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21-29.種を蒔き森を育てよう(後編)

前回のあらすじ:未踏破領域の文明圏に適切な助力を最小限行うことで、エウローペ文化圏に対抗できるようになりますよ、これで植民地化を免れて多様な世界が保てますね、という趣旨だったんですが、なんか引かれました。話の持っていき方をミスったっぽいです。(アキ視点)

リア姉が口を開いた。


「アキ、その提案をしたのは何故か。その根底にある思いを話しておかないと、他人を盾にして自分だけ助かる利己的な輩みたいにも見えるから、もう少し説明しようか」


 ん?


「それって、弧国が我が身可愛さに、未探査領域の人々の裏側に隠れる、みたいな?」


「そう。アキの策は「②木を隠すなら森の中、だから森を育てていこう」と言ったよね。ソコだけ聞くと、育てた木々への愛着とか慈しみみたいな思いは読み取りにくいと思わないかい?」


 ……あ。


えっと、えっと。


説明の流れを思い返してみると、あー、うん、そう勘違いされても仕方ないや。


「えっと、皆さん、今、リア姉が言ったような印象をもしかしたら抱かれたかもしれませんけど、もしそうならそれは大いなる誤解、勘違いですので、悪い思考が連鎖する前に、一旦、意識をリセットしましょう。リア姉、こちらだとヨーロッパ人達の世界観とか、悪行三昧ってどれくらい知られてるのかな?」


僕の問いに、リア姉は哀れむような表情をしつつ、現実を教えてくれた。


「マコト文書抜粋版は、あちらの普通の市民の男の子であるマコトと、ミア姉の淡々とした日常の交流を伝える短編集みたいな内容だからね。アキが今言ったような部分はかなりオブラートに包んで、さらりと触れてる程度だよ」


 げげげ。


ソレだと、うん、確かに誤解を招く話の進め方だった。


すると、ユカリさんが怯えた少女のような表情を浮かべながら、心情を教えてくれた。


「次元門の研究以外には愛着が薄いアキの酷薄な心情を垣間見てしまったのか、と恐ろしさを覚えてしまったわ。それは思い違いで、親愛と慈しみの思い溢れる竜神の巫女様だと教えてくれないかしら?」


コロっと表情を変えて、落ち着いた表情でさぁ、説明を、と促してくれたけど、説明を求める気持ちはマジだね。目がちょい怖かった。





では、気を取り直して、と。


「それでは、あくまでも地球(あちら)の話であって、こちらのエウローペ文化圏の人々が同じとは限らない事を強調した上で、地球(あちら)のヨーロッパ文化圏の人達の世界観についてお話しましょう。と言っても地理学的な視点と経験の積み重ねによって育まれた文化、という視点です」


先を話せ、と皆さん頷いてくれた。


「先ほどまで時間を掛けて地理学の視点からエウローペ文化圏について語ってきましたが、天災も少なく、とても優位にある地域であることはご理解いただけたかと思います」


「アキが枷を付けようと言って、それに同意するくらいには理解したわ」


うん、ユカリさんの言う通り。


「彼らはこれまでに人知を尽くして自然の多くを克服してきました。風車で堤防の中から海水を廃して海抜より低い国土を作り出したり、河川と運河を立体交差させてみたり、軟弱地盤に何百万本と木の杭を打ち込んで強固な地盤として港湾都市を作り出したり、と言った具合です。彼らの教えの中にはこういったモノがあります。「神は乗り越えられる試練しか与えない」って奴です。実際、彼らは運河を作り、山を貫いたトンネルを開通し、谷を超える橋を作り、遠い水源地から都市まで水道を引いて渇きを潤し、太く真っ直ぐな道路網を整備して、人々の行き来を大いに活発にしました」


