表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
630/769

21-27.種を蒔き森を育てよう(前編)

前回のあらすじ:地理学視点でみると、地球(あちら)でのヨーロッパ文化圏、こちらでのエウローペ文化圏がかなり優位な条件が揃ってる海洋国家シーパワー群だということを説明しました。列挙してみると、ほんと、盛り過ぎだろ、というくらい良い点だらけ。しかも世界樹が文化圏同士での作物の融通をしていたようだ、とも判明しました。寒冷地特有の作物の生育不良問題が解決してしまえば、もう手が付けられない気がしますよね。(アキ視点)

「それでは、地理学の観点も踏まえた上で、僕の提案②木を隠すなら森の中、だから森を育てていこう、って部分について、もう少し具体的なお話に入っていきます」


そう切り出すと、ユカリさんも仕方ないわね、って気持ちを出しながらもフォローしてくれる。


「私達の弧国が他の国々に混ざって目立たないように、あと恨みを買わないように立ち回るんだったわね」


 うん。


「実のところ、世界地図で示した各地域の大国が列強に負けず踏み止まったとして、未踏破地域にある国々が上手く育って植民地支配を免れるというベストシナリオだったとしても、弧国はエウローペ文化圏から見れば、要注意な競合勢力と看做されるのは避けられません。同じ海洋国家シーパワー勢同士なのだから当然です。ただ、どの文化圏とも違う異質さと取られるのと、多くの文化圏の中で競合相手と取られるのでは意味合いはだいぶ変わるので、狙うのはその辺りでしょう」


和を以て貴しとなす、という国は他にも出てくるとは思うけど、その和に他種族も含められるか、竜族も含められるか、という点で、弧国は実際のところは、他文化圏とは一線を画した存在となるとは思う。


これにはユカリさんも意図を上手く読み取ってくれた。


「弧国は他の文化圏より一歩前に出てる。けれど海外へと勢力を拡大していくほどの力はないし、長命種らしく数百年先まで見越して、誠実な取引を心掛ける商業視点の国家。交易によって共に栄えることを良しとし、何より安定した長い取引を好む、そんな人々であり、誠実な姿勢さえ見せれば、相手がどの種族だろうと、友好を示し、そうした態度が多くの国々からも支持されている。私達が狙う姿はそんなところかしら」


 おー。


「お見事。ついでに弧国が取引する相手は一定の信頼が置ける、という印象を根付かせることができれば最高かと思います。長命種らしく、弧国との信頼を築くには祖父母の代から孫まで三世代は経るくらいの地道な積み重ねが必要だ、とか。金になるなら誰とでも取引するとか、阿漕な商売をするとか、そういう連中とは対極に位置する、そんな印象を他国の為政者や民に持たせることができれば、ブランドのイメージ戦略は成功と言えるでしょう」


「アキの言う信頼は、品質の高さに対する信頼とは別よね?」


 うん、うん。


「はい、そうです。相手が欲する丁度良い品質、価格の商品を必要な分だけ。それが目指すべきところであって、残念ながら、共和国が美徳としている高品質な品々は、人族や小鬼族からすると過剰品質になってしまいます。道具はセットで揃えないと役立ちません。高級ブランドとしての販路は確保しておくのも良い方向性ですが、弧国全体はソレでは早々に行き詰まります」


この説明には、皆さんそれなりに思い当たるところがあったようで納得してくれた。まぁ、連合、連邦、帝国相手に交流してれば、相手の懐具合も察せられるし、それぞれの種族が商品に求める方向性の違いも見えてくるというモノだ。


「そうして相手の欲するちょうど良い品を、双方満足する形で提供する。その信頼は崩れることがない、と」


相手が重さで量を計測するからと茶葉の入った箱の底に石を詰める、そんな真似をしちゃ信頼関係なんて一発でお終いだ。


「ですね。例えば商品の中には古くて交換部品が手に入らない、そんな品もあるでしょう。そんな時でも、長命種らしく、長年の愛顧に応えて、依頼があれば昔の部品でもさっと用意してあげる。結構な手間がかかるんですけど、安心して使える道具、製品は、愛着を持って貰えるモノです。代を重ねた持ち主より詳しい、良く知っている、とか思って貰えると素敵ですね」


古風な(アンティーク)家具とか、機械式時計とかだったりすると、修理記録を個別に取っておくような場合もあるからね。そして、古風な(アンティーク)な品々を愛用できるだけの方となれば、歩んできた年月そのものを愛でる感性をお持ちだったりもする。街エルフ達からすれば「よくお分かりのお客様」ってとこだ。


