にしか情報は伝えられず、だからこそ、各船団の提督達を大いに苦悩させることにもなった。場合によっては召喚術によって、未知の文化圏の鼻先で、天空竜を降臨させて共同作戦を行うなどという話になりかねない。しかも、妖精族も同行することになり、その妖精族も必要があれば、仲間の妖精達を大勢、召喚して増員することすらできるという。国相手に戦争を仕掛けたって勝てそうな話であり、まだ本物の妖精や天空竜を身近で観たことがない提督達からすれば、酷く取り残されてしまった感覚すら覚えることになるのだった。


【探索者支援機構】

→影響なし。


【対樹木の精霊(ドライアド)交渉機構】

→影響なし。


【竜神子支援機構】

今年の竜神子と竜達の交流も各地で行われ、無事成功した。特にトラブルは発生していないが、やってきた竜には個性があり、対応する竜神子にも個性があり、双方、始めての交流であることから、様々な出来事があったようだ。また、伏竜に対してアキが丁半博打を誘ってどっぷり嵌らせた挙句、赤字に転落する結果となり、アキが自腹で補填する流れとなったことについては、アキの完全無色透明な魔力や、膨大な魔力を利用した創造術式によって創られた竜向けサイズな賽子サイコロや振り壺があるからこそ、竜眼や魔力干渉の影響を廃することができたことなど、賭けが成立する所以についての詳細な説明をするよう、共和国の長老衆から厳重な申し出があった。二十二章の時点ではまだ申し出の第一報が入った程度だから、二十三章以降に紙面を用意して各地に配られることになるだろう。


【ロングヒル王国】

→影響なし。


【人類連合】

→影響なし。


【鬼族連邦】

→影響なし。


【小鬼帝国】

→影響なし。


【森エルフの国】

→影響なし。


【ドワーフの国】

→影響なし。


【妖精の国】

妖精の国では、シャーリスを筆頭に国家千年の先を見据えて、三界を繋ぐ次元門が何を意味するのか、真剣に検討を重ねることになった。また、いろいろと資源リソースが不足する中、今の妖精の国が実行可能で、なおかつ、他勢力が思わず椅子から転げ落ちるような大きな行動を起こせないか、なんて都合のいい話が見つかったこともあって、国の上層部は大変盛り上がっている状況である。

この一年で、物質に対する理解が大きく進んだこともあって、同じ現象も小さな魔力で実現できるように、或いは同じ魔力でより大きな現象を起こせることにもなった。そこにきて、更に全員が高位魔導師という妖精達の在り方がどれだけぶっ飛んだ事なのか、群れとしての妖精族の強さを再認識することにもなったと言えるだろう。まだ妖精界の周辺の人族の国々は知る由もないが、これはいきなり妖精族の戦闘力が十倍、百倍と跳ね上がったのと同じことを意味する。ご愁傷様である。

この大変化は、異世界との交流なくして生まれることは無かったと言えるだろう。シャーリス達が考え抜いて出した結論は正に正鵠を射ていると言える。あとはまぁ、あまりに強くなり過ぎて、もはや我々こそが選ばれし民とか選民思想に溺れたりしないか、という話だが、これは三界が疑似的にではあるが繋がっていることで、いろんな意味で上には上がいる、それも洒落にならないレベルで、というのも自覚できているので、そういう暴走はしないだろう。


【竜族達】

→影響なし。


樹木の精霊(ドライアド)達】

→影響なし。


【「マコトくん」の信者達】

→影響なし。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


はい、各勢力の内情が明らかになってきました。魔導人形数百万とか言っても、全員が技量を絞った専門兵士ってとこな扱いをこれまでの歴史、文化ではしてきたので「はい、そこから特殊部隊のように少数で自律的かつ高い自由度をもって目的達成のために頑張って」とか言われても無茶振りだという事実が露呈してきましたね。これでも同行する妖精を通じて、適宜、本国との意思疎通が可能という大盤振る舞いな状況があったからこそゴーサインが出たと言える惨状でした。通信なし、1年後に迎えに行くから自主独立で頑張れ、などという状況ならきっと、通信可能な距離に大型帆船を待機させて、人形遣い達にはそこから支援させるということを真面目に検討していたことでしょう。それくらい無茶な話でした。


さぁ、ここから凝り固まった思考や行動のスタイルを一度粉々に打ち砕いて、目的のために自分で計画して、実行して、検証して、改善してもいいんだよ、と思考のベースを切り替えた魔導人形達を育てて行かなくてはなりません。完全自由は実際にはあり得ないので、人形遣いが許可した範囲内において、という制約は付けることになりますが、これは一大変革と言っていい試みです。さて、どうなることやら。


<今後の投稿予定>

二十二章の施設、道具、魔術     七月二十八日(日)二十一時十分

二十二章の人物について       七月三十一(水)二十一時十分

二十三章スタート          八月四日(日)二十一時十分

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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