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第二十一章の人物について

今回は、二十一章で活動してた人達の紹介ページです。二十一章は四日間しか経過してないので記載情報なしの人が多いです。

◆主人公


【アキ(マコト)】

代表達が帰って、さて、次は伏竜さんをを迎える準備か、と思っていたところにミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけてきて、色々と予定が変わることとなった。


当初こそ、騒々しいとか、我が道を行く感じとか、香水がキツいとかネガティブなイメージが先行したものの、二日目にはきっちりそれらを見直してきたこともあってか、アキはすっかり警戒するのを止めて、それなりの手札を持ち、知的な会話をするのが楽しいお姉様方と認識を改めるのだった。


リアはそのチョロさに苦言を呈したりもしたものの、アキもある意味、わかってて緩くしてるところはあり、その姿勢自体をケイティからどうか、と窘められることにもなった。


自身の会社の身銭を切って大きく踏み出そうという彼女達がどれだけリスクを取って行動をしようとしているのか、それがストレスが増すような話なのか、と滔々とリアが語って聞かせたこともあって、アキも、宝くじの当選番号を見るような気軽さは不味いと自覚することとなった。


それでも、群衆資金調達クライドファンディングに出資したくらいの熱意とか言って、翁という賛同者も得て、それそれ、などと言って更に睨まれるようなことにもなったのだが。


今回は後から参加したジョウ大使や家族、長老のヤスケといったように話し相手が街エルフだけと限定されていたこともあって、様々な情報のリミッター解除となって、それだけでもだいぶ気楽に話ができて満足することになった。


まぁ、本人も語っていたように、本当の意味で完全ストレスフリーだったかというと、情報が足りなかったり、入門編的な話から入る手間もあったので、そこまででは無かったのだけれど。


アキとしては、百年先を見越して、小さな出資で大きな結果をどーんと得られるお得な策を提案できた、と結構満足していた。後はどう転ぼうと、今より悪くなることはないボーナスステージだ、なんて考えている程度なので気楽なものである。


そして、()()()()よりも、海外の探査船団から得られた世界樹絡みの情報なども踏まえて、色々と検証したい技術的な課題が出てきたので、そちらの方が興味津々、さくさく手を付けて、少しでも研究の足しになれば、と考えているところだった。




◆アキのサポートメンバー



【ケイティ(家政婦長ハウスキーパー)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が別邸に乗り込んできた件は、思ったほど荒れることもなく、それぞれに手土産として育てがいのある事業提案を伝えたり、それらが成されたことを前提に、為政者からジョウ大使も参加する形で、皆で統一を果たした弧状列島の国、弧国(仮称)が取るべき外向きの策について話し合うといった、アキ好みの展開となった。


技術面での情報開示についてアキとヤスケの間で火花が散る展開は多少あったものの、ケイティから見れば、あれはアキがじゃれついた程度の話で、険悪なムードになるような流れでも無かった。


伏竜への説明では、依代の君の助力も得られる事となり、未探査領域への船団や魔導人形達のみで構成された使節団派遣といった話は、ヤスケが引き取って本国で長老会議にかけるようなので、ケイティはもうすっかりお任せな気分で割り切っていた。


ケイティとしては自身の職務内で、別邸内がきちんと回るように差配できれば良し、なのだ。というか、もうそう割り切ることにしたと言える。扱う話の規模、期間、関係勢力が大きくなり過ぎて、たかが家政婦長ハウスキーパーが手を出す範疇などとうに超えているのだから当然である。


それよりは、アキと約束した野鳥観察のお出掛けの方がよほど大切だった。野鳥観察とは言うものの、同行者が妖精の翁、角猫のトラ吉さん、という時点で、双眼鏡の出番はない。ここは妖精族が用いる拡大術式を使い、それを皆で一緒に眺めるという流れで行くつもりだった。


【ジョージ(護衛頭)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が別邸に乗り込んできた件は、事前に調査していた三人の性格からして、アキと揉めるようなことはないだろうと予想しており、その通りになったことに安堵していた。十中八九上手く行くと思っても、心配というのは尽きないものなのだ。相手が街エルフとなると、一通りの技は使えるのが前提なので、護衛としてはやりにくい相手である。

しかし、大切な姉ミアの友人達となれば、流石に護衛人形達を出しておく訳にもいかない。一応、隣室にアヤに控えていて貰ったが、急いで割り込んで貰うような話にならなくて良かった。


アキらが話していた外向きの策については、セキュリティという観点から言えば、殆ど影響がないのである意味、気楽に聞き流していた。探査船団に載せる海兵人形ならそれこそ万単位でいるのだから、そこから千や二千連れて行ってもロングヒルの警護体制に影響が出るような話はないのだ。


東遷事業が始まれば、そちらとの連携は必要になってくるだろうが、ロングヒルを固めている護衛チームはそもそも身元調査から始まった厳正な検査を終えた面々だ。そこを動かすということはないだろう。


そして、そんな本業よりも、ジョージが初心な少年のようにガチガチに緊張して臨んだのは、出版業界のトップにいると言っても過言ではないマリから、子供向けの話を書いてると聞いて興味があるから読ませて貰えないか、と言われたことだった。ベリルと共に共和国に戻る前の小一時間といった程度の間ではあったが、自分達の書いている途中の作品とはいえ、その道のプロが目にするというのだ。緊張しない訳がなかった。そして、そこでマリから貰った助言が、二人の執筆方針に影響を与えることになる。聞く機会があれば二十二章でその辺りの話題にも触れられるだろう。


【ウォルコット(相談役&御者&整備係)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が別邸に乗り込んできた件は、雨でどこかに出掛けるような話もなかったので、ひたすら裏方に徹して、様々な準備を手伝っていた。助手のダニエルも普通に女中として支援に出していたりする。


