表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
621/769

21-18.芸事系《ユカリ》へのちょっとした提案

前回のあらすじ:二番手は出版系のマリさん。こちらの実情に合わせて貸本業を提案してみました。あちらとの違いとしては、本を執筆できるくらいの知識層である著者達をサービス展開に合わせて囲い込んじゃおう、連合内で所属国同士を競わせて、民度上昇と知識普及を推し進めちゃおうってとこでしょうか。上手くいけば、財閥の慢性的な人材不足も改善できるかもしれません。まぁ気長な話ですけど。(アキ視点)

マリさんからの怒涛の口撃でかなり疲弊したので、ここでも小休憩を挟むことにした。


本って、日本あちらで暮らしているとあちこちに本屋さんがあるから、店内に本棚を置いて並べておけばいい、くらいに考えがちだけど、湿気に弱いけど極度の乾燥にも弱く、虫は大敵、日差しが当たると日焼けしちゃうけど、暗い店内とする訳にもいかず、といった具合に結構、気を遣うところが多いんだよね。しかもこちらでは本は貴重品だ。


日本あちらの感覚で、本屋さんも大型店舗なら地下一階、地上九階のビル全部が本屋なんてとこもあるけど、それを念頭において、フロア全体が本で埋め尽くされたイメージで語ったら、共和国の国立図書館でもそんな規模はない、と窘められた。


マリさんに聞いた感じだと、街中にあるような個人経営の小さな本屋さんくらいの規模でも十分立派らしい。


なら、保管庫に放り込んでおけば本の状態も維持できて良いし、場所の広さが問題なら空間鞄に入れておけばいんじゃないか、と聞いてみたけど、これにはリア姉がわかりやすく突っ込んでくれた。


「保管庫も空間鞄も、日本あちらの蒼狸が持ってるポケットみたいに便利なモノじゃないんだよ。稼働させるのに宝珠に貯めた魔力を使うから、経済性は二の次にしてる代物ってこと。私とアキは魔力共鳴によって、無尽蔵とも言える魔力を使い放題やってるけど、普通ならあり得ない話だからね?」


「それって、例えば日本あちらで言うと、電気が無料で使い放題とか?」


「多分、地球(あちら)でやっていたとかいう大型爆撃機を四六時中、空中待機させてるくらいの話。もしかしたらもっとかもね」


そもそも船舶用宝珠に貯めた膨大な魔力を以てしても召喚術式の発動と維持は数分が限界とか言ってるのに、ずっと維持してるだけでも、常識を投げ捨ててる状態だから、と駄目押しされた。


……そんな訳で、家電製品並みに魔導具が普及してると言っても、その例えは、日本あちらのように家の中が家電製品で埋め尽くされているような様を表現しているのではなく、そこらを見ればちらほら見かける、そんな頻度といったところ、とお姉様方から感覚のズレを注意されてしまった。


見えるモノ全部に何らかの術式が付与されている、なんてのは共和国くらいなモノだ、と。



普通に魔術の訓練をしてても、使った傍から回復していくから、魔力について貴重って意識は乏しかったのは確か。それに陽光から魔力に変換する帆布にしても、探査船団は出発前に全ての船舶用宝珠に魔力を限界まで貯めてから出航するのが常で、航行中に変換する魔力は、魔力推進などで使って目減りした分を補う程度の性能であって、空っぽになった船舶用宝珠を帆布だけで満たそうとしたら数日で終わる話ではない、と。


魔力は少しずつ貯めていざという時に使うモノ、それが常識って話。


これにはお爺ちゃんも大きく頷いていた。


「こちらは魔力が酷く希薄じゃからのぉ。宝珠に魔力を貯めるのは大変じゃろうて。儂らは召喚者との経路(パス)から潤沢に魔力を供給されておるから、妖精界にいる時よりも気軽に魔術を使えておるが。儂らとて妖精界にいる時には魔力の無駄遣いは避けとるよ」


