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3-14.耐弾障壁習得祝賀会[前編]

前話のあらすじ:ベリル(女中人形の一人)がジョージ(護衛)の考えた話を執筆してみることになりました。それと翁(妖精)が耐弾障壁を習得することができました。結構、日数がかかってますが、頑張ったのは翁の友人達(妖精)。もちろん、翁の人徳とサイコロがあればこそです。


防竜林の一区画に、白いテーブルクロスで飾られた机と椅子のセットが沢山置かれていて、宴会場と言った雰囲気に様変わりしている。各テーブルには、中央のバスケットに焼き立てのパンがたっぷり置かれていて、椅子の前には小皿毎に異なる料理が盛り付けられていて、一人分ずつ豪華なランチセットが用意されていた。ワインの瓶も沢山並べられていて、曇り一つないグラスも並べられていて綺麗だ。


給仕しているのは、ベリルさん達、女中人形の皆さんだけど、いつもと違いフリルがついて明るい色合いの華やかなメイド服を着ていて、見ているだけで眼福だ。


それにしても、組織説明で話は聞いていたけど、配膳しているだけでも十人以上、仮設されたキッチンで料理を黙々と作っている裏方のメイドさん達も含めたら二十人近くいたりする。キッチンで料理を盛り付けるメイド達への指示をしているのはアイリーンさんだ。

シャンタールさんは会場の飾りつけを指揮していた。短い時間で華やかな雰囲気に変わっていくのが凄い。


座る席は決められているようで、ドワーフの人達が座るテーブルは、用意されている料理もお酒の量も半端無い。あれなら大食漢だとしても問題なさそうだ。


日差しも穏やかで風の流れも微風程度と快適そのもの。防竜林の四隅に見たことのない杖が設置されていて、空をよく見ると、障壁の展開を示す淡い虹色の膜が見えるから、この快適な状態は魔導具のおかげなのだろう。流石、異世界。地球でもあれば、便利だろうけど、同じ事を科学で実現するのは当分先だろう。残念だ。


もう席には半分くらいは人で埋まっている。


「アキ、こっちだ」


リア姉が呼んだテーブルは4人掛けで、家族席のようだ。父さん、母さん、それとリア姉が既に座っていた。


「随分、大掛かりなんですね」


昼食の時間に、お爺ちゃんの耐弾障壁実現を記念してささやかな祝いの席を設けるとは聞いていたけど、蓋を開けてみれば、館にいる人員の大半を集めたような規模の立派な祝宴だった。


「祝福したいという人がそれだけ多かったのさ。それと、本音は翁が実現した耐弾障壁が余りに完璧だったんで、話を聞かせろ、と研究者達が煩くてね。話を聞く場を兼ねることにしたんだ」


「皆に感謝せねばな。今回は多くの人の助けがなければどうにもならんかった。じゃが、儂は実行しただけで、どうやったのかは概要しか聞いておらんぞ?」


お爺ちゃんも感慨深いものがあったみたい。実行しただけ、ということは魔法陣みたいな術式を妖精界から持ち込んだってことかな?


あー、色々聞いてみたい。


「アキ、質問は我慢だよ。翁、皆が集まったら、最初に挨拶、次に食事の時間、その後、翁への質疑応答の時間といったスケジュールで行くから、そのつもりでね」


「うむ。聞いた以上のことは話せんが、誠意を持って答えよう。ところでその後じゃが、女王から頼まれた表彰と授与を行いたいのだが構わんじゃろうか?」


「表彰?」


「功績を称え、地位を与えるといった類じゃよ。彫像も作ったんじゃ。こちらには持ち込めんから、見た目だけのハリボテじゃが」


「お爺ちゃん、見た目だけって、本物と同じ外見の像が投影できるなら、例の芸術家のお友達の依頼も果たせるんじゃない?」


「おぉ、確かにそうじゃ。じゃが、彫像の投影術式は女王陛下から預かったもので、どう実現しているのかは儂も知らんのじゃよ。まぁ、折を見て、女王陛下にお願いしてみることとしよう」


「それで翁、表彰って、やっぱりアキかい?」


「無論じゃ。ぜひ、妖精界にも訪問するようにと、言付かっておる」


「え? 僕? それに妖精界って。妖精界から僕を召喚してくれるとか?」


「うむ。妖精界には魔力はたっぷりあるから長時間の召喚でも問題ないと言っておった。もっとも、そのまま召喚すると、身体が大き過ぎて楽しめないだろうから、ちゃんと妖精サイズで召喚するよう、召喚陣の改良をするという話じゃ。すぐとは行かぬが、そう長くは掛かるまい。アキ、楽しみにしておれ。こちらも素敵じゃが、妖精界とて見所は盛り沢山じゃ」