自分達も似たことはしてきたので、それなりに皆さん納得してる感じだ。


「教えにあるように、実際に試練、困難を彼らはそうして乗り越えてきたのね」


「はい。ところで弧状列島に住む皆さん。地球(あちら)だと日本列島に住む皆さんからすると、物凄く、この教えに違和感を覚えませんか?」


「……あぁ、そういうことね。だから世界観だと」


ユカリさんは気付いたようだ。


「僕もそうですけど、皆さんにとって世界、つまり自分を取り巻く自然環境とは、共存するしかない存在、過ぎ去るのを祈るしかない天災混じりであって、善人であろうと悪人だろうと死ぬ時は死ぬ、というある種の諦観、無常観を持たれているかと思います。我々は実りと災いの二面性を持つ自然の一部であり、和を乱さぬよう共存していくしかない、と」


「異論はないわ。災害を少しでも減らそうと先人達も多くの努力をしてきたけれど、自然との落し処、共存できるラインを見つけるまでに随分と痛い目に遭い続けたのだから」


津波が襲えば津、つまり自分の住んでいた港町が押し流されて消えてしまい、地震が起こればせっかく築き上げた家々も都市も瓦礫の山と化し炎に飲み込まれて消えてしまう。台風がやってくれば暴風によって大木がへし折られ、濁流が集落を襲い、収穫前の田畑を泥で埋め尽くした。


かと思えば、旱魃によって水田が罅割れて稲が枯れてしまい、天候不順が続けば稲の実りが悪くなる。水が多過ぎても少な過ぎても実りは失われる。疫病が襲い、虫害によって作物が食い荒らされ、と日本列島に住んでいると、ある意味、謙虚な気持ちになるのだ。


忘れる間もないくらい頻繁にあの手、この手で自然の暴威にさらされ、理不尽な被災に苦しみ、どれほどの善人だろうと、どれほどの悪人だろうと、そんな人の倫理なんてちっぽけなモノなど関係なく、人は死ぬ時は死ぬ。


そんな風土で生き永らえてきた人々が持つ自然観、それは自分達は自然の一部であり共存するしかない、という文化だった。


まぁ、日本も高度成長期、羽振りのいい時代には、世界最大とも言える巨大な防波堤を作り上げて、これで津波が来ても安心などと、自然を克服した気になったりもした。実際、何度も大きな津波にも耐えて人々が自分達の技に自信を深めたりもした。


……けれど、それは思い上がりだった。増長して長く伸びた鼻は、巨大地震によってへし折られた。巨大な防波堤は土台ごと押し流されて海に消え、その後ろにあった街も津波に飲み込まれた。


「はい。僕もあちらで年に何度も野分(台風)に襲われて怖い思いをしてきたので、その想いは変わりません。では、地球(あちら)でのヨーロッパ文化圏はというと事情は一変します。極稀にしか地震は襲ってきませんし、野分(台風)もこなくて地中海は穏やかでした。人の意志と大勢の人々の協力によって、自然は思うがままに手を加えて、人の役に立つように変更できました。確かに失敗もしましたけど、失敗原因を突き止めれば、方法を見直すことでやはり克服できました。彼らにとって「神は乗り越えられる試練しか与えない」という教えを実感できる時代がずっと続きました。そうして培われた世界観、それは「自然は神が人に与えたもうたモノ」です」


利用方法を間違えると手痛いしっぺ返しを食らうこともあるけれど、基本、上手く使えば人に益を齎す、それが自然だ、と。


「それは長い時間を掛けて世代を重ねて思い継がれてきた社会、文化そのものなのね」


ユカリさんの言葉には、ある種の諦観が含まれていた。無理もない。


「その通りです。同じ自然を眺めても、その感じ方は真逆と言ってもいいでしょう」


二十一世紀の現代でこそ、やっと自然環境全体の相互関連性を意識して、多くの生き物のバランスによって環境は成り立っているけれど、そのバランスはあっけなく崩れかねない、という意識は広まってきた。そうした声もだいぶ聞こえるようにはなってきた。


だけど、彼らの世界観は常にある種の偏向が入っている。鯨は賢いから殺してはいけない、なんてのはその典型だろう。実際に家畜について調べた研究結果からは牛や豚だって十分賢いがそれらは殺しても問題はないそうだ。それらは人に飼われて消費される家畜だから。鯨は家畜ではないので別枠らしい。ロブスターを生きたまま茹でるのは残酷なので罪なんてのもあったね。その論法なら、糸のように細い仔稚魚シラスを煮て干した、ちりめんじゃこもさぞかし残酷に見えるんだろう。





