21-6.咲き誇る大輪の薔薇達に囲まれて(中編)
前回のあらすじ:寝起きでいきなり、キツイ香水をつけた三人の美女にせまられたり、なんか妙にハイテンポに、強引とも思える話のゴリ押しが続いた初顔合わせでしたけど、どうも僕がアキであることの試しだったようで、納得し終えたとばかりに、最後は笑顔に豹変してくれました。はい、そんな怖いお姉さん達に近付く気なんてゼロです。(アキ視点)
僕だけに用意されたブランチメニューは、切り身の焼き魚っぽかったけど、食べてみるとクロウさんがお土産にくれた戻りカツオを活かしたステーキだった。両面に小麦粉をまぶしてオリーブオイルでこんがり焼いた感じだね。そこにバターやニンニクで風味付けしたソースを軽くかけた洋風な味付けて、なかなか美味しい。カツオもたたきだけというのも勿体ないからね。
僕が食べる様子をなんか、良く食べるわねー、とかコレが演技とか無いわね、とかあれこれ、お姉さま方は言いつつも暫くは眺めるだけに留めていてくれて、出された料理を口に運ぶのが一巡した辺りで、栗色の髪を肩口で揃えた美女ユカリさんが口を開いた。
「ミアは演じることに掛けては稀有な才能があるから、用意された舞台で決められた物語を演じるだけなら、例えば、つまり人々から竜神の巫女と称されるアキという人物のフリをするくらい余裕でできてしまうわ。だから、場を乱し、考える余裕を与えず、素の行動を引き出す必要があったの。ケイティ、無理を言って済まなかったわね」
「いえ、アヤ様も必要と認められた事でしたので、お気になさらずとも問題ありません」
ケイティさんは許可済と念押ししたけれど、三人は揃って、余裕ぶってる表情が一瞬陰った。
はて。
反応も気になるけど、ミア姉についての評価が出て来たからそちらを聞こう。
「ミア姉はそんな面倒なことはしないと思いますよ? それはそれとしても、皆さんは僕が話に聞いたような魂入替えをされた別人ではなく、ミア姉の手の込んだ悪戯の可能性もあるとお考えだったということですか」
そう問うと、三人とも深く深く溜息をつきながら、雑な視線を向けてきた。
「貴女が貴女になった経緯は秘するべき事柄だから以降はアキと呼ぶけれど。アキ、貴女、親友だった子が、とっくに成人を迎えて社会でも押しも押されぬ地位にある女性が、僕、実は異世界から来た高校生の男の子だったんです、とか言い出したとして。その演技がそれなりに説得力があったとしても、そもそも本人が稀有な演技力を持ってるとなったら、悪い冗談だと思う、上手く宥めで精神病院に連れて行く、話す設定が正しいと言う事にして何を企んでいるのか突き止める、どれにするかしら?」
あー。
「魔力属性が本人とまるで違う、リア姉と同じ完全無色透明の属性に成り代わっている点を除けば、確かにその辺りのどれかになりそうですよね。リア姉がミア姉と共謀して、異世界の男の子が入ってるミア姉という、なんか設定を聞いてるだけで面倒臭そうなキャラを演じてるという線はありませんか?」
そう振ると、三人に鼻で笑われた。
「リアが? もしリアが本当にそんな真似ができるなら、全力で撫で回してあげるわ。ねぇ、リア、やってみない?」
『ヤダ』
もうこれ以上ないってくらい拒絶と面倒臭がってる様と勘弁して、という気持ちが寿司詰めになった声が短く返ってきた。というか、ミア姉も言葉に意思を載せる技を使えるようになったんだね。うん、うん。
三人もある意味、予想通りという反応と、予想外の技に少し驚きながらも、そっちへの興味は後回しにしてくれたようだ。ふぅ。
なんかリア姉の反応がめっちゃ可愛いから、後で可愛がり倒したい。
