21-17.出版系《マリ》へのちょっとした提案
前回のあらすじ:初手は報道系ということで、ミエさんに情報発信、こちらだと新聞がメインとなる分野について、共和国という小さな範囲から、三大勢力と手を組んで弧状列島全体の報道を連携していこうという提案をしてみました。情報が入ってこない他地域の事なんて、興味が湧かないですからね。
逆に言えば、自国のようにばんばん他勢力の情報が入ってくるようになれば、身近にもなってくるということです。市民の意識がこれで代わっていってくれるといいですね。(アキ視点)
<お知らせ>
ユカリへの説明が次パートにズレて前中後編から溢れてしまったので、21-15、21-16のタイトルを変更しました。
散々弄られた後は、小休憩を挟んで浮ついた雰囲気を落ち着かせてから再スタート。
次は、んー、書籍関連のマリさんにしよう。
「それでは、次は出版関連のマリさんにしましょう。活動範囲は共和国だけではなく、人類連合も含めているということで、その規模は大きいと考えて良いでしょうか? それとも書籍の原料となる木材の供給上限もあって、書籍は高級品といった扱いに留まっている感じですか?」
「概ね、その通りね。それと再生紙を利用して価格を抑えた書籍もあって、そちらもそれなりに人気は博しているわ」
ふむ。
「不要になった書籍を買い取って再販する、といった中古販売は手掛けてます?」
「してるわよ。買い取った後は綺麗に清掃して傷んだ部分を修繕してから販売してることもあって、それなりの商いにもなってるの」
いいね。
「本もそうして新たな読み手に届けられるのは、本棚の飾りとなって余生を送るよりも幸せでしょう。では、貸本業は?」
「うちは手掛けてないけれど、連合のいくつかの国で商売してた事はあるわ。今、しているところはないわね」
おや。
「書籍が高額で購入までは手が届かないとしても、貸本代なら払える、という層はそれなりにいそうですけど、なぜ商売は失敗したんでしょう?」
「本が傷む、紛失する、新本が売れなくなる、多くの読み手に応えるだけの蔵書を揃える資金力がなく、乏しい蔵書数のため飽きられた、といったところ」
ほぉ。
「新本が売れなくなると困る、と圧力を掛けて潰した、とかではなく?」
「そんな事はしなかったわ。する前に潰れたのよね」
なるほど。
「マリさんとしては、もし商売になるようなら参入も検討されていたってとこですか?」
「そうね。一応、検討はしたわ。ただ、結局、採算が取れないだろう、とお蔵入りになったの」
ほぉ。
その気があって検討までしていた、とは好都合だ。ある程度、話を端折れるのもいいね。
っと、お爺ちゃんがふわりと割り込んできた。
「アキ、どうしてそのように嬉しそうなんじゃ? アキが提案しようと考えておったのは貸本業じゃろう?」
おやおや、お爺ちゃん、商売っ気がないなぁ。
「その通りだけど、お爺ちゃん。マリさんが検討されていたのは一年以上前、つまり三大勢力が互いに争い、共和国はその様子を一歩退いたところから眺めていた、そんな時代だよ。その時と今は違うからね。以前は採算割れしてた事業だって、環境が変われば大きく伸びる競争相手が少ない場所だよ」
もっとお金の匂いに敏感にならないと、と揶揄うと、お爺ちゃんも、それなら話を聞こう、と興味を持ってくれた。
◇
「アキの私への提案は貸本業なのね。なら大筋は私達は理解できているから、概要は翁に説明してくれればいいわ」
ん。
「ではお爺ちゃん。普通の出版なら本を作って販売して利益を得るよね」
「うむ。売れんと在庫を抱えて大変じゃ」
こちらの世界の事について執筆していたというくらいだから、出版絡みの話は理解済、と。なら話は早い。
