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第十九章の人物について

今回は、十九章で登場した人物や、活動してても、アキが認識しないせいで登場シーンがなかった人の紹介ページです。十九章に絞った記述にしています。十九章は三日間しか経過してないので記載情報なしの人が多いです。


<訂正>

ドワーフのヨーゲルさん。なぜかヨーゼフさんになってるところが12~19章で合計60か所もあり修正しました。(2023年06月22日時点)

◆主人公


【アキ(マコト)】

アキにとって 十九章の三日間で一番興味を惹かれたのは、世界の外に繋がる世界樹、それと交流を深める黒姫様と進捗、感想を聞けたことだった。在り方が根本的に異なる樹木の精霊(ドライアド)との交流とは何か、そして竜の自己・世界認識すら揺るがす知識とは何か。

それは次元門構築への糸口ともなるのではないかと期待してるのだ。

その次に楽しみなのは異種族召喚、それを利用した妖精界訪問への期待か。

偶然とはいえ、異種族である竜の身体記憶を得たので、何かに繋がればとは期待してる。


その次は各国から絵本を集めて並べて比較・研究したり、竜族に読み聞かせをする辺り。

黄竜の人形操作マリオネットや人形提供も楽しみではある。

後に続くのは白岩様の鬼の武の研究と桜竜との恋愛への興味、同点くらいで依代の君とヴィオの逢引デートか。


諸勢力の同盟や、「死の大地」の浄化はそれらより数段落ちる感じだ。


何故ならまつりごと関連は変わっても、アキを取り巻く環境に変化が生じにくく、持続的な研究のための好意の先払いをしている認識だからだ。


勿論、相手の大変さを思えば、できるだけ応援するつもりはあるのだけれど。


二十章では、そういったアキの中の優先順位、興味を向ける方向が色々露呈して、参謀達が頭を抱える事になりそうだった。



◆アキのサポートメンバー



【ケイティ(家政婦長ハウスキーパー)】

十九章の三日間、ケイティは事前に用意した調整事項が殆ど消化されていない状況に、どうしようかと頭を悩ませることになった。アキの起きていられる時間は限られているので、どれは影響が低いと判断して、さらりと流す程度にするか、といった程度の調整しかできない内容ではあるのだが。


そして、ケイティにとって悩ましいのは、アキと代表達が集うことで思考がどこに跳ね飛ぶか予想が付かない点にあった。何故か関係する流れだからと、竜族に文化を紹介する流れから書物をそのまま渡すのはNG、絵本で読み聞かせをしようなんて話になり、人形操作マリオネットの操作に習熟していって貰おう、人形の館(ドールハウス)も用意が必要か、なんて話題に推移していった。その流れのおまけで、平和な状態を保つ提案と、平和の果実としての食料相互供給、なんて話も示したが、そんな事を代表達に提案するつもりなど、事前準備段階では全く想定していなかったのだから。


食糧問題の話は、いきなり年明けに破綻するような内容ではないので、これまでの戦争回避策と違って急ぐ意味合いは薄かったというのはある。だからアキは手を打たないと不味いかな、と思考がそちらに伸びることがなかった訳だ。


しかし、そんな提案を示された代表達はと言えば、聞かなかったことにもできず、先送りする意味も薄く、それどころか前倒しで締結するほど価値があると気付いて、鉄火場の忙しさで、提案の意味、影響、他の可能性などの模索に打ちこむ羽目に陥っているのだ。アキの提案に飛びあがってぶら下がるのではなく、足場を組んでしっかり掴もうと足掻いているのだ。頭の下がる思いだった。まつりごとには縁のない探索者稼業のケイティであっても、アキの提案が色々と必須の条件をクリアして初めて手が届く高難度な施策だと感じ取れたからでもあった。


まぁ、()()()()()()()()()()()()()として、ケイティがもう一つ悩ましく思っているのが、アキが白岩様の深い身体記憶に心話で振れた事で、自己イメージが揺らいだ件だった。何とか軟着陸したものの、本人が全く危機感を持たない接触であっても、それが心に大きなダメージを与えうる、という事が明らかになった訳で、これは極めてリスキーな事項と言えた。結果を見るまで影響が誰にも分らないのだから、防ぎようがない。

今回は遠い生態とは言っても、まだ生物の範疇に入る竜族が相手だから良かった。

けれど、これが「マコトくん」のように実体を持たず信仰によって形造られる神や、樹木の精霊(ドライアド)系となると、その影響がどうでるか想像すら難しかった。


幸い、黒姫様が当面は連樹の神、世界樹との心話は禁止、としてくれたので問題発生は回避できそうではある。ただ、それは先送りに過ぎず、次元門構築が現状の範囲で手詰まりとなれば、更なる可能性を求めて接触範囲を広げていくのは火を見るよりも明らかだった。


何か打てる手はないか。……ケイティの悩みは尽きなかった。


【ジョージ(護衛頭)】

アキが幻影で創り出した銀竜は、確かに幻影なので連邦大使館で発動すること自体は規定に違反はしていなかった。しかし、余りにも生々しく、召喚体の竜との区別が付かず、その割に識別用の宝珠も身に付けておらず、現場が混乱することになった。ジョージが同席していたにも関わらず現場を混乱させたとして、減俸一割一ヶ月の処分も下ることに。

まぁ、ジョージが同席していて、割り込んで止めなかったのも、彼の落ち度とまでは言えない理由はあった。第二演習場でアキが銀竜の幻影を出してあれこれ操作してた時には、影響を与えそうな要素を最小限にするということで、待機室付近まで距離を離していたからだ。だから間近で観ても本物と区別が付かないほど精巧な出来とは認識できていなかったのである。

実際、中庭でアキが銀竜の幻影を創造した際にも護衛として近くにはいたのだが、現れた瞬間、幻影だとわかっていても、身体に緊張が走るほどであり、即座に判断ミスを悟ることになった。

その為、アレは銀竜が空間跳躍テレポートしてきたのではないし、透明化術式で隠れていたのでもないし、そもそも魔力属性が完全無速透明な銀竜という個体が存在する訳でもないし、まして、実はアキの正体は銀竜だった、なんてのも与太話もいいとこ、と釈明に追われることにもなった。

結果として、セキュリティの規定見直しが行われることになり、アキが幻影術式で銀竜を出すのは原則、演習場内のみに限定という縛りが追加されることになる。街中で紛らわしいもんを出すな、との意見で関係者一同の心が一つになった瞬間だった。


【ウォルコット(相談役&御者&整備係)】

リバーシセットを竜族に提供した件では商機があり、共和国の動きは鈍いと考えたウォルコットだったが、実際に竜族相手の商売に手を出すか、というと踏み込めない意識があった。子に店を継がせたから、商売の方針に口など出さない、というのもあるが、そもそもモノが特殊かつ大型、空輸に耐えうる頑丈さ、室外運用が基本と、何気に軍用、それも海軍仕様かと言いたくなるような内容で、いくら大店おおだなと言っても、手を出しづらい案件だったからだ。しかも、竜族は貨幣制度と無縁なので、どこかの国を経由して納品する流れも外せない。儲けは出るだろうが掛かる手間と、横展開しにくい内容のオンパレードということもあり、宣伝効果を欲するような時期もとうに過ぎていたのも相まって、手を出しにくいと感じていたのだ。


そこに降って湧いた人形操作マリオネットという技法。その本格運用が始まれば人形の館(ドールハウス)や、そこで人形が使う道具類も揃えたい、という要求ニーズが出てきた。この話を聞いた瞬間、彼はこれだっ、と思わず拳を強く握り締めた。それほどの太い商機を感じていた。

竜族は合計三万柱とも言われている。そして竜神と崇められる彼らが使う品となれば、庇護下にある者達はきっと、竜神様に相応しい品を贈ろうとするに違いない。しかもこれ以上ないほどの長命種だ。一旦取引が成立すれば、都市国家規模でありながら、王侯貴族級の品を何百年、下手をしたら何千年と取引し続けてくれる上客群の獲得に繋がる、というのだ。しかも勝手知ったる人族用品である。思わず身震いするほどだった。

長老のヤスケは、魔術を用いる量産品でないと数が揃えられないと話していたが、だからと言って市井に流通している一般的な量産品で、贈る側が納得するだろうか? そんな訳がない。華美である必要はないが、贈った者達が満足できるだけの品位と質を備えた逸品であることは最低条件だろう。

らしくない判断ミスである。そこが竜族と深い因縁があり直接、交戦してきた世代の限界なのだろう。

ウォルコットは、必要な数の逸品を末永く提供できる体制の確立や、竜族御用達の看板を得られた場合の効果について熟考した上で、この商機に何としても食い込むよう、最速便で店に連絡を入れるのだった。

……なお、こちらでは常に準戦時体制ということもあって、カルテル状態であっても安定供給できることが優先されており、機会公平性を重視した公共入札のような規定はまだ存在してなかったりする。美味しい時代と言えるだろう。勿論、やり過ぎると強権で叩かれることになるので加減は必要だが。


【翁(子守妖精)】

翁にとって 十九章の三日間で一番気になったことは 異文化への理解の難しさと自分たちが無知であることの再認識をすることとなった。

アキがよく語っている比較文化学の観点が欠けている状態で、書物を読むとその解釈を謝る可能性があるということに気がついた。

それぞれの文化の中に翻訳が難しい 概念・言葉といったものが存在するということにも気づかされることになった。

そうした違いに触れることができている現状には大変満足しているが同時に同じような密度・深さで研究する仲間を増やすべきとの考えにも至った。

それはアキが提唱した絵本を集めて企画・研究しようという部分が発端となりそうだ。妖精達の間にも 絵本作家はいるが、あくまでも、それは内に閉じた活動であって、他の文化圏の絵本について調べようとするような意気までがあるかどうかは不明だ。 そういったところから着手して行こうと考えていた。


