22-10.妖精達の国家百年の計(前編)
<前回のあらすじ>
他文化圏育成計画の方は、派遣する人材の選抜、育成をじっくりやって行く方向で、街エルフの長老衆の方々への説得もできそうで良かった。後は長老衆もそこまでやるか、と驚くような何かを打ち出せればいい、と師匠は示してくれたけど、東遷事業に五名、他文化圏への使節団に三名、サブリーダーが務まるような人材を出すこともあって、そうした高位技能者の人員増は難しいとシャーリスさんからも注文が入った。そんな中で何とか妖精の国の本気具合を示したいから良いアイデアが欲しいって。
そして、宰相さんが、なぜそこまで妖精の国が三界、地球、こちら、妖精界の三つを繋ぐことに価値を見出し、それを推進したいのか、その理由を話してくれることになった。それを聞いた上で考えた方が良いアイデアが出るだろう、と。僕としてはとても嬉しい意見表明だけど、その内容の重さに皆も目の色が変わることになりました。(アキ視点)
シャーリスさんがふわりとホワイトボードの前に移動した。
「では、妖精の国について現状を話そう。妖精の国は外部との交流がなく、周囲に広大な緩衝地帯を構え、同地域への他勢力の侵入を許さぬことで独立を維持してきた。緩衝地帯の森に恵みを求めて分け入る個人については、特にこれは拒まず、されどある程度のところで追い返し、森を破壊するような行為についてはそれを認めなかった」
ふむふむ。
だからこそ、妖精の国を囲むようにぐるりと半径百キロを超える円状の原生林が維持されてきた訳だ。
「周囲にはいくつか人族の国が存在し、近年では連合を組んで緩衝地帯へと踏み込もうと画策してきた事もあったが、同地帯に入る前に我らの手でこれは撃退している。過去の経緯もあり、我が国や緩衝地帯上空には竜族も近寄ることもない。これらの事から、現時点では妖精の国は独立を維持するだけの十分な実力を有していると判断して良いだろう」
緩衝地帯の外で迎撃戦をやって軽く蹴散らしているというのだから、彼我の戦闘力の差は圧倒的なんだろうね。地形を無視して人の全力並みの速度で自在に空を飛び回り、魔術を瞬間発動できる妖精さんは、隠形の達人でもあり、身の小ささとは別に魔力を隠蔽して潜伏するのも得意というのだから、人族からすれば、好んで戦いたい相手ではないだろう。
「空に存在する浮き島にも手を届かせようとしているし、飛行船の運用が始まれば、周辺地域の把握も大きく進むでしょう。順風満帆といったところですね」
そう褒めると、シャーリスさんも満足そうに頷いた。
「それに、こうしてこちらとの繋がりを通じて、我らだけでは手に入れることが困難だった多くの知を手に入れることともなった。確かに一見すると現時点では、我が国には将来を憂うような問題は存在せぬように思える。じゃが、それは浅い物の見方よ」
ふむ。
今回の話の契機は、共和国というか弧状列島の統一国家、弧国(仮称)の未来、国家百年の計を検討してみたことにある。ということは、弧国(仮称)と妖精の国の在り方を比べてみればいい。
「例えば、現時点の認識は、狭い範囲だから成立する局所解に過ぎないかもしれず、全体を見据えた時の最適解と同じとは限らないってところでしょうか」
「然り。我が国には共和国のように宇宙から世界を見下ろす地上探査衛星はなく、妖精界における世界がどうなっているのか何も知らん。我が国が存在する地が大陸なのか、弧状列島のような島国なのか、それすらわからぬ」
ふむ。
「同時刻の太陽の角度を同時計測することによる緯度の計測はされました?」
「飛行船の運用前には、それは行う予定としてる。そのための精密な計測具と時計の製造中といったところよ」
なるほど。
「それができれば暫定で惑星の大きさと妖精の国の緯度は確定できますね。地軸の傾きは夏至と冬至の南中高度の差から求められますし」
無地な世界儀だけど、全体サイズと地軸の傾き、それと妖精の国の位置はプロットできる。これだけでも多くの事柄がわかってくる。
