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22-4.他文明圏育成計画を妖精族が猛烈後押し!(前編)

<前回のあらすじ>

共和国では静止衛星たんぽぽを運用していて、魔導人形さん達が常駐してるという話なので、宇宙飛行士級の魔導人形さん達を他文化圏育成計画に派遣して貰えば、色々と捗るかと思ったんですけど、待機スリープモードがあることで、せっかく宇宙にいるのに、大半の時間は何もせず待機してるだけということが判明しました。これが人間なら寸暇を惜しんで実験、研究、余暇、飲食、睡眠とやることは盛り沢山なんですけどね。なかなかうまくいかないものです。(アキ視点)

ヤスケさんやお姉様方が急ぎで共和国に帰った日は、サポートメンバーの皆とちょこちょこ話したりしつつ、ここ最近の忙しかった日々を振り返ってメモを書いたり、トラ吉さんと雨上がりの庭を長靴を履いて散歩したり、とのんびり過ごすことができた。


泥だらけの場所を歩いて汚れたトラ吉さんは、ちゃんと足拭きマットで足裏を綺麗にしてたし、泥で汚れた毛のクリーニングも嫌がることなく手入れさせたりと、とっても賢く振る舞ってくれて助かった。


お風呂を嫌がる猫も多いから少し心配だったんだけど、ケイティさん曰く、最初から「手入れをさせてやる」といった偉そうな雰囲気マシマシで、水気をとって毛を乾かした後は、鏡を眺めて確認してたそうだ。


リア姉が小さかった頃から少しずつ慣らしていった事で、今のようになったんだとか。


ただ、湯船に浸かるのは拒否ってるそうだ。まぁ、そこは好む猫がレアケースだからね。


そんな感じで、のんびり過ごすこともできて、魔導人形さん達だけによる使節団結成は何気に難度が高いね、ってとこまで話をした段階では、暫くは伏竜さんお出迎え準備に専念だ、と思ってたんだけど。


何故か、翌朝には、シャーリスさん、賢者さん、宰相さんという珍しい組み合わせと顔を合わせることになった。





急ぐ必要はないと言われたので、自室の鏡面台の前に座って、身支度をしつつ、状況確認をしていこう。


「ねぇ、お爺ちゃん。昨日は僕が寝た後、何があったの?」


あの三人が揃って他種族も絡まない状況で訪問してくるなんて、初ケースじゃないかな。


「うむ。ほれ、昨日、魔導人形達だけによる使節団結成は難しく、かなりの時間を必要とするという話をしとったじゃろう?」


「うん、そうだね。地の種族なら誰もが当たり前に持つ人生経験がかなり抜けてるから、そのままだと、言葉が通じない異文化とのコミュニケーションにかなり難がありそうで、そのギャップを埋める為にも子育てができるくらいの資格は取得させるべき、って感じだったね」


子守妖精の魔導人形さんは、突拍子もないことをしでかす子供の挙動にも対応できるよう、小さな身ではあるけれど、子供の生活圏や心身に関する医療知識もカバーしてたりと、いてくれると助かるって話なんだよね。大人ならやらないような事でも、子供は案外、躊躇なくやったりするから、そういう意味での予見能力は確かに専門技能扱いしてもいいとこだろう。


「その通りじゃ。それに、他文明圏では、自分達と異なる存在である他種族との交流を手探りで行うことにもなる」


「うん、そうだね」


髪の毛が長いから、丁寧に櫛を通さないといけないんだよね。流石に一年も続けば慣れたものだけど、長髪のお姉さんが好き、とミア姉に長髪を続けさせたことを申し訳ないなぁ、と思ったり。そんな過去もあるので、今の僕も手間はかかるけど、腰まで伸びてる髪を保ってる。まぁ、こうして話をしながら手入れをしてるからそう無駄な時間を費やしてる感はないけどね。


「そういった話をしたところ、そうした訓練、経験は儂らの未来にも大きな福音を齎すじゃろう、という話になってのぉ。地の種族と魔導人形には多くの違いがあるが、その意味では儂ら妖精族とて同じじゃ。であるならば、大きな違いを持ち言葉も通じぬ相手との交流を深める、その為の準備と実践という機会には儂らも参加すべき、と考えたんじゃよ」