また 召喚術式についても 常時接続は翁だけであるがこれだけ交流を続ければ所縁(ゆかり)の品がなくとも、召喚できるのではないかとの思いもある。これについては 召喚術式の魔法陣 はすでにその情報を得ているので、こちらより魔力が潤沢にある妖精界から召喚をするといった形も考えて良いのではないかと思っているところだ。


わずか一本の召喚の経路パスによって繋がっている2つの世界が、このまま安定し続ければそれで良いが、何かあった時のためにも複数の経路パスを形成しておきたいと思う翁であった。


心話の世界越しに繋げる件は、深く見知った相手にならできる気もする。経路パスの混線例はアキとリアだけなので、逆に言えば、経路パスさえ確立できていれば、世界越しにでも相手を一意に特定できるのではないか、と。


【トラ吉さん(見守り)】

心話をしている最中に、生体反応バイタルサインの変化が起きて、ケイティが慌てるという事態になったことは過去にもあった。けれど、白岩様の身体記憶に深く触れたことで、アキの自己イメージが揺らいだ件は、心話自体は大変和やかに行われており、外から問題が発生していることを窺い知ることはできなかった。


それだけに、トラ吉さんもアキの突然の変化には実は結構慌てたようだ。ただ、周囲の反応を見て、必要なのはアキに寄り添うことと判断して、すぐ膝の上に登ったのは好判断だった。


この役ばかりは、いくら竜族が親しいと言っても変わることはできないのだ。まぁ寄りかかるくらいのことはできるだろうが、竜の鱗に触れてもひんやりとして心地よいとは感じても、猫の毛並みに触れるような温かさ、手触りの良さは得られはしないのだから。


そんな訳で、彼の中では、アキはまだまだ依代の君とは別の意味で目が離せない、と認識されたようだった。参謀達に招かれた時も、悪戯っ子のような表情を浮かべていたので、程々にせいよー、と窘めるのだった。


【マサト(財閥の家令、財閥双璧の一人)】

ケイティから、人形操作マリオネットの技法と今後の展望について報告が届くと、彼とロゼッタは久しぶりの大商いに身震いすることとなった。太陽熱温水器とは違い、今度は純粋に街エルフにしか供給できない商品なのだ。注文性(カスタマイズ)を前提とした超高級品であり、恐らくは日常使いもされることから、運用サポート費も稼げる。しかも相手は歴史を刻むようなスパンの長命種であり、取引期間は街エルフの感覚からしても長大この上なしである。


それに、提供した人形はある意味、その竜にとって、地の種族向けの顔となるのだ。文化的な意味でも、政治的な意味でも、影響は計り知れないだろう。


彼が即座に部下達を呼びよせて、人形操作マリオネットの現存している人形の所在確認や、製造技法を持つ人物の特定、説得に関わるだろう個人情報の収集、現代技術での再現についても研究所に協力を打診する、といったように先手を打ったのも当然だった。


それとは対照的に、人形の館(ドールハウス)の方は仕様検討をさせる程度に留めていた。技術的には街エルフでなくては作れない、という代物ではなく、その癖、空輸にも耐えうる運搬性も確保しなくてはならないなど、技術難度から言ってドワーフ達の技に頼るのは確実だったからだ。


ヤスケからも、アキやリア向けの特注品レベルではなく、魔術を用いた一般品を使えるようにしていきたい、との要望が届いていた。そうなると、街エルフだけで市場を占有するのは無理と判断したのだった。


当然だが、彼は竜族向けの人形操作マリオネット用人形の供給は財閥が総取りするつもりだった。どうせ、竜族との過去の因縁もあって国や競合企業の動きは鈍いだろう。それに比べれば、リアの抱えた悩みを解決する為ならあらゆる可能性を厭わない事がスタートラインであった財閥にとっては、相手が竜族だろうと躊躇する事などあろう筈がなかった。それに、アキも一押ししてる案件なのだ。出し惜しみなど一切するつもりは無かった。



◆魔導人形枠



【アイリーン(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で料理長)】

特筆する内容はない。


【ベリル(女中三姉妹の一人、ケイティの部下でマコト文書主任)】

特筆する内容はない。


【シャンタール(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で次席)】

特筆する内容はない。


【ダニエル(ウォルコットの助手)】

ウォルコットの助手という本業をしつつ、神官としての職務……の代わりに依代の君のフォローに追われる日々だ。依代の君が公式の催しに参加するとなれば、ヴィオと二人で彼の後ろを歩くのも定番になってきた。止め役となることを期待されていることは重々承知しているが、何とも複雑な気持ちでもあった。というのも依代の君は悪意を持って行動することは殆ど無いからだ。強いて言えば、アキに対して、嫉妬の気持ちを清算する為に消滅術式をぶっ放した時くらいなモノである。


ただ、大した話にならないと予想してたとはいえ、彼は悪意はなくとも、人を試す気質があるし、選択に苦悩するような立ち位置になることを喜ばしくさえ思ってたりする。それに思い立ったが吉日とばかりに、こちらがあっと思った時にはもう動いている、というくらい、思考と行動が直結しているようなところがあった。


そして、そんな依代の君との交流が増すにつれて、彼女は信仰とは何なのか、自身に問うことも増えてきた。……というのも、「マコトくん」への信仰心は変わらないものの、依代の君への信仰心は客観的にみて結構な勢いで目減りしてきていると自認していた。けれど、彼との繋がりは「マコトくん」へのソレと変わることはなく、彼からの神託も普通に届く状況だった。


アキの師匠ソフィア曰く、対象との繋がり、経路(パス)は親愛の情、深い理解など、その質は多様であって、信仰心は必須ではない、と言う。論拠としては、信仰心が無くともアキの姉ミアは、高位存在、つまり神や精霊、魔獣などと経路(パス)を確立して心話を行えていた。確かに神器を借り受けたりはしてるが、信者でなくとも交神はできただろう? と。


アキは、信仰対象と信者という関係では、隣人としての仲は深まらないと事あるごとに竜族との関係を説いている。これはこれで信仰の関係者としては頭の痛い話ではあった。竜神は現身を持つ存在であって、「マコトくん」はそうではないのだから、同列には語れないと主張する神官もいた。

しかし、依代の君は、現身を得た「マコトくん」なのだ。少なくとも降りた直後は間違いなく、同じ存在だった。


恐らく、今のアキであれば、「マコトくん」に所縁ゆかりのある品であれば、神器でなくとも、軽く心話を成立させるだろう。実際、信仰心など欠片もないのに、「マコトくん」の側から、アキに対して神託が降りた実績もある。そんじょそこらの家族などよりよほど親密な経路(パス)が築かれている事だろう。


……ただ、ならば、自身が依代の君に向ける思いとは何なのか。彼と自分の関係とは何なのか。


そう自身に問うた時に、これと思える言葉が思い浮かばなかった。子供、ではない。多分、弟、なのだろうとは思う。そして、そんな関係は微笑ましく思えた。


【護衛人形達(アキの護衛、ジョージの部下)】

特筆する内容はない。


【農民人形達(別邸所属、ウォルコットの部下)】

特筆する内容はない。


【ロゼッタ(ミアの秘書、財閥双璧の一人)】

人形操作マリオネットの人形提供や、今後の方針についての連絡を受けて、ロゼッタはマサトが大商いの商機を見出したのとは別に、竜族に人形を提供すること自体に大きな意味があると判断していた。


竜族にとって、街エルフが率いる魔導人形達とは、幼竜を狙い殺してくる暗殺者であり、罠使いであり、忌み嫌う根絶対象だった。一体見つけたら三十体はいると思え、などと認識されている、なんて話も聞こえてくるくらいだ。実際、空間鞄を携えた人形遣いは、数十人という魔導人形と共に行動してるとも言える訳であながち間違いではないのだが、まぁ認識が酷い。G並みの嫌われっぷりだ。


ロングヒルに来ている竜達は、竜族の中でも己を律する能力に優れた個体が選抜されているとも聞いている。実際、老竜の福慈様ともなれば、街エルフが視界に入れば、反射的に熱線術式を放って滅してしまうだろう、なんて自分で語ってるくらいであって、街エルフや魔導人形への忌避感は強かった。


その点、人形操作マリオネットの人形は、自律性がなく、操者の思う通りに動くだけの人形パペットだ。魔導人形と違って、道具に分類される存在なので、忌避感はだいぶ薄れる事が期待できた。報告でも黄竜様は操る人形を道具として大切に認識して扱っているとのことだ。これは良い傾向と思えた。


竜族の間で、人形操作マリオネット技法とその人形が普及していけば、種族間の軋轢も徐々に緩和していくかもしれない……と思うのだった。


【タロー(小鬼人形の隊長の一人)】

特筆する内容はない。


仮想敵部隊アグレッサーの小鬼人形達】

特筆する内容はない。


仮想敵部隊アグレッサーの鬼人形、改めブセイ】

特筆する内容はない。


【大使館や別館の女中人形達】

特筆する内容はない。


【館(本国)のマコト文書の司書達】

特筆する内容はない。


【研究組専属の魔導人形達】

特筆する内容はない。


【リア麾下の魔導人形達】

特筆する内容はない。



◆家族枠



【ハヤト(アキの父、共和国議員)】

特筆する内容はない。


【アヤ(アキの母、共和国議員)】

特筆する内容はない。


【リア(アキの姉、研究組所属、リア研究所代表)】

十九章では、リアの研究所が絡む魔導具類のお披露目が多かったこともあり、問題を起こさず、公開演技(デモンストレーション)を終えることができてホッとしていた。実際のところ、上手く行ってる部分もあるが、まだ課題を抱えている項目も多く、アキが触れていたように、まだまだこれからといった状況だったのである。


操作してもまともに五分と動かないiPhoneを使って、これぞ世界を変える革新的ギアだ、とプレゼンテーションを行ったジョブスほどギリギリではなかったにせよ、何か問題が起きたらフォローしようか、と思う程度には、不安材料を抱えている有様だった。