これにはマリさんが手をあげた。


「それなら、弧国の品を出す際にも、当面は我が国の探査船団が輸出を担うのだから、弧国が認めた商社、製造会社とわかるようブランド戦略をすべきね。そして出てくるであろう模倣製品の撲滅を相手国にも求めていく。そうして弧国の製品である、ということを周知していく。そして競合他社の製品についても把握して、さらりと語れるくらいにしておくと印象も良くなると思うわ」


 ほぉ。


「いいですね。他国の品々の優劣も知った上で、それらを並べた上でこちらがお勧めです、と示すことができればお客様への印象も良くなるでしょう。あと、共和国の姿勢としては、相手国の産業に被害を出さないよう競合しない製品を選んで行くことを良しとするというのがありますよね。とても良い事と思います。ただ、今後、未探査領域にまで足を伸ばすことになると、並みの品質でとにかく量を揃える、といった場合も増えてくるでしょう。場合によっては機械を作る機械(マザーマシン)の提供、運用の指導なども出てくると思います。そこで必要になるのは、現地の人々が保全作業メンテナンスしながら使えることです。壊れたら、それでお終い、放置されてしまうのでは意味がありません。結構難しい話ですけど、そこの匙加減は間違えないようご注意ください」


ジョウさんが手をあげた。


「それは東遷事業でも語っていた話だな。いずれは帝国が全て対価を支払って自分達のモノとして維持・管理していく。だからこそ、彼らがそれを行えるよう工事しなくてはならない、と」


 うん、うん。


とても高性能だけど、調子が悪くなったら誰も直せないし、交換部品も高くて買えないから、使われなくなって埃を被ってるだけ、なんてのは、誰にとっても不幸な話だからね。そういう無駄な事業をやっちゃいけない。





「では、それらを踏まえた上で、種を蒔いて森を育てるにはどうしたらいいか考えてみましょう。と言っても、多分、未探査領域だとどれだけ頑張っても一年くらいは、まず相手の国の言葉を覚えて、相手にもこちらの言葉を覚えて貰って、意思疎通を可能にするところまでで精一杯でしょう。言語習得術式みたいなのは無いんでしょう?」


これにはケイティさんが答えてくれた。


「あったら便利とは思いますが、望んだ結果を何でも実現できるとされる古典魔術でもそれは無理です。探索者であれば、相手の魔力の揺らぎや変化を見て、ある程度は感情を推測はできます。後は身体言語から推測していくしかありません。地道な話です」


 やっぱり無理か。残念。


「そこで僕からは、未探査領域への上陸及び現地住民との交流を図る要員として、魔導人形の皆さんを充てるべきと主張します。理由は伝染病対策です。双方向で伝染病の危険はありますけど、ユーラシア大陸勢は文化圏同士の交流が多い分、より多くの伝染病に罹患してきた可能性が高く、未探査領域に住む人々の方がより重度の症状を引き起こす可能性があります。我々の手で感染爆発パンデミックを引き起こすのは避けるべきです。そして、幸いにして共和国は魔導人形の皆さんという、伝染病の危険をゼロにできる鬼札(ジョーカー)を持ってます」


ここでホワイトボードに簡単に絵を描いて説明していく。まぁ言いたいことは簡単だ。未探査領域に探査船団が到着したら、魔導人形の皆さんだけが上陸して、何とか現地住人に逗留を許可して貰って、意思疎通できるよう頑張る。


そして、無理なく意思疎通できるようになったら、伝染病の危険性について理解して貰い、感染爆発パンデミックを防ぐ形で、限られた少数同士の交流から始める。潜伏期間込みで一ヶ月程度見ておけば良いと思う。伝染病の症状がでたら、治療しつつ原因を究明していく。少人数なら対処療法だけでも助かる確率は高くなる。


探査船団にいる医師達だけで対処が難しい場合、転移門を使って患者の血液や組織を本国に送り分析、研究を行う。


「リア姉、確か共和国にはバイオセイフティレベル4の施設はあるんだったよね?」


バイオセイフティレベル4の施設とは、病原菌に直接触れることなく分析、研究を行うことが可能で、ウィルスすら捕捉するフィルターを二重に通してから排気するとか、排水も消毒して、加熱滅菌するといった作業を複数回やって完全に死滅させることで、安全に危険極まりない病原菌を調査できる特別仕様だ。しかも実験室は周囲、上層、下層も含めて全方位で廊下のような空間を設けることで壁越しの侵入を遮断、正規ルート以外からの侵入を防ぐ徹底ぶりで、建物全体も免震構造を設けるなど、何があっても漏洩は起こさない、という考えうる限りの多重防御が行われている。勿論、作るのは物凄く大変で、日本にも二か所しかなかったりする。


