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22-20.竜爪の改良点

<前回のあらすじ>

歩けるようになった幼児の世話は大変ですけど、飛べるようになった幼竜の世話はかなり大変でしょうね。竜族の子育ても群れ総出で行うというのも納得です。暇な時間を持て余している若竜なら大勢いるでしょうから。ところで僕はよく幼竜に例えられてるけど、そこまで面倒とは思われてないですよね?(アキ視点)

さて、三つの相談のうち、二つは片付けることができた。後は竜の技の改良、一つは竜爪、もう一つは竜眼だ。


『それでは、最後は竜の技の改良について触れて行きましょう。目指すところがわかりやすい竜爪の方からにしましょうか』


スタッフさんに、以前、黒姫様が竜爪で切断した柱と、切断されてない柱、それと普通に職人さんが同じ角度で切断した柱を持ってきて、比較できるよう並べてくれた。


『元の柱と比較してみると解りやすいですけど、職人さんが切断した場合と比較すると、竜爪で切断をするとかなりの幅で柱が消えています。勿論、職人さんが切った場合も削りしろが無くなっているので、切断後の柱をくっつけると元の柱より長さが短くなっているのがわかります。ただ、それでも竜爪の場合に比べれば消えた分は僅かです』


スタッフさんが分かれていた柱をよいしょっと押し付けて、切断前の柱より、削りしろの分だけ短くなったことを示してくれた。うん、芸が細かい。


少し目線でやりあってたけど、この件は伏竜さんがメインで答えることにしてくれた。


 ふぅ。やっとそうなってくれたか。


三万柱とも言われるほど天空竜は多くとも、東遷事業の為に手を上げてくれたのは伏竜さんだけなのだから、伏竜さんがこの件では前面にでなくてはいけない。保護者同伴で横に座ってるだけの子供じゃ困るんだ。


<確か、切った岩は石材として他で利用するので、できるだけ消える分が減った方が良いのだったか>


『はい。大きな岩なら庭石にしてもいいですし、治水の為に川の流れを弱めるのに使っても良いでしょう。手頃ならサイズなら積み上げて石垣にしてもいいし壁にしてもいい。一つの巨大な岩山は単なる障害物ですけど、運べる手頃なサイズになった岩は石材として活用できます。あと砕かれた破片は砂利道に敷き詰めても良し。ただあまりに細かい粉のようなところまで行くと、粘土と混ぜて使うとか、建築材料の添加剤に使うとか、土壌改良の為に撒くといった感じですけど使い道は限られてきます』


<そして竜爪では削りカスすらでない>


 ほぉ。


ちゃんとソコを理解してくれているのは嬉しい。


『そこなんですよね。依代の君の拒絶もそうですけど、竜爪で切った部分の石はどこに行ったのかわかりません。砕けば破片が飛び散るし、削り切れば粉が出る。焼き消せば大量の熱と煙が出るといったように、普通に物理の力を加える場合、石は形を変えるだけで消えることはありません。でも竜爪や拒絶では世界から消えてしまう。これは結構問題があるように思えるんです。竜の皆さんの暮らしぶりからして竜爪を使うシーンはそう多くなく、世界から消えたモノはそう多くはありませんけど、自分が住む世界を少量ずつでも削り消せる。竜族の長い人生で考えると馬鹿にできない影響がでるようにも思えます。例えば毎日せっせと邪魔と思う山を竜爪で削っていけば、いずれは山をまるごと消すことすらできるでしょう。廃棄物が何もでず消せるなんて便利などと短絡的に考えては不味い。空に浮かぶ月は望遠鏡で観測すればわかりますけどあの衛星には大気も海もありません。単純化すれば、あの月は、空気と水を消した世界と言ってもいいでしょう。世界から消す、というのはそういうことです。消すモノは少ない方がいいというのもそういうことです』


ちょうど、空に月が見えたので、それを例に、世界から消す、というのが何を意味するのか語ってみた。ついでに空気も水も無いのだから、当然、森もなく、動物もいない、静寂に支配された生き物のいない死んだ世界になる、というイメージを言葉に乗せて、淡々とした事実といったように感情は乗せずに伝えてみた。