財閥預かりになりそうな話は、リアは決定権を持っている訳ではないので、まぁ大丈夫そうなら、話を聞いておくくらいでいいか、といったノリだった。アキがマサトやロゼッタなら、この話には食いついてくる、と語った時も、あの二人なら確かにそう動くだろう、と思ったので、そこはスルーした。


ただ、アキが人形操作マリオネットの人形を街エルフが竜族に提供する件については、自分ならそこまでは踏み込まない、踏み込むとしてももっと言い方を配慮するといった部分で、アキがかなり大胆にヤスケの神経を逆撫でするような言い回しを選んだので、これは流石に注意したのだった。


まったく、ミア姉みたいな言い方してるなぁ、と少し懐かしさも感じたりはしながらだったが、勿論、そんな思いは心の奥の棚に放り込んで、相手を思いやる気持ちを忘れてはいけないんだぞ、と指摘したのである。


ただ、この辺りの感覚は、リアが長老達の底無し沼のようなどす黒い目に怖さを感じて、無意識のうちに踏み込まないよう腰が引けているからだったりする。その点、ミアは同じように怖さは感じても、それはそれとして、と心の棚に感情を放り込んで、他の視点から見れば共感できる、妥協できるポイントを選べる強さがあった。まぁ人はそれを無頓着と称するかもしれない。何にせよ、そこがミアとリアの違いと言えるだろう。リアはある意味、ちゃんと自身の心で相手に向き合う真摯さというか純粋さがあるのだ。だからこそ心を病んで、やさぐれたりもしていたのだが。


その点、ミアはリアの苦悩を何とかしたいと考えうる手を全て尽くして、万策尽きて絶望の淵を覗いた結果、自分自身の感情、心の動きが邪魔をしているなら、一旦、それは横に置いて、と自分自身すら手段の一つ、変更できる手駒の一つと看做す域に達したからこそ持つに至った意識と言えるだろう。


それは全てを失って底なし沼のような目を持つに至った長老達と、決して譲れない最後の光、望みを持っているか、というただ一点しか違いはなく、それ以外は同じという極限の意識だった。


誠がミアとの心話が成功したのが、リアとの心話が成功して歓喜に包まれていた時期だから良かったものの、そうでなければ、誠はミアに懐きはしなかっただろう。


【ミア(アキ、リアの姉、財閥当主、マコト文書研究第一人者)】

アキがサラサラと集団安全保障の概念を引っ張り出してきたり、仮想敵国も含めて全ての国が参加して意見調整を行う組織、国際連盟や国際連合について、話をすることができたのは、ミアがその辺りについて突っ込んで話を聞いていたという部分が大きかった。


ミアからすれば、弧状列島内ですら統一できておらず、いくさに明け暮れている現状は、日本の歴史で言えば、戦国時代後期、江戸時代前くらいの状況に位置付けられていると思えた。惑星全域に対する弧状列島の小ささについては認識できていたので、大陸系の巨大国家といずれ交流、衝突が起こることは火を見るよりも明らかだった。だからこそ、国内統一、富国強兵政策、列強との争い、二度の世界大戦、冷戦構造確立、冷戦構造崩壊、超大国一強時代、多極構造という流れには、強い興味を持った。


そして、ただ情報を得るだけでなく、なぜ当時の国家はそう判断したのか、他の可能性は無かったのか等、疑問に思ったことをばんばん聞いていったので、誠はその問いの大半に答えられず、先生に頼ったり、近所の御爺さん、お婆さんに頼ったりと悪戦苦闘しながら、見解を調べることになった。当然、現代でも諸説入り乱れる内容が多いので、それぞれについて、なぜ意見が割れるのか、それぞれの説の特徴、優位性と問題点について、自分なりに理解を深めることにもなったのである。


その為、アキは歴史を語る際には、その国単独ではなく関係する国々について認識し、それぞれの置かれた状況などを把握して、だからそう判断した、そこで判断を誤った、実は政府中枢にいた〇〇は相手側に組するスパイだった、なんてところを意識するようになったのだった。


なので、大きな流れや関係、人物など多面的に物事を捉えているので、細かい年号や地名は忘れてたりもするけれど、大筋は覚えてる感じになっているのだ。今のアキの性格が培われたのは、そういったやり取りの末なのだった。


そんな訳で、ミアも意識して自分のような思考をするよう誠を育てたつもりは無かったし、むしろ、自主性の芽が見えれば邪魔せず伸ばすよう配慮していた……つもりだった。実際のところは毎日、手元資料抜きの討論会ディベートをやらされているようなモノであって、誠がミアの手口を学んで、似た思考を持つに至ったのもまぁ、当然だったと言えるだろう。



◆妖精枠



【シャーリス(妖精女王)】

十九章では僅か三日間ではあったが、シャーリスが極めて重要と判断する出来事がいくつも起こった。研究面では、異種族召喚への道筋が開けそうな件と、召喚術式自体の起動、維持に必要な魔力の大幅削減が見込めそうな件は、大きな変化と言えるだろう。どちらも妖精界にアキを妖精として召喚するのに繋がる研究であり、これは妖精の国の民の多くも待ち望んでいる事だった。


また、召喚術式が既存の数%程度にまで必要な魔力量を低減できれば、妖精が妖精を召喚するといった事も視野に入ってくる。損害を気にせず召喚体の妖精達を周辺国に派遣できるとなれば、その利便性は計り知れない。一割召喚のように能力を落とした召喚体でも情報収集はできるし、いっそ、一分召喚くらいまで落とせば、魔力が小さ過ぎて感知すら困難にもなるだろう。それに召喚体であれば、現地で得た情報をすぐに本国で共有することもできる。現地から持ち帰る、或いは通信術式で報告する手間と発覚のリスクを回避できるのだ。そういう意味では、召喚術式の改良、機能強化は推し進めていきたいところだ。


まつりごとでは、関係勢力全てが参加をする同盟の締結、という発想は、想像すらしてこなかった。妖精の国で議論してた内容は、周辺国のどこかと不可侵条約を結ぶとか、合同軍を組んで襲ってきた周辺国に対して纏めて不可侵条約を結ぶ、といった案までしか出ていなかった。周辺国に関する詳しい情報を持っていないのだから、それ以上踏み込んだ条約締結のアイデアが出なくても仕方なかったの確かだ。


それに弧状列島の諸勢力が全て参加する形での同盟を結ぶという提案は、弧状列島が周囲を海によって隔てられた地域だからこそ成立する話であり、妖精の国の場合、周辺国の更に先、その外側がどうなっているのかわからない以上、同じ提案が妖精の国と周辺諸国に対して適用可能かどうかもわからなかった。


シャーリスは、情報は武器であり、知らない事は圧倒的に不利なのだ、と強く意識することとなった。合同軍を軽く撃退したからと言って、なぜそこで将来も安泰だ、などと思えていたのか。過去の自分が偽りの平穏に囚われていたと反省するのだった。


【賢者】

十九章では僅か三日間ではあったが、賢者にとっては値千金、心に雷が打たれたような衝撃を受けて、感動に打ち震えていた。確かに翁が召喚術式について得た気付きは素晴らしかった。召喚術式への理解が深まり、術式の起動や維持に必要となる魔力の大幅な低減、それに異種族召喚に繋がる改良についても、色々とアイデアが浮かんでくることにもなった。


しかし、それらよりも大いなる可能性を感じたのは、後から機能を変更できる「空の魔導具」という概念だった。


これまでに妖精の国で作られてきた魔導具は、魔力を貯めておく宝珠、術者の能力を底上げする魔導杖、それに特定の術式を発動させることができる術具といった種類が存在していた。


街エルフ達の魔法陣は、超高速、精密制御、術式の複雑化を実現させるという意味で、妖精族には存在しない技術体系だった。ただ、それらも三分類でいけば、特定の術式を発動させる術具に含まれるモノである。


それに対して、アキが示した「空の魔導具」という概念は、術式を発動させる術具ではあるものの、任意にその内容を変更できる、という意味で、既存の枠に含まれない内容だったのである。これは未知への対応を迫られる飛行船による周辺国探査任務において「有用そうな術式を刻んだ術具を満載していく」のではなく「現地で必要に応じて起動する術式を変更できる魔導具を持参していく」という選択肢を取れることを意味していた。


妖精族が優れた術者であって二つ、三つと術式を同時起動できる実力があるのは確かだが、それはあくまでも個人レベルの術式の範囲に過ぎず、しかも並行実行する術式は低位とせざるをえない問題を抱えていた。


しかし、「空の魔導具」であれば、それこそ飛行船全体に作用するような集団術式レベルの作用であっても、当初想定していなかった、急遽必要となった内容でも実現できる、ということに手が届くのだ。膨大な数の魔導具の集合体である飛行船、という新たな存在を創り出したからこそ、必要性が生まれた高難度要求とも言えるだろう。


今は予想できない何か、それに対応する為の余力を持つ魔導具を飛行船に持たせる。なんと魅力的な提案だろうか。遠出をする船員達もその柔軟性を心強く思うことだろう。


……ただ、既存の魔導具は術式を不可逆に刻み込む、地球(あちら)で言うところの読込専用回路(ROM)相当であり、変更可な読込専用回路(PROM)の概念は存在していないので、その実現方法も含めて、暫くは基礎研究をしていくことになるだろう。


【宰相】

十九章では、彼は忙しい最中ではあっても、シャーリス女王と共に代表達の話し合いの場に参加することが多かった。というのも、妖精の国は周辺国との交流がなく、国交や対外折衝といった政治的な活動をこれまでにしたことが無かったからだ。そんな中、自分達に直接関係のない諸勢力が集い、国益をそれぞれが確保しようと交渉する場に同席しても良いと言われれば、それは大喜びで参加もするというモノだった。