お爺ちゃんの説明によると、こちらより遥かに魔力が濃い妖精界においても、魔力というのは体内にある分を半分も使ったら、一晩ぐっすり眠らないと回復しきらないそうだ。


なら、こちらならどうかというと、ケイティさんの話だと、体内の魔力というのは限界まで使い切るような真似はしないのが基本という点は変わらないそうだ。あまりに減ると心身に不調をきたしてしまう、と。


そんな感じで、小休憩の間も僕の魔力に関する感覚のズレを話のネタにされることになった。





なんか、休んだ気がしないけど、それでも方向性のない雑談は気が紛れたし楽しかったから良しとしよう。


「では、最後は芸事系のユカリさんですね。実はユカリさんが既にご自分で話されていたように、東遷事業が行われるのに合わせて、その作業区域に寄席を立てるなどして、他種族も客層とするよう芸の幅を広げていけばどうか、という話なので、単純な視点でいくとミエさん、マリさんのような規模の急拡大的な話にはなりません」


「そうでしょうね。芸を磨くのにも時間がかかるし、芸に向いた者を見つけるだけでも大変で、誰かに教えられて真似ればできる、というモノでもない」


ユカリさんも、ある程度予想してたようで、淡々と同意してくれた。でも、目がそれだけじゃないんでしょ、と催促してきた。


「ユカリさん達に目指して欲しいのは、幾多の種族が集った時に共に楽しめる芸事、話題とは何か、逆に触れては不味い事、ウケが悪い種族が出てくる事は何か、って部分を明らかにするといった話になります。誰だって下手は打ちたくないし、話についていけない人が出てきては、皆が同席してる場ではやはり問題があります。オマケ的な話で言えば、そうして貯めた成功集と、膨大な量の失敗集は、それだけで値千金、どの種族も金を惜しまず手に入れたい事でしょう」


僕の説明に、ユカリさんも一応同意してくれた。


「例えば曲芸なら、人族には難しい事でも小鬼族には簡単にできてしまうから、驚嘆させようとするのには不向きでしょうね。力自慢も鬼族からすれば子供の遊びにしか見えない。そして、一番のネックは竜族ね。妖精族はまだ群れとしての社会を築いているから、社会を題材にした話題なら共に楽しめる部分もあるでしょう。けれど竜族はそうじゃない。共同で何かする事もないし、貨幣の運用もないから、金の貸し借りもない。料理もしないのだから、噺家は何を語ればいいか頭を抱えてしまうわ」


ユカリさんがお手上げ、と嘆いた。だけど、その次があるんでしょ、と目が楽しそう。


「日常のちょっとした出来事、悩み、小狡いやり取り、契約、お金、食事、そんな事の殆どで竜族は理解はしても共感する部分がないですからね。確かに噺家さんは大変でしょう。個人的な話なら共感できる部分もあるでしょうけど、それをネタとして取り上げて面白くできるか、というとやっぱりかなり難度が高そうです」


「手品の類も竜眼は論外としても、視線誘導も体格差があるせいで厳しいかもしれないわ」


ここでいう視線誘導というのは、観客の気を引くように派手に右手を動かして、その隙に視線の外れた左手で種を仕込む、みたいな話だね。


「大勢の観客を入れて、後席の人から眺めるような感じになるので、近い距離で技を披露する時よりも、確かに工夫が必要でしょう。幻術併用みたいな芸も駄目ですね。お爺ちゃんが鳥の幻影を纏って見せた際にも、近い距離では幻影を見破られてました」


近い距離なら死角に入る状況でも、離れた位置から見ると全体が見える事になって死角に隠れてない、ってことになりかねないからね。そういう時は手を交差して強制的に見えない部分を作るとか、自然な動作の中に指技を混ぜることで、大きな腕の動きは終えても指の動きは見落としてしまう、といった工夫をしていく感じになる。