「彼らの増長した意識は、自分達を霊長類と称する程でした。神の定めし法、つまり世界の法則を深く理解し、自然を利用する自分達は、霊的に長じていると、まぁ自認した訳です。なので、自然とある種の序列意識が生まれもしました。世界の法則を深く理解している、つまり科学技術を発展させた自分達こそが文明人であり、そうした技術を発達させてこなかった人々は野蛮人だと」


彼らは彼らの尺度で言うところの文明的でない民族を野蛮人、自分達と同じ人間と認めず、優れた自分達が管理する必要がある、などと言い出した。そうした蛮行の例として、狩りの対象を人とする人狩り(マンハント)によって遊びのように原住民を殺したり、浄化と称してある地域に住む住民を捕らえて男女に分けて接触を認めず別々に生活させて生涯を終えさせた例を紹介した。


奴らは、伝染病で死んだ市民の着ていた衣服をインディアン達に贈ることで、意識して感染爆発パンデミックを引き起こす真似すらしてた。大統領令で聖地と認めたのに金鉱が見つかった途端反故にして奪うとか、神の名の元に誓うという言葉が如何に陳腐だったかわかる。


浄化と称してインディアン達の赤子を攫って、彼らの文化と触れることなく育てるなんて真似も延々とやっていた。裁判で争って自分達の正当性を主張する面の皮は呆れるほど分厚かった。


人間相手ですらソレなので、絶食しても一ヶ月は生きるゾウガメを保存食に都合がいいと狩り尽くして絶滅させてみたり、よい燃料になるからと油を取る為だけに鯨を狩り倒して絶滅寸前まで追い込んでみたり、網を張ればいくらでも取れるからと五十億匹もいたリョコウバトと絶滅させたりと、枚挙に暇がないことも話した。


「アメリカのインディアンの中には、自分達のことを野蛮人を呼ぶのは、自分達が異なる宗教を信じ、彼らの言葉を話せないからだと考えて、同じ言葉を学びヨーロッパ人達と同じ宗教に改宗した部族もありましたが、認識は変わることなく絶滅させられました」


なんか、話してて気が滅入ってきた。


ん、リア姉が手をあげた。


「マコト文書の非公開部分には、アキが言うところの彼らの所業は沢山記されているから、興味のある人は後で資料の閲覧をしてみるといいよ。ただ、特定の民族の絶滅を意図して、その為にヨーロッパ全域に及ぶ輸送、殺害する社会システムを作り上げて、流れ作業のように効率良く手間を掛けず速やかに虐殺していったような酷い奴もあるから、読む時は覚悟して。アキ、取り敢えず彼らの世界観と蛮行は十分伝わったと思うから、後は白人優遇政策アパルトヘイト辺りでも話したら?」


 あぁ、アレね。


地球(あちら)の南アフリカ共和国というところで行われていた人種隔離政策アパルトヘイトも紹介しておきましょう。簡単に言えば、人種に応じて権利を制限して分ける、それを国として推し進めた政策でした。例えば選挙権を与えない、他人種との婚姻を認めない、土地所有を認めない、教育を施さない、利用できる施設も分ける、なんて具合に徹底的に差別しました。三十年ほど前に政策は撤廃されることになりましたけど、そうした政策を四十年以上続けてたんですよね」


優遇されていた人種の肌が白かったので白人優遇政策とも呼ばれる、とも補足した。


ジョウさんが口を開いた。


「それは同じ人族の間でか?」


「はい。こちらと違って、あちらには人族以外の種族はいません」


「植民地でも似たような施策を行っていたのだったか?」


「ですね。もっと極端に綿花みたいな換金性の高い作物以外の生産を求めず、宗主国の決めた相場で安く買い叩き、食料を高値で売りつけたりという真似もしてました。一事が万事そんな具合で、彼らにとって、植民地の人々は同じ人間じゃなかったんです」