そして、サポートメンバーの一員として、制限なしで街エルフ達だけで話した内向け、外向けの策について、その全てを聞くことになり、話している内容、期間、規模の全てが既存の枠組みを大きく超えたものであることから、驚愕し、興奮するのと同時に、自分自身がそこに参加したいという気持ちが湧き起らなかった事にも納得していた。


単なる大きな商家が加わるには話の粒度が大き過ぎたからだ。何年かかるかわからないが、未探査領域に向けて出港するであろう探査船団や、魔導人形達だけで構成された使節団、その活動を支援する船内要員達といった者達が出航して行く様子を眺めるくらいはできるかもしれないが、その結果を実際に目にするのは何年後だろうか。数十年後か、下手をすれば百年後とかかもしれない。


歴史に刻まれるような出来事に立ち会える、という観客としての喜びと、その行く末を見られないという人族としての寂しさもまた、楽しむべきことであると感じていた。


そして、自分は無理でも助手のダニエルはきっと、降臨した現身を持つ神である依代の君と共に、今回打たれるであろう未来に向けた手がどういった世界を生むのか見届けることになるだろう。その事を羨ましく思い、神官としてのダニエルの心を豊かに育むだろう、と告げたのだった。


ダニエルは自身の心の変化に戸惑っているようだが、そうした迷いもまた、大切にすべきだと、商人を引退した今となればわかってくるものだった。


【翁(子守妖精)】

今回、アキがお姉様方(ミエ、ユカリ、マリ)にそれぞれ土産話として話した内向きの策、そして世界儀ベースで、文化圏同士の勢力争いといった視点で語る地理学と、先を見越した外向きの策。そこで語られる内容には好奇心を十分に満たすことになり、同時に自分達、妖精の国の視野の狭さについて、少しだが危機意識を持つことにもなった。


こちらから技術を導入して、妖精の国で初となる巨大飛行船を建造し、それを運用することで自国周辺地理の把握に努めようとするなど、その歩みは堅調そのものと言える。


それに、共和国が行っているような宇宙空間利用は、流石にいくら妖精族でも手に余るというモノだった。そこに手を伸ばすには国力をせめて何倍かに伸ばしてからでないと厳しい。


勿論、焦りは無かった。周辺の人族達の連合軍相手でも適度に叩いて追い返すくらいに実力差があるのだから。


まぁ、自前で飛行できる範囲がせいぜい関東平野程度という広さまでの妖精族にとって、大陸規模の話や海を渡った先の話というのは、いくらなんでも話が飛躍し過ぎという内容だったと言えるだろう。現代で言えば、異世界の庶民達とのんびり触れ合う話に、SF要素が飛び込んでくるくらいの異質さだった。


だから、まぁ、皆が話していた内容も理解はしていたものの、自分達への切実な課題といった感覚で捉えることはなかった。異世界は大変だのぉ、といった物見遊山気分だった。


ただ、そんな翁のお気楽区分も二十二章ではカチリと切り替わることになる。それはヤスケ達が緊急帰国したその当日の話だ。


【トラ吉さん(見守り)】

トラ吉さんも、ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)は見知った間柄なので、アキの寝起きドッキリを行う事も一応、許したものの、実はアキが起きる前までの間に、何をするとか、こんな感じで、みたいに三人はリアも同席した上で、説明及びリハーサルまでやっていたのだ。

彼はリアの面倒をみていただけのことはあって、ある程度のところで割り込んで止めるような事は過去に何度もやっている。そして、三人もまた、爪こそ出さないものの、トラ吉さんの肉球アタックで転がされた経験があるので、実はかなり腰の低い対応をしてたのだった。

なので、本編の通り、ある程度のところで、トラ吉さんが軽く声をかけるだけで、三人が潮が引くように距離を取るといった物わかりの良い行動を取ることになった。

……まぁ、なんだかんだと仲の良い関係なのだった。


【マサト(財閥の家令、財閥双璧の一人)】

今回のミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけた件は、予め想定していた騒動ではあったので、思ったよりも波乱がなくて安堵していた。アキの提案は、多くの優秀な魔導人形達をかき集めて投入している財閥が一番ダメージを負う可能性が高いものの、先々を見越した場合、社会全体がある程度の影響を許容せざるを得ないとも認識していた。

共和国があるからこそ、財閥は活動できる訳で、国という枠に非協力的というのは戦時体制においてはあり得ない話なのである。勿論、無条件に何でも政府の言うことに従う訳ではないのだが。


ただ、ロゼッタとも相談したものの、要求される水準を満たす魔導人形など到底揃えることはできず、足りない分を教育、訓練をして補う必要があった。航海中に訓練することを考慮しても、年単位の教育が必要なこと、共和国との間で通信手段を確立することは必須と判断していた。上を見上げればきりがないので、求めうる最低ラインを想定して、そこをチーム全体で満たせれば良しとするのだ。


財閥として先に動けるのは魔導人形の選抜と、穴埋めのための業務引き継ぎや後任育成に費やす時間や費用の算出といったところ辺りまで。後は共和国としていつ、他勢力に対して動くのか、情報の開示範囲はどこか、などが決まってからでないと動きようがない。だから、急いで動くものの、そこまで動けば後は動向次第といった待ちに入る予定だ。


今回の件を受けて、業務の効率向上よりも、不測の事態に備えて業務の縮小運転を視野に入れた体制の準備を行うべきか、などと考えているところではある。ミアは別に事業拡張しないでいい、と話していたが、できるならやってもいいのだから、変に萎縮してはいけない。


ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)もアキの提案を受けて事業拡大に乗り出すようなので、必要に応じて連携して動いていく腹積もりだった。