こちらの世界でも馴染みのない、地球(あちら)で世界を二分するほどの騒ぎを起こした思想「共産主義」に触れることで、異文化の書物に無邪気に触れることの危うさを再認識することにもなった。アキは読んだら呪われるような品でもない、単なる書物だと言っていたが、それはあまりに軽い表現だと感じていた。


長老のヤスケも危惧していたように、書物に綴られた思想、意見に対しては、妖精や竜の強みは何一つ役に立たず、一切の守り無しで触れる心話のような危うさがあると思えたからだ。しかも一度、思考が影響を受ければ、何をしようと判断や受け取り方自体に方向性が付いてしまい、元の状態に戻すのは至難だと言う。浄化術式で対抗できる呪いの方がなんぼかマシとすら思えた。


アキが提案した、全勢力が参加する軍事同盟の締結や、食料支援協定についても、水や食料の確保の重要性、短命種の世代交代の早さなど、学ぶべきことは多かった。


そして、彼は、自分達があまりに知らなさ過ぎることを強く意識することにもなった。


【彫刻家】

彼のメインの仕事は、飛行船の建造支援であり、彼の弟子達も毎日、その仕事に明け暮れている。そんな中、召喚術式の検証をしたいから、と喚ばれることになり、何も自分でなくとも、と実のところ、あまり乗り気ではなかった。


が、賢者から「空の魔導具」という概念とその可能性について話を聞き、後ろ向きな気分は一気に霧散することとなった。


飛行船は妖精の国が建造した、魔導具の集合体、動く城といった存在だった。だからこそ、城が倉庫を備えているように、飛行船の船倉にも空間鞄の技術を用いて、多くの物資を積み込めるよう工夫はしていた。


しかし、飛行船が向かうのは妖精の国から遠く離れた地であって、周辺国にその存在を気取られぬためにも、高高度を維持し続ける必要があった。問題が発生しても飛行船単独で対処することが求められているのだ。


一応、火災に備えたり、船体の損傷に備えたり、各種魔導具の予備を用意したり、と考えてはみたものの、飛行船の積載重量には限りがあり、何でもかんでも潤沢に、とはいかなかった。


そこに現れた「空の魔導具」つまり、後から使い道を変更できる魔導具、という概念は目から鱗の発想だった。求められる機能を失うことなく発揮し続ける、という耐久性を求めた既存の魔導具は当然のことながら、変わらないことが求められていた。ところが「空の魔導具」は変わること、変えた状態を保つこと、が求められるのだ。


もう、その発想を聞いただけで、どうしたらいいか、何を試せそうか、試作機はどう作ろうか、など尽きることのないアイデアの泉で溺れてしまいそうだった。


なので、彼は召喚術式の改良、同期率変更が及ぼす影響の調査、なんてところは賢者の弟子達に任せて、彼らの作業に付き合いつつも、賢者と共に新たな研究について熱く語り合うこととなった。


……なお、その日のうちに、彫刻家も家族によって仕事のし過ぎにならぬよう監視が付けられることとなるのだった。


【近衛(参謀&妖精の国の司令)】

妖精界では軍を束ねる司令として、こちらでは参謀本部の一員として二足の草鞋を履く生活が始まった。実際には司令の方はできるだけ負担を減らす配慮がされているので、参謀としての仕事の比重が大半ではある。ただ、報告を受けて判断すればいい、という上司役というのが殊の外、大変なモノだと痛感することにもなった。


自主性を尊重しつつ、所定の目標は達成させること。良好な関係を維持しつつ、上司と部下という立場は守ること。……言うのは簡単なのだ。言うのは。


それもあって、彼は女王陛下を護る盾、近衛隊の長として召喚されていた時とは人が変わったように、研究組や調整組の面々とも積極的に交流を深めることとなった。


妖精の国という視点だけでではなく、多様な視点こそが客観性を担保する、と気付いたからだ。まぁ、そうは言っても、まだ参謀として働き始めたばかりなので、何とか日々の仕事を回すので精一杯といったところだった。


【賢者の弟子達】

彼らは賢者から、今後の課題だと言って、召喚術式の改良を任されることになった。召喚術式自体、妖精界においても必要魔力量が膨大過ぎて、気軽に発動できるモノではなく、アキやリアに魔力を頼る現状では、その属性が完全無色透明になってしまい、観測困難となる弊害はあるものの、大変貴重な機会であり、存分に活かせ、というのだ。


しかも、シャーリス女王からは、召喚術式に必要な魔力量を低減できれば、アキを妖精界に招く異種族召喚や、使い魔のように妖精界で召喚体を運用する事の可能性についても話があり、皆の研究に期待している、との言葉まで賜ったのである。


彼らは大いに奮起することとなった。その挑戦と成果の一端は多分、二十章で語られることだろう。


【一割召喚された一般妖精達】

→特筆すべき内容はなし。



◆鬼族枠



【セイケン(調整組所属、鬼族大使館代表)】

参謀達との顔合わせと言う名の忌憚のない意見交換会では、参謀達はアキができるだけ 竜族との交渉に関与することを期待しているように感じられた。そこで、セイケンはアキができるだけ関与をしない方が良いという意見を述べて 参謀達を驚かせた。 というのも セイケンからすれば現時点でも既にアキの影響力は強くなり過ぎており、これ以上強めることは、得策ではないと認識していたからである。


またアキの意見はただでさえ通りやすいために、今後の竜族との交渉事が、アキの思い描いた未来に向けて転がり落ちていくことが容易に予想できるからというのもあった。


なぜ、そこまで、と問われたセイケンは、アキの思い描く未来像は魅力的ではあるものの、性急に事を運び過ぎてるように思えるからだ、と内心を吐露した。こうして皆と席を同じくしていると、こんな未来がくれば、という気持ちは勿論ある。だが、本国に帰れば、昔からの変わらぬ空気がそこにはある。人の思いは、社会はそうそう急には変わらないモノ、そう思えるのだと。


【レイハ(セイケンの付き人)】

→特筆すべき内容はなし。


【トウセイ(研究組所属、変化の術開発者)】

アキが白岩様の身体記憶に深く触れたことで、人と竜の身体記憶が混ざって混乱してるとの報を受けて、慌てて第二演習場へと向かったが、途中、ソフィアの邸宅に向かい、彼女を自身の肩に乗せて急ぎ足で歩きながらも、どうすればいいのか、道中ずっと相談し続けることになった。

そこでソフィアから言われたのは「専門家だと言ったって、今回の件は聞いたこともない症例なんだから、多少悩んだり、私や白岩様に相談したり竜眼で視て貰ってもいい。ただし、落ち着いて振る舞うこと。取り乱した医者なんてのが来たら、どれだけ腕が良いと紹介されたって、患者は不安に思っちまうからね」ということだった。

それだけでいいのか、と困惑したトウセイだったが、ソフィアは「落ち着いた顔でいさえすれば、心のうちなんざ、相手が勝手に想像して落ち着いてくれるもんさ」と笑った。そして、あれこれ考えても手詰まりなら、その時に必要と思う奴を呼び寄せたっていい。とにかく寄り添い、見捨てない、助けるという態度だけ示しておけばいいんだよ、とソフィアは呟いた。


そう告げるソフィアも、自身に言い聞かせるように話しており、そう語りながらも、どうすればいいのか、猛烈に思考を巡らせていることも読み取れたので、トウセイも腹を括ったのだった。


結果は、幻影の銀竜を創り、それをアキが動かすことで竜の身体記憶を銀竜に結びつけることで問題解決となった。この結果はトウセイ自身、巨人化した際の自分と、普段の自分について深く見つめ直す切っ掛けともなった。


【レイゼン(鬼王)】

レイゼンは人形操作マリオネットの試技を見て、事が性急に進み過ぎていると強く感じていた。これまで竜族と地の種族は、互いに関わることを控え棲み分けをしてきた歴史があった。特に街エルフとの相互不干渉の取り決めを交わして以降は、その流れは決定的となった。それ以前の関わりと言えば、荒ぶる竜が戯れに地の種族の集落などを襲うといった、正に意思ある天災といった様相だったので、良い流れだったと言えただろう。互いに距離を置いていたからこその安定であった、とも言える。

そこにきて、両者を繋ぐアキの登場によって、両者は急激に距離を縮めることとなった。幸いにしてこれまでのところ、両者の交流は実り多いモノとなっており、争いを招く火種は少ないと思える。

だが、鬼族の感覚がらすれば、やはりもっと腰を据えてゆっくり事を進めるべきと思えるのだ。鬼族より遥かに寿命の長い竜族であれば、同様の思いを持つ竜も多いだろうとも思えた。

だから、彼は人形も個別に創るなど、時間を掛けるべきと主張した。そして時間を掛けるべきとの提案に他の代表達が同意したことに安堵するのだった。彼もこの一年、激動の時を過ごしたことで悟っていたのだ。鬼族は強いが一勢力に過ぎず、竜族が絡む案件では、地の種族は割れていては話にならない、と。


【ライキ(武闘派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【シセン(穏健派の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の女衆(王妃達)】

→特筆すべき内容はなし。


【セイケンの妻、娘】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族のロングヒル大使館メンバー】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の職人達】

→特筆すべき内容はなし。


【鬼族の竜神子達】

→特筆すべき内容はなし。


【ブセイの兄弟子達】

→特筆すべき内容はなし。


【シゲン(参謀 New!)】

この秋に新設されることとなった参謀本部に参加することになった初期メンバーの一人である。連邦においては、毎年のように攻めてくる帝国との戦いにおいて、防衛戦を担ってきた重鎮である。当然、そんな現役バリバリな将が引き抜かれるとあっては、連邦内でも物議を醸すことにもなった。

ただ、彼自身、帝国のファビウスに対しては決め手を欠いている意識はあり、同時に無理に戦果を求めず守勢に徹すれば、ファビウスであっても、その守りを抜いて後背地を脅かすのは難しい、と見極めてもいた。幸い、ロングヒルは連邦の最前線は目と鼻の先であり、彼が戻る程度の時間を稼ぐのは容易であるとの判断も働き、彼は参謀の任を引き受けることとしたのだった。


