20-31.皇帝領での大河東遷事業(後編)
前回のあらすじ:ユニバース25の事例紹介でユリウス様が気付いた問題点や、レイゼン様からの質問に答えたりしてたら、結構な時間を費やすことになりました。結構、ぎっちり身の詰まったやり取りで面白かったですね。(アキ視点)
小休憩を挟んで、やっと本題の大河東遷事業について話をすることになった。
と言っても、僕がざっくり考えた提案内容は予め、資料にして配布済み、皆さん、内容も読んでいて代表同士で先に話し合いもして貰っているから話が早い。
ニコラスさんの連合は大河の一部区間の工事を担当、レイゼン様の連邦は工事全般の技術提供および指導と協力、竜族は事前調査と難工事区間への助力、妖精族は監督達の助手として各地域に参加、そしてユリウス様の帝国は、全区間の用地確保、大半の区間の工事、作業者達への衣食住提供などなど残り全部となる。帝国の場合、現行河川への流量はゼロにするか大幅に減らすことになるので、そちらの用地利用も東遷事業と並行して行っていく必要がある。今、河川となってるということは周囲より低く、何もしなくても水が集まりやすいとも言えるので、流量を減らして農地として活用していくにしても、ちゃんと計画しないと水害多発地帯になりかねないので要注意だ。
ヤスケさんの共和国は、全体への魔導具提供といった裏方作業になって貰うから、その作業ボリュームはちょっと見えにくいかな。
ベリルさん達が主体となって作成してくれた資料をちらりと眺めてみたけど、イメージとしてはニコラスさんはとっても大変と感じていたけど、作業全体の分担量で言えば一部に過ぎないんだよね。それに比べると、ユリウス様の負担が多い。とにかく多い。事業規模からして、帝国の国力の多くを投じる巨大事業になるのは間違いない。戦争に備えながら片手間でできるような規模じゃない。
まぁ、だからこそ、この工事に専念している間、連合、連邦は戦争はないと安心できるんだけどね。
「さて、それでは本題に戻りますけど、既に資料は予め確認済み、皆さんの間での意見交換も終えられているとのことですので、簡単な質疑応答をする程度としていきましょう。では、本事業の基礎となる大規模治水事業を持つ連邦、レイゼン様からご意見をお聞かせください」
「皆とも話してみたが、これだけも規模となると鬼族の持つ技術をベースとすることに異論はない。だが、我々でもこれほどの巨大事業は前例がない。ユリウスにも確認したが、帝国では河川周囲の調査を実施していない。これは増水によって溢れることを前提としている為であって、帝国らしく無駄を省いた選択だ。だが、それでは新しく通す河川の道筋を決めるには情報が足りん。春先から測量隊を出して予定地域の全測量をしていくつもりだ」
おぉ。
「ルートは色々なパターンが考えられると思いますけど、それ、全パターン網羅ですよね?」
「当然だな。測量情報が揃わずルート検討などできん」
それはまぁ当然だ。
「えっと、帝国が持つ地形データについて濃淡があるということは、居住地域や重要施設についてはしっかりした情報があるということですよね?」
そう問うと、ユリウス様も頷いた。
「大雨が降った場合にも、水没せぬよう、地崩れせぬよう、それらの調査は行っている」
なら、そこは良し。
「測量機器の貸し出しや測量に関する指導は行われますか?」
「あぁ、そのつもりだ。俺達だけじゃ手が足りん。測量に必要なのは地味だが確実な作業を淡々と続けることであって、職人技のようなモノはいらん。いや、同じ区間を何度も計測しなおして、正確さを追い求める姿勢こそが職人技と言ってもいいか」
だよね。基準点を定めて、高低差を計測して、角度のズレを確認して、直線だけで構成されていない現実の地形をひたすら計測して、データ化していく作業はほんと大変だ。地球みたいに、LiDARで上空から計測したら地形データを得られるのがどれだけチート技術かわかるね。
こちらはコンピュータがないから、基本的には大正、昭和時代前期にやっていたような人手による地道な測量をひたすらやってく感じか。
んー。