 ん。


何でも斬れる最強の近接技、竜爪は確かにそうなんだけど、その原理が世界目線で見ると色々と不味いという印象はちゃんと伝わったようだ。ただ、ちょい脅かし過ぎたのか、意志が消沈した雰囲気が軽く感じられたので、そこはフォローしておこう。


『あぁ、すみません、あくまでも極論すれば、であって、小さな焚火が暖を取るのに役立つように、焚火と制御不能な山火事を一緒に論じるようなつもりはありませんでした。実際には空に浮かぶ太陽の輝きが強くなっていき、この惑星から海が失われるであろう何億年という未来に至っても、竜爪で消す総量など誤差程度でこの惑星の未来を左右するようなことはないのでご安心ください』


空に輝く太陽にも誕生があれば終わりがあるように、今は安定しているけど、何十億年というスパンで見ると徐々に核融合反応が強くなっていき、それと共に太陽光や太陽風も強まり、それによって海水は蒸発し、大気が剝ぎ取られ、最後には火星のように海を失い、生き物の暮らす世界は終わりを迎えるといったイメージを言葉に乗せてみたんだけど。


 あれ?


人の尺度を遥かに超える悠久の時を経て訪れるだろう世界の変化、その遠大さにワクワクしてくれるかと思ったんだけど、どうも竜族の皆さんへのウケは悪かった。


 あー。


ウケが悪いというか、竜族にとっては世界というのは既に在るモノであって、なぜそれが生まれたのか、生まれたのなら滅びるのか、みたいな思考実験はあまり深く追求されることがなかったんだね。宗教も必要としてこなかったから、創造神みたいな話も必要が無かったんだ。


<少し話が壮大になり過ぎたようだ。石材の切断に話を戻そう>


伏竜さんも、今日、こうして集まった趣旨を思い出してくれた。ふぅ。


脱線させかけた自分が言うのもなんだけど、竜族の皆さんも、大して考えてなかったことが沢山あって、改めて考えると長期視点では不味いってのがゴロゴロしてそう。ここでの長期目線というのは竜達の世代交代スパン、つまり数千年というような単位にはなるけれど。


『今回の東遷事業で竜爪の活躍が期待されるのは、地の種族ではあまりに固い岩盤や、堅固な地盤は掘削するのが大変で難工事になってしまいます。時間もかかるし、コストもかかる。東遷事業は流路の付け替えを行って、上流から河口まで河水が流れて行かなければ意味がありません。途中通れません、では他の工事が完了していても河川として機能しないのです。その点、竜爪であれば、岩が固くても豆腐のように簡単に切れますからね。我々が何年と費やすところを天空竜が颯爽と現れてスパスパと切ってくれれば大助かりです』


邪魔な山があれば、スパスパと、って手で埃を払うように細切れにして片付けるイメージを乗せて話してみたけど、これには伏竜さんが苦笑した。


<アキ、竜爪で切れぬ岩があるとは思わぬが、そうそう連発するような技でもないのだ>


思念波から伝わってきた感じだと、魔力を消費して放つ必殺技ってとこか。ノーコストで放てる通常技ではなく、回数制限がある、ここぞという時に使う技だと。


『そして、竜同士の力比べでもそうそう使う技でもなく、威力も十分過ぎるのでこれまで誰も改良してこなかったのですね』


<そうだ。力比べでは近接技を使うような状況下ではもう決着はついていることの方が多い>


互いに運動エネルギーを如何に維持しながら、相手に対して優位となる位置取りを確保して回避不能な一撃を叩き込むか。竜同士の力比べは極論してしまえば、最後の一撃なんて尻尾で叩くなり、足で蹴とばすなり、本気ならこのタイミングで終わりだった、と相手に理解させればいいだけだからね。まだ互いに余力が沢山あるのに相手が望まない状況で近接距離に持ち込んで、高火力の一撃、つまり竜爪で一気に勝負を終わらせる、というのは決まれば格好いいけどかなりリスキーな戦術と言える。