◆魔導人形枠



【アイリーン(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で料理長)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけてきた事で、アイリーンは街エルフの上役の面々の振る舞いが「自分の主張を魔導人形が認めて便宜を図るのは当然」というモノだった、とある種の懐かしさすら感じていた。大勢の人形を従える立場となると、一部の名有りの人形は別として、後はその他大勢、といった扱いをするのが一般的なのだ。

別邸にいると、交流相手が大使館勤務の魔導人形達であったり、他種族のお偉方達だったりといった具合だったし、長老のヤスケや大使のジョウは、料理人取り纏め役としてか、アキのサポートメンバーの主要メンバーの一人、という扱い方をしていたからだ。

あと、料理人としてやっと安定した立ち位置を確保したというのに、引き抜かれて未探査領域送りなどというのは全く興味が湧かなかったので、上司であるケイティがきっちり、引き抜かれては困る、と抗ってくれたことに感謝するのだった。


【ベリル(女中三姉妹の一人、ケイティの部下でマコト文書主任)】

いつも通りのマコト文書の知をベースとした歓談、という名の討論ディベートだったので、資料を用意したり、ホワイトボードに発言を取り纏めたりと、大忙しの日々だった。名指しで指名があって、大使館に赴いて、お姉様方(ミエ、ユカリ、マリ)の検討支援を行ったりもして、アキのサポート女中三人の中では一番、前面に出て働いていた感があったと言えるだろう。

アキの会話を理解して的確かつ速やかに記していく手際は、マコト文書専門家の一人として看做されるだけの実力をきっちり示していた。


ただ、実のところ、それらは普通の仕事なので、ベリルが今回、一番緊張したのは、マリが帰国する前にジョージと共に呼んで、書いているという本を途中でいいから読んでみたい、と言われて原稿を持ち込むことになったシーンだった。そして、その際に受けた助言によって、二人の創作に対する方向性、というか手法が定まることになった。その辺りの話ももしかしたら二十二章で聞けるかもしれない。


【シャンタール(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で次席)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけてきた件は、スケジュールの見直しが入ったり、参加者が増えたり、気分転換に庭先で歓談をさせようと、前日まで雨続きで、地面に染み込んでいた大量の水気を抜き取る差配をしたりと、ケイティの手が回らないところをうまくサポートすることができた。また、そうした次席としての作業をしつつも、ケイティが打ち合わせに残ることになれば、アキの定番作業ルーティンの世話役としてフォローに入るなど、その手際は見事なモノだった。

だから、未探査領域に使節団を率いて出向くって話をどう思うか聞かれた時も、アキはシャンタールが実際にそちらに行くなどとはまったく考えておらず、一般論としてどうか聞かれただけ、と理解できたので、落ち着いて受け答えすることができた。お世話をするのが好き、とアピールしたところ、女中人形さんはそういう感じなのか、とアキも納得して、その話はそれで終わりとなった。


後で合流したところ、上司のケイティが、部下達を引き抜かれるのは困るとちゃんとアピールしたと聞いて安堵していた。今の立ち位置で、アキが成人するまでお世話をしていく事を前提に将来設計を考えていたのだから、それを根底から覆されては困るし、アキに話した「お世話をする」には育てる、という要素も含まれていたので、使節団のように育成要素のない面々ばかりの集団相手というのは興味が湧かなかった点も大きかった。ミアが残していた衣装も一巡し、新たな衣装を仕立てるのも自身で縫製まで手掛ける熱の入れ様だし、竜達から渡された鱗を用いた装飾品制作に関わるのも楽しんでいるのだ。それらを放りだして海外へ、というのはシャンタールからすれば罰ゲーム以外の何物でもなかった。


【ダニエル(ウォルコットの助手)】

神官であるダニエルにとって信仰は自らの心の柱ではあったが、共和国の中で、魔導人形らしく主を支える助手としての活動に従事していた事もあって、共和国目線、街エルフ的な意識も持っていた。そんな彼女にとって、ここ数日で、共和国という枠組み、弧状列島を統一した弧国(仮称)という新たな枠組み、そしてそれすら一つの文化圏に過ぎない、という惑星ほし全体を俯瞰した世界という枠組みへと視点が広げられた経験はあまりに衝撃的だった。


また、主であるウォルコットが、今回、アキが示した外向きの策について、その行く末の全てを見ることは叶わないだろうことが少し残念だ、と語った事で、彼が人族であって、自分より遥かに早く鬼籍に入ってしまうだろう事実に改めて向かいあうことになった。


そもそも彼女のこれまでの歩みでは、主は長命種の街エルフであって、だからこそ、主が変わることはあっても、主が亡くなるという経験は無かったのだ。


神官として、人々に説法を行う立場ではあるから、人族の生老病死に向き合ってこなかった訳ではなく、十分に理解もしてきたつもりであった。


けれど、それは、マコト文書の神官としての心の柱、そして共和国の魔導人形としての心の柱が揃っていたからこそ成り立っていた仮初の理解だった。


彼女の心が大きく揺れた要因としては、依代の君という信仰対象にして手のかかる弟分といった子供の面倒を見て、振り回されながらも、彼の心を育てることで、彼女の心もまた育っていったことが大きかったと言えるだろう。


【護衛人形達(アキの護衛、ジョージの部下)】

→特筆すべき内容はなし。


【農民人形達(別邸所属、ウォルコットの部下)】

→特筆すべき内容はなし。


【ロゼッタ(ミアの秘書、財閥双璧の一人)】

ミアの友人達が訪れたことで起きた一連の騒動、特に魔導人形達だけによる使節団の設立と未探査地域での独立行動については、本国との常設の連絡手段を設置できなければ、実現不可能と看破していた。それは魔導人形の意識が、常に主ありきであり、限られた専門分野に長けていれば良いというこれまでの立ち位置があるからに他ならない。人と違って成長して大人になる過程で、他人と同じ経験を積み重ねていくとは限らないからだ。魔導人形にとっては食事もオプションに過ぎず、呼吸も体温も拍動すら風味付け(フレーバー)要素に過ぎない。待機スリープモードで仮死状態のように停止していることも造作もないことなのだ。