「地質調査の方はどうされます? ボーリング調査とかもするんですよね?」
「それだが、協力してくれる竜との相談とはなるが、ある程度、竜眼で代用することを期待している。実際のボーリング結果と、竜眼での観察結果を突き合わせて、ある程度の精度が出るなら、竜眼を主とすることで時短を図るつもりだ」
ほぉ。
「となると、連邦領への視察とは別に地質への理解を深める教育と合わせて、そうした試験も行う訳ですか。良いですね。できれば竜眼での探査は複数柱のよるものとして、安定した質を求めていきましょう。渇水時、増水時で視てみるのも手ですね。そこらの手間は相談していきましょう。ルート選定の重みを知れば、竜族も複数回、複数柱による探査をすることに賛同してくれる筈です」
そう話すと、シャーリスさん以外の皆さんが苦笑した。
「アキ、なぜ、皆が苦笑してるのじゃ?」
「それは、ボーリング作業って要は、地面に垂直に穴を開けて行って、筒状に地面のサンプルを取り出すというかなり面倒な作業だからですね。地表をみても地面の下がどうなっているかわからない。だから、筒状に断面を取り出して眺めることで把握しようという話ですけど、当然、結構な手間がかかります。それを竜眼という視るだけで短時間に済ませられる技術で代用できるからと、季節を分けて、複数回、例えば六回くらい同じ地点で調べましょうね、と話したから、なんとも贅沢な話と思われたんでしょう」
そう説明すると、ヤスケさんが補足してくれた。
「そ奴の言う通り、普通の工事でそんな真似をしていたら工費も時間もかかり過ぎる。しかも、アキは異なるルート案も含めた全地域で、何万か所という地点に対してソレをやろう、と言いおった。竜族という常識外の連中がいなければ、戯言の範疇で終わる話よ」
まぁ、そうなるよね。
「シャーリス様、例えば、地の種族がボーリング作業を行おうとすると工具は空間鞄に入れるとしても、何人かの調査員の人が何時間かかけて穴を掘って、地下の土を取り出して、それをきちんと保管して後から調べられるようにして、と一通り終えるだけで半日、一日と掛かるんです。一拠点終えて次の拠点まで移動しても、一日に拠点のボーリングを終えるのは難しいでしょう。これが竜族だと竜眼で調べてその結果を記録させたら、ばさっと次の地点に飛んでまた観測と、一日に十拠点、二十拠点と回ることも容易です。予定地点に記録係の人を先回りさせる方の人数確保で、作業拠点数に制限が入るでしょうね」
「地形に沿って歩いていくとなると、移動も手間か。しかし、そうしてこの大地をスライスして、ケーキの断面のように理解するとは、何とも壮大な話よ」
「でしょう? 竜族の皆さんも理解すれば、その凄さ、活動の意義に感銘を覚えて貰えると思います」
まぁ、そうでないとこんな面倒臭い仕事を竜達は引き受けてくれないだろう。事前プレゼンがかなり重要だ。
◇
「では、次は共和国にしましょうか。魔導具の提供といった形で事業全体を下支えすることを想定してみましたが、ヤスケ様、ご意見をお聞かせください」
「共和国からは、調査に使用する記録具の多くを貸し出すつもりだ。測量で得る数値は重要だが、風景を記録することによって、地域を広い視点で把握することもまた重要だ。それに異なる季節、気象条件での比較をすることもまた欠かせない。この分野では大いに尽力できるだろう」
おぉ。
さっすがお金持ち、そこら中に魔導具が溢れ返っていると言われる共和国だからこそできる協力だね。
「故障時に備えた修理デポがいくつか必要そうですけど、修理は共和国で行うことにして、現地では代替品の備蓄だけに留めるとかですか?」
「そのつもりだ。代替品の数は十分な量を用意しておこう」
それなら安心だ。他の代表の皆さんも、羨ましいって目線を送ってる。
「竜族に協力を仰いで空撮もするんですよね? 「死の大地」の現地調査にも繋がる技法なので、運用方法も含めてここで確立しておきたいとこです」
