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21-13.地球(あちら)の歴史と比較したこちらの現状説明(中編)

前回のあらすじ:こちらの惑星ほしの広さ、海の広さ、推定人口分布、自分達、街エルフがどれくらい少数派マイノリティなのか、弧状列島がどれだけ特異なのか、街エルフの探査船団がその運行を支援する人工衛星なども含めるとだれだけ優位にあるのか、なんてところを、お姉様方に把握して貰いました。先ずは良いところから紹介して安心させる、これが説得の基本ですよね。(アキ視点)

次は時間軸、技術面を話そう。


「次は時間軸の説明です。地球あちらの年表のうち関係してる部分だけを記載したものですが、大型木造帆船を用いた大航海時代が始まり、世界の全ての大陸が海路で繋がるようになりました。木造船の時代は長かったんですが、鉄の大量生産が行えるようになると防御力を高める為に、木造船の外側に鉄の装甲を施すようになり、鋼鉄の大量生産が行えるようになると、船体事体も鋼鉄で作るようになりました。この段階で地球あちらの人族は、大型帆船を建造するのに、樹木が成長するのを待たなくても良くなったんですね。それまでは伐採し過ぎて先進国地域では自然林が壊滅し、全てが植林された人工林に成り果てた程だったので、彼らにとってこれは朗報でした。石炭の利用が本格化したのもこの頃で、これで地球あちらの人族は掘るだけでどんどん全金属製帆船を量産できるようになりました」


木造のガレオン船が真横の近距離に金属弾を撃つ大砲を何十門と搭載して命中率と威力の低さを補っていた時代は、分厚い木の装甲でも、砲弾に耐えることができた。飛んでくるのも丸い金属弾で回転もしてないからそもそも貫通力も低かった、というのもある。


大量生産できるようになった鉄板を貼り付けた鉄甲船、例えば戦列艦は、木造のガレオン船に対して圧倒的な防御力を発揮した。なにせいくら命中しても鉄板を貫通できないのだ。不沈艦という名称が生まれたのもこの頃。自分は沈まず、戦い続けられるのだから、不沈艦を多く揃えた方が強いのは自明の理。なので各国はばんばん不沈艦を建造していった。


で、更に製鉄技術が進歩して鋼鉄が作れるようになると、その強靭さを活かして船体まで金属で作れるようになった。同じ構造でも軽く強く作れるようになり、それに木材と違って燃えない利点もあった。だから金属船体で金属装甲を持つ装甲艦は、鉄甲船より更に強くなった。


あと、推力を風に頼ってたところに、製鉄技術の発展の恩恵を受けて、高い蒸気圧に耐えられる強度に手が届くようになって蒸気機関が発明され、推進器も始めこそ水車だったけど、その後、スクリュー推進へと至ったことで、長年、トップヘビーを招き、被弾面積が広く燃えやすく、傷つくと推力を失うことにもなる帆を船から撤去できることになった。蒸気機関のおかげで風の強さや向きを考慮せずに自由に船を動かせるようになり、これは帆船に対して蒸気船が圧倒的となった。


また、邪魔な帆やそれを制する膨大な量のロープも不要になったことで、船上は煙突は増えたもののかなりすっきりした外見となり、装甲を施した回転砲塔を備えることもできるようになった。固定式の砲に対して、自由な射角で攻撃できる回転砲塔の強さもまた圧倒的だった。


というように、冶金技術が高まった事で、大きな帆と固定砲を備えた木造帆船から、蒸気機関と回転砲塔、それに金属装甲を備えた金属蒸気船へと時代は一気に進むことになり、世界は膨大な水と石炭の補給こそ必要になったものの、風に頼らず自在に海を動き回り、相手に向けて砲を常に向けて攻撃し続けられるようになった。