そもそも数百キロという速度で飛び回る竜達にとって、空中で相手と接触しかねないような近い距離を飛ぶ、という時点で危険行為なのだから。相対速度を合わせず空中で激突すれば、互いに大怪我は避けられず、しかも墜落すれば致命傷になりかねない。だから、力比べの時も有意な位置を確保できた時点で、軽い熱線術式を叩き込むといった程度で終わらせるのが常で、近接距離にまで詰めていくというのはそうそう無いってこと。


 ん。


白岩様が口を開いた。


<そもそも今の話からすると、我らが竜爪を使うシーンと同様、東遷事業での竜爪が求められる状況もそう多くはなさそうだな>


 鋭い。


『はい。ご指摘の通り東遷事業において竜爪を使いたいというシーンはそう多くないでしょう。1%もないと思います。ただ、先ほどお話した通り、海まで繋がらなければ河川は機能しません。そのほんの僅か、竜ならば数秒で通過できて程度の距離であったとしても、そこが通せなければ計画全体が頓挫してるのと同じです。ですから、出番がゼロであると確定すれば、竜爪の改良も実は必要がないんですけど、ゼロで済むかどうかは新たな河川のルート選定を終えなければわかりません』


ここで馴染みも無いだろうから、河川のルート選定に何が必要なのかざっと説明をしてみる。


①高低差の考慮。河川には適切な勾配が欠かせないって話。勾配が緩いと堆積物が溜まりやすくなるし、勾配が急すぎれば浸食が激しくなってしまう。治水の観点からすれば、堆積物が溜まれば取り除かないといけないし、浸食された部分は修復しないと堤防が崩れることにもなり、どちらも維持費増に繋がるのでできるだけ避けたいんだ。


②土壌や地質の安定性。土壌が軟弱だと掘りやすくても安定しないし浸食も進みやすく堤防建設も困難になる。逆に岩盤や堅固な地盤となると掘削自体が大変で難工事になり費用高騰に繋がってしまう。だから、適度に掘りやすく安定して堤防も作りやすいルート選びが重要なんだ。


③水源と水量の安定供給。安定した水量が流れないと農耕灌漑への利用に困るし、水量が不足すると水運利用に支障をきたすからある程度の水量も必要だ。これは支流からの水量供給との兼ね合いもあるけど、一年を通じてそこそこ安定した降雨が見込める弧状列島だからこそ悩める話だろうね。海外のように雨季と乾季が明確に分かれている地域だと下手をすると乾季には川が枯れてしまうこともあるのだから。


④浸食と体積の管理。河川は曲がるところがあれば内側には堆積が、外側には浸食が起こるし、流れが緩いところでは川床が上昇して氾濫しやすくなる。その為、河川は通して終わりではなく、その後の維持・管理が大切になってくるんだ。日本列島でも大河の浚渫工事が頻繁に行われているのはそのためだったりする。


⑤技術的難度と工期。これは河川として最適なルートを選んでも、難工事多発では採算割れや工事期間が延びてコストが増大してしまうので、適切なバランスを見極める必要が出てくるということ。河川は開通しないと機能を発揮しないのだから、できるだけ工事期間は短い方がいい。そしてその後もできるだけ維持コストが安くなるよう安定した土壌や高低差のルートであって欲しい。そして増水時に備えた堤防は必要十分な高さではあるが過剰な高さは建設費が高騰するので避けたいし、それでも溢れる場合に備えた遊水地も確保しておきたい。


⑥土地の利用や社会への影響。そして、①~⑤を最適にした上でまだ選択肢があるようなら、できるだけ農地や集落を無駄に分断するようなことがなく、既存インフラを活かして、相乗効果を発揮しやすいルートとすることが望ましい、と。


少し込み入った話になってきたので、ホワイトボードを出して貰い、ベリルさんが板書し、それをスタッフさんが幻影術式で拡大表示するという対処となった。


<そして、竜爪で無駄なく障害物を石材に変え、その作業時間は短い方が望ましいのか>


おー、伏竜さん、理解が早い。


『はい。できるだけ鋭く狭く、無駄を廃した形で岩山や堅固な岩盤を切断し、そうして得られた石材を運搬撤去できれば、それが予め工事全体の中でルート選定時に考慮できるくらい安定した結果が出せるなら最高です。できれば岩を切断できる程度の弱い切断力と鋭く無駄のない切断面、そうした適度な切断能力を何時間も使って貰えるなら言うことなしです。まぁ、そこまでできちゃうと他の竜の参加なしに伏竜さんだけで難工事を対処できちゃうってことになりそうですけど』