食料ですらそれ、ということは生殺与奪権まで握って、徹底して今の上下関係を維持し続ける、という事だと皆さんも理解を示してくれた。


「それがこちらでも起こりうると危惧している。だから抗える力を持って貰おう。アキが言いたいのはそういうことなんだな」


「ご理解頂けて幸いです。一応、あちらとは違う文化になってる可能性もあるとは思ってます。実在する世界樹から、寒さに強い作物を授けて貰ったことで多くの人々が飢えから救われた可能性があります。地球(あちら)では神の信仰の妨げになるからと自然崇拝の拠り所であるとされた木々が全て伐採されてしまって禿山だらけになり、ヨーロッパ地域には人工林しか存在しない有様でしたが、こちらではどうも森林資源は豊かに残っているようです。世界樹や自然に対する信仰も残っているかもしれません。それと我らが海(メアノストルム)に海竜達が引っ越してきたことで、生ける天災に伸びた鼻をへし折られて、思い通りにならないことも世の中にはあることを理解していると思います」


一応、フォローしてみたけど、ジョウさんは懸念を口にした。


「だが、彼らは穏やかな海の全てを支配下に置き、我らが海(メアノストルム)と呼ぶまでに至ったとなると、過去の栄光を懐かしみ、それを奪った海竜達への恨みを募らせている可能性もある、か」


「勿論、その可能性は十分あります。というか、海運が伸びてないとなると、対立は根深いと思いますよ」


まぁ、だからこそ彼らに先んじる事もできる、と締め括った。





さて、どす黒い話題はこれくらいにして、時間も時間だし、ペースを上げて締めを考えて行くかな。


「えっと、なので理不尽な扱いに対抗できるよう、自分達の尊厳を守り、対等な関係を保てるよう支援をしていければ良いと思いますけど、それは世界を街エルフの文化で染め上げようという話ではありません。あくまでも関与は必要最小限、各地域で育まれた文化、思想を尊重し、多様な状態を保つこと、それが最上です。失われた自然も文化も戻りません。絶滅した生き物を復活させるのも無理です。地球(あちら)と違って、こちらでは竜族達の圧もあって、まだ多くの地域が分かれた文化圏を保ち、自然環境の多くも残されてます。なので、エウローペ文化圏も含めて、多様な文化、種族の共存、共生を良しとする世界を目指していきましょう」


「竜族も含めて同じ地に生きる者同士が手を取り合えるように」


ジョウさんが上手く纏めてくれた。


「はい。ソレが夢物語でなく実現可能な未来なのだ、と示していきましょう」


そう話すと皆さんに笑みが広がった。ふぅ。



 さて。


パチンと手を叩いて、意識の切替えを明示して、と。


「では、結構長丁場になりましたので、後の細かい話はチャッチャと片付けていきましょう」


「細かい話というと?」


「①今のペースで魔導人形を稼働させてると魔力不足に陥るよね、みたいな話ですよ。他には②衛星探査の重要性を考慮してその性能向上を目指していくとして、③取り敢えず世界樹だけでも衛星から見つけられるようにしようとか、④竜族の威を知らない地域の人々に天空竜を知ってもらう為に、竜族の方に協力して貰って、翼による気流制御が効かないような低高度宇宙を用いた極超音速飛行の実現とそれによる惑星ほしの裏までも手軽に小型召喚体で訪問して姿を現してみる話とか、⑤南北アメリカ大陸に残るメンバー達からの緊急事態エマージェンシーの通知方法の検討とか、⑥未踏破地域の人々が信仰する神と心話を行って、世界における劣勢を伝えて貰うとか、民に団結と奮起を促すよう促してみるとか、⑦竜族の空間跳躍テレポートの到達限界距離を調べるとか、⑧世界樹と天空竜の空間跳躍テレポートの違いとか、⑨世界樹が転移する時、根を張ってる地面も一緒に移動したなら荷物を伴った転移も可能そうだとか、⑩動けない世界樹が雲取様の縄張りに空間跳躍テレポートて引っ越してこれた事から、間接的にでも目標地点情報を仕入れられれば天空竜達に、この惑星ほしの任意の地点に転移して貰えるかもしれないとか、⑪転移門で静止衛星軌道や海外の船団とのやり取りができてる事から空間操作系に距離の要素の影響は低い可能性が予想できる。それを竜族の空間跳躍テレポートで確認するとか、⑫行きの空間跳躍テレポートの分だけでも、船舶用宝珠の魔力辺りで肩代わりできないか試したいとか」