彼がトウセイのような一般人のような雰囲気、態度をしてるのは、それが素で楽だからというのもあるが、相手を見極めるのにその方が都合がいいというのもある。そもそも個人の武では上を見ればいくらでも強い連中がいるので、最初から自分は考えるのが専門、と示している訳だ。

そして、個人の武では彼を超えている武闘派の連中も、シゲンがいるといないでは大違いだ、という事実を深く理解していた。彼も鬼王レイゼンと同じく、多くの男達が銃弾の雨で命を散らした中、戦線を崩壊させず、国を守り抜いた実績があったからだ。


そんな彼だが、見た目詐欺な妖精族達の影響もあって、外見や態度で相手を見誤るような雰囲気が払拭されているロングヒルの様子には多少面食らっていた。鬼族の巨体に怯えるでもなく、彼の持つ一般人のような風体を甘く見るでもなく、誰も彼もがその心の在り方、意志を見極めようとしてくるのだ。

それだけに彼は、ロングヒルの地に来たことを喜んでいた。連邦の地にいては知り得なかった英傑達が集う地であり、きっと飽いた心の飢えを満たしてくれるだろうと。


なお、図上演習を得意とする副官も来てはいるのだが、集団を持って経験を補う小鬼族のファビウスも部下達を同席させなかったように、アキとの初顔合わせでは、人員を絞っていた状況だ。副官くんもいずれ本編で登場したら紹介することになるだろう。



◆ドワーフ族枠



【ヨーゲル(調整組所属、ロングヒルのドワーフ技術団代表】

依代の君が ハンググライダーで空を飛ぼうという件についてはヴィオとダニエルから、安全性にとにかく配慮して欲しいと念押しをくどいほど言われ、彼も神なのだから召喚して召喚体で空を飛べば良いではないか、などと呆れたように言ったところ、それは良いアイデアだ、などと同意されることになった。勿論、その話し合いの場にいたのが、依代の君、ヴィオ、ダニエルなのだから、その同意にどれほどの重みがあるかというと、まぁ微妙。


そもそも、今の依代の君は、「マコトくん」から降ろした一体目の依代、そこから更に降ろした二体目の依代という二重構造になっていて、一体目と二体目の依代の一方だけを常に動かし、もう一方は必ず停止させていることで同一性を保っている、という状態だ。なのに、そこに召喚を加える、というのは流石にごちゃつき過ぎだろう。

二十章ではこの件について、研究組の面々、特に白竜を交えて一応議論されることになる。その際には依代の君を召喚する場合の利点、欠点も明らかになっていく。……まぁ、研究組なら誰に聞いても問題山盛りで不採用、と即答される話ではあった。


連邦大使館に呼ばれた際には、多様な種族の技術や知識が寄り集まる事でどのような進歩 変化を遂げたのか どのような可能性があるのかについて、参謀達から質問攻めに晒されることになった。ドワーフ族の常として、確実に動作する現物に落とし込むのが役処なので、ヨーゲルの論調は必ず、現実的な造りにするならば、といった切り口になる。そして、各勢力の技について精通している彼は、質問する者の所属勢力に合わせて、わかりやすい説明をするので、この姿勢が大いに参謀達の評価を得ることとなった。


あぁ、ここにも常識人がいた、絶対引き込め、と参謀達が目を輝かせたのは当然の流れだった。


【常駐するドワーフ技術者達(アキの使う馬車の開発者達)】

→特筆すべき内容はなし。


【各分野の専門家達】

→特筆すべき内容はなし。


【ドワーフの職人さん達】

→特筆すべき内容はなし。



◆森エルフ族枠



【イズレンディア(調整組所属、ロングヒルの森エルフ護衛団代表)】

連邦大使館で参謀達と 研究 組や調整組が集まって顔見せを行った際には、彼も交流祭りの会場から抜け出して参加することになった。一般市民相手のアピールと森エルフの代表としての仕事であれば、参謀達との繋ぎを優先するのは当然だったからだ。


アキが白岩様との心話でまた問題を起こしたことから、他の種族とは異なる観点を持つかもしれない森エルフの精霊使いということで、心話を行うことで何か得るものがあるかもしれないと期待する発言が参謀達から出ることになった。対外的な顔もあるので、一応、興味深い話と返事はしたものの、彼自身は乗り気では無かった。それをするくらいなら、多少相性が悪かろうと他の関係者、例えばケイティ辺りと心話を行う方がまだマシだろうと感じていたからだ。彼の精霊は竜族相手の心話なんて無理と、最初から拒否ってるくらいだ。アキやリアは魔力属性が完全無色透明ということで、その魔力を感知できないが、竜族と普通に心を触れあえるくらいだから、繊細な精霊が接触したがらないのも当然と思えた。


今くらいの距離感で付き合う分にはアキは面白い子だが、ケイティや周囲の振り回される様を間近に見ているだけに、自分もその大渦の中に飛び込んで行こう、という気にはなれなかった。


そして、そんな距離感、一般寄りの感性は参謀達に好感を持たれることになるのだった。


【森エルフの文官、職人さん達】

→特筆すべき内容はなし。


【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】

→特筆すべき内容はなし。



◆天空竜枠



【雲取様(森エルフ、ドワーフを庇護する縄張り持ちの若竜)】

本人も語っていたように、竜族全体として、地の種族向けの窓口に就任した、というニュースは竜族の全部族の間で、大いに話題となった。そもそも竜族は部族単位で緩い纏まりを形成していて、種族全体を統一する勢力は存在していなかったのだ。


しかし、アキを筆頭に竜神子達が相手ではあるが、地の種族との関係が一気に縮まっていくことになり、リバーシ騒ぎの話もあって、取り敢えず、窓口を設けようという話になったのだった。


竜側の窓口を絞った、ということはその言葉を聞く相手も、地の種族の代表として絞られることになり、あちこちで個別に話をして混乱するような事態も回避できるだろう、と考えられたからだった。


……というのも、もう若竜達が竜神子の元を訪れて、交流を始めたことで、色々と要望も出て来たからだった。それが一部に留まる内容ならいいが、横展開が必要な案件ともなれば、窓口が一つで、話を通した方が楽だと悟ったのだ。


道具を使う文化はない、と言いつつ、竜用のリバーシセットが提供されれば、雲取様のいる部族では熱狂的な盛り上がりとなったことからわかるように、地の種族の文化に対する潜在的なニーズはかなりのものがある事は確実だった。そして、竜用の品を用意するとなるとその手間が大変なのは理解している。時間もかかる。となれば、話を通すにしてもシンプルに行きたい、という訳である。


もうあれこれ貰う気満々だったりするのだが、同時に自分達の方からも何か提供できないとバランスが悪いだろう、なんて議論も出たりしていて、アキが聞けばニコニコすること間違いなしだった。


雲取様はと言えば、まぁ決定権がある訳ではなく、窓口となるだけなので、それよりは公務としてあちこちの部族の元に遠出ができることの方が楽しみだったりする。これまでは長躯ともなると通過する縄張りの主にいちいち挨拶して回る必要もあって面倒だったのだ。


……といった具合で、窓口を設けるぞ、と言っても竜側の意識はこの程度であって、群れで生きる地の種族からすれば、そんな緩いのか、と驚くレベルではあるが、これでも竜族からすれば大きな進歩なのである。遠い未来には竜族も群れとしての生き方に共感してくれる事だろう。多分。


【雲取様に想いを寄せる雌竜達】

十九章では黄竜が内緒で特訓していた人形操作マリオネットの操作をお披露目してみたり、竜族の考える対人距離(パーソナルスペース)について語ったり、人形操作マリオネット技法から派生する形で、人のように文字や絵、図を描きたいという要望ニーズがあることを伝えたりと、活躍シーンが多かった。あとアキが語ったように、竜族が地の種族に対して向ける意識は個体差が大きい。黄竜の場合は、仔猫の群れってとこで、見知った相手なら近くにいて眺めるのを好むことがわかった。


【福慈様(他より頭一つ抜けた実力を持つ老竜)】

→特筆すべき内容はなし。


【白岩様(雲取様の近所に縄張りを持つ成竜)】

十九章の白岩様は、桜竜の件で相談が~って感じでやってきたものの、今、問題が起こっていてどうにかしたい、という喫緊の話ではなく、アキが桜竜側ばかり推すようだと、ちと困るかな、程度の意識でやってきたようだ。

心話でアキと心を触れ合わせたことで、アキが桜竜を推す、と言っても間を取り持つ、軟着陸できるよう手を貸す程度の認識であって、他の雌竜達への影響や連携なども特に考えてないことが理解できたようだ。

結果としては、桜竜と共同研究するのを決めたこと、桜竜に提案したことへの謝意、共同研究者を得たことで進んだ鬼の武の導入について雑談に興じる、と言った程度の流れで終わった。

どうも白岩様は、必要なことは伝えるものの、グレーゾーンの部分については沈黙を選ぶ傾向があるようだ。これは黒姫が慌てて退散する様に気付きながらも、そこには触れず分かれたところからも見て取れるだろう。


ただ、それなら寡黙かといえば、そんなことはなく、自分が取り組んでる鬼の武の研究のことともなれば、随分饒舌になっていたようで、アキがポイントを押さえた話題を繋げていったこともあって、かなり深い部分にまで話す事にもなった。その中ではアキに説明をしていくうちに、自分の考えが纏まっていくという流れもあり、これもまた話を弾ませる刺激にもなったようだ。


そんな落ち着いた成竜としての態度を崩さなかった白岩様だが、実のところ、アキが異種族の深い身体記憶に触れて自己イメージが揺らいだ事には結構焦っていた。ただ、焦りを露わにしても仕方がないことなので、その気持ちを心の棚に放り込んで、外からは、多少想定外が起きたようだが慌てる程ではない、という空気を演出していたのだった。翌日に黒姫様を伴ってやってきたのも、白岩様が彼女の元に押し掛けて、ぜひ力を借りたい、と頼み込んだからだった。