だから、同じ仕事に就いている魔導人形同士であれば、同じスキルを習得しているが、仕事が違えば、立場が違えば、共通部分は驚くほど少ないのが実状だった。ロゼッタのように修得できるスキルは全部取った、などという街エルフのような状態に到達した魔導人形など殆どいないのだ。


だから、様々な分野の専門家を取り纏めて、異文化圏の相手でも交流できる高レベルなコミュニケーション能力を持つ「程度」でいい、などとリアは話していたが、無茶振りもいいとこだと理解できたのである。


だからこそ、そこそこ使える魔導人形を選抜して、せめて地の種族としての共通土台を理解できるよう教育を施し、使節団の専門家達が話す内容を理解できる程度の入門編相当の学習を施すとしても、それだけで年単位の月日が必要だと、すぐ思い至ったのである。


そして、財閥の今後の活動への影響の見積もりをマサトと共に部下達に指示した時点で、ロゼッタはその件はすっぱり意識の外へと放り投げた。その程度の話は資料が揃ってから考えればいい話だからだ。


それよりは、伏竜への説明と言う名の囲い込み作戦や、各種技術的な研究や検証からの次元門構築に繋がる各種活動の方がよほど重要だった。


ミアから「自分が帰ってくるまでの間、こちらにきたマコトの活動を十全に行えるよう街エルフらしく全力で支えてあげて」と頼まれたのだから。ミアの指示は「秘書として財閥を上手く差配せよ」ではないのだ。勿論、ロゼッタは命じられた事「だけ」を行うような融通の効かない低能力な魔導人形ではない。ミアの言う活動には、依代の君の成長、行動を支える事も含まれるとちゃんと理解していたし、アキの活動を支える財閥自体も強靭でなくてはならず、それらを楽しくこなせないと駄目なのだ。


 そう。


ミアを救う目的はあれども、その過程が苦行であってはならない。街エルフらしく、とは心身共にいつまでも全力で活動できるようケアすることも含まれるのだから。ついでに各種活動がロゼッタの趣味にマッチしてれば言うことなしだった。


【タロー(小鬼人形の隊長の一人)】

→特筆すべき内容はなし。


仮想敵部隊アグレッサーの小鬼人形達】

→特筆すべき内容はなし。


仮想敵部隊アグレッサーの鬼人形、改めブセイ】

→特筆すべき内容はなし。


【大使館や別館の女中人形達】

→特筆すべき内容はなし。


【館(本国)のマコト文書の司書達】

→特筆すべき内容はなし。


【研究組専属の魔導人形達】

→特筆すべき内容はなし。


【リア麾下の魔導人形達】

→特筆すべき内容はなし。



◆家族枠



【ハヤト(アキの父、共和国議員)】

議員としての溜まっていた仕事をこなしつつ、ロングヒルに戻る日を指折り数える状況だったが、ヤスケが長老会議を開催するとして、ミアの友人達と共に緊急帰国した事から、その予定は見直しを迫られることになった。とは言うものの、実はハヤトは長老会議への出席を免れることができた。

マコト文書を非公開部分も含めて目を通しているという意味では、財閥からマサト、ロゼッタが出席する時点で、自分が出席する必然性はない、と訴え、その主張が認められたからだった。多くの議員がいる中で、一人だけ呼ぶというのも他とのバランスが悪い、という配慮もあった。

おかげで、多分、二十二章のうちに彼はロングヒルに戻ってくることができるだろう。


【アヤ(アキの母、共和国議員)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)達を交えた、統一国家の内外に対する施策について歓談を行い、共和国に多くの影響が出る可能性大となったものの、ヤスケと共に彼女らが共和国に帰国した時点で、その件は一旦、手を離れることになった、とさっぱり意識を切り替えることにした。

アヤは、義務教育の履修項目見直しのうち、人形遣いとしての内容見直しを任されているので、そっちをこなしていく方が優先だからだ。

長老会議は最終回答が出るまでにはかなりの日数を費やすことが予想されるが、だからといってずっと缶詰めで議論してる訳でもない。なので、多分、二十二章は伏竜を招いて一通りの説明をする事になるので、その間はロングヒルに待機しているが、ソレが終われば、リアと共に共和国に戻って、鬼人形ブセイと共に、人形遣いの実技試験見直しについて、予定通り四人(ミエ、ユカリ、マリ、リア)を人柱に検証作業をがっつり行っていくことになるだろう。


【リア(アキの姉、研究組所属、リア研究所代表)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけてきたことから、どうなることかと実は内心心配だったのだが、思ったよりは波乱もなくアキいわく「制限なく話せる楽しい歓談」の時間を終えることができた。共和国の様々なまつりごとの方針に大きな見直しが入りそうな流れではあるけれど、技術畑なリアからすれば、そちらは本業に任せれば、そう悪い落とし所にはならないと考えて、ばっさり意識を切り替えるのだった。

それよりは、これまでに培った技術やいくつかの検証を行うことで、空間跳躍テレポートや召喚関連で結構な運用改善や効率改善が期待できそうなことがわかり、そちらに意識が移っているところだったりする。

なお、母アヤによる人形遣い実技試験内容見直しについては、もうなるようにしかならない、と諦めている。付け刃でどうにかなるような甘い試験を街エルフが行う筈がないのだ。長命種らしくじっくり時間をかけて漏れなく、試験漬けになるのは確定で、考えるだけで憂鬱なので、考えるのを止めたのだった。割り切りがいいのは母譲りといったところなのだろう。


