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21-25.地理学視点で世界を見ると(中編)

前回のあらすじ:地理学の基本ということで、地理的障害によって生じる文明圏同士の交流という観点からお話してみました。他の文明圏に比べて、如何にユーラシア地域が優位にあったか、皆さんにも理解して頂けたようで何よりでした。骨・石器文化までなら世界どこでも身近なモノで作れるから同時多発的に発達できるんですけど、金属器に入るだけで途端に難度が跳ね上がりますからね。多くの資源を組み合わせた銃器となると、その頂はあまりに高く必要とする裾野はあまりに広いことを実感させられます。(アキ視点)

休憩時間中も皆さんは、ホワイトボードに貼られた文明圏の地図や砂漠、熱帯雨林地域の分布について、思うところをあれこれ話していたので、僕はちょっと離れて、ホワイトボードの裏側に回って、ケイティさんと一緒に次の準備を行うことにした。


先ほどまでの話で、未探査地域を含めて多くの文化圏があるけれど、列強と言える国に辿り着ける地域はユーラシア大陸の五つに絞り込めるとこまでは既に示した。


次に示すのは、この五つの文化圏のグループ分けだ。


日本列島は自明の理なので、それ以外の四文化圏について沿岸部と内陸部を線で記していく。時間もないので、ケイティさんと手分けして、沿岸部は青色、内陸部は土色で囲って、と。


そんな準備をしているうちに小休憩時間も終わることになった。





「さて、それではユーラシア大陸の五つの地域は相互に影響を与え合いながら、鉄砲の大量生産、運用にまで至った、という意味で列強に辿り着ける五強文化圏と位置付けてみます。それではこの五つの文化圏は同列かというと、そうではありません。まぁ、これまでにもエウローペ文化圏には枷を付け、他の地域は後押しすべし、と主張していた通り、同地域は世界に種を蒔き育てるという視点でみると、一番警戒する必要がある理由を説明していきます」


同列ではない、と告げると、ミエさんが手をあげた。


「同列でないというのは、他の文化圏は多数の国家の集合地域と看做せるのに対して、統一された弧国は一国家でその規模も大きく劣る、という意味合いも含む?」


 ふむ。


「規模的な話で言えば、確かにおっしゃる通りこちらでの弧国、あちらでの日本は他文化圏と比べればその規模は一、二割といったところで小粒です。ですが幸い立地条件に大変恵まれているので、小粒でも独自の文化圏を成立できているし、これからも維持できるでしょう。なので、同列ではない、というのとはちょっと視点を変えて、海洋国家シーパワー大陸国家ランドパワーという視点で見ていきます」


弧国がどれだけ立地が恵まれているかは後で説明します、と話して納得して貰い、先ずは大陸国家ランドパワー勢から話していく。


ちなみにここでの大陸国家ランドパワーは政治、経済、文化といった方向性が陸伝いの隣国や内陸に向いていることの意、海洋国家シーパワーは、それらが海伝い、大陸の外へと向いているという意だ。


・中華文化圏の沿岸部

挿絵(By みてみん)


 ※赤い部分は日本の本州+九州+四国。サイズ感の把握用です。


「では、先ずはこちら、お隣にある巨大な中華文化圏をご覧ください。水色で塗った部分は長大な長さの沿岸部ですけど、文化圏全体で言えば縁の部分に過ぎず、その国土の多くは内陸部に位置しています。その為、この地域を統一してきた歴代の中華王朝は常に視線は内陸に向いていました。勿論、沿岸航法を用いて商人達は東南アジアなどの地域との交易をしてはいましたが、海に向かって進出していく、活動域を広げていくといった意識は持ちませんでした」


沿岸部同士で物を運んでも、全土から見れば、それは物流の一部しか担わない。ほとんどの地域にとって海というのは噂にしか聞いたことがない場所だった。


ん、ケイティさんが手をあげた。


「かの国は、大国として規模相応に、船舶自体はかなりの数を運用しています。ただ、アキ様が言われるのは、海運の規模ではなく、国全体から見た海運の比率ということですね?」


「はい。中華文化圏は巨大なので、運用している船舶数だけでいえば、弧国を遥かに超えるでしょう。ただ、国の在り方としては内陸側に七割、八割割いているのは間違いなく、そうなれば、国のまつりごとを担う人々の意見も、そちらに傾きます。あとこれは余談ですけど、中華文化圏は無線通信や鉄道網がない前提だとほぼ限界の大きさと言えるんですよね。その範囲を一つの国として纏めることで限界に達してしまい、更に外に出ていこうとしても長続きしないんです」