彼もそんな誠実な面があるからこそ、桜竜も恋心を抱いたのだろう。案外、他人はよく見てるモノなのだ。


【黒姫様(雲取様の姉)】

アキの自己イメージが揺らいだ一件では、自身も在り方が遠く離れている世界樹との交流を続けるうちに、心が疲れていた事に気付かされることにもなった。もし、遠くから白岩様とのやり取りを見ている者がいれば、恥ずかしそうな表情を浮かべて、そそくさと退散する黒姫様、というレアな様子を眺めることができた事だろう。


暫くは休憩しつつ、リバーシを遊んで騒いでる様子を眺めたり、足繁く白岩様の元に通う桜竜の初々しい様子を眺めたり、なんてことをしてそうだ。


また、独りで世界樹との交流で得た知について研究することへの行き詰まりも感じており、鬼の武を取り込もうと研究する白岩様&桜竜コンビのように、黒姫様も研究仲間を募集することになるかもしれない。その場合は自己イメージが完全に確立しきってない若竜は実力が足りないので、成竜、それも子育てが終わったようなある程度、年配の層から誘うことになるだろう。


【アキと心話をしている竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【炎竜、氷竜、鋼竜(他種族登山に名乗りを上げた雄竜達)】

→特筆すべき内容はなし。


【牟古様他(登山先の主達)】

→特筆すべき内容はなし。


【福慈様の部族の竜達】

→特筆すべき内容はなし。


【桜竜(白岩様に果敢にアタックをかける乙女竜)】

アキの目論見通り、桜竜は白岩様との共同研究者となることができた。やはり首がかなり自由に動く竜族と言えども、自身を構成する筋肉やそこに巡る魔力までを動的に制御しつつ、その様子を自分で観察すると言うのは無理があったようで、桜竜という仲間を得たことで、白岩様の研究は大きく進展しそうだ。


鬼の武、その技は、魔力過多で繊細な制御など望むべくもない桜竜からすると、技の概要を聞いた限りではそのままでは現状の問題改善に直結はしそうには思えなかった。しかし、何もせずにいては現状を変えることはできない。


彼女にとって、鬼の武とは、僅かな希望、変化のために投じる一石、といった意味合いが強かった。


それでも、白岩様が疑念を持たないくらいには、鬼の武への姿勢は真摯なモノであり、だからこそ、白岩様も好感を抱いたのだった。


そして、自身でも鬼の武を竜に応用した技を教えて貰い、その技を試したことで、彼女は自身が思い違いをしていた事に気付くことになった。


この辺りの話については、二十章で、共同研究者就任おめでとー、の心話をした際に桜竜から熱く語られることになるだろう。彼女はこの話題が理解できる相手に話したくて仕方ないのだ。



◆人類連合枠



【ニコラス(人類連合の大統領)】

ニコラスは、現身を得た神、依代の君のことを普通の子供のように扱うアキの態度に、危うさを感じていた。依代に降りた頃よりはかなり神力も落ち着いた、などと紹介されたが、それでもまた一流魔導師のケイティなどより強い力が感じられたからだ。聞けば初手で消滅術式を放たれた、と言う。害にならないと理解していたからこそ、区切りをつける意味で放った……らしいが、そんなノリで放って良い術式な訳がない。それに短い時間だが彼の振舞い、言動を聞いて納得できた。


 依代の君の本質がアキと同じだと。


敬愛する姉の身体を間借りしている、という負い目があって行動が控えめなアキと違って、大抵のことであれば神力でどうとでもできるせいか、その行動は大胆というか無頓着さが見て取れた。

それに彼はアキとはまた別の意味で強い影響力を持っている。本人は使うつもりはないと言ってるが、言った傍から、自身が乗れるハンググライダーが欲しい、などと話す始末で、その言動も思考も、欲望に忠実、というか直結している子供そのものだった。

それに連合内においては、マコト文書の神官やその信者達の勢力は馬鹿にできない規模があり、ニコラスとて、その勢力に配慮した判断をせざるを得ない立場である。

幸いなことに、依代の君はアキに似て、重度のお姉さん好きなようで、連樹の巫女ヴィオや神官ダニエルの言動にも耳を傾けている。調べさせた限りでも、マコト文書の他の神官達とは明らかに扱いが別格だった。彼が連合内、ロングヒルの地にいる以上、彼が好んで枷を付けている状況を可能な限り維持し続けるべき、と考えるのだった。


【トレバー(南西端の国ディアーランドのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【二大国の一つラージヒルのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【ナタリー(二大国の一つテイルペーストのエージェント)】

→特筆すべき内容はなし。


【エリー(ロングヒルの王女)】

連日連夜、連合の女衆を集めての交流会に参加して、母セシリアが提唱した女衆同士の交流網を作る話を応援してる程度で、公務はちょっと一休みといったところとなっていた。まぁ、母と一緒に昼間に運動をして体重増加を防いだりと、優雅な振舞いも、日々の努力があればこそ、といった感じではある。


研究組も代表達が来ている間は静かにしてる予定であり、研究組の統制に関わる話に多少参加する程度かな、なんて考えていたところに「連邦大使館で参謀達と話をしてる時に良いことを思いついたので、妖精達を集めて召喚術式の検討作業をするから」なんて報を聞けば、驚くというものだった。


前日に第二演習場で創り出したという幻覚の銀竜を、連邦大使館の庭先にも出したなんて話も届いたし、騒がしくはなっていないものの、大使館周辺の警戒レベルを引き上げる通達が流れたりもしてて、何やってんの、という思いだった。


そもそも実物大の竜を幻影術式で出す、というのが既に個人の戦技レベルではなく、部隊相手の戦術級相当であり、しかも本物としか思えない精度で創り出す、なんていう真似は一流魔導師とそれなりの魔導具の補助が普通は必要だ。


移動しつつも、次々に届く報に目を通すと、術式の発動許可を出したのは師匠ソフィアであって、確かに単なる幻術、騒音も出さないなら許容される範囲の話ではあった。これまでにも何度も庭先で、説明に必要な資料を大型幻影でばんばん出していたくらいなのだから。


どうせアキのことだから、隠し芸のノリで求められるままに出した程度の話なんだろう、とは思い至っていた。


なら、どうして技のお披露目を求められたのか、初顔合わせ(ファーストコンタクト)をしてる参謀達とどんな会話が行われていたのか……なんてところを雑談しながら聞き出しつつ、エリーはその短い間に、参謀達の立ち位置を理解していた。


 あぁ、こちら側の方々だ、と。


話が通じるからといって常識が同じと思ってはいけない、理解してくれても共感するとは限らない、と多様な種族に揉まれて、相手がアキや研究組達のいるあちら側か、現実に根を張るこちら側か、彼女は見極める嗅覚を持つに至っていたのだ。


エリーはいずれ後から参加してくる竜族のことを話題にしつつ、自分の事を見極めようと、フレンドリーさを演じる参謀達に気前よく情報を提供し、安心できる仲間同士なのだとアピールするのだった。あの研究組の連中を御するには、同数では話にならないのだから。味方は多い方がいい。その意識も早く共感して貰いたい、そう願うのだった。


【ヘンリー(ロングヒルの王様)】

→特筆すべき内容はなし。


【セシリア(ロングヒルの御妃様)】

娘エリーと共に、連日連夜、交流祭りにやってきている連合の女衆を集めて交流会に精を出す日々である。もう会期も半分を折り返してきたが、最終日に参加する王侯貴族も多いので、交流会自体は、交流祭りの会期終了後も数日は続くことになりそうだ。


女衆との交流は、今は種を蒔く時期であって、人材確保のような荒い動きは控えるべきとは思っていた。アキからは、絵本を沢山集めるから種族や勢力を超えてその研究ができる人、なんてのを求められたりもしたが、そのまま、女衆にその旨を伝えるのは論外とは確信していた。


そもそもアキは、ソレができて、なおかつ、あの天空竜達相手に読み聞かせができる人材、なんてのを求めてきていた訳だが、いくらなんでも求める能力が多様過ぎ、と内心では呆れていた。アキにもしその旨を話したなら、竜神子と同じで、前面に出るのは竜神子、それを支えるスタッフみたいに作業を分担してもいい、なんて事は話しそうではある。前面に出る竜神子は、竜と話して必要なことは後日答えればいいから気が楽でしょ、とかとか。


……そもそも前提がおかしい。


アキは後日伝えればいいというが、単に渡された文章を読むだけではなく、理解して伝えられることは、当たり前のこととして話している。そこがそもそもおかしい、と声を大にして言いたかった。ソレは普通じゃない、と。


ただ、幸か不幸か、アキが接点を持つ者達は、生え抜きの精鋭、才気溢れる者達ばかりなのだ。勿論、アキも多くの選考を経て集められた腕利きばかりとは説明を受けている。だからこそ、そこまでではない、とハードルを下げたつもりだった。


相手が王侯貴族ならしっかりとした教育は一通り受けてるだろうし、人の上に立つ位置の方々なのだから、スタッフ達を上手く使いこと為す程度のことはできる、と思う訳だ。そこはまぁできるだろうと。


確かに彼女達も、相手が同じ連合のどこかの王侯貴族というなら、多少のミスは出たとしてもこなす技量はあると思う。だが、相手は活ける天災、竜神と崇められた存在、天空竜だ。


その時点で、もう大半の子女達は辞退するだろう。裏方専門と言い含めて研究に専念させると今度は地味なのでやはり辞退しそうだが。


そんな訳で、セシリアはまずアキがやってみて、と話して、結論を先送りしたのだった。エリーの話では、若雄竜三柱相手に登山の話を一通りして、何が目的なのか話をするだけでも調整組の面々が総出で何日も対応する有様だったと言う。きっとアキも少しは考えを改めるだろうと。