「妾達は農業を行わぬ。だから、地の種族ほど季節の移り変わりを正確に知る必要がなく、天体観測や気象への理解もさほど進んではいなかった。だからこそ、こちらの知を得て、自分達の世界を改めて眺めた事で意識が大きく変わることになった」
ほぉ。
「知らないことが増えたんですね」
シャーリスさんはその通りと深く頷いた。
「我が居城の中庭に我らの世界儀を置くつもりだ。誰もが観ることができる場所に置くことで、自分達が如何に世界を知らないのか、世界は広く、そして未知に満ちているのか、それを国民は知らなくてはならないからだ」
「それは良い試みですね。周辺地図は?」
「そちらも今、彫刻家の主導で創っているところだ」
中央に妖精の国が位置し、皆がよく知るランドマークの位置を記すことで、全体の広さが理解できるようにして、更に周辺の地理を大雑把に記すことで、妖精の国の外について多くがまだ未知であることを知らしめる作りだとのこと。
「そうして世界が広いこと、未知に満ちていることを知れば、世界への興味を持つ人も増えるでしょう。弧状列島の地図を皆に多く見てもらいたいという話に通じるところがありますね」
「国の結束を高める意味はないが、世界の広さを、自分達が無知であるとの自覚を促すことは期待している。比べてみると妖精族と街エルフは似たところが多い。長命で人口があまり多くなく、周囲に自分達よりも遥かに多く増えやすい他種族を抱えているという意味で」
ん。
「そして違いもありますね。街エルフは頭数の少なさを魔導人形達によって補い、海外と交易を行うことで、その活動域を世界儀に広く描けるまでになり、宇宙から惑星を眺めることで、世界の広さを認識するに至った。大きな違いとしては、街エルフは自分達が小国だと、世界の広さを理解した上で認識している。妖精族はまだそうではない。そんなところでしょうか」
「それよ。まだ、我が国は残念だが世界の広さを知った上で自国を評価できていない。妾達は周辺国に比べれば、独立を保てるだけの強さは持っているが、それが世界全体としては何を意味するのか、その理解もこれからだ。そうした現状認識から、今後百年の計を考えるに至った。そういうことよ」
なるほど。
大筋としては、これまでに聞いていた通りだけど、世界に残る未探査領域と同地域に存在する未知の大陸、そして未知の文明圏。それらを踏まえて惑星全体を眺めた場合、自分達はどの位置にいるのか、今後、どの位置にいるべきなのか、他の文明圏はどうあるべきなのか、注意すべき文明圏はどこか……。そんなことを僕が街エルフのメンバーとがっつり語り合ったことで、その話を聞いたシャーリスさん達は思った訳だ。
ならば、我ら、妖精族はどうなのか、と。
そして、判明したのは真っ白な世界儀、数センチ程度の大きさでしか描けない認識域と、それ以外何もかも未知という、ある種の恐怖。もしくは冒険家の如き探究心か。
◇
さて、とシャーリスさんは真っ白な世界儀までは用意できたことを前提に話し始める。
「妾達が殆ど何も描かれていない世界儀を手に入れたとして、では次はどうするか。飛行船で周辺にある人族の国々を眺めて回ったところで、世界儀全体からすれば、描ける範囲はほんの僅か増えるに過ぎない。では、その行いに意味はないか? 否、もちろん、意味はある。妾達が人族の国々の地理を知ることは、人族との交流の際に有利に働くだろう。それに人族以外の種族、こちらでの鬼族や小鬼族に相当する者達の国々もあるかもしれない。魔獣の棲まう地もあるだろう。そうした地や種族への理解を示せることで、妖精達は話のできる相手であり、何も知らず引き籠もっている訳でもないと知らしめることもできる」
うん、うん。
「それに天体観測の知識や技術を示すことで、世界への視野の広さもアピールできますね。さらなる外への興味を示し、更にその先、大洋を帆船で渡るような話も、眼の前に帆船が無くとも話が通じると理解して貰えれば、大陸の中にあっても、弧状列島のように島国であったとしても、どちらにせよ、そういった広い世界観を持つ、と示せることで、周辺国に対して、そうした外の知識が交渉に使える、共有する意味があると認識させることもできるでしょう」