「そちらはヨーゲル殿の協力も仰ぐことになるが、空撮機器や得た情報の分析方法はこの工事で確立するつもりだ。アキも言うように、「死の大地」では恐らく一度の通過で情報を集めきる必要がある。何度と飛ばず一発で得るための技法も編み出すことを目標としている」
おぉ。
「かなりの手間になりますね。ぜひ、手探り状態から始めて、手法を確立するまでの記録はしっかり残しておいてください。ドキュメンタリー映画とかにして、尽力具合もしっかりアピールしていきましょう。ちょっと共和国の支援は見えにくいところがありますからね」
「相変わらず自分の欲に忠実だが、言わんとするとこはわかる。鼻につかん程度には示していこう」
ヤスケさんも、少し呆れた顔をしながらも頷いてくれた。
◇
「次は、妖精族、シャーリス様。助手として参加をお願いしたいところですけど、ご意見をお聞かせください」
「アキの提案は確かに妾達が担うのが妥当であろう。ただ、妾達は地形を無視して目的地に向かって真っすぐ飛んで行ける。それにあらゆるシーンで妖精族が立ち会う必要もあるまい。故に常時五人程度を派遣する程度に控えたい。時折、こちらにやってくるのと、工事の期間、何年もの間、こちらに召喚され続けるとなると、それくらいの規模でないと続かぬ」
おや。
「お爺ちゃん、召喚され続けるのって、何か問題があるの?」
「あるぞ。召喚中は本体側の意識はないから事故にならぬようふかふかのベットで寝てることになる。つまりじゃ、何もせんでいると病で寝たきりになった者のように身体が衰えてしまうんじゃよ」
「え? それじゃお爺ちゃんはどうしてるの?」
「儂はアキが寝てる時間に同期率を落としたら、あちらで本体がしっかり運動をして、身体に害にならぬようにしておるよ。召喚を続けておると精神はそれなりに疲労するんじゃが、身体の方はまったく動いておらんからのぉ。バランスを取らんと大変なんじゃ」
おぉ。
まるで宇宙飛行士みたいにストイックな自己管理をしてる。宇宙飛行士という単語を使うのはちと不味いから自重して、と。
「航海中の探索者の人達みたいに、しっかり自己管理してるんだ、偉いね、お爺ちゃん。……それだと相当な熱意があって律儀な人でないと続かないかな」
そう話すと、シャーリスさんも意を得たりと頷いてくれた。
「アキの申す通り、一回、二回、ふらりとこちらに召喚でやってくるだけならまだしも、何年もとなると、並みの者では務まらぬ。役目の重さを理解するだけでなく、自身の管理もきっちりこなし、それを負担に思わぬ強靭な心が必要なのじゃ。治水や測量への理解ができる人材にそれだけの任務を課すのは、五人でもかなり協力していると理解して欲しい」
「ご協力感謝します。お爺ちゃん、強靭な心だって。凄いね」
「うむ、儂とて、こちらの世界への熱意がなければ、こうも続けることはできんかったじゃろう」
「翁も当初は運動の必要性を理解せず、同期率を落として体が上手く動かないことに気付いて大慌てしておったろうに」
シャーリスさんに暴露されると、お爺ちゃんも偉そうな態度をしまい込んだ。
「前人未踏の行為ならばこそ避けられぬ試練という奴じゃよ。まぁ、運動の大切さに気付かされた時はまぁ色々焦ったが、ちと話がズレる。この話はまた別の機会じゃ」
「うん、宜しく」
三日ベットで寝て過ごしてるだけでも、体力は大きく衰えてるというからね。基本、空を飛び回る妖精族であっても、似たことが起きただろうし、お爺ちゃんは高齢だから、軽く話してくれてるけど、結構大事だったのかも。後でよく聞いておこう。
◇
「それでは次は、一部区間の工事を担当されるニコラス様、連合についてご意見をお聞かせください」
そう話をふると、ニコラスさんはちらりとヤスケさんを確認してから話しだした。
「連合は、どれだけの工員を確保できるかによるが、一定区間の工事を担うという提案に賛同する。ただし、この工事については、共和国から人形遣いをある程度に人数派遣して貰うつもりだ。彼らには中立的な立場から、我々と他勢力との間の無用な衝突を防ぐ役割を担って貰う。我々も無論、自前で管理は行うが、人族と小鬼族だけ、という状況は避けたい。万一の事態も起こさぬための措置だ」
これはまた思い切った見解だね。