無線通信がなく、鉄道網もない時代には、道路を通じて荷を運ぶ物流は情報伝達も兼ねていた。馬車を使って運ぶと一定間隔で補給拠点を設けねばならず、補給物資も運ばなくてはならず、それらの供給量にも限りがある事から、物資と情報が満足に届く範囲はどうしても限界が出てくる。


中華王朝は乱れてくると地方で独立運動が起こって分裂して内戦に突入、戦乱期を経てまた統一という流れを繰り返すのはその為だ。


伝令を使うとか狼煙を使うとか、情報の高速伝達も工夫はしてたけど、如何せん、伝えられる情報はほんの僅かに過ぎない。大量の情報を運ぶ方法は結局、官僚が現地に赴くとか、書物の形で運搬するしかない、それが人類の歴史だった。


これは無線通信が発達した昭和の時代でも同様で、テレビやラジオで伝えられる情報もそう多くないし何より保存が大変だった。大量の情報を運ぶには結局、本にせよ、記憶媒体にせよ、物流による運搬に頼るしかなかった。


それが変わったのはインターネットの普及と高速回線網の整備だった。今では本をまるごと転送するのだってそう大した時間はかからない。物流に頼らず大量の情報を遠隔地に届けられる時代は人類史から見れば、本当に極最近の僅かな期間しか存在せず、それ以外の長い時間は、何かに記して手間を掛けて現地まで運ぶしかなかったんだ。


弧状列島は人力で繋いでいる割には上手く物流、通信網が整備されていると思うけれど、さて同じ仕組みで、中華文化圏全体を繋げられるかといえば、かなり厳しいだろう。かの地は不毛の地が多く、数十キロ単位で補給地点となるような農村があるとは限らないのだから。補給地点を人為的に設けるとなると、そこに定期的に補給物資を運んで備蓄しないといけない。そうして、物流網を支えるための基盤、それを維持するための運搬という副次作業が発生していく。


千キロ先に手荷物を一つ届ける為には、その何百倍もの物資を道中で消費する、といった具合だ。


まぁ、この辺りは連合の物流・通信網を担う財閥について皆さんも良く知っているので納得してくれた。


「三大勢力レベルの行政単位を束ねて弧国単位に、それを更に束ねて文化圏全体を一つの国とする。どれだけの官僚機構が必要か、気が遠くなってくるわね。結局、遠地はある程度、自由裁量を任せるしかない。そして、中央の統制が緩くなれば地方は乱れ、国がバラバラになっていくのね」


ん、さすがミエさん。国絡みの報道に携わってるだけあって理解も的確だ。


「そうなります。では、次に同様の大陸国家ランドパワー、インド文化圏を見て行きましょう。こちらもやはり沿岸部より内陸部の方が範囲が広いんですよね。それとこれは隣接している中東文化圏の影響ですけど、中東文化圏は典型的な大陸国家ランドパワー系で、陸伝いに東に勢力拡大をしてくる強い圧力に常に晒されてます。その為、国を纏めたら、その力を持って中東からの圧力に対抗するため、陸側の活動を強化することが重要になってきます。そうなると海運の方は余力で行うことになるので、やはり海へと進出していく姿勢は乏しくなります」


・インド文化圏の沿岸部

挿絵(By みてみん)


 ※赤い部分は日本の本州+九州+四国。サイズ感の把握用です。


地理的に、沿岸航法で海運を行うことで中東地域や東南アジア地域と繋がることができるので、それだけでも結構な交易を生むことにもなる。そして、それぞれと陸伝いに繋がっている以上、そちらに対応しつつ、海伝いにも手を出す、というのは流石に無理があった。


ほぼ陸伝いに攻められるセイロン島の攻略ですら、歴代の王朝は苦労してきたくらいなのだから、海上戦力を持って、中東や東南アジアに攻め入るなどというのは無理筋だったと言える。


「アキが今回の主題としている列強、つまり海外へと大規模な派兵を行って植民地を増やしていくような勢力という意味では、中華文化圏、インド文化圏はどちらも、それを為し得ない。そういうことね」


 おぉ。


「はい、その通りです。どちらも強大な大国なんですけど、その力を内陸に向ける傾向があるので、未探査地域に触手を伸ばしていくかというと、そちらには向かわないんです」


うん、うん、理解してくれて嬉しい。





「では、次はお隣、中東文化圏を見てみましょう。平面図だけを見ると、沿岸部が多く、海洋国家シーパワー的な側面が出てきそうにも思えますけど、残念ながら、この地域の下半分は砂漠地帯なので、人口が増える余地がありません。物流拠点としての港街はあっても、弧状列島のような密度で港町が存在できるか、というとそれは無理なんです。なので、この地域は西はエウローペ文化圏、東はインド文化圏と陸伝いに隣接している立ち位置となり、砂漠といっても荒地相当が多く、騎馬による移動が可能であることから、馬や駱駝を使った陸運を主体とした文化が成立することになりました。海運は沿岸航法メインで、エウローペ文化圏やインド文化圏との交易を行うといったところで、やはり主流とはなり得ませんでした」