「そう、それよ。妾達は小さな身ゆえに小さな国土に引き籠もって暮らしていても不自由することはなかった。しかし、人族はそうではなかろう。周辺国同士が手を結んで合同軍を結成できていた以上、彼らのさらなる外にある国々とは良好な関係を結んでいる筈じゃ。小さな島国で周辺の人族以外の国は存在せぬ可能性もないではないが、恐らくそこまで小さくはあるまい」
ほぉ。
「なぜでしょう?」
「それは、高空を飛ぶ天空竜達がいるからだ。妖精界に棲まう竜達も、重力を偏向し、風を捉えて飛ぶことに違いはない。となると、そうそう遠くまでは飛べぬ。巣にはこちらより遥かに濃い魔力が湧いていても、空の高みとなれば、魔力は失われていく一方だからだ。となると、ロングヒルから小鬼帝国の首都に至った距離まで飛べば竜達の縄張りが存在するに違いない。竜は妾達のいる地域は避けるが、十分な高空であれば突っ切って飛ぶこともある。だから、竜達の縄張りはそう遠くでない地にある。そして竜達も、妾達は何十という個体をこれまでに見てきている。だから、竜の数もそれなりにいる事も確定だ。妾達の住む文化圏は、島国であれば弧状列島の半分よりは間違いなく大きい。そう結論付けた」
ほぉ、ほぉ。
「竜は、若竜から老竜までいる感じです?」
「若竜、成竜までは実際に見たこともある。老竜は見たことがない。ただ、それはこちらも同じで、空を飛ぶ老竜は殆ど見かけることはないと聞いている。いずれは確認したいところだ。竜と話ができれば、こちらと同様、どこで何をしているかくらいは聞くこともできよう」
ん。
おっと、リア姉が手を上げた。
「シャーリス様、妖精界での天空竜達は、遥かに濃い魔力に満ちた世界にあって、やはりその身には膨大な魔力を秘めているのでしょうか? また、多くの魔力を秘めていても、こちらの竜と大差のない行動範囲しか保たないのはなぜか、理解してる範囲で教えていただければ幸いです」
なるほど。
「十倍秘めてるなら、十倍遠くまで飛んでもいいじゃないか、って話だね」
「そう」
シャーリスさんもその問いには、なるほど、と頷くと賢者さんに説明せよと命じた。
「では、私から我らの世界における天空竜について説明しよう。うむ、濃い魔力域における注意点、特徴についてこちらで知る者はいるだろうか? ケイティはどうか?」
「私は数える程度ですが、濃い魔力を秘めた領域に足を踏み入れたことがあります。そのような地では、自分の身に満ちた魔力を律して、周囲の魔力の影響を受けないよう注意が必要でした」
ほぉ。
「ケイティさん、巨人に変化したトウセイさんが魔法陣経由で僕とリア姉の魔力で暖を取るようにその身に取り込んで、魔力不足を補ってましたけど、せっかく周りに魔力があるのに、内と外を明確に分けて注意するのはなぜなんです?」
何もしなくても回復するなら便利だし、いくら濃いと言っても、自身の限界を超えてしまうほどってほどの魔力が場に満ちているというのも考えづらい。
「アキ様、それは場に満ちた魔力には必ず属性が付いているからです。自分の魔力と相性のいい魔力が満ちているということはまずあり得ず、場合によっては自分にとって害としかならない属性ということもあるのです」
これには師匠が補足してくれる。
「アキやリアの完全無色透明な魔力なんてのが例外過ぎるんだよ。普通は自分に多少近くても、そのまま取り込んだら自分の中の属性バランスが崩れて心身を悪くしてしまう。だから、そうした濃い地では、自身の魔力を外に出さないように、外の魔力を取り込まないように、自身を律するんだ。いくら強くても呪いに満ちた地の魔力なんざ取り込みたくないだろ?」
うわぁ。
「それはそうですね」
僕の答えに賢者さんも深く頷いた。