「貸本業は、一定期間、例えば二泊三日で貸し出して、期間が終われば返却して貰う。貸本屋さんは本が貸せないくらい擦れてしまうまで、何十回と貸せるから、本来の価格よりずっと安く貸し出せる。勿論、管理の手間はかかるけれど、売って終わりの新本販売と違って、同じ本が何十回、何百回と貸し出すことで、結果として利益がたくさん増えるよ、って商売なんだ。勿論、人気がない本を沢山並べたら、回転率が悪くて採算割れするし、人気がある本なのに数が揃ってないと、いつ見ても貸出中となってお客さんが不満に思う、なんてことにもなるから、貸本業ならではの難しいところもあるけどね」
そう話すと、お爺ちゃんもだいぶイメージできたようだ。
「何回も読んで貰える愛読本になる事もあるが、あらかたの本は一度読んだら、本棚に入れておくだけじゃからのぉ。たまに友人達が興味を持てば貸し出す程度じゃから、確かに本にとっても、大勢に読んで貰えるのは嬉しい話じゃろう。じゃが、著者は儲からんのではないか?」
「そこは、貸出し一回につきいくらみたいに、著者に貸本屋さんから支払う仕組みを設ければ問題ないよ。誰に何を貸したか管理してるんだから、どの著者にいくら支払えばいいか計算するのは簡単でしょう? そうして著者にも貸本業は儲かる、と思わせるところがミソなんだ」
「ほぉ。そいつはいいのぉ。新本はやはり高額じゃからな。それに本棚の空きと相談して買う者も多い。家の中が本棚だらけになる前に、嫁から、どうせ読まないのだから邪魔、と処分を迫られるのも定番じゃ」
その点、貸本なら本棚を圧迫せんからのぉ、とお爺ちゃんも嬉しそうだ。
「蔵書は陰干ししたり、とちゃんと管理するのは結構手間だからね。その点、しっかりした貸本屋さんなら、本は綺麗な状態で管理されてて、そうした手間はお店が肩代わりしてくれているとも言える。品揃えが良くて安価なら利用したい人は増える下地はあるんだ」
などと説明したら、マリさんが手をあげた。
「やけに具体的に話すけれど、日本では貸本業がそれほど栄えているのかしら?」
「そうですね。毎月何百冊と新本が出ますし、漫画でシリーズが続いていると何十冊とかになったりしますから。そうしたシリーズ本を纏めて借りて、一日中読んで、その世界に浸る、なんてのもよく聞く話です」
まぁ、日本だと紙書籍をそうして貸す業態は随分縮小して、デジタル書籍のレンタルや販売に移行してるけどね。宅配サービスと連携して、運ぶ手間を省くってのもニーズはあるけど、やっぱり面倒だから、スマホ一つでどこでも読めるという利便性を求める層は多いんだろう。
ただ、こちらにはネットはないし、スマホもないからね。それらの説明は余計だから削る。
マリさんの頭の中では素早く算盤が弾かれたようだ。シリーズ本で何十冊も纏めて貸し出せるなら、多少割引したって十分採算は合う。シリーズを追いかけて最新だけ借りて読む層もいるだろうし、そうして最初から通して読む、なんて層もいるだろう。完結した作品なら、それこそちまちま借りず纏めてどーんと読んで、さっと返却する、というのもスマートな利用だろう。
「どれだけ豊かな蔵書を的確に揃えられるかが鍵、ということね。でも懐が寒ければいくら、それらを揃えても客は借りてくれないわ」
初期投資が膨大、しかも適宜、新しく入れ替えないと客は飽きる。採算ラインに乗せる難しさも見えてるようで大変好ましい。
「そこがポイントなんです。去年までなら商売にならなかった。でも今なら、そしてこれからなら商売になる。しかも、太く大きく育つ余地があります」
そうヒントを出すと、マリさんもすぐ答えに辿り着いてくれた。
「昨年までは戦時でそちらへの予算が優先されていたから、書籍に回せる資金は乏しかった。けれど、全勢力が戦いを回避する同盟を結んだ今なら、状況は逆転しうる。戦のない時代に必要なのは知識、情報。……そういうことね」
耳障りの良い声なんだけど、こう、なんか、絡みついてくるような独特の雰囲気があって、ちょっと怖い。妖艶って奴かもしれない。もうちょっと爽やかな感じがいいなぁ。
あ、なんか笑われた。