ここで、もうちょい補足ということで、固い岩盤や地盤といったところを難工事であっても通す、みたいな話が出てくるのは中流域に限定されるという補足も話すことにした。


上流域だとそもそも高低差がキツイのと流量が少ないのもあって、無理に流路を変更する必然性がないこと。


下流域だと流れる水量が多いので川幅を広くして浚渫工事を行うのがメインになるから、それだけの広い面積を確保できるルートを選ぶことになる。そこに適切な高低差確保も絡んでくると、難所を貫くよりルートを変える方が適切となるだろうこと。


そして中流域だけど、流量がそこそこあり傾斜もそこそこ、上流は動かせないし、下流域のベストなルートは消去法で決まるから、上流と下流を繋ぐルートを消去法で選んでいくといった圧が掛かることになるので、結果として、そこさえ通せれば全体コストが低く抑えられるし維持費も安く済む、なんて難所をどうにかしたい、という話も出てきやすい、とった具合だ。


いくら竜爪がよく切れると言っても、中流域の幅数十メートル程度の川を通すのと、対岸まで何キロみたいな河口付近の川を通すのであまりに労力が違い過ぎる。下流域となれば、水深だって深くする必要が出てくるのだから、その労力は桁違いに増える。だから竜爪があると最高な難工事はあるとしても中流域だけだぞ、と。


<考えることが随分多いな>


『ですね。まぁそこは群れで生きる地の種族の本領発揮、大変なら手分けして分担すればいいので、治水・土木に優れた専門家を何十人、何百人と集めて知恵を出し合い、工事をする前に現地調査を入念に行い、必要があれば水流や水量のシミュレーションを模型を使うなどして行うことで、もっとも効率がよく無駄がなく、維持の手間もかからず、水害にも強く便利に普段使いできる新河川を通すルートを選定できる訳です』


ここで、力や弱くとも多くの知と力を集めて束ねて行使できる地の種族の強さをアピールしておく。


こればかりはいかに最強の個である竜族であっても、そして彼らが群れとして協力することを覚えたとしても、まるで手が届かない領域にあることを示しておく。


彼らには知を蓄積していく文字を扱う文化がないからね。こうした緻密かつ膨大みたいな作業にはまったく向いてないんだ。


伏竜さんは少し考えていたけど、考えが纏まったようだ。


<つまり、私に求められるのは、新たな竜爪を他の竜が学べる時間も考慮しつつ編み出すこと、か。それも途中である程度、見通しを立てて予め、先々の計画に組み込めるだけの目に見える結果や安定性が必要だ>


 おぉ。


そこまで考えが及ぶとは凄い。竜族は魔術も瞬間発動できるし、振るう力も圧倒的な分、長期プランでこつこつと、先を見越して動くみたいな話は苦手と聞いていたけど、伏竜さんはソレができる例外、或いは稀有な才を持つ竜ということか。


 ……あー、ちょい違う。


序列が低く魔力の湧きが悪い巣を間借りせざるをえなくて、自身の縄張りもないから食べ物もそう多く得られない中、何とか効率を高めていこうと足掻いた結果か。必要は発明の母という奴だ。



 でも、凄いことだし、ほんと、稀有な才、というか視点を持つ竜だ。


『お見事。今の竜族の用いる竜爪でも、難工事区間を対処するだけなら頭数さえ揃えれば十分可能でしょう。なので、東遷事業における最低ラインとして、参加頭数を増やしていくことはある程度想定は必要ですけど、今のままの若竜が百柱程度集まったとするなら、何日でどれくらいの長さを切断できるのか、といった検証作業を行っていくところから始めるのが良いでしょう。そこから削りしろが減ればその分、売り物になる石材が増えますし、一日に使える竜爪の回数が増やせればそれは工事期間の短縮に繋がります』