「こちらでも似たような環境、経験があり幸いだった。今、二人が話したように、異なる属性の魔力は、魔力の乏しい体には害になりうるから、その影響を退けられるよう、体内魔力はある程度以上は残しておくのが基本だ。こちらのように魔力を殆ど使い切っても消耗して休むだけで済む、というのは我々の常識からすれば、信じ難いとさえ言える。そうした無防備な真似をしても実害が薄いのは、害を与えるほどの魔力が満ちていない希薄な世界だからだろう。だが、我らの住む妖精界はそうではない」
ある意味、世界全体が悪意はないけど、呪いのような力に満ちてるような状態ってことか。
「確かに、お爺ちゃんも、例の賽子ができるまでは、乱数を用いた娯楽がなかったと話してました。どこもかしこも誰かの意思の影響下にあるんじゃ、他の影響を撥ね退ける程度の魔力は残しておかないと大変そうですね」
「その通り。だから、天空竜達もこちらよりはかなりの魔力をその身に蓄えているものの、こちらの基準からすれば、十分過ぎる余力を残して動くのだ。だから結果としてあまり遠出もできん」
何とも世知辛い世の中ってことだ。ある意味、そこら中、弱体化効果のついた特殊ゾーンだらけで、自身の身に魔力を満たすことで、低レベル効果を自動キャンセルさせる必要があるんだね。高位存在だから、その程度で済んでるけど、人族だと持続式補助呪文とかでそこらを補ったりしてるんだろう。そう考えると、合同で遠征軍なんてよくもまぁ出せたものだ。
「竜達が高空の飛行を好むのは、案外、地上付近の魔力からの影響を受けるくらいなら、魔力が多少なりとて薄いだろう高空の方が飛びやすくて楽、なんて話かもしれませんね」
「機会があれば、それはぜひ聞いてみるとしよう」
「ですね。あと、そこまで魔力が濃いと、人族の皆さんは基本、集団行動をしてて、集団全体での支援呪文で、そうした環境からの影響を防ぐみたいな工夫をしてる感じですか?」
僕の問いに、賢者さんは少し考えてから答えた。
「アキの言う可能性もありそうだ。森に立ち入る猟師達は竜達とは違い、周囲の魔力に逆らわず受け流すような技を身に着けていたが、言われてみれば、軍集団で動いていた者達は、そうした溶け込む技は不得手な者が多かったようにも思える」
おや。
なんとも雑なご意見だね。それだけ興味が薄かった、警戒するようなモノでも無かったって事か。
「賢者さん、それって、こちらの街エルフ謹製の耐弾障壁みたいに、防衛対象の有無を確認する結界を展開してて何かあれば自動迎撃してくる、みたいな攻性防壁っぽい怖さはないから、気にしてなかったとか?」
「攻性防壁とは何だ?」
おや。
耐弾障壁を例に、弾丸が警戒ラインに触れるのを検知したら、ソレ以上の侵入を防ぐよう防壁を展開するのが耐弾障壁だけど、対象地点に対して熱線術式を撃ち込んで自動迎撃するとか、投槍を放って串刺しにするとか、防ぐために相手に攻撃を仕掛けるっていう攻撃性の強い防御方式を取るのが攻性防壁だよ、と説明してみた。
賢者さんは少し驚きながらも、師匠に説明を求めると、師匠も呆れながらも一応フォローしてくれた。
「アキの言うソレは、地球の世界の創作でのネタって奴さ。実際にそんな真似をしようものなら、周囲にいる無関係な第三者への友軍誤射だらけで死屍累々だよ。流れ弾の先に味方がいる場合は発動しないなんて工夫をしたなら、今度は迎撃もせず相手を素通ししかねない。それじゃ、実用性があるとは言えないね」
子どもの考えた机上の空論って奴さ、と鼻で笑われた。
ぐぅ。
「確かに日本の元ネタでは、通信経由での情報戦のやり取りの中で、攻撃相手を特定して、その相手だけに反撃をきっちり返す、といった感じでしたけどね」
一応、補足すると、賢者さんも納得してくれた。
「そもそも、そうした高度に複雑化した現代魔法陣に匹敵するような魔導具が妖精界には存在しなかった。魔導具は機能をシンプルにして、確実に予定したように動作することだけを突き詰めるモノなのだ。そうしておかないといざという時に誤動作しかねない。それでは安心して使えんのだ」
なるほど。
濃厚な魔力に満ちた地においては、魔導具も頑丈かつシンプルな動作をするような作りにしておかないと、繊細な作りだと周囲の魔力の影響を受けて思ったように動かないかもしれない、と。大変だ。