「えっと、そういうことです。今すぐに、とはなりませんが、間違いなく戦への用立ては減っていき、余った資金は国内産業の育成に、そしてその礎となる知識を得ることに回されることになります。これはチャンス、それも大きなチャンスです。新本を売って終わり、不要な本を回収して再販も悪くはありませんが、原材料に縛りがある以上、沢山刷って販売冊数を増やすというのは現実的ではありません。それよりは読者数を増やし、読まれる延べ回数を大きく増やしましょう。それと、蔵書の件は、財閥と組めば解決できますよ」
「財閥の物流網と連携して、各地の貸本屋を繋ぐのね?」
いいね。というか頭の回転が早いなぁ。
「です、です。その店舗にない本も、他から取り寄せられますよ、という仕組みにすれば、小さい店舗でも、その蔵書数はビル一つ全部貸本屋、というような大型店並みってことになります。それに財閥の物流網は空間鞄を使って運搬してるのだから、その中は常に空きスペースがそれなりにあるでしょう。年間契約で全国レベルの取引を前提とするなら、財閥もお値段は勉強してくれます」
何もなくても、手紙を送り届けるだけでも都市間を空間鞄を持った運搬人の方々は移動してる。そこに相乗りするだけなのだから、財閥としては嬉しい商いだろう。
「それなら、蔵書を紹介する目録が欲しいわね。いっそ、本を紹介する本があってもいいかしら」
おー。
「それは良いアイデアです。日本でも多過ぎる出版数を客も把握しきれないので、売れ筋ランキングとか、お勧め書籍百点みたいな感じで、紹介の手助けをしてます。あと、人気シリーズ本なら、新冊の販売はいつ、みたいな広告も出してます。客が自然と貸本屋に足を運ぶよう促す工夫、他にも色々と思いつくでしょう?」
「例えば?」
「蔵書を揃えた店舗と併設してカフェを開いて、一時間いくらとかで本を読める、なんてサービスはどうでしょう? カフェから外に持ち出されずすぐ返却されるので回転率は良いし、カフェで飲食物も提供できるので、店内を居心地よくすれば、落ち着いて読書に専念できる事に価値を見出す層も出てくるでしょうね。あと、街エルフの方々は皆さん、人形遣いなので女中人形がいることを当たり前に思ってますけど、一般庶民からすれば、それは手に入らないお金持ち文化です。時間制限付きとはいえ、街エルフの高品質なカフェを、好きな本と共に味わえるとなれば、リピーターは増えると思いますよ」
居心地のよい静かで読書に専念できる、メイドさんや執事のいる、そんなカフェ。それなら身なりもそれなりに整えてから来店するだろうから、本も丁寧に扱われる可能性が高いし、紛失もほぼ防げる。そこまで話してもいまいちお姉様方はピンとこなかったようだけど、交流祭りで街エルフが出店していた喫茶店は、人数制限あり、騒ぎと無縁といった独自性を打ち出してて、回転率もそう良くはなかったけど、常に利用客で満員になっていた件を話すと、他種族にとってはそれも一つの催し、楽しみなのだ、と理解して貰えた。
ふぅ。
こういうところで、庶民感覚とのズレがやっぱあるよね。資産階級ってこういう感じなんだろうか。
「著者も売れるかどうかわからない書籍なら、始めは数を抑えて貸本主体で出すのも悪くない選択だわ。人気が出れば、新本もある程度、需要を正しく見越して刷れるし、蔵書としたい層相手なら、愛蔵本ということで装丁を立派にしたモノにしてもいいわね」
「そう、そう、いい感じです。貸本業と言いましたけど、事業の本質としては潜在的に存在している多くの著者の囲い込みと、読まれる延べ回数を劇的に増やすことによる市民の知的水準向上、それと勢力間の相互理解を進める事、それが目指すところです。ミエさんに話した件と同様、この件も帝国、連邦をしっかり巻き込んでくださいね? 今まで互いに知らなかった文化圏となれば、興味を持つ読者層はかなり期待できます。そしてマリさんの推進する貸本業の全国規模のチェーン店こそが、品揃えの量、質、早さ、抱えている著者数の全てで他を圧倒して、大きくこの業界を育てていくんです。どうです? 育てがいがある大札でしょう?」
そう畳み掛けると、マリさんはメモを取りながら、疑問を口にした。