・中東文化圏の沿岸部

挿絵(By みてみん)


 ※赤い部分は日本の本州+九州+四国。サイズ感の把握用です。


国土的に砂漠や荒れ地が多い分、実りが少ないので、陸上に力を回せば、海運に回せる力はそれだけ減ることになり、商人達による交易はかなり熱心に行われていてアフリカ東岸はマダガスカル島近辺まで足を延ばす程だったけれど、あくまでも商売の範疇で、領土拡大の意図は持たなかった。


地中海も一時期はガレー船団が活躍して東地中海を支配下とした事もあったけど、そこまで。


ん、マリさんが手をあげた。


「この拡大図だと我らが海(メアノストルム)の東端部分も文化圏に入っているけれど、世界地図では、エウローペ文化圏に入ってたわね?」


「歴史的に見ると、地球(あちら)ではその辺りの地域は双方の文化圏の影響を受けて、取ったり取られたりといった感じだったんですよね。なので、ある程度重なっていると思ってください。それにこちらの詳細はまだよくわかってませんから」


探査船団もペルシャ湾までは足を延ばしているけれど、紅海の方は手付かずっぽいんだよね。


「今後の調査次第ってところね」


「そういうことです」





「さて、それでは残り二つ。一つは日本列島、こちらでの弧国ですが、これは自分達の地域なので軽く説明するのに留めます。国土の大半は沿岸部に相当し、内陸部と言える地域は僅かです。ですから、海竜への対応はありますけど、弧国の在り方は海洋国家シーパワーで確定です。この国土の掌握への距離的な問題は発生せず、有り余った国力、余剰人口は海外に向けていくしかありません。そして、同じ事がエウローペ文化圏にも言えます」


・ヨーロッパ文化圏の沿岸部

挿絵(By みてみん)


 ※赤い部分は日本の本州+九州+四国。サイズ感の把握用です。


「御覧の通り、膨大な量の沿岸部があり、我らが海(メアノストルム)は穏やかな内海ということもあって、大量の物資を素早く運べる海路として活用することで、広大な地域同士の交流を促すことができます。また、大西洋から北海へと繋がる外洋部を伝って行けば、英国もあり、それらとの交易も行うことができるんですね」


ん、ユカリさんの手があがった。


「内陸部からの圧力はどうなのかしら? 遊牧民族の文化圏と接触しているのよね?」


 おぉ。


「はい、そうなんですよね。地球(あちら)では東夷と呼ばれてましたが、悪鬼羅刹の如く忌み嫌われる存在として、恐れられてきました。東に面する地域は頻繁に襲撃され、征服され、取ったり取られたりを繰り返した地域でした」


「それだと、中東やインドのように遊牧民族勢に備えるために陸側に力を割かざるを得ず、海洋進出への力は削がれることにならないかしら?」


流石鋭いなぁ。


「東夷が暴れている時代はその対応に追われることになりました。ただ、この地域は統一国家ではなく、小さな国々が独立して争っていたので、直接、脅威に晒されない地域はそれなりに海運に注力できていたんですよね。それと海の向こうの英国は、東夷とは無縁だったというのもあります」


東夷は強大だったものの、我らが海(メアノストルム)沿岸まで力が届くことは殆どなく、エウローペ文化圏は同海域沿岸部を主経済圏として発展していくことになった、と説明した。トルコ辺りまで進出されたことがあった、と一応話したけど、地中海全域への影響はほぼなかったことは理解して貰えた。


「それは、エウローペ文化圏が西の果てにあることも影響してそうね」


「はい。遊牧民達の勢力は強大でしたけれど、四つの文化圏と接してる関係でエウローペ文化圏まで手が届かない時期もそれなりにありました。彼らからの圧を一番受けたのは中華文化圏でしょうか。王朝が倒されて、遊牧民達がトップに立った国が成立した事もあるくらいですから」


「それは災難だったわね」


「中華文化圏はその周囲に遊牧民達の国家がいくつもあって、常に彼らからの脅威に晒されてきましたからね。あまりに脅威が酷いので、国境線上にその長さは万里を超えるという長城を築いてガチガチに備えたくらいでした」