そもそも竜族がどれくらいの時間分解能で世界を観ているのかも、詳しく調べられてないからね。


「大勢が集まる場で妖精族やロングヒルの吹奏楽団が演奏した音楽は好評だったと聞いているわ。だから、演劇や小噺よりは歌や演奏のような芸の方がまだ共感は得られるわね。竜族に楽器を演奏する文化はなくても、子守歌を聞かせる文化はある。そこまでは私も想像できるわ。ではアキは他に何が良いと思えるかしら?」


さぁ、教えて、と楽しそうに微笑んでくれた。ミエさんやマリさんと違って、抵抗感なく素直に感じられるところは雰囲気作りが上手いなぁ。というか僕向けに良い塩梅を自然と見定めてる感じだ。


「竜族は僕達との交流が増えた事で、これまでは大雑把な季節と時間の中で過ごしていた生き方を、カレンダーと時計がある生き方に変えることになりました。それにまだ暫く先ですが、様々な出来事を文字に記し、書物も読むようになるでしょう。そこで僕が竜族に今はなく、これから発展するだろう文化として、短歌を推したいと思います」


僕の提案に、ユカリさんは目を輝かせた。ん、驚かせることに成功したっぽい。


日本あちらの文化で、日々の暮らしの中で感じた事などを簡潔な短文で表現するモノだったわね。文字数の制限や季語の類は言語に依存するから、確か、日本語以外の場合は、そういった部分はあまり拘らない、だったかしら」


 ほぉ。


「流石、ユカリさん、御詳しいですね。その通りで、短歌は短い言葉に必ずふと思い浮かんだ気持ち、感情のような感性に触れる意味が含まれます。そして読んだ歌は、他の人が目にすることで、その感性を共有し、共感することになります。大勢集めて寄席で披露するような事ではありませんけど、竜達がそれぞれ読んだ短歌を持ち寄って文に記し、良いモノを選び、残すといった催しをするのは、結構楽しんで貰えるんじゃないかと思うんですよ。ユカリさんも彼らがどんな歌を詠むか、興味ありません? きっと僕達とは着眼点や感じ方も随分違うでしょうね」


季語とかも天候や雲、霧のような内容が増えるかもしれないし、森や山と言ったように大きな枠で物事を捉えるかもしれない、と思いついたことを口にしてみたら、ユカリさんもそれは良さそうだ、と同意してくれた。


「漫然と生きていたこれまでと、小さな変化に気を配る地の種族の目線に合わせるからこそ生まれる新しい生き方、そうした差を詠むのも楽しそうね。発した言葉が文字で残ることを嘆いたりするかも?」


クスっと笑う様がとってもカワイイ。あれ? 昨日とぱっと見の姿は変わらないのに、何でかな、派手さが抑えられて、知的な雰囲気と落ち着きが感じられて受ける印象がまるで違って……。


 ま、不味いかも。なんか、弱点がバレたっぽい。


っと、リア姉が助けに入ってくれた。


「はいはい、アキをそう揶揄わないで。本職にかかったらコロッといっちゃうんだから」


「そうね、面白いけれど自重しておきましょうか」


そう言って、少しだけ名残惜しいって眼差しに僕が気付いたのを確認してから、温和な雰囲気に戻ってくれた。触れたかどうかってところでヒラリと手から零れたような意識が残る。


 ま、不味い。


横目でケイティさんを見ると、フォローはしませんよ、と目線で拒否られた。



 ぐぅ。


あ、そう言えば、今日はケイティさんも魔術を使って匂いを隔離してないけど、香水の匂いは感じないや。


「無香の化粧に変えてきてるわ。その方が話に集中できるでしょう?」


これで好感度アップね、などとユカリさんは微笑んだ。


昨日とはまるで別人のように、というか演技をしてる印象を一切感じさせずに、自然に振舞いを変えてくる様がなんか、心地よいけど背筋が寒くなるような微かな怖さがある。するりと内に入られたような、それでいて拒む意識が出てこない程よい踏み込み加減。