んー、他にも何かあったっけ、と指折り数えてたら、全員から「それ全然細かく無いから!」の大合唱を食らって思考の連鎖を強制停止させられることになった。


いい感じに纏まって、後は少し先の話だから本業の方々に検討を重ねて貰えばいいって流れになったと思ったのに、どこで間違えたかなぁ……うーん。


箇条書きにして貰った技術的な検討課題群については別途、検討の場を設けること、それと宇宙空間について竜族に伝えるのは許可があるまで厳禁とか言われて、時空間への理解、世界と世界の外についての理解を深める為には慣れ親しんでない場の活用をすべしと衝突しそうになったりと、ちょい揉めた。


そして、ヤスケさんから、今回の話はかなりの困難さと長期的な取り組みが必要となるが、それについて何か言っておきたいことがあるのか、と聞かれた。


「そうですね、これは結構良く言ってることですけど、できるだけ情報を残しておくようお願いします。公式記録だけじゃなく、どう悩んだとか、考えたとか、そうした部分が後から読めるように」


ミア姉が読みたがっていたのでご協力をお願いします、と念押しすると、ユカリさんから問われた。


「あら、残すのはミアの為だけ? アキは興味はないのかしら?」


 ふむ。


「勿論、興味はありますよ。皆さんの立場やこれからの歩みを考えると、歴史に残るような方々の生の声が聴けるようなモノですから。いつから他勢力に情報を開示するのか、共に考える立場に巻き込むか。何が満たされれば天空竜達に宇宙利用を手伝って貰う決断を下せるのか。正解のない中、どう考え、何を目指したのか、後から振り返ってみれば、何が良かったのか、悪かったのか。そうした部分はぜひ読んでみたいです」


まぁ、読み物としてきちんと編纂される前の一次資料を読む気力まではないし、人の日記を読むような感じになるのもどうかと思うので、そこは読ませる形になってからでいい、とも補足すると、現金なものね、と苦笑されることにもなった。


「時間制限もあり、深淵を覗き込もうとする者は、深淵からもまた覗かれているって問題もあるのが悩ましいところですからね。整理された後に読まないと混乱するくらい、矛盾してたり、泥縄だったりと、試行錯誤が続くでしょう」


この発言にはヤスケさんが割り込んできた。


「それはエウローペ文化圏の調査の話か」


「中華、インド、中東も同様ですけどね。こちらが何かを知ろうとすれば、相手にも何に興味を持たれたのか、何処まで知りたがっているのか、何を気にしているのかバレる。衛星探査ならそのリスクは無いけれどまだまだ精度が荒いから、現地調査や聞き込みは欠かせない。そうした部分の匙加減をどうするのか。皆さんがどう判断していくのかとても楽しみです」


素直に興味を伝えただけなのに、そんな僕の態度に対して、ヤスケさんが「お前のその姿勢は、依代の君にそっくりだ」などと評されてしまい、僕はあんなに悪趣味じゃない、酷い誤解だ、と自己弁護に奔走することになって、そうこうしてるうちに時間切れとなった。


なんで、こんな騒々しい終わり方になったのやら。


しかも最後に箇条書きにした内容が積み上がったせいで、ケイティさんは打ち合わせに残ることになり、寝る前の入浴から始まる定番手順ルーティンはシャンタールさんが付きそうことになったりと異例尽くし。


ちなみに、シャンタールさんに、未踏破地域で使節団を率いて、国交樹立とか一連の仕事をやってみたいと思うか探りを入れてみたら、責任の重さは別としても、家政婦長ハウスキーパーに連なる女中の仕事とあまりに畑違い過ぎてイメージが湧かない、とやんわりと予防線を張られることになった。


こうしてお世話をするのが好きなんデスヨ、と言われれば、なるほどと納得するしかなかった。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