どんな感じか概要を説明すると、城というより壁だろう、なんて意見も出たけれど、そんなモノを作る気になるほど頻繁に襲撃されていた事に、大陸国家の大変さをある程度感じて貰えたようだった。


「そうした遊牧民勢からの圧はあったものの、エウローペ文化圏は海運によって各地の交易は活発に行われていました。つまりこの文化圏は海洋国家シーパワーの傾向を持つのです」


「沿岸部の長さも他の文化圏に比べると、その割合は圧倒的ね」


「そうなんですよ。そしてこれだけ常に海運に注力していれば、当然、航海術も磨かれていくことになります。大航海時代、外洋帆船を作り上げて大洋へと進出していく。彼らには我々、湖国と同様、そうした在り方が備わっていたのです。あと、シンプルな話として、陸上戦力を鍛えあげたとしても、遊牧民達の文化圏に乗り出していくのは魚を相手に泳ぎで挑むようなモノで無謀でしたし、中東文化圏の勢力を浸食していくのもかなりの無茶でした。地球(あちら)の歴史的にはそれが可能になったのは、列強が多くの植民地を確保して地力が大きく伸びた後になります」


悪名高いかの十字軍ですら、僅かにエルサレムの地に指が届いただけで、結局は手放すことになったし、それどころか北アフリカ沿岸も中東勢が支配下において、ジブラルタル海峡を超えてスペインへと攻め込まれる始末だった。


「そうして東に陸伝いに無理に勢力拡大をするくらいなら、自分達が得意とする航海術を活かして、アフリカ大陸を西岸伝いに南下していく方が割に合うということね」


「はい。海洋国家シーパワーの常として、自分達の文化圏が一杯になったらどうするかというと、海伝いに活動範囲を広げていくことになるんですよね。地球(あちら)の日本が中国や東南アジアに向けて交易しようと船を送ったように。ヨーロッパ勢はアフリカ沿岸を南下していくか、いっそ、西回りにぐるっと回ってインドに辿り着いてやる、とまぁ、そう考えたんです」


世界儀で全体を把握できている我々からすれば、西回りは何とも無謀な話だったけれど、当時は地球はもっとずっと小さいと思われていたから、西回りルートでもそう遠くないと考えたんだよね。結果として、予想してない土地、南北アメリカ大陸に上陸することになるのだけど。





「それで、弧国の立地が大変素晴らしい点は何かって話ですけど。それは隣の中華文化圏が大陸国家ランドパワー系で、海洋進出の圧が低かったこと。それから渡海して大軍勢を送り込むのは難しいけれど、交易することはできる絶妙な距離だったこと。そして、最大の海洋国家シーパワーであるエウローペ文化圏から最も遠い極東、間に三つも文化圏を挟んだ地の果てに位置していたことです。もし、近くに彼らがいたら、利害が衝突してしまい、そして彼らの方が国力は十倍は優にあるので間違いなく潰されてました」


国境を接する大陸国家同士が争うように、海洋国家同士もまた、自らの活動域が重なれば、仲良く共同利用、なんて話にはそうそうならず、互いに覇権を握ろうと衝突していくことになる。そしてこれだけ国力が違えば、勝ち目はない。ヨーロッパ列強は、他地域が手強いとなったら、手を組んで合同艦隊を結成して潰しにかかるからね。潰すまでの仮初の共闘ではあるけれど。


ん、リア姉が手をあげた。


「実際、地球(あちら)の歴史でも、日本は列強から最も遠い地にあったからこそ、彼らに侵略されることなく独立を保てたんだったよね」


「うん。まぁ、当時の日本は何と言うか、色々と戦闘民族してたり、首狩り族だったり、いつのまにか量産した鉄砲の数が世界ダントツ一位になってて、大軍をもって中華文化圏に侵攻して、二十万もの軍勢相手に互角以上の戦いを繰り広げて、当時の明王朝の命運を大きく縮めることになったりと暴れ回ってたからね。他の地域と違って侵略するのは割に合わない、と思わせることに成功したってのもあるよ」


僕の説明に、ジョウさんが手をあげた。


「アキ、その首狩り族というのは?」


「えっと、日本では戦国時代、相手の武将を倒したら、実際に倒したことを証明する為に首を切って持ち帰ってたんですよ。で、実際に顔を見て、確かに倒したね、大手柄だ、と褒賞を与えたんです。勿論、雑兵の首を取っても意味はなく、首を取るのは名の知れた相手でしたけどね」


そう話すと、なんかドン引きされた。あれ?