「それで、妖精さん達を見つけるための警戒用魔導具での周辺監視は頑張っていたけれど、軍勢全体にそれを行き渡らせるのが限界だったようで、見つけた後に稼働させるような気になる魔導具は無かった感じですか」
「そういうことだ。予め事前に魔力探査を行って大掛かりな魔導具があれば先に見つけることもできただろう。実際、存在するかもしれない、と念入りに我らは調査をしたのだ。何も見つからなかったが」
まぁ、軍勢を意味なく散開させておく意味もないから、ある程度の軍として纏まって動いてたんだろうね。
それにしても、こうして少し話をするだけでも、魔力の存在するこちらともはっきり異なる異世界と思えるくらいの差異があって、驚く事ばかりだ。妖精さん達がこちらの魔力を希薄過ぎる、と称していたけど、妖精界だとシャーリスさんくらいになると、自らの意志が容易に周囲に影響を与えてしまうと言っていたくらいだし、そこら中の掃除道具がステップを踏みながらダンスしてるようなファンタジーっぽい現象も当たり前のように起きていそうだね。いやはや、外から眺めてる分には楽しそうだけど、誰も触れなければ目を離しても、置いたモノは勝手に動いたりしない、という物理法則の基本すらまともに守られそうにないってのは、科学者からしたら悪夢としか言いようがない世界だろう。
いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
魔力がまったく存在しない地球、妖精曰くとても希薄な魔力しかないこちら、そして濃密な魔力に満ちた妖精界、という三界を繋ぐこと。その前提として、おさらいを兼ねて妖精の国の置かれている状況と惑星の規模での世界の把握状況が示されました。1メートル級世界儀に僅か数センチだけ描かれた把握してる地域。それ以外は何もかも真っ白、判明しているのは妖精の国の緯度と惑星の地軸の傾き、それと惑星自体の大きさだけ。為政者からすればこれは怖い状況でしょう。
また、濃密な魔力に満ちた妖精界特有の事象として、そこら中になにがしかの属性と意志に満ちた魔力が存在しているので、自己を明確に保つためには体内魔力量をある程度の量備えておかなければいけない、という面倒臭い事が明らかになりました。天空竜が低位魔術を自動無効化できるのは、その身に魔力を多く蓄えているからで、それはこちらの世界では特殊能力のように思われていたけれど、妖精界においては生きていくのに最低限必要な能力、体温を維持するように当たり前に備えてる力だったんですね。
と言う訳で、妖精界においてはそこらの昆虫や小鳥ですら、周囲に満ちた魔力に影響を受けない程度には魔力を備えているので、こちらの世界の魔術師が低位魔術を用いたとしても、虫一匹倒せないでしょう。低位魔術なんて自動無効化されてしまうので。
……って感じに話を聞いた面々は想像していますけど、これがツッコミ不在の恐ろしいところです。いずれは検証して、そうした勘違いは正されていくことになりますけど、いくら妖精界とはいえ、全世界規模でそんな高密度魔力に満ちている訳じゃありません。というかそんな世界では人族は生きていけません。
こちらでも、鬼族連邦の領土が魔力に満ちた土地であり、鬼族はそこでないと暮らして行けず、それが他地域への侵攻圧を生じさせなかった理由っぽいことが示唆されてます。実際、海外渡航において魔力枯渇の問題が生じて苦慮している事は鬼王レイゼンも認めてましたからね。
なので、妖精の国とその周囲の緩衝地帯は、確かに体内魔力で周囲からの干渉に抗う必要があるものの、その外、人族の住まう地域でまでそうか、というと、そんな訳ないだろーってな話なのでした。この辺りは魔力濃度を計測できる魔導具を量産して、妖精達が魔力濃度地図を作ったりすれば、だいぶ状況も見えてくるでしょう。まだまだ先の話ですけどね。
次回の投稿は、四月二十一日(日)二十一時十分です。
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