「……あの、もしかしてユカリさんのところの方々って、皆さん、そうした振舞いが板についてるんですか?」


このままだとズルズルと調子が狂い続けちゃうから、敢えてストレートに聞いてみた。


「リアも睨んでるからこれくらいにしておきましょうか。その問いへの答えはその通りとも言えるし、そうではない、とも言えるわね。はぐらかしているのではなくてよ? 接待する場は真剣勝負。客の感情は日によっても違うし、話題一つでも急変するから、そうした部分を読んで、穏便に進めるのは誰でも身に付いているところ。そして違う、というのは私の昨日と今日の振舞いの差ね。普段はこんなにわかりやすく変えない。気付かせるように振る舞ったのは私からの好意と取ってくれると嬉しいわ」


などと、ユカリさんは種明かしをしてくれた。


 うん。


いやぁ、プロは怖いや。ミア姉みたいに一つの方向性で完全に固めた人物像と違って、敢えて一所に留まらない千変万化といった芸風ってとこかもしれない。


はっきり言えることは、僕みたいな人生経験の少ない子供じゃ、簡単に手玉に取られるのは確実ってこと。


っと、ケイティさんが一応フォローをしてくれる。


「ユカリ様のような方はそうそういる訳ではありませんよ。ただ、アキ様のお姉さん好きはあちこちにバレているので、少し気を引き締められても良いでしょう。女は化けるんです」


そうですね、としか言いようのない状況に追い込まれた僕の様子がよほど面白かったのか、お姉様方がケラケラと笑って、話が進まないからそろそろ本題に戻りましょう、と仕切り直してくれた。





ユカリさんは、物凄く多面的で厚みのある人物像を持った宝石のような人だ、と思い知らされた。ほんの僅か角度を変えるだけで輝きが変わり、でも全体としての印象は変わらない、そうして臨機応変に受け流し、滑り込み、誘い、誘われたふりをして踏み込んで、とひらひらと舞う蝶のように、見えているのに捉えきれない、そんな人。


初手から、僕の好みに合わせて出会ってたなら、まったく疑問に思うことなく、そういうお姉さんだと信じてただろう、そう確信できた……いや、させられた。


 つまり。


それが好意、って事だ。敢えて手札を晒しました、誠実でしょ、と。


実のところ、晒したといいつつ、それが何の意味もないってところがまた怖い。



 ふぅ。



取り敢えず、プロの凄技を体験できたことを喜んで、本題に戻るとしよう。


「話をちょっと竜族から妖精族に移すと、妖精族の皆さんも農業をしていないと話していたので、季節に対する視線が、僕達、地の種族とは結構違ってると思うんですよね。決まった時期に集団で共同作業をする農業的な目線は少ないかな、と。その代わり、小さな体格と軽快に飛び回る様からして、環境の変化にはかなり敏感で、その変化に対してその場で皆が一斉に対処する、そんな部分は僕達よりよほど鋭いでしょう。お爺ちゃん、どう?」


「そうじゃのぉ。儂らの場合、毛虫一匹でも、気にせんと不味い奴もおる。一匹見つけたら三十匹はいると思え、と言ったように、皆で虱潰しに探査して駆除する事は多い。そういう意味ではアキの言うように、そうした変化を見て、もうそんな時期か、と感じるところはあるじゃろう」


地の種族との違いは目線だろう、とも教えてくれた。僕達は竹林でほんの僅か落ち葉を押し上げた若竹の成長を見つけて掘り起こして、タケノコ料理を楽しんだりするけど、妖精族は地を上から見下ろすことはあっても、触れるような近い距離まで降りることは先ず無いそうだ。いくら魔術を瞬間発動できる妖精族でも、至近距離で不意を突かれたら間に合わない、だから危うきには近寄らないのだ、と。