「同じ連合に属していながら、距離を置いている共和国、人形遣い達が立ち会うのであれば、無用な争いも避けられましょう。英断と思います。ヤスケ様、そういった治安維持に向いた方々の派遣は問題ありませんか?」
「恥ずかしい話だが、要員確保はすぐできる。服装をどう整えるかは連合側の関係者と相談していこう」
おや。
「要望の人員を出せるのに、恥ずかしい、ですか?」
疑問を口にすると、ヤスケさんは深く溜息をついた。
「治安維持に無言の圧をもって争いを起こさぬようにする治安要員が潤沢に揃ってるということは、それだけ、そういった要員を必要とする国だと暴露するようなモノだ。恥以外の何物でもあるまい」
あー、なるほど。
「あれ? でも街エルフは引き籠り気味で、その姿を見かけるのも稀だと聞いてますけど」
「そうした連中が多いのは確かだが、中には自分の意を通すために無理を押してくるような連中もおるのだ。そういう連中に限って、動員してくる数も実力も高く小賢しい。対応する治安部隊もそれ相応に揃えねばならんのだ」
「それは大変ですね」
そういった一部過激派がいるのかぁ、と素直に感想を口にしたら、ヤスケさんは口をへの字に曲げた。
「他人事のように言っておるが、その厄介な連中の五指に入るのが貴様の隣人達なのだぞ。少しは自覚しろ。ケイティ、後でその辺りはしっかり教えておくのだ」
おっと。
なんか、思いの外強い言葉が出て来たなぁ……というか五指って。
ちょいとリア姉を見ると目を逸らされた。あー、つまり、そういうことか。
「ミア姉、リア姉、それとミア姉のお友達という三人ですか?」
「他に誰がいるというのか! ……誤解がないよう言っておくが、別にそやつらが暴漢のように振る舞って警察の厄介になっておる訳ではないからな。毎回、毎回、手を変え、品を変え、違法すれすれラインで圧を掛けてくるだけで、法の不備を正し、結果として不正を潰す流れとなることもあった」
何とも苦々しい顔で吐き出すように教えてくれた。あー、アレだ。灰色は黒じゃないんですよ、って奴だ。
「えっと、ヤスケ様、ちょっと話がズレてきたので、その辺りの話は後でケイティさんからしっかり教えて貰います、ケイティさん宜しくお願いします」
「はい、お任せください」
ケイティさんが丁寧に話を受けてくれたおかげで、ヤスケさんも矛を収めてくれた。ふぅ。
◇
「さて、最後となりましたが、今までに出た話以外、全てを担当することになる帝国、かなり大変と思いますが、ユリウス様、思うところをお聞かせください」
ちゃんと理解してるんだぞアピールをしてみたら、ユリウス様もそこまでで良いと手で制して話をしてくれた。
「アキが示した資料にあるように、東遷事業は、①東に伸びる新たな大河のルート選定、②東向き大河の開通、そして③現行の大河の規模縮小及び田畑の拡張の三つに分かれる。前者二つは諸勢力の力を借りることになるが、今ある大河に関わる事業の殆どは帝国が独力で行うことになる。また、新たに切り開く東向き大河の為に地を手放し離れる民達に、移住先も確保せねばならぬ。移住先は旧大河縮小によって得られる新地を割り当てることともなろう。これは帝国だけでなく、どの勢力にとっても前代未聞の大事業だ」
うん、そうだね。
改めて列挙してみると、帝国はその総力をもってこの事業に打ち込まないと、大河の東遷が終わったのに、南向きの現行河川の方の始末が終わってないなんて本末転倒なことになりかねず、そうなると東遷事業の効果も大きく減じてしまう。数年程度のタイムラグではあるけど、そうした無駄はできるだけ生じない方がいい。
「多分、細い支流といった規模で東向きの河道を通して現在の大河の流量を減らす、といったように流量の削減をなるべく早く実現し、それによって旧大河沿いの地の開墾を並行で進めていくのが良いでしょう。あちこちで並行で大規模事業が進むことになって、かなり大変なことになると思いますが、ユリウス様は僕に何を求めますか?」
諸勢力に求める話はもうある程度、通してあると思うから、そうなると、それ以外、つまり僕、竜神の巫女に何を求めるのか、が残された鍵ってことになる。