地理学視点を踏まえて、アキの策「②木を隠すなら森の中、だから森を育てていこう」の説明その3、釈明編でした。


地球(あちら)でのヨーロッパ文化圏の世界観と手口、悪行三昧について説明したことで、だからこそ、奴らの好き勝手にされないだけの力を各文化圏は持つべきで、そうして団結して力を備えて初めて、争いより共存を、搾取ではなく交易を、という道が開けるんですよ、という趣旨を理解して貰えたようです。


まぁ、こうしたバックボーンを教えて貰わないと、アキが世界への関心の薄さ故に、エウローペ文化圏が暴れ回るのを封じるために、死山血河を築くことを気にしない、どうせ遠い国の話だから、みたいな感性を持ってると誤解しかねない流れでしたからね。誤解が解けて幸いでした。




さて、今回で21章は終わりです。なんか残ってる感はありますけど、お姉様方の示した策とアキの示した策のセットに比べれば、残ってるのは小粒なのは確かなので、その辺りのフォローはSSの方でフォローします。創造した銀竜の鱗も小ネタ扱いで出します。本編では出すタイミングがありませんでしたが、取扱注意の代物ですからね。


<今後の投稿予定>

SS⑨「お姉様方から見たアキ(前編)」   二月二十五日(日)二十一時五分

SS⑨「お姉様方から見たアキ(中編)」   二月二十八日(水)二十一時五分

SS⑨「お姉様方から見たアキ(後編)」   三月三日(日)二十一時五分

二十一章の各勢力について      三月六日(水)二十一時五分

二十一章の施設、道具、魔術     三月十日(日)二十一時五分

二十一章の人物について       三月十三日(水)二十一時五分

二十二章スタート          三月十七日(日)二十一時五分


二十一章も終わってキリも良いので、感想、ブックマーク、評価、いいねなど何らかのアクションをしていただければ幸いです。それらは執筆意欲のチャージに繋がりますので。


<参考情報1>

霊長類という言葉は英語の「Primates」を翻訳したモノで、語源はラテン語の「primus」で、意味としては「第一の」「最も優れた」の意味になるようです。日本語の「霊長類」と訳されたのは19世紀後半とのこと。なのでアキの説明もそうズレた内容ではなさそうです。


<参考情報2>

世界最大の防潮堤というのは、釜石港港口防波堤のことで、巨大地震は東日本大震災のことです。未曽有の大災害である東日本大震災も2011年の事ですから、2024年に成人式を迎えた人だと、当時は7歳ですから詳しいことは何も覚えてないでしょう。時の流れって早いですね。


<参考情報3>

男女に分けて生殖をできずに生涯を終えさせた話は、アルゼンチンのパタゴニア砂漠周縁部でウェールズ人達がやらかした「荒野の征服」という原住民虐殺作戦のお話です。


人狩りについては、イギリス人によるオーストラリアでの「アボリジニ―狩り」とも言われた先住民アボリジニの虐殺。


民族絶滅の為の高効率化された輸送・殺害システム構築はナチスのユダヤ人迫害(ホロコースト)です。


後ですね、ユダヤ人迫害(ホロコースト)は公称600万人の虐殺をしたとされてますが、白人移植者達が1622年~1890年の約270年という長い期間、殺して、殺して、殺しまくったインディアンの人数は950万人とも言われてるんですよね。奴らの手口は酷くて、法でインディアンを殺害する権利が与えられたり、駆除だの浄化だのとやりたい放題して、組織立った武力闘争を終焉させたんですよ。アメリカ人が銃を手放さないのは、居座り強盗だと自覚してるから、武器を手放したら、やったことをやり返される恐怖が文化的に根付いているのでしょう。


日本の自然環境だと虐殺するような文化にはならないんですよね。そんなことをしなくても、防ぎようのない天災でばんばん死ぬから。日本史と世界史を見比べてみると明確な差があるのがよくわかります。あと日本は江戸時代の265年間は対外戦争もなく日本文化を育てた時代でしたが、アメリカのインディアン戦争の268年間は先住民から奪い、追い出し、虐殺して移民達の国とする侵略の時代でした。ほぼ同じ年月でも凄い差です。

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