「空を飛ぶと言っても雲に近い高空から地上を見下ろす竜達に対して、お爺ちゃん達は植込みの上とか、木々の隙間から眺める感じだから、地の種族とも違う独特の視点があるね。今のは一例ですけど、こうして話をしていても理解できる部分、共感できる部分にはかなりの差異がありそうだとわかります。同時に、これまでに無かった文化に触れることで、新たな気付きもあるでしょう」


「うむ。儂らでも先ほど話にあった短歌であれば、気軽に参加できそうじゃ」


ユカリさんは、僕達の言葉を受けて合点がいった、と頷いてくれた。


「アキが私達に求めるのは、今、芸事として商売になる範囲だけに囚われず、広く、深く、果敢に多様な種族の間にある違い、そして共通点を探求して行って欲しい、そしてその熱意を三大勢力の芸事に携わる人々にも伝播させて、弧状列島全体で芸事を盛り上げて行って欲しい、ということなのね」


 見事。


「補足することはもうない、というくらい完璧です。ぶすっと睨み合ってるままじゃ仲良くなれません。でも交流を重ねて行けば衝突することもあるでしょう。でも、そうした諍いに怯むことなく貪欲に可能性を探って欲しいんです。そうした積み重ねによって、多様な種族は違いを認め、尊重し、そして共感できる事もあると知ることで、一体感が生まれていきます。理詰めで利があるから同じ国の民になる、確かにそれも必要でしょう。でももっと緩く、互いに隣人として認め合い、手を差し伸べる。そんな身近な部分があればもっと素敵ですよね」


という訳で、ユカリさん、この弧状列島全体に祭りの熱気を伝え広めてくださいね、と締め括ったんだけど、前二人と同様、ユカリさんも悩ましい胸の内を明かしてくれた。


「とっても夢があって、開拓していける分野も広く深くて遣り甲斐もありそう。それに交流の場としてはここロングヒルと、東遷事業の対象地域もある。毎日、異国の地で限られた場で仕事だけしていては息も詰まってしまうからこそ、芸事を求める声は大きい。ほんと、素敵だわ。そして、新たなところに踏み込めば、不味いところに足を乗せてしまうかもしれない。そこを上手く切り抜けて、って言うのは簡単でも、やる方は大変よ。当たり障りのない事をしていて金が貰えるほど甘くはないのだから」


 うん。


「なので上手く匙加減を見極めて、多様な種族への薬、或いは御馳走へと変えてください」


「簡単に言ってくれるわ。でもアキは私に期待してくれるのでしょう?」


 うぐぅ。


そこで、ころっと柔らかい表情で、敢えてわかってることを問い掛けてくるのは反則だよぉ。


「はい、期待してます、とっても。ミエさん、マリさんは書を媒介として大勢に広める方向から、ユカリさんは感性、感覚的な方向から市民同士の交流を深めていくことで、きっとそれぞれ単独でやるより、大きな効果が期待できると思います。……これで今日の内向きの話はここまでです」


そう告げると、お姉様方の表情が引き締まった。


「内向き?」


「はい。皆さんにそれぞれお伝えした提案は、どれも弧状列島の国内向けのお話でした。話としては統一国家樹立に繋がる内容です。明日はそれらができたと仮定して、なら、そうして組み上がった統一国家は、多くがまだ未探査なこの惑星ほしで、どう振る舞っていくべきなのか。そんな外向けの話をしたいと思ってます。お姉様方は、今お持ちの手札が大札に育ったとして、皆が持つ大札を持ち寄って、少し先の未来、この世界儀の不明部分が全て既知になる頃までについて念頭に考えてみましょう。僕の提案に無い内容ならそれはそれで話が膨らみますし、同じ内容でも視点が違えばアプローチも変わってくるでしょう。そして明日は、国を動かすもう一つの車輪である為政者として、ヤスケ御爺様にも参加して貰って未来を語り合う、そんなところです」