「一か所しかないけどね」


「あるだけ凄いよ。ちなみに転移門を使った被検体の輸送及び分析、研究をしたことは?」


「ちゃんと実績もあるからそこは大丈夫。外洋帆船は大きいと言っても閉鎖空間だからね。船内で感染爆発パンデミックが起きてしまった場合は想定していたんだ」


 それは凄い。


……というか訓練してます、じゃなく実績あります、って辺りやっぱ怖い世界だ。病気に関する情報も文化圏単位、というか更にその下位の国単位で閉じてる感じだろうし、治療方法に関する研究だって進捗はまちまちだろう。下手したら現地ではよく見かける風土病だけど治療方法は不明、とかもあるだろうからね。


「では、そこは準備万端ということで。これが最初から人同士の接触だと、言葉もろくに通じないところから、治療することになり、難度が桁違いに跳ね上がってしまいます。それは避けねばなりません。もしかしたら、現地にしかない医薬品でないと治らないかもしれません。言葉が通じればソレを融通して貰うことも可能でしょう」


本当の意味で、弧状列島では知られてない病である可能性が十分にある。これは、ある程度交流をしていて、言葉も通じて交易してきた歴史のある既存の中国、インド、中東の文化圏とは訳が違う。


大航海時代の探検家達はある意味、無邪気で楽観的に、無知故の無謀さで新大陸に上陸したのだ。


下手をしたら、彼らこそ酷い伝染病で絶滅していたって不思議じゃなかったんだから。


皆も慎重過ぎるように思えても、敢えて危険を冒さなくていい選択肢があることの幸運に理解を示してくれた。





リア姉が手をあげた。


「それでアキ、魔導人形達だけを上陸させて、双方で互いの言葉を学ぶと言ったけど、それだけの意味じゃないよね?」


「私は」わかってるよ、と表情で教えてくれた。説明しろ、と。


「魔導人形の方々ですけど、多岐に渡る専門家で、異文化に対する偏見がなく、深い洞察力を持って、言葉の意味を類推し、対象地域の政治体制や文化レベル、世界観などを見極める能力があることが望ましいです。ある程度の人口規模の港町に上陸するとは思いますけど、医療知識や国同士の交流とその取り決めについて、かなりのフリーハンドを与える必要もあるでしょう。他国の王への謁見を許されて、その場で判断できないようでは困りますから」


つまり、全権大使であるジョウさんみたいな権限が必要ですね、と告げると、まぁ、案の定、皆さんの表情が強張った。あー、リア姉や母さん、ヤスケさんは想定してたようで変化なし。


ジョウさんが若手組の代表として、何に驚いたのか教えてくれた。


「アキは知らないだろうが、魔導人形で大使の任に就いた者はこれまでにいた事が無い。まして全権大使とは、いくらなんでも話が飛躍し過ぎだ」


 おや。


「でも、僕が連邦に行った際には、魔導人形のシャンタールさんを指揮官として、リア姉の魔導人形の皆さんを纏めて部隊運用してましたよね?」


「それはあくまでも状況を限定した部隊運用、戦術的な範疇だった。任務ミッションもシンプルで、初撃さえ防げれば、後は雲取様や翁、妖精族によって場の制圧は可能だった。シャンタールが担った役割は重責ではあったがその時間は数時間程度だった。だが、今、アキが言った任務はまるで違う」


 うん。


「任務は恐らく年単位。異文化への理解を深める意味でも、技術や知識、世界観や民度などを理解していく意味でも、現地に残る魔導人形はそれなりの人数、それも専門家集団になりますね。そして、そんな多様な部下達を取り纏める代表、副代表が必要でしょう。交渉相手は可能な限り対象地域の上位為政者であること、広い地域の代表達であること、多くの専門家達であること。大変多岐で、臨機応変さが求められ、しかも可能な限り友好な関係を築き、信頼を得ねばなりません」