双方がそうした戦闘艦、沈まぬ船、戦艦を備えると、戦艦の数の多い方が圧倒的有利に立てることから、各国で戦艦の建造競争が始まっていく、と。


そんな時代の変化が百年にも満たない短期間かつ世界規模に起きたのだ、と軽く説明してみた。


蒸気推進機関を持つ戦艦はこちらにはない船種なので、ホワイトボードに絵を描いて、こちらの外洋帆船との違いを比較してみる。帆船は移動は風任せで速度もそう速くはならないし進める方向にも制限がかかる。帆が風を多く受けると船がその分大きく傾くのも何気に固定砲の場合、命中率に問題が出てくるってのもある。ソレに比べて、蒸気推進だと石炭はたくさん消費するものの、帆船の最高速を超える船足で、風向きに関係なく好きに航行できて、船が風を受けて傾くようなこともないから砲撃の安定性も高い。それに邪魔な帆や大量のロープもないから、船の向きに影響されずに敵艦を指向できる回転砲塔も装備できて、互いの位置に関係なく、砲を敵に向けて撃ちまくれる。帆船の方は帆やロープが邪魔で回転砲塔は搭載できないから、船体に取り付けた砲は多少左右に向きを変える程度のことはできるけど、位置関係によっては全然撃てないなんてことも頻発する、と。


この時点でお姉様方も帆船が物凄く不利なことに気付いてくれたけど、互いに砲撃しあった場合の影響を聞いて更に滅入った表情を浮かべることになった。蒸気推進船の場合、船体も砲塔も装甲に覆われているから、被弾してもそうそう大きなダメージは受けない。それに比べると帆船は船体の何倍も大きな帆を常に広げていて、そこに装甲は施せないから、被弾すれば燃えたり、帆が破れれば推力を失うし、帆を制御するロープが切れれば、風を捉える効率が激減してしまう。


そもそも、都合のよい風が吹いてなくて、凪いでいたりしたら動けない帆船なんて射的の的だ。


「……帆船の有利なところって、航行に燃料が不要な事くらいかしら?」


ミエさんが気力を振り絞って問いかけてくれた。


「そうですね。蒸気機関は膨大な量の石炭、水を必要とするので、それらなしで修理用部品と水、食料さえあれば航行し続けられるのは帆船の利点でしょう。蒸気船の場合、一定間隔で補給できる港を整備し、その港に膨大な水と石炭を供給できる体制も構築しなくてはなりません。あと、船内に蒸気機関、水タンク、石炭貯蔵庫を備えているので、それらに被弾すると蒸気機関なら爆発、炎上するでしょうし、水タンクがなくなれば蒸気機関は動かせなくなり、石炭貯蔵庫が燃え出したりすれば、船が沈んでも不思議じゃありません。なので、蒸気機関搭載の船にも弱点がない訳じゃないんですが、航行速度で下手したら十倍近く差が出て、位置取りも一方的に決められて、しかも帆船側の撃てない角度をキープしたまま一方的に回転砲塔から攻撃できる訳ですから、帆船側が十倍いてもまぁ、勝ち目はないでしょう」


おまけで、砲事体も進化して砲身にライフリングを刻むようになって椎の実型砲弾が遠距離に、それまでの球形砲弾より遥かに正確に届くようになり、貫通力まで発揮するようになると、木造船体に鉄板を貼り付けた程度の弱装甲では紙のように撃ち抜かれるようになって、あっという間にそうした船は廃れたんですよ、と説明すると、三人ともちょっと黙り込んでしまった。


ん、黙り込んだというより、深い思考に入った、といったとこかな。


ちょっと説明が続いたので、ちょっとお休みに入ることにして、アイリーンさんが用意してくれたプチケーキを食べて糖分補給。ん、美味しいね。





ふむ、マリさんの考えが纏まったようだ。


「アキはこちらでも、そうした時代の流れになると予想してるのね?」


「ですね。採掘技術があり、高度な冶金技術もあり、複雑な社会構造も構築できている。となると掘って精錬すれば量産できる鉄と石炭、まぁその次の石油や天然ガスもそうですけど、そうした埋蔵資源を使った建造物はばんばん作れるようになります。こちらには竜族達がいて魔力も満ちているので、あちらと少し違う歩みになるとは思います。でも大筋では変わらないでしょう」


「それはなぜ?」


「街エルフが、巨大な全金属船体の外洋帆船を繰り出して、海外と安定した交易を行っているからです。小鬼族が耐弾障壁をコピーしたのと同様、後追いのほうが遥かに楽です。何せ成功例があるのだから、そこを目指せばいい。外から観察するだけでも多くのことが読み取れます。建造に何が必要なのか、何があれば同じような船が作れるのか、遠洋航海に必要な技術は何か、知識として何が必要か、etc、etc」