「凄い! 妖精界かぁ、島が浮いてるんだよね。あー、楽しみだなー」


というか、召喚魔術ってよく話とかでは出てくるけど、召喚される側ってどんな感じなのか、けっこう興味がある。没入型VRゲーム風とかなのかなぁ。


「アキ、残念だけど、召喚されるのは暫く先になると思うよ」


「えー、リア姉、どうして?」


思わず、素でブスっとした顔をして答えてしまった。リア姉が苦笑してる。いけない、いけない。僕はミア姉の妹なんだから、もっとこう、品性を感じるような対応をしないと。


「魔力属性の問題さ。多分、召喚術師が妖精界からアキを認識すること自体が困難だろうからね。というか、翁。私も妖精界に行ってみたいから、無色透明な魔力属性でも認識する方法を、妖精界でも研究してみてくれないか?」


「なんと、確かにそれは問題じゃ。研究するよう掛け合ってみよう」


魔力感知では二人はまるで見えないからのぉ、とかお爺ちゃんもボヤいている。確かに難しそうだ。


「盛り上がっているようだが、そろそろ皆、集まったようだ。翁、とりあえず、ケイティ達のテーブルに席を用意してあるから、まずはそちらに着いてくれ。君が飛び回ると、事態の収拾がつかなくなるから、自重するように」


「……そうなのか? うむ、わかった」


お爺ちゃんがケイティさん達の座っているテーブルに用意されたドールハウスのテーブルセットに着席すると、マサトさんが杖を振るった。


「今回は、翁が耐弾障壁を完全に行使できた快挙を祝して、ささやかではありますが、祝いの席を設けました。短い時間ですが、楽しんでください。まずは食事、その後に翁との質疑応答の時間を設けますので、それまでに質問があれば取りまとめて置くように。それと、その後に翁から表彰とトロフィーの授与を行うとの事なので、そのつもりでいてください。では、翁、皆に一言よろしく」


話を振られたお爺ちゃんは杖を一振り、口を開いた。


「このような場を設けて貰い、感無量じゃ。限られた期間の中で多くの人の助けを得て、目標を達成できたことは、儂に取って何よりの宝と言えるじゃろう。ありがとう。ではまずは食事、それと酒じゃ」


酔っ払うなよー、などと声援が飛び、拍手が鳴り響いて、お爺ちゃんも感謝で胸が一杯って感じだ。


用意された料理は、豪華なランチセットと称したように、いつもより品数も結構多くて、見てるだけで楽しい気分になってくる。厚焼きのステーキがあったり、サラダも彩りが華やかだったりと、あちこちがお祝い用って感じにグレードアップしてる。お酒も料理に合わせた銘柄のようで、互いに高め合うようで美味しいと、父さん達も話していた。


僕はアルコール禁止なので、ワイン風の炭酸飲料、つまりシャンメリーだ。というかあるんだね、こっちにも。

素敵なワイングラスに注がれていることもあって、雰囲気はばっちり。

僕も参加しているのだ、という気分になれて良かった。


メイドさん達が様々な楽器を持って、邪魔にならないくらいの音量で生演奏してくれているのも、お洒落な雰囲気を高めてくれる。

リア姉や父さん、母さんとこうした祝いの場について、色々話を聞いているだけでも楽しい。


主にロングヒル行きメンバーが集められたテーブルも結構楽しそうだ。ロゼッタさんがメイド服じゃなく、シンプルなドレスを着てるのは新鮮だ。飲食も普通にできてるようだし、どれだけ高性能なんだか。お爺ちゃんもあっちへふわふわ、こっちへふわふわと、他の人が食べてる料理をちょっとだけ分けて貰ってとハチドリのように飛んでいる。杖を振ったり、両手を大きく広げたりと、なんとも賑やかだ。楽しんでるようで良かった。


でも、他のテーブルの人達は皆は飲食しつつも、お爺ちゃんへの質問をどうするかについて話し合う方に意識が傾いているようで、ポツポツと各テーブルで始まった議論は、騒ぎにこそならないものの、静かな熱意を孕んで、会場全体を騒然とした空気が満たすことになった。

ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

アキの動く範囲が狭いから会わないだけで、この館には結構な人がきて働いているって描写をする機会がやっとありました。アキがいる「館」はカントリーハウスのようなものなので、いくら様々な魔導具があるといっても、大勢のスタッフが必要なんです。まして単なる宿泊客ではなく、研究をしにきている人達なので。裏方作業は膨大です。

何気に多いのが、今回は出ていませんが、防竜林の庭を整備する庭師の方々。なにせアキの訓練をするために、原生林を作ったり、崖や沼地を作ったりと無茶が続きましたからね。

次回の投稿は、九月二十六日(水)二十一時五分です。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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