【ミア(アキ、リアの姉、財閥当主、マコト文書研究第一人者)】

魂入替えを行った後、ミアの体に入ったマコトの事は、その活動に支障がでないよう十全に支えるようロゼッタに頼んでおいたし、財閥の差配についてはマサトに無理して拡大する必要はないから、これまで通り任せることとしたので、心配はしていなかった。二人が動けば、大概のことはなんとでもなるし、それで駄目なら誰がやっても駄目ということだ。長老衆にも、アキの提案に理があるなら適切に対応するようお願いしておいた。

後はもうなるようにしかならないのだから、と準備を終えた時点で悩むのはすっぱり止めた。

その代わり、話にしか聞いたことがない日本あちらの世界に行ったら、何をしようか、何をしないといけないのか、確認すべきは何か、といった手順見直しに意識を切り替えたのだった。

魂入替えの際に膨大な魔力を持参して、マコトの体に馴染むための多くの手間をショートカットする段取りとしていたからだ。それらの作業がうまく行ったかどうかは、ミアとの連絡手段が確立すれば明らかになるだろう。


それと、アキの討論ディベートや習得してる知識、心話技能といった部分については、導いた師として贔屓目を入れずキチンと評価していたし、共和国の状況と勘案すれば、面白い化学反応を起こしそう、くらいまでは予想していた。ただ、ミアが残した多くの手紙の想定条件がズレてきているように、ミアが思い描いた状況など、とっくに何段階も飛び越えてしまっているのが実状だった。



◆妖精枠



【シャーリス(妖精女王)】

ミアの友人達(ミエ、ユカリ、マリ)が押しかけて来た件は翁からいつものように雑談といった体で話を聞くことになった。ただ、妖精の国では、自国と周辺地域を把握している程度、緩衝地帯の森林を超えた先にある人族の国については殆ど知らない有様なので、弧状列島全体の統一国家樹立を前提とした、世界規模の文化圏といったレベルの話になると、現実感が薄かった。あぁ、そういうモノなのかとは思っても、自分達には直接絡む話でもないといった程度だった。その認識が変わるのは、ヤスケや友人達が共和国に緊急帰国した、その当日だった。


【賢者】

→特筆すべき内容はなし。


【宰相】

→特筆すべき内容はなし。


【彫刻家】

→特筆すべき内容はなし。


【近衛】

→特筆すべき内容はなし。


【賢者の弟子達】

→特筆すべき内容はなし。


【一割召喚された一般妖精達】

→特筆すべき内容はなし。



◆鬼族枠



【セイケン(調整組所属、鬼族大使館代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【レイハ(セイケンの付き人)】

→特筆すべき内容はなし。


【トウセイ(研究組所属、変化の術開発者)】

→特筆すべき内容はなし。


【レイゼン(鬼王)】

→特筆すべき内容はなし。


【ライキ(武闘派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【シセン(穏健派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の女衆(王妃達)】

→特筆すべき内容はなし。


【セイケンの妻、娘】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族のロングヒル大使館メンバー】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の職人達】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の竜神子達】

→特筆すべき内容はなし。


【ブセイの兄弟子達】

→特筆すべき内容はなし。



◆ドワーフ族枠



【ヨーゲル(調整組所属、ロングヒルのドワーフ技術団代表】

→特筆すべき内容はなし。


【常駐するドワーフ技術者達(アキの使う馬車の開発者達)】

→特筆すべき内容はなし。


【各分野の専門家達】

→特筆すべき内容はなし。


【ドワーフの職人さん達】

→特筆すべき内容はなし。



◆森エルフ族枠



【イズレンディア(調整組所属、ロングヒルの森エルフ護衛団代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【森エルフの文官、職人さん達】

→特筆すべき内容はなし。


【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】

→特筆すべき内容はなし。



◆天空竜枠



【雲取様(森エルフ、ドワーフを庇護する縄張り持ちの若竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【雲取様に想いを寄せる雌竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【福慈様(他より頭一つ抜けた実力を持つ老竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【白岩様(雲取様の近所に縄張りを持つ成竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【黒姫様(雲取様の姉)】

→特筆すべき内容はなし。


【アキと心話をしている竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【炎竜、氷竜、鋼竜(他種族登山に名乗りを上げた雄竜達)】

→特筆すべき内容はなし。


【牟古様他(登山先の主達)】

→特筆すべき内容はなし。


【福慈様の部族の竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【桜竜(白岩様に果敢にアタックをかける乙女竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【伏竜(帝国領での東遷事業に参加する最初の成竜)】

→特筆すべき内容はなし。



◆人類連合枠



【ニコラス(人類連合の大統領)】

→特筆すべき内容はなし。


【トレバー(南西端の国ディアーランドのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【二大国の一つラージヒルのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【ナタリー(二大国の一つテイルペーストのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【エリー(ロングヒルの王女)】

→特筆すべき内容はなし。


【ヘンリー(ロングヒルの王様)】

→特筆すべき内容はなし。


【セシリア(ロングヒルの御妃様)】

→特筆すべき内容はなし。


【エドワード、アンディ(ロングヒルの王子様達)】

→特筆すべき内容はなし。


【ザッカリー(研究組所属、元ロングヒル国宰相)】

→特筆すべき内容はなし。



◆小鬼帝国枠



【ユリウス(小鬼帝国皇帝)】

→特筆すべき内容はなし。


【ルキウス(護衛隊長)】

→特筆すべき内容はなし。


【速記係の人達=ユリウス帝の幕僚達】

→特筆すべき内容はなし。


【ガイウス(研究組所属、小鬼チーム代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【ユスタ(小鬼研究チームの紅一点)】