「他には、日ノ本の侍達は軽くて切れる日本刀を使って、盾ごと叩き切ってくるとか、片手剣で受けようとしても両手で振り下ろされた刀で頭を割られるとか、朝鮮半島から東南アジアまで広い海域で、交易しつつ海賊もやってたりとか、色々やってました。狭く揺れる船上では槍なんて使ってられませんからね。まぁ、結局、モノを言うのは腕っぷし、武力という時代でした」


あまりに猛威を振るったので、そうして活躍した日本刀は、中華文化圏でも求められるようになって貴重な輸出品になったりもしたんですよね、なんて雑学も話したけど、なんか、こう、皆さん、自分達と似た日本あちらの連中が何やっちゃってんの、といったように呆れて頭が痛いって顔をし出した。


「……アキ、マコト文書に書かれた日本は、もっとこう、平和な国だと思ったんだが」


 あぁ。


「そうやってやんちゃしてた戦国時代は四百年ほど前の時代でしたから。その後、二百六十年、海外との交流を抑えて引き籠ってた江戸時代は穏やかに過ごしました。ただ明治時代に外を見れば列強が次々に侵略していく弱肉強食の時代になってる事に気付いて、それから富国強兵に努めて力を付けつつ、利害が衝突した大国清と戦い、大国ロシアと戦い、清王朝の次に成立した中華民国と戦いながら、第二次世界大戦に入るとイギリス、フランス、オランダ、アメリカ、オーストラリア、ロシアの後に成立したソビエト連邦とも戦って、戦って、戦った結果、けちょんけちょんに負けて、国土の多くも灰燼と化して、うん、やっぱり平和がいいよね、って心を入れ替えたんですよ。だから、第二次世界大戦が終わって七十年くらいは、緊張が高まった時期は色々ありましたけど、戦争にはならず平和な世を謳歌できました」


なので今は穏やか、と話したんだけど、なんだろ、皆さんの視線が痛い。


「ファウストも言ってたが、地球(あちら)はやはり修羅界とかじゃないのか?」


そう言うジョウさんの目は結構マジだった。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


ユーラシア地域に存在する五文化圏について、グルーピングして、どうしてエウローペ文化圏に枷を付けるべきなのか紹介してみました。中華、インド、中東は大陸国家ランドパワー系、日本、ヨーロッパは海洋国家シーパワー系です。


まぁ、ヨーロッパも細かく見て行けば、ドイツのようにヨーロッパ中央に位置して回りを囲まれていて大陸国家ランドパワーとして強化していくしかない国もあるんですけど、まぁヨーロッパ全体として見れば、という論になります。


そして、未踏破地域に触手を伸ばす勢力として見ると、大陸国家ランドパワー系は除外できるので、結局、エウローペ文化圏 vs 弧国というまともにぶつかったら話にならない圧倒的劣勢にあるんだぞ、ってとこまで見えてきました。


まぁ普通に考えて、列強連合軍 vs 日本ですからね。日本が文明開化で富国強兵して列強に飲み込まれず列強に滑り込んだだけでも、かなり偉業レベルな出来事だったと思うんですよ。


日本より遥かに大国の清帝国もムガル帝国もオスマン帝国も潰されましたからね。日本はほんと極東の僻地に位置していて、隣が大陸国家ランドパワー系の中国で良かったです。まぁ、21世紀現代となると、中国も強大な海軍力を整備して鼻息が荒くなってきてるので、風向きも変わってきましたけど。


<オスマン帝国>

大航海時代前のオスマン帝国と言えば、ヨーロッパ勢を圧倒する大帝国だった訳で、なんでソレがずるずると遅れを取り続けて第一次世界大戦の敗戦で滅亡しちゃうのか不思議でしたが、調べれば調べるほど、厳しい現実が見えてきて泣けてきました。

……というか、ナショナリズムに目覚めたバルカン半島抱えてます、という時点でもう歴代スルタンが全員、チトー閣下でないと無理でしょ、と思いましたからね、うん。

実際にはそんな奇跡が連発する訳もなく。多様な民族と宗教に対して寛容さを示すことで成立した帝国は、その多様さ故に纏まれず、内乱、分裂、混乱と泥沼ルートに入っていくんですよね。多分、チート級主人公をどの時代でもいいから放り込んで、崩壊を防げ、と言っても無理でしょう。




次パートでは、国力十倍なエウローペ文化圏が、単に国力が大きいだけでなく、優位な点だらけであることを紹介して駄目押ししていきます。ほんと列挙していくと手が付けられないのが理解できるかと思います。


次回の投稿は、二月十一日(日)二十一時五分です。

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