「貸本屋の全てが財閥の物流網で繋がり、規模と質と早さ、それに著者の囲い込みをするところまではイメージできたわ。帝国領、連邦領への出店も、連合内で大成功すれば、形態はどうあれ、進めることもできるでしょうね。ただ、市民の知的水準向上、だったかしら。そこが漠然としてるわ。アキはどういったところを目指したいのかしら? 具体的なイメージがあるようだから話してみて」
ん。
「これはミエさんへの提案と被るところもあるんですけど、今、所属している共和国、連合、連邦、帝国といった枠組みではなく、母国と言われた時に、弧状列島全体をイメージして欲しいんですよね。いつ解禁するかはヤスケ御爺様達と要相談ですけど、弧状列島全図が当たり前のように人々の目に止まり、自分達の住む地域がその中のどこなのかイメージできて、弧状列島自体も、この惑星からすれば、とても小さな島国に過ぎない、そう誰もがイメージできる、まずはそこが目標でしょうか。統一政府の為政者達は世界を睨んだ施策を打ち出していくことも増えるでしょう。その時に、なんの話をしているのか、話についていけないようでは困ります。為政者の話した内容をせめて概要だけでも理解できる程度には、全体の知的水準を押し上げていって欲しい。まぁ、そんなところです」
読む本の数がこれまでの五倍、十倍と増えて、それらから得た知識を市民同士が共有するようになれば、その辺りまでならすぐですよ、と話したんだけど、マリさんもまた、嬉しさ半分、渋さ半分といった表情を浮かべた。
「……本当、アキの言葉は猛毒ね。知への欲求は増える、それを支える財源も増える、貸本業のネックになる客の要望に耐えうる膨大な蔵書を抱えるリスクも、財閥と手を組めば解決できる。やれてしまいそうに思えてきてしまうから怖いわ」
「でもこの大札、育てるなら自分の手でやりたいでしょう?」
「当然ね。ここで前に踏み込めないなら、商売なんてやってられないわ」
ん、良い表情だ。それに金を稼ぐのが第一目的じゃない、でも目的を叶え、なおかつ、その枠組みを存続させ続けることこそ、商売人の目指すところ、という強い意識も垣間見えた。素敵だ。
まぁ、ついでだから、要望も話しておこう。
「どうせなら、船乗りや探索者になって未知に挑む冒険活劇みたいな書籍も売り出してくれると嬉しいですね。今後は海外への活動規模も増えるから、新規参入者はいくらでも欲しくなるでしょう? 現実は色々と厳しいところもあるにせよ、子ども達が夢をもって、将来の職業の一つにそれらを思い描ける手助けはあってもいいと思うんですよ」
「あら、それなら竜神子業を楽しく語るエッセイなんてのも欲しそうね?」
あぁ、確かに。
「新しい職業ですからね。今年、竜神子になった人数も五十人に満たない訳ですから、残りをとりあえず三万人とすると、船乗りや探索者より熱心に募集すべきかも。希望者への門戸は広く開かれてますよ、と。学歴不問、未経験者歓迎、福利厚生充実、資格取得費用全額支給、アットホームな職場です、学びながら給与も貰えます、洗礼の儀に回数制限はありません、とか宣伝しましょう」
竜神子になったら専属のサポートメンバー達から手厚い支援も受けられるので安心ですよ、とかとか。なんて感じに語ったら、お姉様方から物凄く胡散臭い眼差しを向けられてしまった。
一応、三人を代表してマリさんが何故か教えてくれる。
「……アキ、それは社員を使い捨てにするブラック企業の定番文句よ。言ってることがそう間違ってないとこはあっても、語ってない部分が多過ぎでしょ」
「例えば、天空竜と楽しく遊べますとか、仲良くなれば一緒に空を飛べますよ、とか?」
「それ、普通は推し文句じゃないわ」
などと、ばっさり断言されてしまった。酷い。
まぁ、それから後は、まぁオマケ程度の話だけど、貸本業を成立させられるには治安がよく民度が高い事が必須条件になるから、手始めに連合から店舗を展開していくなら、対象国についてはニコラスさんと一緒に決めた方がいいだろう、とも伝えた。
