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22-16.伏竜、ロングヒルに降り立つ

<前回のあらすじ>

セイケン、トウセイさんと召喚術式を改良して創り出した魔力泉の術式についてあれこれ話を聞かせて貰いました。なかなか面白いことをやってましたね。これで伏竜さんと話をする準備もできました。(アキ視点)

前々から予定されていた伏竜さんのロングヒル訪問は、幸いなことに秋晴れの空となり、清々しい天気の中迎えることができた。公式な初訪問ではあるけれど、諸勢力揃っての顔合わせという場ではないので、あくまでも内々の活動をする関係者の集いという体裁だ。


なので、僕も外行きのワンピに雲取様のブローチを付けた程度の装いとして、立ち合いをお願いしてた依代の君も普段着ではないものの、小学生っぽいシャツに短パンというシンプルな服装をしてる。ケイティさん、ジョージさんの二人は探索者としての服装はしているものの、ケイティさんがいつもの魔導杖を持っていること以外は、軽めの装備と言える。


僕の足元にいるトラ吉さんもいつもの首輪をつけてる程度で追加装備はなし。


って感じで、身構えてる感は出さないチョイスにしてるんだけど。


妖精組が他勢力と違って簡単にやってこれるからと、シャーリスさんを筆頭に、賢者、宰相、彫刻家、近衛の四名を引き連れてやってきた。シャンタールさんお手製の羽織る長衣を身に付けて公式感を出してもいる。あー、以前見た奴と少しデザインが違っててプレ公式ってくらいの装いのようだ。シャーリスさんも楓の葉をモチーフにした装飾小帽子ファシネーターを付けててとってもカワイイ。


「シャーリス様、その装飾小帽子ファシネーター、素敵ですね」


「ん、そうか? 妾達の文化にはない髪飾りだからどうかと思ったがそれならば良い」


なんでも、シャンタールさんの勧めもあって身に着けてみたそうで、妖精族の文化にない、というのは飛び回る妖精族からすれば、頭にちょこんと乗せた体で実のところ、クリップで髪に留めるような帽子もどきというのは無かったそうだ。今回は同行してる四名と見た目で違いが出せるようにということで採用したそうだ。


ちなみにお爺ちゃんは子守妖精の任にあると明示するということで、シャーリスさん達とは違って、いつものローブ姿に三角帽子、長杖というスタイルだ。


「お爺ちゃんも今日はまたお洒落だね?」


「うむ。見た目は大切じゃからのぉ。これなら魔法使いとアピールできるじゃろう」


「うん、うん」


そんな話をしていると、依代の君が声をかけて来た。


「アレが伏竜か。何とも低視認性ロービジな灰色をしてる」


彼が示した空を見ると、確かにこちらにやってくる天空竜は、灰色基調ではあるけど、鱗の金属光沢が殆どなくて空の雲に溶け込むような低視認性ロービジでステルス機みたい色合いをしてる。天空竜らしく、僕でも魔力は感知できる強さがあるけど、雌竜達より何割か落ちるってとこだろうか。それに、うん、結構、痩せてる感じだ。雲取様のように速度重視のスマートな体形って感じじゃなく、肉付きが貧相といった印象があるし、体格も白竜さんくらいかな。


まぁ、それでも不健康という程ではないし、翼を広げてゆっくりと降りてくる様子もはなかなか様になってて見事。


埃一つ回せることなく静かに降り立つ振舞いも好印象が持てた。


『伏竜様、初めまして。竜神の巫女アキです。こうしてお会いできて光栄です』


歓迎の気持ちと好印象を持ちましたよ、という思いを言葉に乗せて挨拶すると、伏竜さんも目を細めた。


<こうして出会えたことを嬉しく思う。揃うまでの間、皆と挨拶を済ませておきたいが名乗ってくれるか?>


伏竜さんは敵対する気はない、と示すように体に尻尾を合わせてその上に頭を乗せる姿勢を取ってくれた。


 これはポイント高いね。


魔力制御がちょい甘いせいか、依代の君を警戒してる気持ちが透けて見えるけど、それでも即応できない姿勢を取る態度も、身構える様子も気取らせないゆったりとした動きも良い感じ。んー、これは誰かの監修が入ってるかな。事前に聞いた話だと伏竜さんは地の種族との交流はしたことがないけど、この振舞いは明らかに経験者のソレだ。


思念波からは、雲取様より少しだけ年上っぽい落ち着きが感じられる。若い子の落ち着いた感じとは違って、腰の重さというか、動く前に少し様子を伺うみたいな姿勢の違いってとこかな。ただ白岩様や黒姫様のような自信に満ちた落ち着きとはまた違う。うん、この感じはなかなか面白い。


『信仰によって存在し現身を得た神、こちらでは依代の君と名乗ってる。アキよりは顔を合わせる機会も多いだろう。人の世に疎い者同士、忌憚なき意見を交わせれば幸いだ』


 おや。


随分と高評価な態度で出てくれたね。僕と好みが似てるんだろうか。言葉に乗せられた意識も近所の友達に語り掛けるような親しさが乗ってて心地よい。


<外から見る我らと、内から見る依代の君では物事の見方も変わってこよう。こちらこそ宜しく頼む>


ちっちゃい小学校低学年くらいの子供に見える依代の君に対しても、格下扱いしない姿勢はいいね。依代の君も訓練を積んだ結果、魔力を抑えてる今の状態だと、僕にはもう魔力が感知できないんだけど、伏竜さんには彼のそんな振舞いも視えてるのかな? まぁ、視えてるんだろうね。竜眼使ってるし。