嵐に遭ってボロボロな姿で、とかじゃなく探査船団はいつも平和と交易の担い手として、その美しい姿を披露してきた。だからこそ、そちらに進めば、同じように海外交易、未知の土地への入植といった施策を打てる、その成功率は高い、と。


街エルフ達は先行者として利益を独占できてますが、後追いは熾烈で、いつまでもその優位性を何もせず維持できる、などとは思わない方がいい、と指摘すると、沈んでしまった。


ん、今度はユカリさんか。


「その蒸気機関、こちらでも普及するかしら? 弧状列島にもその技術はあるけれど、水や大気の汚染が酷く、黒煙を上げていた工場は天空竜達に、排水を流していた沿岸の街は海竜達に潰されたわ」


 ふむ。


「どちらも目立つ上に、稼働してれば汚染源の特定は容易ですからね。竜族達の目が届く範囲だと、確かに蒸気機関は普及しないかもしれません。陸上施設なら浄化するための仕組みを追加すれば、それでも稼働できるでしょうけれど、全てを積み込んで航行する艦船となると、浄化機構まで搭載して、実用性のある戦力として完成させるのは困難という気もしてきます」


「余計なモノを積めば船体が大きくなり、大きな船体を動かすには大きな蒸気機関が必要となって、という悪循環に陥るのね。そして大きな蒸気機関となれば更に多くの水、石炭が必要になってくる」


 ん。


ユカリさん鋭いなぁ。少しのヒントから鋭く切り込んでくるとこは凄く素敵だ。


「ご推察の通りで、そうして浄化機構も搭載して竜族から目の敵にされないようにするには技術的難度が高くなり、蒸気船全盛期はその分遠のくでしょう。街エルフの帆船は推力に風を使うだけで水も空気も汚さないのでその点ではかなりの優位です」


これには三人とも安堵の表情を浮かべてくれた。


「ただ」


上げて、落とすようで悪いけど、そう切り出した瞬間、三人の目があぁ、やっぱり、と曇った。このパターンは定番化してるから、そう来たら、他の問題がある、と察せられるからね、うん、仕方ない。


「未探査領域にも全てで竜族が生息しているとは限りません。弧状列島に地竜が住んでいないように、天空竜がいないかもしれないし、海竜が寄り付かないかもしれない。そうして竜達の圧が及ばない地域があれば、地の種族が蒸気機関を手にするのを阻むモノはないってことにもなります」


おっと、横からだけどリア姉が割り込んできた。


「アキ、その話だけど、地球あちらでは新大陸と称された南北アメリカ大陸では車輪が存在せず、鉄器を扱う文化も発展しなかった。それに数字のゼロも存在しなかった。文明は交流がなくとも多発的にあちこちで発展する。けど、画期的な発明は誰でも生み出せるモノではなく、どこでも同じ域にまで達するとは限らない、だよね」


 ナイスフォロー。


「リア姉の言う通り、未探査地域には巨大な都市はいくつもあるのは確実だけど、そこに竜族がいるかどうかも分からず、技術がどれだけ発達しているのか、してないのかすらわからない。一応、朗報としては、未知の大陸から大型帆船がやってきたとか、大飛行船が飛来してきたという事例はないので、外洋帆船や飛行船を建造できるだけの技術を持つ未知の文明が存在する、ということは無さそうってところですね。ただ、実はもう建造中で来年にはお目見えするかもしれません。人工衛星に搭載してるセンサーの性能が高くなれば、大気汚染状況とか、工場群の熱量とか、巨大ダム建設のような環境改造の進捗具合なんてのも見えてくるんですけど、まぁ無い物ねだりをしても仕方なし、と」


どうもお姉様方はいまいちピンときてない感じなので、センサーの精度が高くなれば、畑の広さから居住人口を更に正確に絞り込めたり、自然にはない地形や施設から、国の分かれ具合や争い具合も推し量れるし、車両や船舶のサイズがわかれば、そこから技術力も予想でき、ひいては全体の国力も推し測れますよね、と説明すると、リア姉がフォローしてくれた。