 ほぉ。


「それって、妖精さん達が未探査領域への使節団派遣に同行してくれるってこと? 年単位の任務ミッションになるから、お爺ちゃんみたいに召喚しっぱなしになったりかなりの負担にならない?」


「うむ。しかし、そうするだけの価値がある、と儂らは判断した、という事じゃ。詳しい話は、女王陛下や皆と合流してからじゃな」


 なるほどね。


顔をさっぱりしつつ、今度はケイティさんに聞いてみる。


「ケイティさん、どうして今のタイミング、それに僕と話をするか聞いてます?」


この問いには、勿論伺ってます、と話してくれる。


「翁から聞いた話ですが、他文明圏育成計画の実施を強く働きかけて欲しいそうです。アキ様は提案はされたものの、実行してもいいし、実行しなくてもよい、といったスタンスでしたよね?」


 うん。


「そうですね。他にも優先すべき案件もあるし、時期的にも早めに済ませた方がよい話もあるから、衛星探査を強化しつつ、ある程度の見極めができるまでは、そこまで急ぐ必要もないかな、って認識でした」


「シャーリス様は、その中立寄りの立ち位置から、強く推奨するといった姿勢に変えることを望まれています。その為、妖精の国の期待する事や、対価として得られるであろう効能について話をして賛同を得よう、という趣旨とのことです」


 なるほど。


「お爺ちゃん、それで何人同行させる気でいるの? 一人? 二人?」


「昨日までに聞いた話では、想定される他文明圏は三つとのことじゃったから、一か所辺り一人の計三名を考えておる」


 なんと!


全勢力が参加して大河の流れるルートを南から東に付け替える巨大治水工事の東遷事業、延べ何十万人か参加するであろうソレに、現場監督を支える助手として参加してはどうかと打診した時には、五名参加させるつもりだけれど、それはかなり尽力した結果と考えて欲しいと言ってたくらいなのに。


「偉く大盤振る舞いだね。統一国家樹立の暁には、妖精の国も正式な国交を結ぼう、と言っていた姿勢からは大きな変更が入るとも取れるけど、その理解で合ってる?」


まだ、弧状列島の統一国家樹立までには結構時間がかかると思う、なのに前倒しにする。何故だろう?


「詳しい話は女王陛下からあるが、その認識を持って貰って構わん。ほれ、全勢力参加の同盟を締結したじゃろ? それに未探査領域への使節団派遣、その中でも魔導人形達による第一次使節団派遣までで考えれば、派遣だけなら共和国だけでも成し得る。ならば国交樹立をした上で、我が国からも大使の一人という形で派遣しようと考えたんじゃ」


 ふむ。


単なる雇われ要員の一人ではなく、大使として正式に同行するとなると、確かにそうしたお膳立てはいる、か。


「なるほどね。依怙贔屓はできないけど、推すだけの理由があれば、推奨側に回るのはやぶさかではないよ」


「うむ。損はさせぬつもりじゃ」


お爺ちゃんも、後は合流してから話すとしようか、などと話を止めた。


ケイティさんが用意してくれた今日の服は、お客様が来た時用でちょっとだけ外向けといった感じに洒落たデザイン、白の長袖シャツと紺色のミモレ丈スカートのドッキングワンピースだね。胸元のスカーフを首元のブローチで留めるとこがポイント高いかな。スカート裾の控えめなフリルも素敵だ。


「ケイティさん、これ新しいデザインですよね?」


「はい。シャンタールの新作になります」


 おぉ。


着てみると、着心地も良くて、鏡に映る美少女っぷりが何割かアップした感じがする。少しお淑やかに振る舞おうかなー、とか思っちゃうくらいだった。





食事をしながらの方が都合がいいということで、居間の方で食事をすることに。三人の前には、妖精さん用の料理台が置かれていて、妖精さんサイズの料理や小さなコップも乗せられている。こうして半透明の翼を広げて妖精さん達が浮かびながらくつろいでるのを見ると、ほんとファンタジー色が強くて素敵だ。テーブル席では母さん、リア姉の二人も既に席についていて、そんな妖精さん達と和やかに雑談をしてて楽しそう。