指折り数えてみると、うん、一人や二人の超人がいてもどうにもならないレベルだ。地球(あちら)で宣教師達が僅かな人数で異国に渡って布教活動を行えたのは、揺るぎない信仰心や、自らの信仰や文化へのある種の自信があったからこそできた偉業だったと思う。


自分達より遅れている人々に、神の信仰を目覚めさせ、彼らの文化が育んだ叡智を伝えるのだ、と。


困った事、判断に迷うことがあって本国に問い合わせても答えが返ってくるのは半年後、一年後。そして、遠い異国の地に骨を埋めることになるやもしれない。それでも布教するのだ、と己が命を賭して自身の役割を果たしたのだ。


確かに植民地とする尖兵としての役割も担ってはいたし、現地住民達を遅れた者達、劣った者達と蔑むような者もいた。だが、異文化に敬意を払い、誠意をもって信仰を伝えた者達も大勢いたのだ。


そうでなければ、聞いたこともない信仰が広まる筈もない。


そして、現地に残る魔導人形達はそうした者達でなければならない。言われたからやる、言われた仕事をこなす、といった受け身の姿勢では、到底、達成は不可能な任務だ。




 さて。


この場には女中三姉妹の魔導人形であるアイリーン、ベリル、シャンタールの三人がいる。意見を求めるのは……ちょい酷かな。話を振るのは止めておこう。


 では、誰に聞けばいいか。


「ケイティさん、確か外交官の資格をお持ちでしたよね?」


「はい。実際にその資格を必要とされる任に就いたこともあります」


 ん、いいね。


「では、今後必要とされるであろう未探査領域に赴く全権ではないにせよ外交官の任も兼ねる魔導人形さん達ですけど、現在、ソレを可能とする方ってそれなりにいます?」


僕の問いにケイティさんは暫し考え込んでから口を開いた。


「先ず第一に魔導人形は限られた任に就くのが基本です。仕事の内容は明確であるほど良く、あやふやな指示は好まれません」


 ふむ。


「ソレだと、僕が知る限りだと、ほぼフリーハンドを与えられている魔導人形はロゼッタさんしか知らないですね。ロゼッタさんは財閥において秘書という役割ですけど、当主であるミア姉が不在でも、必要な仕事をこなしているので、今回の任に必要な自由さをクリアしてそうです」


「はい。私も知る限り、そこまで広い権限を許されている魔導人形はロゼッタ以外に知りません」


 なるほど。


「では、別の視点から。ケイティさん、今の話題に出てる代表として現地に残って一年間頑張って、と言われたらどうです?」


「拒否します。探索者の範疇は勿論、単なる外交官の範疇も遥かに超えてますから」


 うーん。


「でも、かなり面白そうで遣り甲斐もあって、こう、限界に挑戦!みたいに気合が入ったりしません?」


そう聞いてみたんだけど、さすがに苦笑されてしまった。


「アキ様、探索者は未知を探求するのが仕事であって、政治家の真似事をするのはオマケです。確かに話題の任は、未知に溢れているでしょう。けれど、その未知は探索者好みの内容からはズレてます」


探索者は未知を探して、情報やアイテムを持ち帰るのが仕事であって、約束事を取り付けるとか、信頼関係を築くとかは目的ではなく手段だ、と補足してくれた。


 なるほど。


「となると、ロゼッタさんレベルの魔導人形さんを南北アメリカ大陸のマヤ、アステカ、インカの三文明限定としても三人用意しないといけない、と。んー、ヤスケ様、それって出来そうですか?」


話を振ったけど、呆れた顔をされてしまった。


「無茶を言うな。あんな魔導人形をそうそう増やせるなどと思うでない。ソレは今からアキと同等のマコト文書専門家を育てる、と言ってるようなモノだ。素質がある者達を集めて教育したとて、モノになるかは育ててみないとわからん」


 なるほど。


ん、母さんが手をあげてくれた。


「アキなら言いそうだから先に話しておくけれど、何でもできるとされる街エルフでも、外交官見習いとして働く程度の実力はあっても、全権大使として働けるジョウくんみたいな子は数えるほどしかいないわ」


 ぐぅ。


お、リア姉が手をあげてくれた。


「だから、あれもこれもと裁量を任せちゃうんじゃなく、ここまでは許可する、何をしていい、と逆に縛りを多くした方がいいだろうね。現地居残り組の代表に求められるのは、研究組に参加してる小鬼族達のリーダーのガイウス殿みたいな立ち位置さ。専門家達の仕事の概要を把握できる総合職ゼネラリストであり、コミュニケーション能力に長けていること。それくらいに絞るべきだろうね」