次はふわりとシャーリスさん達が距離を半分まで近寄った。


『妾はシャーリス。こことは異なる世界より召喚されてきた妖精達の長をしておる。この者達は妾の付き添いで来ているが、いずれもそれぞれの分野で優れた才を持つ。伏竜殿がロングヒルでの活動をしていく中で縁があれば、その際に交流を深められると良かろう』


 ん。


全員の紹介をしていたら冗長になっちゃうからね。今回の場ならそれくらいで十分だろう。


<妖精の国の女王自らお出ましとは光栄だ。これまでの交流でも我らと地の種族を繋ぐ活躍をされてきたと聞く。他の方々も共に働ける時を楽しみにしている>


ふむ。竜眼を使いながらも、注視するというほどじっくり見ない配慮はなんとも丁度良い加減だ。


シャーリスさん達も良い応答を得た、といった感じで軽く礼をするとふわりと距離を元に戻した。


しょっぱなの挨拶としては互いに好印象の持てるやりとりができて安心した。お爺ちゃんとシャーリスさん達で召喚体の違いも多分気付いただろうに、この場では竜眼でじっくり観察したいとか言い出さなかったのもポイントが高い。その点で言えば、完全無色透明で殆ど感知できてないだろう僕のことも竜眼で眺めながらも、聞いた通りといったとこで最初から、じっくり視たい、と言わないとこは、これまでにやってきた竜達とも違うね。親しくなってから折を見て切り出そう、って感じだと思うけど、さてさて、誰の指導かな。


それにしても、挨拶した全員が思念波か、それに準じる伝話、意思を言葉に乗せた発言をしてるって辺り、実はかなり特殊な対話をしてるんだけど、さて、伏竜さんはそこをどこまで理解してるだろう? 結構、反応を抑えてきてるから、どうも他の竜達から、自然と漏れ出る魔力越しに意思をこちらが読み取れてることは伝わっているっぽい。技量が足りず伝わってくるのか、敢えて伝えてきてるのかはちょい読み取りきれない。見せたい面を見せてるってとこはあるから、後者の比率が高めと評価しておこう。





さーて、何を話そうかと思ったけど、そこで伏竜さんは遠くから飛んでくる二柱に気付いて、姿勢を改めた。降りてくる二柱、黒姫様と白岩様を迎えるのに、尻尾の上に頭を置いた姿勢は相応しくない、と。


羽は閉じているけど身を起こした姿勢は、目上への態度ってとこかな。居住まいを正したってとこか。いつもだと竜達は揃ってやってくるから、タイミングをズラして訪れるというのは、よくよく考えてみれば初めてかも。


どちらも悠然とした態度で緩やかに降りて来たけど、なるほど、こうして並べてみると伏竜さんとの差は歴然だ。世界的な名優の男女と同席しちゃってる一般男性ってとこだろうか。溢れ出てくる覇気オーラが違い過ぎる。


 はてはて。


なんだろうね、この差は。どちらも天空竜として、僕達からすれば遥かにご立派な存在であって、身に纏う魔力も三柱とも抑えてくれている点は変わらない。……あぁ、なるほど、後からきた二柱は魔力から感じる密度がかなり高くて力に満ちてる感が伝わってくる。それと並べてしまえば、伏竜さんのソレは色々足りてなくて力強さに欠ける。


 なるほど。


まぁ、心の棚を利用して、今感じた認識は別の棚に放り込んでいるから、外からは感知されないけどさ。


シャーリスさん達や依代の君は、いつもの近しい竜達がやってきた、といった感じで落ち着いた態度だ。それは僕も同じで、一柱、伏竜さんだけ、あー、うん、結構、緊張してるか。


『黒姫様、白岩様、お久しぶりです。ご協力ありがとうございます』


以前見た時よりどちらも元気そうで良かった。特に黒姫様は世界樹の精霊と交流をしてお疲れだったからね。回復してくれて良かった。


<皆も息災で何よりだ>


<久しいな。我らの技を更に高める試みとあれば喜んでするぞ>


黒姫様も温かみのある思いを乗せて返事をしてくれた。白岩様も技の研鑽という姿勢を出してるけど、黒姫様の回復を喜んでる思いも伝わってきた。相変わらず器用な方だ。


どちらも降りた後は、尻尾の上に頭を乗せた姿勢を取ってくれて、伏竜さんも二柱のそうした振舞いを見てそれに続いた。


 あぁ、うん。


なるほど。竜同士の序列ってこんな感じなのか。わかりやすいけど、ここは後で手直しするポイントだ。


三柱が落ち着いた姿勢を取ったので、こちらもスタッフさんに椅子を出して貰い、皆には座って貰った。僕は声を掛けた立場で司会ってとこだから立ったまま話をするけどね。


『それでは全員揃いましたので、東遷事業における準備について確認をしていきましょう』


そう告げると、皆も僕が司会を務めることに異はなく頷いてくれた。さーて、ではプロジェクトの立ち上げ開始だ!


いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


名前は出ていたものの、やっと伏竜もロングヒルの地にやってきました。長かったですね。


伏竜も竜神と呼ばれるくらいには地の種族からみれば圧倒的な存在ではあるんですけど、まぁ、並んだ竜達が悪かったですね。黒姫、白岩のどちらも同世代の成竜達からも一目置かれる存在なので、どうしたって成竜に手が届かない伏竜が並び立とうというのは無理があります。まぁ、それでも、その評価はあくまでも竜族基準なら、という話。


こうして会っただけでも、アキとしては色々と思いついたことが出てきてニコニコです。


次回の投稿は、五月二十二日(水)二十一時十分です。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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