→特筆すべき内容はなし。


【小鬼の研究者達(小鬼研究チーム所属)】

→特筆すべき内容はなし。



◆街エルフ枠



【ジョウ(ロングヒル常駐大使)】

ジョウは、東遷事業を踏まえて大きく仕事量が増える事から、全権大使としての立場はそのままだが、配下の部下達の層が大きく拡充されることが確定し、抱える権限の大きさと、責務の重さに身が引き締まる思いだった。


少なくとも一年前、アキがロングヒルにやってくる前、開店休業状態のような有様で、決まりきった定例業務ルーティンをこなすだけで、いざという時に備えるという責任ある役処ではあるものの退屈さすら覚えていた頃は、もう記憶が掠れるほど遠い過去にしか思えなかった。


ユリウス帝の暴露話によって、三勢力均衡によって保たれていたある種の平穏、毎年の小競り合いはあるものの、大戦おおいくさはない、という状況は十年後には崩れ去っていただろうことは知ることになったが、思えば弧状列島が安定している、そう感じていた事自体がある種の錯覚だったのだろう。


そして、アキがお姉様方と呼ぶ三人(ミエ、ユカリ、マリ)がそれぞれ事業を育てて大札と化したとして、統一国家樹立も為し、成立した弧国(仮名)が外向きに行うべき施策とは何か、という歓談の場に急遽捻じ込まれることとなって、自分が考えていた重責など、大した重さではなかった、と悟ることになった。


アキが示した未来への選択肢や付随する様々な条件、社会への影響はあまりに大きかった。


自分ではどうなるか思いを巡らせることすら至難な有様で、落ち着いた態度を保てた自分を褒めたい気持ちになるほどだった。


そんな中、落ち着いた態度を崩すことなく、歓談の場を律して見せたヤスケの力量には感服する思いだった。流石、長老の中でも一目置かれるだけの事はあるお方だ、と。


そして、長老衆と全権大使の間を隔てる大きな差を改めて思い知らされることになり、意識を新たにするのだった。


まぁ、若さ故の勘違い、そして、熱量と言える。彼が自身が思い描くヤスケが、実体より大きく膨らませていた虚像だったと理解する頃には、長老の席に座ることになるだろう。


【ヤスケ(ロングヒル駐在の長老)】

ヤスケにとって、この四日間は激動の時間そのものだった。例え、合意したばかりの軍事同盟を、いきなり帝国が破棄して宣戦布告してきたとしても、ここまで驚き、悩むことは無かったに違いない。それほどの衝撃だった。


アキとの歓談の場に、補助という形で一歩引いた形で参加していたのは幸いだった。会話の矢面に立っていたなら、きっと、今ほど冷静に俯瞰した意識で把握などできていなかったに違いない。それほどの内容だった。


魔導人形達だけで構成された使節団の派遣とは、あくまでも手足として部下として使われる魔導人形達という、街エルフ達、人形遣いと魔導人形の関係を、根底から覆すとも言える変化だ。確かにロゼッタのように、殆ど逸脱しているとしか言いようのない超魔導人形とも言える存在もいる。だが、それは例外中の例外であって、アレは財閥から出てこないからこそ、社会的影響が少ないと言える稀有な例だ。


しかし、アキの提案が通れば、能力的にはロゼッタほどではないにせよ、街エルフに近しい魔導人形達が待機、支援要員も含めれば数百人という規模で生まれることになる。社会的重責も担い、栄誉も手に入れることになる。きっと主である人形遣い達も、自分の育てた魔導人形の栄達を我が子の事のように喜ぶことだろう。熱狂的愛好者フリークというのはそういう連中だ。


しかし、社会的な影響はあまりに大きい。街エルフに対して何十倍と多い魔導人形達との主従関係、パワーバランスが大きく変わることを意味するからだ。ソレは今回の関係者達にその気があるかどうかに関係はなく生じてしまう結果だ。


それだけでも、見なかったことにしたいような話なのに、魔導人形達だけで行うべき理由も、できるだけ前倒しに行うべき理由も、費用対効果コスパもあまりにも良い事までも揃っているのである。


もう、ヤスケ自身はこの話だけで手一杯といったところである。


ところがコレに、天空竜達をこの惑星ほし全体に、いつでもどこでも空間跳躍テレポートで届けます、などというサービスが実現しかねない、恐らくはできてしまうことも示唆された。不俱戴天の仇たる天空竜達にソレを許していいのか、許さない未来ルートはあるのか、許した場合と何が違うのか、百聞は一見に如かずを地で行く話なだけに、そちらも取り扱いはあまりに難しい劇物と言える。


宇宙利用に関する情報の他勢力への開示などという話も、あまりに判断が難しい。少なくともいずれは情報開示をする未来があるとは思ってはいたが、こんな近々の時期に、しかも他勢力が恐らくはまだ宇宙技術、知識の殆どを持っていない段階で開示するなどとは夢にも思っていなかった。


もう、ヤスケとしてはとっとと自分だけが握ってる情報を長老達にぶちまけたい気分だった。少なくとも自分だけが背負っている、という肩に圧し掛かる重責が降りるだけでも気が楽になるだろう、と。


もう彼の中では、軍事同盟? 東遷事業? いつか行う「死の大地」浄化? ()()()()()()()()()()()()()()()()()、とか不貞腐れて考えてる有様だった。


まぁ、勿論、そんなことは表に出さないし、きっと迎えにきたファウスト船長と会う頃には、自身を律する状態を取り戻すだろう。


【街エルフの長老達(本土にいる面々)】

長老達にとって、ミアの友人三人(ミエ、ユカリ、ミエ)がアキの元に押し掛けた時点で、ある程度の争乱は覚悟していた。何も起きない、という事だけはあり得ない、と確信していたからだ。