「アキが話してることは斥候任務で敵地を観察してあれこれ推察するのと同じ。それを国の規模、弧状列島規模、大陸規模でやればいい、と言ってるの。隣の大陸にある地竜達の練り歩いてるルートを衛星から観測できる精度になれば、未知の大陸に対しても同じように調べることで、地竜達が生息しているのか、その痕跡も追えるでしょ」


これにはミエさんもなるほど、と納得してくれた。


「足跡追跡と同じってことね。規模が大陸レベルで、自分の目で観察する代わりに、衛星のセンサーで観察する。やってることは同じだ」


 うん、うん。


「未探査地域の都市群が夜の照明を控えていないのは、人族の都市だからかもしれませんね。小鬼族の都市群だと明かりが少なくて見落としているところも多いかもしれません。こちらも衛星のセンサー感度が上昇してくれば、衛星からの探査でもかなりの部分は把握できるでしょう」


こう話していると、地球あちらの衛星利用技術がどれだけ突き抜けているかわかるってモノだね。地球あちらの精度があれば、山に構えている竜達の巣なんて全てが筒抜けになるだろうし、何なら熱源探査で住んでる竜が老竜、成竜、若竜のいずれかも判別できそう。そして空にあっては無敵の天空竜とて、地に降りている時まで同じ強さではない。やっぱり統一政府に竜族も加えたのは正解だった。


いくら個として最強でも、群れの強さもなく、魔力を回復する巣の位置すら全て露呈し、どこに何柱住んでいるのかすらバレてしまえば、各個撃破してくれと云わんばかりだ。いずれは竜族が縄張りとしている土地も、地の種族は欲しがって、それを奪いに行くだろう。そうなれば竜族に未来はない。





さて、大航海時代に話を戻そう。


「航海術の発達に話を戻すと、街エルフが今、開拓している交易路は採算が合うからというだけで、技術的に到達範囲の限界に達している訳ではありません。これまでに洗練してきた航海術、外洋帆船があれば、残りの未探査地域の全貌を解き明かすのもそう遠い日ではないでしょう」


この世界儀の全ての地に色が塗られて既知となる日も、もう五十年とかからない未来だと話すと、これにはマリさんが異を唱えた。


「未知の地域に人を派遣して、開拓していくのにはかなりの労力が必要だわ。何か見返りが期待できなければ、なかなか大規模な船団派遣とはならない。私達の探査船団が今のルートを開拓できたのも、各地を結ぶ商人達から、遠い地の情報を得て勝算ありと判断できたからよ。その点、今残っている未探査地域は、情報事体が少ないか、全くないわ」


 ふむ。


地球あちらで言うところの地中海相当の海域を指し示して、ちょっと話をしてみよう。


地球あちらの話ですが、こちら、地中海に面した地域は、中東地域やその先、インドといった地域とは交易に陸路を使うしかなく、アラブ商人達がその富を独占することになりました。その独占を打破しようと、アフリカ大陸を回って海路で到達し、直接交易を行おうという機運が生まれました。また、当時はもっと地球あちらは小さいと思われていたので、ずっと西に進んでいけば、惑星ほしを一周して反対側からインドにもたどり着けるだろう、なんて事を考えた人達も出てきました。この人達の航海が南北アメリカ大陸の発見に繋がりました」


「それは航海術だけでなく、世界地理といった部分をどれだけ理解しているのか、それと国にそうした船団を派遣するだけの余力があるのか、ってとこにも繋がるね」


ミエさんの言う通り。


スペインとかポルトガルとか、実のところ、船団を送り出したり、戦争に備えて大量配備をしたりした結果、何度も破産してるくらいだから、余力をどう定義するか、というのは悩ましい問題なんだけど。まぁ、そこは横道だから今回はスルーしておこう。


「昔の技術では炉の火力が足りなくて利用できず、白金プラチナを溶けない銀、と屑扱いして捨てたりしたくらいですから、各国の技術力や把握している情報などは領土や人口といった目に見えやすい部分とは別に把握しておきたいところですね。……といった訳で、歴史や技術といった観点から総括すると、把握している範囲では優位にあるものの、この惑星ほし全体ではどの程度の優位性があるのか、また、各国の未探査地域に向けた熱量がどの程度なのかもわからない、ってとこですね」


航海術や地理的把握、海竜の回遊ルート把握などでは他より多くを知っている優位性が明確に出ていたけれど、別の側面、歴史的位置付けや技術といった観点からすると、不明部分が多過ぎるという現実も見えてきた。