「まぁ、こうして完全無色透明の属性持ちが二人揃ってる時点で、ミア姉が演じてる可能性は低いかと思いますけど、魔力を極端に抑える技も、それを更に誤魔化す魔導具もあるでしょうから、そちらは何とかしたとして。そうしてミア姉が別人を演じている可能性も捨てきれないと。それでミア姉ですけど、ユカリさんの目から見てもそれほどの才能があるんですか?」
ユカリさんは女優としてかなり活躍されていて自前の劇団をお持ちだったりもするくらいだから、そちらの分野については一家言あるんだと思う。化粧や香水なんて事にも色々と知識をお持ちのようだ。
「ミアが演じる事に対して稀有な才を発揮したのは、日本の世界との心話、マコトくんとの心話にどっぷり浸かるようになってからなのよね。心話において仮想ルームを創り、そこに自身のリアルな姿を創り出す。ソレを実現する為に、ミアは寝食を忘れるほど没頭して、しまいには創り上げたイメージの自分を完全に実現できるようにと、食事や運動、睡眠といった基礎的なところから始まって、立ち振る舞いや、反射的な行動に至るまで、あらゆる行動を観察し、幻影で完全に再現を目指し、幻影に比べて現実の自分が劣るならそこも克服して、と役作りの為に、多くの時間を費やす程だったわ」
ん。
「ミア姉もかなり大変だったと話してました。話の経緯は忘れましたけど、部屋の中が殺風景なのと、ミア姉の他の衣装も観たいとお願いしたら、僕自身のイメージを創るようお求められて、アレは随分、僕も苦労しました」
最終的には、母の化粧台の三面鏡に姿を映してまで、自身のイメージを明確化するのに頑張ったからね。ミア姉が観たいというから、と理由を話したら、なんか、あちらの母さんが悲しみというか怒りというか、色々な感情が混ざった顔をしてた。それでも否定せず、気が済むまでやらせてくれたのはありがたかったね。
「それは大変だったでしょうね。そうしてミアは、ミア自身が望むミア、財閥当主としてのミアではなく、マコトくんに見せたいお姉さんとしてのミアの姿を確立させていったの。そして、そのイメージからズレないように現実の自分も律して、そうしているのがいつしか普通になってしまう程に。確かに役になりきる憑依型と呼ばれるような役者もいる。だけど、そんな彼らでさえ、舞台において、決められたシーンの中だからこそ、まるで本物のように演じることができているけれど、それは本人としての特徴を誇張して見せた一発芸みたいなモノなの。ミアのソレは違う。起きている間はおろか、意識しない時の動きですら反復した動作を身体にしみこませていくことで、反射的な振舞いすら、ミアが望むミアらしくしていった」
おぉ。
「ミア姉らしいストイックさですよね。うん、真似のできない凄さです」
手放しで褒めると、ユカリさんに眉をひそめられてしまった。
「天賦の才がありながら、役者として求められる多彩な人物としての姿を演じるのではなく、その才の全てを、ミアが望む、マコトくんに見せたいミア、を演じる為に費やしてしまうなんて、あまりに勿体ないと何度も説得したけれど、暖簾に腕押し、意味が無かったわ。話を戻すと、そんな才があるミアに真面目に他人を演じられると、私だって見極められる自信がない。だから、演技が破綻するような状況を作り出して、ミアが演じているなら、その限界が露呈する事を狙ったのよね」
などとユカリさんは話を締め括った。続きは一部金髪メッシュの入った短髪なミエさんが引き継ぐ。
「それで、先ずは寝起きドッキリを敢行してみた。咄嗟に布団を抱きしめて後退り、怯えた目線を向けたアキは可愛かったねぇ」
心底笑えてたった顔をしてて、なんとも酷い。
「ミア姉ならそんな僕っぽい仕草だって演じられるのでは?」
やるとは思えないけれど。
「そこ。アキは気付いてないようだけれど、そこのトラ吉に怒られて私達が距離を離すまでの間に、アキはミアならやらない、できない仕草をしてたんだ。わかるかい?」
ん?