<自身の力を、弱く、細く、長く使えるよう見直すというのはこれまでにあまりない視点だが、前例がまったくない訳でもない。ある程度試しつつ、東遷事業の担当者達と話合っていくこととしよう>


 ほぉ。


『前例と言いますと?』


<例えば、狩りに用いる熱線術式がソレだ。せっかく必中なのだから、獲物を狩るのであれば、できるだけ熱線は細く、鋭く、火力も抑えた方がいい。過剰なほど捉えた獲物の食せる部分が減ってしまうだろう?>


 なるほど。


確かに、何十センチもの大穴を獲物に穿ったら食べられるところが激減してしまって意味がない。






白岩様が別の視点を口にした。


<ところで、今の話では固い一枚岩のような対象についての話に終始していたが、地の種族には運搬が困難な大きさの岩があったとして、それは細かくせずとも良いのではないか?>


『えっと例えばどんな場合でしょう?』


<先ほど、治水の為に河川の流れを変えるところに岩を配置するといったことを話していただろう? 以前、鬼族の領地に飛んで行った時だが、大きな河の曲がるところに明らかに鬼達より遥かに巨大な岩塊がごろごろと並べられていた。小さな岩では水に流されてしまう。だから大岩を配したということだ>


 ほぉほぉ。


『はい、その通りです。コンクリートのように固めて護岸工事をすることもありますけど、大きな岩ならそれ自体が流れを食い止めて曲げるのに使えますからね』


<ならば、竜爪で切るのではなく、物体移動サイコキネシスでどかせば良いこともあるだろう。それに罅割れた岩塊なら、やはり物体移動サイコキネシスで少し力を加えてやれば割ることもできる。我らの用いる術式であれば、地の種族のソレよりはずっと大きな力を加えられる。それもまた大きな助けとならんか?>


 おー。


『勿論、それは大助かりです。それに必要な結果をできるだけ最小の力で行う、という思想は大変素晴らしいモノです。ある程度の大きさであれば空間鞄に放り込んで運ぶこともできますからね。空間鞄も維持するのに魔力が必要ですけど、大岩を空間鞄に放り込んで、竜の皆さんに飛んで運んで貰い、新たな設置場所ですぐ取り出すなら魔力も少なくて済むでしょう。あー、そうすると竜の皆さんによる空輸という話も工事に関わってくるか。結構大きな影響を出せるかもしれません』


竜の飛行能力と、空間鞄のめかけ上の体積ゼロ、質量ゼロにできるという能力を合わせるだけでも土木工事に革命的な変化を及ぼしそうな気がしてきた。


 っと。


<アキ、工事全体への竜族の助力については専門家達に任せれば良かろう。今はその可能性が大いにあると解れば十分よ>


黒姫様に深い、深~い溜息混じりの思念波で釘をさされてしまった。いけない、時間が限られてるのに横道に逸れ続けるとこだった。


『はい、そうでした。では、竜爪の技の改良ですけど、熱線術式の狩り向けの改良という前例もあるのである程度期待できそうなこと、それから竜爪だけに拘る必要はなく、地の種族より遥かに強い力を発揮できる物体移動サイコキネシスといった他の術式の利用も視野に入れるのが良いと見えたところで、この件は一旦締めとしましょう』


だいぶ、未来に期待が持てそうな話になってきた。さて、残りは竜眼だけだ。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


はい、何でも切れる、切れないものはあんまりない竜爪を土木工事に活かせないか、という件についての相談回でした。切れるというけど、実は対象部分を消し飛ばす、という技なのが厄介ですよね。原子分解ディスインテグレイトならまだ結合を断って原子レベルにするだけで物質が消える訳ではないんですけど。それと白岩様からも指摘があったように、生ける巨大重機、輸送ヘリとも言える竜族なのだから、竜爪以外の力も使えばどうか、という指摘は至極当然と言えるモノでしたね。これに空間鞄が組み合わせられれば、輸送業が根底から変わりそうですけど、そこは地の種族総出で安請け合いはせず、ここぞという時だけ助力するといった加減をするようお願いすることになるでしょう。でないと商売が崩壊しかねません。


次回の投稿は、六月五日(水)二十一時十分です。

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