ちなみに妖精さん用の料理台は、上に乗せている料理や飲み物の状態をそのまま保つ上面開放型保管庫と言える魔導具で、おかげで米粒サイズのような料理や、水滴のようなカップのスープもそのまま適温、水気を含んだ美味しい状態で提供できる逸品だ。状態維持は時間遅延によって実現されているというから、こちらの世界ならではの品と言える。なお、僕やリア姉が触ると壊れてしまうので絶対触らないよう言及されている上に、今置かれている位置も二人からは手が届かないよう配慮されている念の入れようだ。なんでも同サイズの金塊より高額らしい。


「シャーリス様、賢者さん、宰相さん、お久しぶりです。珍しい組み合わせですね」


そう話を振ると、ふわりとシャーリスさんが前に出た。


「妾はそうでもないが、確かにこの三人が揃うのは稀よな。急な訪問となってすまぬ」


賢者さんもぴくっと眉を上げながら挨拶してくれる。


「今回の提案には、召喚術式に関するいくつかの新たな挑戦も含めている。私はその説明と派生するであろう技術的議論担当だ」


賢者さんは、方向性が定まっているのでとても分かりやすい。というか、妖精さんを単に同行させるだけじゃないのか。


最後は宰相さん。ほんとお久しぶりだ。


「陛下からも説明はあるが、今回の件では、アキには推奨する立場となって後押しをお願いしたい。だから、対価は遠慮なく挙げてくれ」


 おや。


んー、というか、共和国からすれば恩恵ばかりで逆に対価を差し出す側になると思うけど。


 あぁ、そういうことか。


シャーリスさんも僕が気付いたことを意識して、静かに頷いた。


「勿論、共和国との間でも互いに提供する事はあろうが、アキに妥協を求めねばならない件も含む。それ故の対価と思うてくれれば良い。一通りの話を聞けば、妾達がなぜこうして割り込んで話し合いの場を設けたのかも納得できよう」


 ふむ。


「それは、ヤスケさん達が帰って長老会議で検討を始めている。その話に割り込んで、妖精族も参加する形で優先度を上げて使節団派遣を行う方向での合意に持って行きたい、その際には僕からの後押しもあるのが望ましい、と」


その通りと三人も頷いた。


ちらりとお爺ちゃんを見ると、儂は子守妖精じゃからな、とあくまでも傍観者というスタンスらしい。


 なるほど。


「母さん、リア姉はどんな立ち位置で今回は参加?」


 まぁ、これで共和国代表って話はないと思うけど。


「私達はアキの家族として必要があれば助言するつもりよ」


「そういうこと。だからここで知り得た話はここだけの話だから、私達からは報告はしない」


ん、それはありがたいね。あくまでも今回は僕と妖精さん達の内緒話って趣旨、と。シンプルでいい。


 ここでベリルさんがホワイトボードに記載された内容を示してくれた。


「①各使節団に一名ずつ妖精を大使として同行させる。同任務中は継続召喚とし、魔導人形への教育・訓練の段階からの参加とする。②召喚術式を改良し同期率低下中も独自行動できる高度召喚体とする。ただし必要魔力量の増加は求めない。③以前は符術で実現していた別位置への召喚を、現地にいる妖精によって実現させる、ですか」


確かに、これは僕に大きく絡んでくる話だ。松、竹、梅、の三案くらいに分けられそうだけど、技術的挑戦が色々混ざってるから、先ずは最低ラインの梅案の見極めから頑張ってみよう。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


バタフライ効果エフェクトという奴ですね。アキは共和国に対して国家百年の計を示しましたが、その話を聞いた妖精の国もまた、同様の検討を行い、その結果、妖精達も正式な参加をする形で、他文化圏への使節団派遣に参加したい、その為にもぜひ、アキにはその実現を後押しして欲しい、と相談されることになりました。ヤスケやお姉様方が帰国した翌日にコレです。きっと一連の話を終えて、アキ+妖精の国からの熱烈な要望という形で、他文化圏への使節団派遣をしようよ、とおねだりされたら、長老達も何がどうなった、と慌てふためくことになるでしょう。まぁ、それはもうしばらく先の話ですけど。

……伏竜がロングヒルにやってくる前にはそうなるんですよね。あまりに密度の濃い展開ですけど、後世の歴史家達がこの期間の出来事をどう解釈するのかと考えると、なかなか面白そうですね。


次回の投稿は、三月三十一日(日)二十一時十分です。

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