「その間って、寝起きでよくわからない状況を確認しようと、周囲にいるお爺ちゃん、ケイティさん、トラ吉さんの位置を目で追って確認しただけですよ?」
「自覚ないか。ミアは成人している街エルフだ。それなら寝起きの不慮の事態でも、予想外の相手を注視したまま、枕元に置いた武器を即座に持って構えるくらいの真似はできる。それに、私達に視線を向けたまま、周辺視野を使って、辺りの状況を把握するのだって簡単だ。だけど、アキは私達から簡単に視線を外す、そもそも枕元に武器も備えてない、布団を抱きしめるなんて街エルフなら子供でも珍しい仕草だ。つまり、徹頭徹尾、街エルフらしさがない。というか、男の子っぽさもどこに忘れてきたのか、気になる程だね」
無意識に常時行えるまで身につけた技能を、咄嗟に使わない、というのは殊の外難しいものなんだ、と補足もしてくれた。
まぁ、そうだろうけど。
「あちらでは荒事なんて経験してる人が稀なので、こちら基準で語られても」
「それは横に置くとしても、この時点で私達はもう、ミアの狂言、悪戯の可能性はかなり低いと感じてたんだ。今回のやらかしからすれば、私達三人が揃ってやってきた時点で、ミアなら勝てない戦いはしない、と白旗を上げてるシーンだからね。なのにそうした事を気にする気配すら無し。あと、それとは別に寝てる間に悪いけど、触らせて貰ったからね。接触状態まで隠蔽できるような魔導具は存在しない。だから、本当に違ってしまったんだ、というのは理解してた」
ケイティさんの反応を見ると、そうした確認は確かに行われていたようだ。寝てる無防備な最中に触れられるのはどうかと思うけど、ケイティさんが見守ってくれていたなら仕方ないか。
◇
そして、三つ目の種明かしをしてくれたのは黒髪長髪美人さんのマリさんだった。
「最後の種明かしをすると、そこのアイリーンが劇物と称した激辛餡の饅頭を使ったロシアン・ルーレットの遊び。これをこちらに紹介したのはミア自身なのよ。そもそもこちらにはそんな文化は無かったの。そして、手間をかけて用意した割に盛り上がらなかったネタなの」
おや。
「誰かが本気で怒ってしまって遊びじゃなくなったとかですか?」
「そもそもこちらにはそうして食べ物を不味くするような文化はないから、ミアは用意する時に、自分がギリギリ美味しいと感じられる程度の激辛餡で饅頭を用意したの。それで、えっとアイリーン、アキの味覚はミアのそれに準じているのよね?」
「ハイ。アキ様の味覚はミア様のソレに準じたものデス」
「つまり、そこそこ辛い程度だったのよね。おかげで、私達三人は食べても顔色一つ変えず普通に美味しいと食べてしまい、食べ終えるまで、まるで激辛餡の外れ饅頭をミアだけが食べたかのような状況に陥ってしまったのよ。自分の味覚がそこまで皆と違うなんて予想してなくて、ミアも全然面白くないって膨れる始末でね。お蔵入りしたネタだったの」
あー。
「ソコに他の皆さんですら顔を顰めるような劇物級の激辛餡饅頭を用意したなら、ミア姉ならもっと違う反応があっただろう、と」
「そういうこと。あと劇物とか言ってくれてたけれど、一応、ギリギリ美味しいと私には感じられるレベルの辛さにはしてあったのよ?」
うわぁ。
「マリさん、もしかしてめっちゃ辛党ですか?」
「そうね。舌先がピリピリするくらいが好み」
「今後は別枠で用意をお願いしておきますね」
「そこは気にしないで。普通の味が楽しめない訳じゃないから」
おや。
アイリーンさんもホッと胸を撫で下ろしていた。その人だけ別味付けとかいうと面倒臭いし、アイリーンさんの感覚で劇物と称するレベルとなると、そんなのを料理するのに自身の舌を酷使したくもなかっただろうからね。
「それと、ミアらしくないところと言えば、激辛餡入り饅頭を識別して分けられるなら、私の分にだけ、それを集めて提供するくらいの意趣返しはしてきた筈よ。そういう意味でもこの場にミアの意向は無かったわね。ロゼッタがいないからかしら?」
「ロゼッタさんならそれくらいシレっとやりそうですよね。ちゃんとお土産はお出ししました、とか言って」