相反する二つの観点を示されたことで、お姉様方も現状認識が変わってきたようだ。安定していると思った共和国の立場が思った以上に盤石な面と不安な面どちらも有する、とわかってきたからね。だいぶ頭もすっきり目が覚めてきた感じだけど、情報を詰め込み過ぎた感があるからちょっと小休憩を入れよう。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


はい、ミア直伝の上げて落として不安にさせて、という手口が披露されました。


これまでにも紹介してきた内容ではあるんですけど、自分達は見える範囲では優位にある、だけど同じコースを走ってる訳じゃなく、あちこちから別ルートで走っててそっちの情報は一切なし、となるとマラソンランナーもペース配分にはかなり苦慮することでしょうね。これまでのレースでのコースレコードも全体情報はないから、あまり参考になりません。良い感じだと思ってるけど、実は大したリードじゃなかった……かもしれない、と。


しかも街エルフは人口が少ないですからね。人口の少なさを百六十年に及ぶ義務教育の分厚さと視野の広さ、それに大勢の魔導人形達を従えることで優位性を発揮してきた訳ですが、ある意味、伸びしろを使い切ってて、もう大きく伸ばせる余地がないとも言える状況です。


そんな中、物量差百倍、千倍という相手が出て来たとして、しかもそれらが後追いの利がある状態で、どこまで先行者特典を維持し続けられるのか、アキが投げかけた質問はそういう話です。


これがもしマコト文書なし、人工衛星なしなら、探査範囲で共和国の優位性は疑いようがない、我に追いつく他国なし、とか意気揚々と喧伝しちゃうとこでしょう。しかし、人工衛星からの探査で「これだけの地域はまだ未探査です」と見えてしまい、マコト文書の知から「ベース技術がこれだけ揃ってれば百年後には世界規模での陣取り合戦です」と示されれば、今見える範囲など、所詮は「井の中の蛙大海を知らず」と思うだけでしょう。


アキはお姉様方の表情を見て「だいぶ目が覚めてきたかな」などとほんのり好意的に眺めてますけど、この辺りは長老のヤスケや、多くの逆境を生き延びてきた三大勢力の代表達なんて連中との交流ばかりしてきたせいで、感覚が歪んでるだけだったりします。彼女らもだいぶ演技で誤魔化してますけど、幼児とかが観たら怖くて逃げたくなる雰囲気を撒き散らしてます。周囲にいるサポートメンバー達はそれらを察知してますけど、まぁアキに聞かれたりしなければそれを伝えはしないでしょう。毎度のことなので。


次回の投稿は、十二月三十一日(日)二十一時五分です。


<補足>

木造船から、鉄装甲を付けた木造船、そして船体構造自体を全て金属にした船と経ていく流れは、製鉄技術の発展によって、銑鉄から鋼鉄が作れるようになる流れと並行してて、あと鋼鉄が生まれたからこそ蒸気圧を動力に活かせる蒸気機関も生まれたって感じで、それぞれが互いに影響を与え合っていたり、全体が足を揃えて進んでる訳でもなかったりしてます。本編でのアキの説明はかなりざっくり大雑把に端折ってるので、興味のある方は色々と関連書籍を眺めてみるのも良いでしょう。


私としては、初の回転砲塔を搭載した装甲艦「モニター」と、中央砲郭艦「バージニア」のボコボコに撃ち合って、装甲艦が木造艦より優位だと明白に証明した「ハンプトン・ローズ海戦」なんてのがお勧めです。双方の艦隊で、木造艦が沈み、装甲艦同士は一時間も至近距離で互いを蛸殴りにし合ったのに勝負がつかず、となりました。


モニター艦は、物凄く乾舷が低く14インチ(35センチ)しかなくて半沈船と言ってもよい船でした。敵艦からは回転砲塔以外見えないんじゃないかってくらい、一見すると沈みかかってるようにさえ見える船です。


バージニアの方もやはり乾舷が低く、上部構造部以外沈んでるようにしか見えず、見えてる上部構造も全てが装甲に覆われているという特異な形状でした。こちらは固定砲塔ですが砲門数は多く、装甲で砲撃は防げるとみて衝角ラムを装備するなど、これもまた凄い設計でした。

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