そう促すと、ユリウス様は少し言い淀んだものの、しっかりと希望を口にした。
「アキ、竜神の巫女には、此度の東遷事業について、マコト文書の知見を元に弧状列島の未来を見据えた上で、帝国の皇帝領を弧状列島を支える大穀倉地帯に変えることを提案し、それが受け入れられたことを喜ばしく思う旨を工事に携わる人々に対して宣言して欲しい」
……ほぉ。
「それは、前回の帝都訪問時と同様、竜族のどなたか、妖精族、人形遣いの人達を揃えた形を希望されると思って良いですか?」
「竜族は窓口と正式に決まった雲取様にお願いしたい。工事関係者には移住を余儀なくされる民も末席に加えたい。末席、つまり離れた位置とするのは竜の圧への影響を考慮して、だ」
ふむ。
「シャーリス様、立ち合いはお願いしてもよろしいでしょうか?」
「任せよ。相応しい彩りとなるよう演出も助力しよう」
いいね。
「ユリウス様、此度の事業はかなりの困難を伴うことから、僕もそれなりの助力は惜しまないつもりでした。ただ、望まれたような行動をすると、代表の皆さんに比べて、僕がこれまでよりも目立つ立ち位置となることは避けられません。相応の尽力があったと認めてくださいますか?」
求めるモノと支払うモノ、それは今回、釣り合ってるか、という話だ。僕がユリウス様の求めるように振る舞えば、それは今回だけでなく、今後も続く立ち位置が変わることを意味するからね。
ユリウス様は、僕の思いに答えて、居住まいを整えてしっかり答えてくれた。
「竜神の巫女の重みが増すこと、それでも申し出を引き受けてくれることに感謝したい。小鬼族の感謝は、統一国家樹立に向けて争わずとも生きて行けるよう我らの社会を変えていくことで報いよう」
ん。
「十分な対価であることに同意します。関係者を集めて行う宣言時の文言は皆で考えていきましょう。提案者として目立つことは許容しますけど、政の実行力を持つ代表の皆様が、過去の諍いを横に置いて、未来の為に手を取り合うことを認めた、そう参加者達が心から思えなくては意味がありません。匙加減を間違えると、統一国家の維持に竜神の巫女がいつまでも必要なんて本末転倒な話になりかねません。あくまでも要としてお飾りとしていればいいくらいの塩梅ですよ?」
そう念押しすると、皆さんも僕の気迫に押されてか、笑みを持って賛同してくれた。
「それではアキ、諸勢力が参戦義務を持つ同盟を締結すること、同盟参加勢力間での食料供給協定も合わせて結ぶこと、それと帝国皇帝領での東遷事業について、雲取様に話を通して賛同して貰えるよう頼むぞ」
ユリウス様が爽やかな笑顔で、豪速球を投げてきた。
「はい、お任せください。雲取様なら快諾してくださるでしょう」
今日はもう時間がないので明日、と言ったら、リア姉がこの後の時間に心話で事前の説明は終えておくから、明日は第二演習場で対面で話す方向にしよう、と提案してくれて、その方向で進めることになった。
ふぅ。
後は竜族の同意を得て、相応しい竜の選抜と派遣について話を通せばお終いだ。やっとゴールが見えてきた。
いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
ふぅ。やっと、やっと、同盟締結、食料相互供給協定、東遷事業についての大筋が決まり、竜族に話を持っていける段階に辿り着きました。いやー長かったですね。……はい、疲れました。
アキはもう話は決まったも同然と余裕でいますが、リアが事前説明しとくわ、と動いたように、そうそう簡単な話じゃありません。一度に動く竜族の数は少なくとも、延べ人数だけでいけば「死の大地」浄化作戦(序盤)にも匹敵する巨大事業ですからね。しかも、浄化作戦と違って竜族がこれまで必要としてこなかった分野、地質調査や河道開通の為の掘削作業とかですからね。
まぁ、こういった実務面での甘さは、そういった経験のない頭でっかちな学生なので仕方ないとこではあります。次パートからは雲取様とのお話です。
次回の投稿は、十月十八日(水)二十一時五分です。