そうね、などとマリさんも同意してくれた。うん、やっぱりこちらに来ているアイリーンさん達三姉妹と比較すると、ロゼッタさんはその在り方も含めてかなり異質な存在のようだった。
◇
「そう言えば、皆さん、母さんとは何か特別な関係とかあったりするんですか?」
そう話を振ると、何でその話題振るかな、と恨みがましい視線を向けられた。そして、色々と弄られていたリア姉が理由を教えてくれた。
「アキ、私達が成人の儀までの間に全ての技能について修得するけれど、その場合、年上から学ぶことになるだろう? それにあまり年齢の離れ過ぎた方よりは、ある程度、年齢の近い層の方がいい。そして成人の儀を受けようという層より若くて、教えるほど実力があるなんて者はいないし、個人技に優れていても教える方はさっぱりだ。だから、自然と親くらいの世代で、その道で腕の優れた人が教官役になる事が多い。ここまではいいかい?」
「うん。その感じだと母さんとは教官と生徒って関係だったと。それだと僕みたいに戦闘外傷救護を教えて貰ったとかです?」
僕の言葉に、リア姉は苦笑した。
「そちらは母さんは第一人者って訳じゃないからね。そっか、アキは人形遣いと言っても母さん以外を殆ど見たことがないのか」
「ジョージさんが指揮する護衛人形さん達か、以前の連邦入りの時にシャンタールさんが指揮する形で、リア姉から出して貰ったヒロシさん達のメンバーを見たことがあるだけだよ」
「それだと解らなくても仕方ないか。……そうだ、アキ、総武演で母さんが公開演技で小鬼人形達の部隊相手に完勝して見せていたのを覚えてるかい?」
「うん。アレは凄かったよね。何というか凄く美しかった」
互いに示し合わせた演舞でもないのに、母さん麾下の魔導人形さん達はその身に傷一つ負うことなく戦いを終えていたからね。刃引きの武器を使ってたというのもあるけど、血生臭さも全然感じられなくて、洗練された美を感じた。
「で、アキから見て、完封された小鬼人形達、タロー達の部隊の実力はどれくらいだったと思う?」
「んー、タローさん達は仮想敵部隊を担当してるくらいだから、かなりの実力があるんじゃないかな? 個人技は勿論、部隊としての練度もかなり高いと思うよ。セイケンもかなりの手練れだったと褒めてたからね」
リア姉もこれには同意してくれた。
「そうだね、そんな手練れ達を相手に完封して見せたからこそ、公開演技としても見応えのある演目に仕上がった訳だ」
うん、うん。
あー、つまり。
「もしかして、母さんって人形遣いとして、かなり高い力量がある使い手だとか?」
「そういうこと。そもそも座右の銘が前進粉砕って時点で色々と――」
リア姉がそこまで話したところで、キッチン側の扉を開けて母さんが入ってきた。あ、三人のお姉さん達の背筋がぴんと伸びた。
「正面から打ち破れるならそのまま制圧した方が楽で間違いもでないじゃない? リアも属性が隠形向けだからと非正規戦に安易に流れたのは母さん、本当に残念でならないのよ。ミアは最低限でいいとまるで興味を示さないし、アキは武器を相手に振り下ろすとこから訓練だもの、先は長いわね。そこの三人、長老達からは少しおいたが過ぎるとも伺っているから、次の資格更新時は、私が教官役を担当することにしたわ。今回からは対鬼族向け訓練も刷新されて、鬼人形ブセイにも参加させる事になってるから楽しみになさい」
母さんの言葉に、三人は頬を引き攣らせたけど、ミエさんがそっと手をあげた。
「アヤさん、ソレ、他の人達で検証済みなのですよね?」
「調整は貴女達で三回もこなせば十分でしょう。一番乗りね。安心するといいわ。連邦入り前にヒロシ達のチームで検証は終えているし、ブセイも連邦領での負傷を修理後に私の検証にも付き合って貰ったから、教えた事さえ忘れてなければ問題ないわ。それに貴女達お金持ちじゃない? なら多少は平気でしょ」
ソレ全然安心じゃない、とか修理費用山盛り想定な時点で頭おかしいとか、検証チームがおかしい、とか三人とも不満たらたらだ。
ん?