 ふむふむ。


「確かにそれが良さそうだね。その代わり、代表の判断を補佐する専門家さん達は、判断に足るだけの意見を示せる技能、異文化に対する柔軟性を持つことくらいかな」


「まぁ、そんなとこだろうね」


リア姉は落としどころは用意した、とやりきった表情だけど、ジョウさんやお姉様方はと言えば、何言ってんのこいつら、って感じに呆れた表情を浮かべていた。


ユカリさんもこれは呆れるシーンね、とばかりに少しオーバーに振る舞ってくれた。


「二人とも条件を絞ったようで、随分無茶を言ってるわよ」


 まぁ、うん。


「簡単な任じゃないですから。あー、でも、ユカリさんみたいに芸事に長けた人も混ざった方がいいでしょうね。芸事に打ち込んでる魔導人形さんって取り敢えず三名います?」


僕の問いに、ユカリさんは少し内心が透けるような冷えた視線を向けた。


「東遷事業で試してみてどうか、ってところね。異種族相手に芸を磨くのはこれからなのよ」


 なるほど。


一応、芸人の道を進んでる魔導人形さん達もそれなりにはいる、と。でもこれまで相手にしてきたのが共和国、連合に属している種族だけだから、それ以外の種族相手にも芸風を広げられるかは未知、って話だ。


 安請け合いしないところは好感が持てるね。


  それと。


「弟子を見守る師匠って感じで、そんなユカリさんも素敵ですよ」


良い面が見れた、と褒めると、途端ににっこり笑顔を浮かべて、経営者として、芸事の師としての顔は引っ込めてしまった。


「大人を揶揄わないの。もう、アキも大概、良い性格してるわね」


などと、知的なお姉さんが気心の知れた弟分を揶揄うような口調で指摘されてしまった。




  はぅ。


不味い、ちょい踏み込んで虎の尾を踏んだっぽい。逃げよう。全面撤退だ。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


地理学視点を踏まえて、アキの策「②木を隠すなら森の中、だから森を育てていこう」の説明スタートです。


アキの提案は、魔導人形達を使節団として送り込んで、伝染病を回避しつつ相互理解を深めていこう、国交を結ぼうといった内容でした。感染爆発パンデミックが起こる前に対処方法の調査と準備を整えることができれば、被害も大きく減らすことができるでしょう。


そんな訳で、使節団を率いる総合職ゼネラリストにして、コミュニケーション能力に長けた団長級と、未知の文明圏相手に専門家としての観点から意見を言えるメンバー達を揃えててね、それ「だけ」いれば十分だから、と。


お姉様方やジョウが呆れた表情を浮かべたのも無理はないでしょう。目的と必要な人員の能力、使節団の規模、それを構成すべきは魔導人形であること、と条件は明示できた。後は頑張ってね、と言われても、はいそうですね、と頷ける実務家は存在する訳もなし。


アキの発言は平易で理解しやすい、だから言われた言葉や内容が理解できない訳ではない。

けれど、それをどう実現するのか、いつ実現するのか、実際にどこまでやれるのか、他との折り合いをどうつけるか、などなど考えることは山積みなのでした(笑)


あと、弧国が行えるであろう援助、技術支援などについては、国連が貧困国向けに行うソレにかなり似たイメージです。つまり、安価で低技術かつ低エネルギーでありながら高効率な結果が出せる道具を提供する、みたいな奴です。必要な設計、検討にはかなり高度な技術が必要だけど、そうして作られる実際の道具は驚くほど簡素で安価で電気も不要みたいな魔法みたいな道具類です。


例えば、マサチューセッツ大学などが作った「水道水より安価に、太陽光を動力源として海水から淡水を作る装置」とか。スーツケースサイズで4~6リットル/時ペースで飲料水を生成でき部品交換が必要になるまでに数年持ち、どの海水淡水化計画よりも高い造水率と塩回収率を誇り、水道水より安価というのだから驚きです。


ボトムアップ式では絶対に作れないオーパーツ、大きく進んだ技術、ノウハウが蓄積されているからこそ逆算式に作れる品々って奴です。世の中賢い人達がいるんだなぁ、とほんと感心しますね。


次パートでは、そうしたメンバーを揃えて実施できた場合のメリットについて語っていきます。アキも意気揚々と語るだけあって、メリットは盛り沢山です。


次回の投稿は、二月十八日(日)二十一時五分です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