あの年頃の子には、失敗してもいいからやらせてみるのがいい。子供も三人も育てれば、経験則でそう悟るセシリア妃だった。


【エドワード、アンディ(ロングヒルの王子様達)】

→特筆すべき内容はなし。


【ザッカリー(研究組所属、元ロングヒル国宰相)】

彼は、三大勢力の代表達と共に話し合いに参加し、研究組で培った管理、議事進行能力を高く評価して貰えてホッとしていた。アキのいない場での打ち合わせの席では、あの研究組の手綱を握って、ある程度であっても制することができてる事に感謝される始末であった。


彼が宰相時代に経験を積んだ運営能力と、アキが情に訴えて暴走しないよう説得した件は、多面性のある管理方法として、効果的であると皆が納得してくれたことには救われる思いだった。


ソフィアの手練手管に辛酸を舐めつつも、何とか功罪で言えば功の方が多い結果を出してきた過去が報われた、とさえ感じられた。……まぁ、だからと言って、好き好んで過去を全肯定するつもりはないが。それでも苦労は無駄ではなかった、次に繋がる重要な経験であった、とそう感じられたことに、歳を取ったと思いつつも、良い歳の重ね方をした、と満足感を覚えるのだった。


そんな彼ではあるが、研究分野ならまだしも、アキがまつりごとに関わる考察、提案をする様子を間近に見て、ある種の悟りに到達していた。それは自分は議事進行役がせいぜいで、深入りする能力はないし、深入りしてもいけない。自分の能力は研究組の組織運営マネジメント辺りが限界だ、と。


諸勢力の代表達に突き付けられた事案の重さを思えば、彼らがそれの理解と判断に全力を尽くせるよう、しがらみの薄い自分が議事進行役として参加して、脇道に逸れる事が多いアキの言動、思考に枷を嵌めることは十分可能であり、必要な仕事とも思う。


だが、彼らの肩に乗る重圧は小国宰相程度のソレとは何桁も違い過ぎた。人口という意味もあるし、関わる事案が影響を与える年月の長さというのもある。それに地の種族全てよりも強大な竜族、異なる世界の住人である妖精族、それに海を越えた地にある多くの国々、とあまりにも絡む話が壮大過ぎた。


そして、そのような重圧下にあっても、勢力の長として余裕のある態度を保ち、気品ある対応をする代表達には敬意の念すら抱く思いだった。同時にまぁ、こうも思ったのだが。


こんな立場に好き好んでなりたい、なんて奴はきっと現実が見えない馬鹿か、頭がイカれてる馬鹿、だとも。


【ホレーショ(参謀 New!)】

この秋に新設されることとなった参謀本部に参加することになった初期メンバーの一人である。陸上戦において少しずつ劣勢となり、領土を削られてきている連合において、これまであまり活動領域としてこなかった海路に勝機を見出したのは、ある意味必然でもあり、ホレーショはそんな連合の期待を一身に背負って、連合の沿岸海軍の一翼を担っていた。

彼が参謀に選抜された理由は、対帝国の海戦において高い勝率と被害を抑えてきた実績を買われてのこととされており、それはそれで間違ってはいない。ただ、上層部としては彼のように高い実績があり、部下達からも慕われている提督となると、前線に出るのはそろそろ控えて欲しい、という思いも強かったのだ。失う危険性を思えば、後任を育てるなりして欲しい、と常々考えていたのである。

これは彼の華々しい戦績が、大胆とも言える艦隊決戦によるものである、というのも響いていた。多数の船が激突する海戦となれば、不慮の事故はどうしても避けられない。いくら耐弾障壁の護符を身に付けていても、加速術式を刻まれたクロスボウガンで撃たれれば、障壁は撃ち抜かれてしまうのだから。

彼のような稀有な人材を何とか下がらせたい、そんな考えもあってニコラス大統領は、ホレーショを参謀に抜擢したのだった。ただ下がらせるだけでは決して承服しないだろうと見越しての大任だった。

刻々と変わる風を読み、艦隊全体の状況を見極めて指揮する力量こそ、浄化作戦のような大戦おおいくさにおいては必要なのだ、とニコラスもそれはもう頑張って説得したのだった。

嘘は言ってない。ただ、実のところ、浮気をしてることで彼の周囲の人間関係はかなりドロドロになっていて、任地から引き剥がして、連合の最北端、ロングヒルの地に飛ばして、一旦状況をリセットしよう、なんて思いも結構あったりした。

そして、ホレーショもそんなニコラスの計らいに応えることとしたのだった。なお、二人は若い時分は仲良く青春を謳歌してやんちゃしてた間柄であり、ニコラスの方は所帯を持ったのと大統領就任ということで落ち着いたものの、ホレーショの方は所帯を持っても火遊び癖が続いてしまったのだった。



◆小鬼帝国枠



【ユリウス(小鬼帝国皇帝)】

彼はアキとの再会を喜びながらも、必要だからと雲取様の機嫌を損ねそうなところにも踏み込む態度に、あぁ、そう、こういう娘なのだ、とある意味、達観した思いを抱えていた。そして、アキが竜神の巫女であり要であること、その意味についても常に問い続ける姿勢を忘れてはいけないと自戒するに至った。参戦義務を伴う軍事同盟の締結と、食料の相互供給を行えばよい、との提案が、その思いを抱かせる事ともなった。

……というのも提案自体は確かに大変有用であり、争いを避けつつアキの望む弧状列島での統一国家樹立への道へと繋がる内容でもあったが、問題はその提案が出た流れだ。

そもそも、アキは始めはそんな提案をするつもりは全く抱いていなかった。それは間違いない。たまたま、人形操作マリオネットの技法に触れて、そこから派生して竜族に地の種族の文化を学ばせる話になり、そこから書物を直接渡すのは危険過ぎるとして、その一例として地球(あちら)の世界で猛威を振るった概念「共産主義」について説明を行い、それを踏まえて弧状列島の統一に向けた注意事項の一つとして、帝国の人口増とそれへの解決策として提案したという流れだった。

つまり、アキにとっては喫緊の課題ではなく、考える切っ掛けがあったから、思考を進めてみた、というだけなのだ。まつりごとに携わっている者達からすれば、その在り方はあまりに異質であり、話が通じるからと、自分達と同じ立場、役割を担ってると誤解してはいけない、と強く意識する事ともなった。

そして、アキが示した提案もまた、これまでにない異質さがあった。多くの選択肢がある中、明らかにかなり先にある思想を複数組み合わせて示してきたからだ。提案を聞けばその利は理解できる。しかし、それ以外ではなく、なぜその案なのか。過程を理解せず飛びついてはいけないと心が警鐘を鳴らしていた。聞けばアキは答えてくれるだろう。だがそれでは自ら視野を狭めることになる。

ユリウスは幕僚達をそう叱咤激励して、アキの示した提案が何を意味するのか見極めることを決めたのだった。


【ルキウス(護衛隊長)】

→特筆すべき内容はなし。


【速記係の人達=ユリウス帝の幕僚達】

→特筆すべき内容はなし。


【ガイウス(研究組所属、小鬼チーム代表)】

彼は研究組の一員として連邦大使館での検証作業に出向くことになった。その際には、アキが出現させた幻術の銀竜の姿や、身体記憶が人と龍で混ざったことでアキが混乱した件、それから召喚術式が改良できるかどうかなんてところも含めて理論的にはどういったところが考えられるのか、だとすればどういった発展あるいは進化が考えられるのかということを参謀達に事細かに聞かれることになった。


ガイウスからすれば、人族の子供程度の背丈しかない自分達、小鬼族のことを、ちゃんと耳を傾けるべき魔術の専門家として遇する参謀達に対して、驚きの感情を抱かざるを得なかった。勿論、同じ小鬼族の参謀であるファビウスから、参謀達の人となりは聞いてはいたのだが、それでも、単なる専門家ではなく、率先して意見を伺うべき専門家と看做される、というのは予想していなかった。


何せ魔術の腕という意味では、高位魔術を呼吸するように使う賢者、大鬼へとその身を変えられるトウセイ、引き出しの多さでは賢者も一目置いているソフィアなど、綺羅星の如き人材が溢れていたからだ。その点、理論魔法学を専門とするガイウス達、小鬼族研究者集団はまぁ、何というか地味だった。少なくともそう見られていると意識していたのだ。


これはガイウスが、相手は軍人達なのだから、という先入観があった故の珍しい認識のズレだったと言えるだろう。実用に足るだけの新技術には目がない軍人達ではあるが、それだけにまだ形にすらなってない理論の方を軽視する傾向がこれまでは多かったからだ。軽視というよりは優先度が低い、といったところだろうか。軍人達はあと一歩で化ける技術には熱心だが、長い目で育てないといけないような段階の研究や理論に着目する者は少なかった。


だが、ロングヒルに集った参謀達からすれば、アキが配ってみせた手札は、まだ形にすらなってない空手形もいいところだった。けれど、それらを手札として仕立てなくては、勝負の場に座れない、そんな大勝負に挑まなくてはならなかった。おまけに手勢として使える予定の天空竜達はと言えば、群れで動いた経験のない素人達だと言う。


基礎訓練すら終えてない市民を何千人も集めて、さぁ軍勢として活躍させて、という無茶振りと彼らは認識していた。それも、各々が最低限の連携程度をすればいい勝手知ったる自分の街の防衛戦ではなく、数十人ずつの単位でチームを組んで敵地に浸透、工作活動を行う特殊部隊のような真似をさせろ、しかもそんなチームを数十、全体として連携させろ、と言うのだ。


普通なら子供の戯言、現実を知らない扇動家の妄想と断じるような話だった。


……だが、アキはただの子供ではなく、マコト文書の専門家であり、恐らく弧状列島に住まう誰よりも竜族に詳しく、そして諸勢力を束ねる要、竜神の巫女としての見識を持って「せめてそれくらいやらないと勝負にならない」と示したのだ。三大勢力の代表達をして、検討に値すると意見を揃えるだけの重みがあった。