「母さん、ブセイさん、連邦領での兄弟子の皆さんとの手合わせでかなり力量を高めたと伺ってるけれど、それで問題ないの? あぁ、高い力量があるからこそ手加減もできるとか?」
「やぁね、それじゃ訓練にならないじゃない? 今回は特別に鬼族の達人級一名を相手に標準編成で対抗し、無事撤退することが想定目標よ」
「人形遣い本人が逃亡できれば任務達成?」
「アキ、それじゃ撤退になってないわ。編成チーム全員が戦闘能力を保持したまま、最低限、戦闘不能メンバーは空間鞄に回収した上で、撤退先での小鬼族による襲撃程度は抑える、そうでないと合格なんて出せないわ。リア」
「は、はいぃ?」
「貴女のチームも成長が歪んでいるから、この際、正すつもりで参加なさい。後で正規の通達が届くからそのつもりで用意するように。四人とも他の条件での代替達成は認められないわよ。気が乗らないからって逃げ回ってたツケを払う時が来たということ。返事は?」
「「「ハイッ」」」「はーい」
お姉さん達は声を揃えて、リア姉はほんと気乗りしない感じだけど一応同意を示した。
そして、母さんはリア姉の隣に椅子を持ってきて、私もここに控えているけど、基本はアキに任せておくから気にしないで、などと手をひらひらさせて、アイリーンさんからレモンスカッシュを受け取って軽く一口。寛いでます、というポーズを示すのだった。
ブックマーク、いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
という訳で、強引な展開連発の種明かし回でした。彼女達とて理由がなければ、ここまで強引な真似はしない良識くらいありますからね。理由があればやるんですけど。
ミアが「ミアが見せたいマコト向けのミア」を四六時中演じ続けて、それが当たり前となるほどとなり、そこまで自身を止まっている時だけじゃなく、あらゆる振舞い、表情まで意識し、認識できるようになったからこそ、心話状態において、仮想ルームを構築し、そこで仮想の自身を振る舞わせることができるようになりました。
アキが銀竜を振る舞わせるような域を、ミアという人物に対して行えているからこそ実現できた絶技って奴で、魔導師界隈広しといえども、ここまでの域にある人物などほぼ皆無でしょう。まぁ、アキも師であるミアの熱心な指導と希望もあって、マコトを仮想ルームで動かせるんですけどね。
まぁ、ミアもロゼッタや活動を支える魔導人形達がいなければ、達成できなかった偉業でしょう。あと普通はやりません。というかやれません。アキは自身もやってる事だから、まぁ魔導師なら皆さん、やるんだろうなぁ、くらいで思ってるんですが。
三者三様にアキを試して、これはミアじゃない、と見切ったというお話でした。
前振りも終わったので、次パートからは、やってきた本題に入ります。
<人形遣いとしてのアヤ>
第六章の人物紹介ページで、でアヤのことを「人形遣いとしての実力は並で、操る魔導人形達もちょい型落ち。ただし練度は異常域」と評しているが、実はコレはミスリードを示す記述だったりする。正しく書くと「(外部遠征を許可される)人形遣いとしての実力は並で、(議員業務が忙しいこともあって、)操る魔導人形達も(アップデートは後回しにされていることもあって)ちょい型落ち。ただし練度は異常域」なのだ。
そもそも街エルフ達の代表として振る舞うことを許可された時点で、そんじょそこらの一般層レベルの力量である筈もなく、外部遠征を許可される人形遣いというのは、敵と交戦したとしても部品一つ落として敵に情報を与えるようなこともなく戦える域であることが求められる精鋭連中である。なので、ロングヒルに派遣されてきている護衛役の人形遣い達も何げに多くがアヤの知人だったりする。何せ狭い街エルフの国で、しかも頂点に近いとなれば、そりゃ見知った相手だらけになるというモノである。
そして、リアが麾下の魔導人形達と共に、同期を全員叩きのめした件も、そんな真似ができたのは基礎部分をアヤがみっちり鍛え上げたからだったりする。ただ、アヤも言ってるように、完全無色透明という隠形にあまりに向いた特性があったのと、じっくり力量を高めて正面から撃破するのを待つだけの堪え性が無かったこともあって、リア達は非正規戦の路線に流れることになった。
アヤとしてはやはり残念でならなかったところがあった。何百回やっても絶対勝てないと相手の心をぼっきり折って粉砕してこその完全勝利だと思うからである。安易な道に走って母さん悲しい、などと言ったりもしてるのだがリアの同意は得られていない。
なお、ブセイが連邦領で培った経験は、街エルフの人形遣い界隈を大いに沸かせることともなり、まだまだ進むべき高みがあることが示され、皆が大いに奮起することともなった。
その中にはアヤの姿もあり、どう伸ばすか決めかねていたアップデートの方針も定まったので、麾下の魔導人形達についても、共和国で議員の仕事をしてる間に一通り済ませるほどだった。いずれは、ロングヒルで鬼人形ブセイとの合同訓練の成果などについても話を聞けることだろう。アヤもまたちょっとこの件はアキに話したいところがあるのだ。母さん頑張りましたよ、とアピールしたいのである。かわいい。
次回の投稿は、十二月六日(水)二十一時五分です。