だが、ヤスケから、明日は緊急帰国して長老会議を行うから全員出席しろ、その場には船団代表としてファウスト、アキとの歓談に参加してこの件に詳しく民間企業の代表としても認められる三人(ミエ、ユカリ、ミエ)、それと財閥の二人(マサト、ロゼッタ)を参加させるから、そのつもりでいろ、と連絡が届いて、自身らの想定すら余りにも甘かった、と痛感することになった。


ヤスケは、衛星探査の全情報を記した唯一の世界儀こそ持ち出さなかったものの、説明に使われた資料の多くを空間鞄にしまい込んで帰国してくるという。軍に襲われても撃退できるだけの人形遣いすら同行させての移動という念の入れようだ。


ヤスケからは、概要はレーザー通信で報告があった。


だから、アキの提案が理解できなかった訳ではない。言葉にすれば簡単だ。未探査領域にある文化圏に梃入れをして、植民地化を避けて、多くの文化圏が共存している世としよう、そうすれば、弧状列島の特異性もそれだけ目立たなくなる、と。


……しかし、三大勢力が三つ巴の争いをしている世から、まだたった一年しか経過していないのだ。それに軍事同盟を締結したとはいえ、統一国家樹立までの道のりはまだまだ遠く険しい。全勢力、竜族や妖精族まで参加しての巨大治水工事である東遷事業を行うことですら現実味が薄いというのに、そこに手を付けようとした時点で、次は残りの未探査領域ですね、と来た。


長老達もいい加減悟っていた。アキに比べればミアは随分と分別がつく大人だったと。ヤスケが自分では手に負えないと、皆に手を貸すよう他勢力に対して頼み込んだ事実も、当時は「あのヤスケともあろう者が気弱になったものよ」などと陰口を叩く者もいたのだが、今はもうそんな長老は一人もいなかった。


しかも、アキは別にそれを推し進めるべきだ、と横車を押すような真似をするでもないのだ。どうしても許容できない動きをする暴君などと言うなら誅殺という対抗策が出てくるのは歴史が記すところだが、アキは選択肢を示し、見えなかった闇を薄明りで照らして見せただけである。


「君達はその選択をしてもいいし、しなくてもいい」


要はアキが示しているのはこういう事だ。そしてまた、彼らにとって悩ましいのは、背伸びすれば多分、その選択には手が届くという事実だ。


彼らがどれほどの苦悩に苛まれることになるのかは、多分、二十二章のSS⑩辺りで明らかになるだろう。ご愁傷様である。


【ファウスト(船団の提督、探索者支援機構の代表)】

未探査領域が限られていることは探査船団の提督達は皆が理解していたものの、既存の海域と違い、現地に関する事前情報が衛星探査による海岸線情報しかない、という状況は誰も経験がない。それだけに探査船団と言えども、未探査領域はいつか行ってみたい限りある場所ではあるが、さほど急いで行きたい場所という訳でも無かった。


だが、エウローペ文化圏を抑える勢力を育てるという視点に立つと、なるべく早めにそれらの地域を回って梃入れすべし、などとアキが提言をしたと話が伝わり、惑星ほしの規模で、文化圏同士の勢力争いを行う未来と、それを踏まえた国家百年の計を語るから、その長老会議に出席しろ、と言われたファウストは、一体何の話だ、と大いに焦ることになった。


詳しい話は、ヤスケや、同じ打ち合わせに参加してきた民間大企業の中でも要注意な三女傑であるミエ、ユカリ、マリの三人もするという。しかも、探索者達は上陸させず、使節団として百人規模の魔導人形達だけを上陸させる想定、それも年単位の運用などとは、あまりに既存の探査船団の運用からかけ離れているだけに、概要を聞かされても、どこからそういう発想になるのか、と唖然とするばかりだった。


この時点で、ファウストの中では、その船団の提督に立候補するという選択肢は消え失せていた。あまりに異質で、あまりに想定する活動期間タイムスパンが長く、不確定要素しかなく、そして重要性は雲よりも高いのだから。……そして、何とか辞退できないか、などという思いが脳裏を過ぎった事に彼自身が驚くのだった。


【船団の皆さん】

→特筆すべき内容はなし。


【ミアの親友達(ミエ、ユカリ、マリ)】

三人は、三大勢力の代表達が帰国したのと入れ替わるように、ロングヒルにやってきたのだが、予定より長期の滞在になり、しかもその後、長老のヤスケに引き摺られるように、共和国に帰国する羽目に陥った。完全に予想外の顛末だった。


ミエは東遷事業に関する報道について三大勢力と共同協定を結んで相互監視する形で、積極的に情報発信していくことを提案された。他勢力一般向け、詳しい人向け、と情報の濃さを変えた新聞を出すことで、目の肥えた人数の少ない街エルフ達相手ではなく、他勢力の膨大な数の一般層を取り込めばどうか、という話である。人々に弧状列島全体と、自分達の立ち位置を認識して貰い、狭い自国だけに閉じた認識を打ち破ろう、という案だ。


マリは貸本業をやってはどうかと提案された。財閥の輸送網を活用することで、全店舗を統合した仮想巨大店舗と化すことで、質、量ともに他業者を圧倒し、高いレベルで執筆できる作者の囲い込みまでやっちゃおう、という提案だ。軍事同盟締結により戦争に費やしていた予算が知を求める方向に流れると見込んでの話だった。それによって知識レベル、民度の上昇を狙うという意欲策である。


そしてユカリには、多様な種族を相手に芸事を磨いて、何がウケるのか、何がタブーなのか、といった部分の見極めをして欲しい、と提案されることになった。特に難航が予想された竜族向けの娯楽として、アキから提案された短歌というアイデアは予想外であった。文字の普及、カレンダーといった地の種族が持つ季節感に意識を向けさせること、竜同士が集って短歌を詠み合うという集団行動促進、といったところが狙いとのことで、ユカリをして感心する提案だった。