僕の言葉に、ミエさんが三人を代表して質問を切り出してくる。


「アキ、それは私達だけで考えてみろ、って話かい?」


「それはお好きな方で。ただ、思ったより秘匿部分が多いようなので、皆さんの手札部分について思いを巡らせるにしても、ヤスケさんがいた方がより建設的な議論になる気はします」


教師モードのヤスケさんを引っ張り出せたなら、議論は成功でしょうね、と伝えたら、三人揃って勘弁してぇ、とシオシオな表情になったのが何ともおかしかった。



そんな訳で、思ったより時間がかかったけれど、三者三様、面白い話もできたし、十分に種は蒔けたと思う。お姉様方も、楽しい時間だったと言って笑顔で去っていった。大使館に場を移して相談する、と言ってたから、あの分だと嫌そうではあるけどヤスケさんも交えて、宿題に取り組んでくれそうだ。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


お姉様方、芸事系に携わっているユカリで先ずは内向き提案は締めとなりました。

芸事系はほんと多種族相手で、社会性もここまで差があるとかなりの難事でしょうね。理解で留まるのではなく共感まで引き出さなくちゃいけない。ユカリも認めてるように、三人の中では一番手古摺ることになり、ラジオやテレビといった不特定多数相手の情報発信手段もこちらには無いので、地道な草の根運動を続けてく感じになります。


ユカリはコミュニケーション特化の専門家なので、アキも随分と翻弄されることになりました。初日の印象が「ミア姉、友人くらい選ぼうよ」だったのに二日目は「楽しいお姉さんだけど、コレはヤバい」ですからね。それにアキに合わせて話ができる知的な部分も兼ね備えてる訳ですから、アキからすれば、やりにくい相手というか、喜んでやられてしまう相手といったとこかもしれません。


ただ、ユカリの側からすればどうかと言えば、今回の件はちょっとしたお遊び、隠し芸を見せた程度の話で、アキを手玉に取ってその力を利用しよう、みたいな話は微塵も抱いてません。その辺りも第三者視点のSSで補足しておきますね。アキが転がされて、見事な手際でした、と喜んでる間はまだいいでしょうけど、コレは無いかなぁ、みたいに筋違いな話を通したのが後で露見したならどうなるかというと……。


まぁ、多分、そこに行く前に、アキの大勢の保護者達が手は回すでしょうけどね。それを為しうるのと、為してしまった、実績あります、では天地の差がありますから。


あと、そもそもそんな風にしてまでユカリに得がある話が無い、って話もあります。


手品の話と時間分解能については、猫にとっては人間用テレビはパラパラ漫画レベルで動いてるように見えない、とか言われるくらいですし、早技で目にも止まらぬ芸を見せてるつもりが、ぜんぶ普通に見えてます、なんて事もありそうで、手品師からすると悩ましい話です。まぁ、手品も随分とレベルが上がって、スロー再生しても何やってるのか全然わからない、みたいな魔法使いみたいな方々もいるので、他種族との交流を通じて、本作における手品師達の芸も磨かれていく事になるでしょう。楽しみですね。


次パートは一回中休み、三者三様に提案をした事について、家族(アヤ、リア)、サポートメンバー達と軽い振り返りをします。何気に影響出まくりな話をしちゃってるので、彼らも状況を整理しておきたいでしょうから。


……多分、これで翌日、ヤスケも交えて、外向けの話をしたら21章は終わりになりそうです。思った以上にボリュームがありました。伏竜の調略も内容が多岐でボリューミーですからね。それを入れると40パート突破とかになりそうなので、分けた方が良いでしょう。

3章=1冊相当、ちょうど7冊目でもありますからね。22章は8冊目冒頭、伏竜さんいらっしゃい大歓迎です、ってとこからスタート、と。


次回の投稿は、一月十七日(水)二十一時五分です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