貸本業によって急速に市民層の知識レベルが高まれば、貸本サービスが提供されている国、地域と、それが無い地域の差は急激に開いていくのは火を見るよりも明らか。なら、その差配は為政者のニコラスさんにお任せした方が上手くやってくれるだろうし、サービスの利が見えてくれば、他の地域でも、ぜひうちの国にも、と熱意が高まっていくよ、と。
そうすれば、連合内の治安レベル、知的レベルを同時に引き上げられることにも繋がって一石二鳥、その成功事例を先行の数カ国程度でも示せれば、間違いなく連邦、帝国も食いついてくるから、そこでそれぞれの共同事業者を上手く見つけていきましょう、って感じに煽ってみた。連邦ならレイゼン様、帝国ならユリウス様に差配して貰えば、返却遅延とか、本が傷付くような話も事故みたいなどうしようもない例を除けば、防げるだろうから、ってね。
あと、連邦、帝国の領内に活動を広げる前に、東遷事業地域に貸本サービスを展開して、そのサービスを小鬼族や鬼族も利用できるように間口を広げて、その便利さ、合理性を体験して貰うのが良いでしょう、ともアピールしてみる。実際、使って貰わないと違う種族の好みなんて理解しきれないから、先ずは小さく始めてみましょう、と話したんだけど。
……どこが小さい話なのっ、となんか燃料を放り込んでしまったのか、マリさんが怒涛の口撃を始めて、ひたすら相槌を打って理解してる、話を聞いてます、とアピールして暴風が収まるのを待つことになった。良さげな提案だと思ったんだけどなぁ、とちらりと横目でお爺ちゃんを見たら、自業自得じゃ諦めろ、と目線で諭されることになった。
いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
お姉様方、その二番手は出版系に携わっているマリになりました。
本編でも語ってるように、こちらでは生活圏の半分を竜族の縄張りが占有してる関係で、どうしても木材生産量が少ない問題は解消しにくいんですよね。なので、日本のように膨大な量の新本を出版しまくるような真似は無理。というか日本だって出版物用の木材は殆どが輸入品ですからね。国産品だけで賄えとか言ったら本の価格は倍増、出版量も一割以下に落ちるでしょう。電子書籍普及によって紙書籍の販売数が減ってきているのは、環境問題的には良いことです。
という訳で貸本業を提案することになりました。日本で戦後の日本で貧しい時代、貸本業が増え、そして淘汰されたのは、貸本業から著者への金の流れが無かったから、というのは大きな理由だったかと思います。豊かになって新本を買えるようになっていった、というのもありますけど。
アキの提案は、貸本業という形態ではありますけど、その内容は平成時代のソレであり、著者も巻き込む大掛かりなモノなので、一度先手を打たれると後発組はかなりの劣勢を強いられることでしょう。話を聞いた代表達(ニコラス、ユリウス、レイゼン)は、きっと誰が仕掛け人かすぐ思い当たることでしょうね。ご愁傷様です。
まぁ、アキも「最初は小さく」と言って、東遷事業の工事範囲に店舗を出しましょうか、などと言って、規模感のズレっぷりをマリから叱られて散々説教されることになりました。たまには良い薬でしょう。アキからすれば、せいぜい十万人規模、なら貸本の店舗も十前後あればいいかな、くらいのイメージなので、日本なら大した話じゃないんですけどね。こちらだと一触即発の敵地と言って良い地域、それも多様な種族が共同作業するという前代未聞の試みの中ですから、まぁ、マリががっつり言い聞かせる気になったのも無理はありません。
次パートで芸事系のユカリに提案をすれば、これで内向きの話は終わりです。
次回の投稿は、一月十四日(日)二十一時五分です。
<補足>
貸本業や図書館だと、2023年時点では、紫外線照射による殺菌がデフォですけど、アキの知識は2017年、世界を超えた時点で止まってるので、2019年からの新型コロナ騒ぎの話は知りません。なのでそこについては割愛しました。