ただ、そんな彼女達もまさか自分達向けの話が、統一国家の内向けの策、大札を育てようという前提条件に過ぎず、ちょっと国家百年の計を世界地図片手に考えてみましょうか、などという流れになるとは思ってなかった。


ジョウ大使も巻き込んだ歓談と言う名の論戦は、彼女達の意識の枠を完全に打ち砕くモノとなった。相手はユーラシア大陸の西端、間に三つの文化圏を挟むとはいえ、同じ海洋国家でその勢力は十倍にも達し、野分(台風)の害もなく、自然を意のままに制していけた、という成功体験でがっちり意識が固まったエウローペ文化圏なのだ、と。ただ漫然と時間が過ぎ去るのに任せれば、十倍差の文化圏と世界の海で激突して潰されるであろう未来が見て取れた。アキの説明がこちらの世界でどれだけ正しいのかはわからないが否定する要素もない。そして今なら、どうも先手が打てそうだ、と。


もう知らなかった、見えなかった頃には戻れない。そして、彼女達にヤスケはこう囁いたのだ。


「困難に立ち向かう仲間は多い方が良かろう」と。


かくして、迎えに来たファウスト船長も長老会議に参加する「仲間」と知ると、他の長老達を巻き込む友軍とすべく、船旅の時間をがっつり活かして彼に「弧国の外向けの案」について懇切丁寧に説明したのだった。



◆その他



【ソフィア(アキの師匠、研究組所属)】

→特筆すべき内容はなし。


【街エルフの人形遣い達(大使館領勤務)】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の神様】

→特筆すべき内容はなし。


【ヴィオ(連樹の巫女)】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の神官達】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の民の若者達】

→特筆すべき内容はなし。


【世界樹の精霊】

→特筆すべき内容はなし。


樹木の精霊(ドライアド)達】

→特筆すべき内容はなし。


【マコトくん(マコト文書信仰により生まれた神)】

→特筆すべき内容はなし。


【依代の君(世界樹の枝から作りし依代人形に降りたマコトくん)】

アキから、東遷事業に消極的な竜達を巻き込む為、唯一、参加を表明してくれた伏竜を厚遇し、旗振り役として動いて貰おう、なんて話を聞くことになった。アキは伏竜の実力が足りないこと、伸びしろがあること、燻っていながらも諦めてないことを高く評価して、そんな伏竜だからこそ旗振り役になりうる、と喜んでさえいたが、依代の君からすれば、伏竜の意識を変える為と称した策の数々や、アキが伏竜に求める立ち位置は、かなり悩ましいモノとなるだろうことは見て取れた。


アキは、竜達は聡いから大丈夫、自分より優れた竜がいるなら、上手く差配して気持ちよく動いて貰えばいい、伏竜は地の種族と竜族の双方を良く知る唯一無二となればいいだけなどと軽く言っているが、ソレは竜族の文化、序列といった話を崩してしまえ、と言っているのに等しい話なのだ。


既存の序列に沿って登っていくのは大変だし、そもそも竜族だけに閉じていて、そのままだと部族全体を纏める体制すら欠ける有様、とアキからすれば、尊重はすれども、墨守するだけの価値はなく、どうせなら都合よく作り替えちゃおう、と言った具合だ。ミアの教え通りと言えばそうなのだが、マコト文書の闇の部分を削った抜粋版ベースの信仰から生じたマコトくん、そこから現身を得た依代の君としては、その姿勢はどうなのか、と思うのだ。


ここは神の教えとは守るべきモノであり、移り変わることを良しとしている宗教であっても、守るべき幹に相当する教えは揺るがない尊いモノである、という基本があるからこその差異と言えるだろう。


彼の存在の元となっているマコト文書は、日本あちらの現代社会の良い面ベースの紹介短編集といったところだ。だから社会規範があり民度が高く、天災があろうと上手く立ち回って被害を最小にして元の暮らしを復旧させる、そんな今の社会自体を肯定する姿勢が基本にあるのだ。


そこにきて、アキはと言えば、邪魔な風習、制度があるなら、それはもう役目を終えたのだから取り除いて社会を作り替えちゃおう、という必要とあれば大鉈を振るう事を厭わない姿勢だ。


なので、二人は根は一緒と言いながらも、何を良しとするか、で少しズレがあるのだ。多分、二十二章では二人が対立したり、依代の君が伏竜に寄り添う側に立つようなシーンも出てくるだろう。


依代の君からすれば「ボクはあそこまで足元を突き崩すような真似はしないぞ」と言ったとこだ。まぁ、アキからすれば「僕はあんな相手の信念を揺らして試すような悪趣味な事はしないぞ」といったとこで、どっちもどっちという気はするのだが。


【樹木の精霊ドライアド探索チームの探索者達】

→特筆すべき内容はなし。


【多種族による「死の大地」観察登山の参加者達】

→特筆すべき内容はなし。


【邪神、祟り神(「死の大地」の呪いに対する呼称)】

→特筆すべき内容はなし。


【マコト文書の神官】

→特筆すべき内容はなし。


【心話研究者達】

→特筆すべき内容はなし。

こうして眺めてみると、アキが行った今回の外向け提案は、ボトムアップ式に共和国内から出てくることは期待薄なので話した内容ですけど、現実との擦り合わせにかなり苦慮しそうですね。資源リソースは限られていて、魔導人形達も人数こそ多いものの、地の種族と完全互換かというとそういうモノでもない、という現実もだいぶ見えてきましたね。


さて、次回から新章スタートです。お楽しみに。


<今後の投稿予定>

二十二章スタート          三月十七日(日)二十一時五分

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