だからこそ、参謀達は理論魔法学の専門家たるガイウス達のことを高く評価し、期待しているのだった。

彼らからすれば、今がどうだろうと、将来どういったことが期待できそうか、あるいはどんな危険があるかといった部分について、それなりに納得できる形で説明してくれるガイウスは大変ありがたい存在なのだ。


用意したい手札は、いずれも誰も扱った事がない強大にして未知の大札ばかりなのだ。自分達がこれまで数枚で勝負してきたいくさなのに、「死の大地」の祟り神に対しては、同じ札を数千枚単位で叩きつけねば勝負にならないというのだから。


参謀達にとっては、ガイウス達、理論魔法学の専門家達は、漆黒の闇を照らす蝋燭の火だった。どれだけ小さく、ささやかな灯火であろうと、完全な闇を手探りで進まずに済むだけでも、神に感謝の言葉を捧げたくなるくらいにはありがたい存在なのだ。



【ユスタ(小鬼研究チームの紅一点)】

→特筆すべき内容はなし。


【小鬼の研究者達(小鬼研究チーム所属)】

→特筆すべき内容はなし。


【ファビウス(参謀 New!)】

この秋に新設されることとなった参謀本部に参加することになった初期メンバーの一人である。本編でも明かされているように、彼は皇帝直轄領において北に位置する連邦に対して、徹底した攻勢防御を担ってきた防衛戦の要と言える将であった。そんな現役バリバリの彼が参謀に抜擢されたのは、ユリウス帝の判断によるところが大きい。昨今の情勢を考えると、帝国から戦端を開かない限り、連邦側から攻勢を仕掛けてくる可能性は低いと考えたのだ。であれば彼のような才を首都圏防衛の為だけに貼り付けておくのは勿体ない。そう判断したのだった。

彼はシゲンも評価していたように、彼我の状況を見極めて、戦略レベルで負けない戦い方を選べる視点の高さ、長さが突出していた。短命種である小鬼族の中において、何世代にも渡る長期戦略を練れる人材は実のところそう多くはない。その彼が見出した「強い鬼族との戦いは避ける」という戦術は、シゲンの力量をもってしても、引き分けに引きずり込まれる程であり、ユリウス帝も彼ならば帝都の守りは万全と明言するほどであった。

そんな彼も、集った参謀達の非凡さにはかなりの衝撃を受けており、このメンバーに竜族まで混ざればどうなるかと心が躍っていた。彼も吐露してたように、彼が対連邦戦において泥沼の引き分けに毎回持ち込んでいるのは、それしか勝ち筋が無いからであって、勝てるモノなら鬼族の主力突撃を粉砕してみたい、なんて気持ちは軍人として当然だが持っていた。その点、浄化作戦では主力となるのは最強種たる竜族だ。人生最大の大舞台を前に心が震えるのも当然だっただろう。



◆街エルフ枠



【ジョウ(ロングヒル常駐大使)】

マサトミとは旧知の仲ということもあり、参謀達との挨拶では、彼は典型的な街エルフ像からはかなりズレた男で、などと話をして笑いを取っていた。ジョウは全権大使をしているだけあって、何でもできて、少し距離を置いて、魔導人形達を伴って、常に笑みを浮かべつつも、若々しい外面の割に老練さを発揮していた。昨年まではロングヒルの地に居て、同盟国のロングヒル以外とはあまり交流を持つこともなかっただけに、ジョウ大使こそが典型的な街エルフイメージだった。


……しかし、この一年で表に出て来た有名処の街エルフと言えば、研究所のリア、長老のヤスケ、ファウスト船長、それに竜神の巫女アキといったあたりであり、それらを並べて観た時、そもそもこれまでの街エルフイメージ自体が幻だったのではないか、なんて話も囁かれ出していた。


そして、彼も親切心100%ですよ、という体で、竜族を指揮するのであれば彼らと共に空を飛び 彼らの感覚を把握しておいた方が良いのではないか、それから冬になるまで、まだ日があるので、代表達が帰国して落ち着いたら、竜族の誰かを誘って、先行の登山組に倣って「死の大地」を眺めに行かれるのが良いだろう、などと提案するのだった。


彼は自身を十分な常識人であると自認していたが、そんな人当たりのいい全権大使ですら、サラッと常識をゴミ箱に捨てるような提案をしてくる様を見せつけてきたことで、参謀達も街エルフ達のことを理解するに至ったのだった。話が合うからと、同じ常識を共有している、などと誤解したら駄目な連中だと。


【ヤスケ(ロングヒル駐在の長老)】

人形操作マリオネットの習得による竜族への情報提供の加速、絵本読み聞かせによる常識の学び、参加勢力間の参戦義務を伴う軍事同盟の締結、食料相互提供体制の確立、といったまつりごとへの衝撃インパクトありまくりな話の連発、生態の遠い種族の身体記憶に触れたことで起きたアキの自己イメージ揺らぎ、といった話もあり、ヤスケは連日、代表達との交渉、検討に携わりながらも、いくらなんでも個人の対応限界を超えとるわ、とレーザー通信越しに本島にいる長老達に不満を爆発させることになった。


いくら長老は誰でも国の代表としての権限を持つとされていても、十九章の僅か三日間に出た議題は、どれもこれも今後数十年、下手をすると数百年にも及ぶ未来への舵取りが決まる重大案件ばかりだ。レーザー通信越しにちょいと意見交換して、はい、決定とできる訳がない。


いいから何人かこっちに来い、と底冷えする声で告げたのも当然だったと言えよう。


特に全勢力参加による軍事同盟締結は、期間を特に定めない内容であり、締結後のいくさを事実上封じる策であり、竜族による地上監視サービスの提供、という枷が嵌ることで、弧状列島統一国家樹立までの道筋が確定すると言っても過言ではないのだ。


アキは食事のメニューを頼むような軽いノリで提案して、これでいくさも減るし、当面の人口増に伴う食糧問題も回避できて、その間に帝国も多産多死から少産少死文化に移行することで、潜在的ないくさの気運を減らせる、などと説明していた。


……だが、聞けばなるほどと思える内容ではあるが、何段階もステップを飛ばしているのが確実で、なぜその策なのか、為政者目線では、目隠しで地雷原を歩かされてるような怖さを覚えていたのだった。


アキがまつりごとへの大影響を与える話と、天空竜が人形を操る様や、絵本を読み聞かせる催し、幻影の銀竜を創り上げて操る件をフラットに並べて論じるのは、もうそういう奴だと、諦めることにした。実務はお任せで、為政者達の力量があれば真っ当な落し処を見つけるだろう、という信頼感もあるのだろう。ただ、それでも思うのだ。


三大勢力と共和国、それに妖精の国が未来を見据えて締結する同盟の話と、仲の良い雌竜達を集めて絵本を読み聞かせる話が横並びなのは流石にそれはどうなのか、と。


そして、ヤスケはそう達観しながらも、心を許してくるとギリギリまで遠慮なく踏み込んでくる振舞いまで、ミアにここまで似てなくてもいいではないか、と思わずにはいられなかった。もし過去に戻れるなら、心話でしか交流できない異界の男の子、「マコトくん」への教育をミアだけに一任するなどという暴挙は絶対止める、と。


勿論、そんなことはできないのだが。こんなミキサーでかき混ぜるような激動の未来が待っているとわかっていれば、ミアが楽し気に語る異界の男の子との逢瀬を、ただの現実逃避、惚気話などと聞き流したりはしなかった、と言う思いが湧き出てくるのを止めることはできなかった。


【街エルフの長老達(本土にいる面々)】

→特筆すべき内容はなし。


【ファウスト(船団の提督、探索者支援機構の代表)】

→特筆すべき内容はなし。


【船団の皆さん】

→特筆すべき内容はなし。


【マサトミ(参謀 New!)】

この秋に新設されることとなった参謀本部に参加することになった初期メンバーの一人である。何でもできる街エルフと言っても、当然、その道のプロとなれば、頭一つ、二つ抜きんでているモノであり、そうした粒揃いの軍人達の中から彼が参謀に抜擢されたのは、探査主体の小型帆船を用いる船団を率いている力量が高く評価されたからだった。最も評価されたのは未知の出来事への対応であり、無理と判断した際の引き際の良さは、単なる引き癖があるのとは別格と信頼されていた。彼が無理と判断したなら、それは無理なのだ、と他の仲間も認める力量があるのだ。しかも、未知を求める探査船団を率いるだけあって、リスクを負ってでも踏み込むべき時を見逃さない嗅覚にも優れていた。

共和国では、「死の大地」の浄化作戦は未知の領域であり、攻め時、退き時の見極めが重要と判断したのである。これは長命種ゆえに、時間をかけて仕切り直してもいいという定番の判断が選べるというのもある。勿論、共和国な根っからの商人気質なので、儲け時と見逃さず、時には大胆に動く事も良しとしている。その為、未知だらけの作戦ではあるが、単に慎重なだけの人物では駄目と考えたのだった。


貫禄のある体形、重々しさを演出するカイゼル髭と、大勢の人形達を率いる人形遣いらしく、上に立つ者としての意識を持ち、常に周囲からどう見られるか考慮して振る舞うあたりは、隙の無い街エルフらしさと言えそうだ。まぁ大酒飲みで、種族の垣根を超えて世界中の酒に並々ならぬ愛情を注いでるのは素の性格ではあるのだが。部下を大切に扱いつつも、必要とあれば過酷な任務も遂行させるなど、船団の部下達からは親父殿と称されていたりもする。



◆その他



【ソフィア(アキの師匠、研究組所属)】

十九章は僅か三日間という短さではあったが、アキが白岩様の身体記憶に深く触れたことで、人と竜の身体記憶が混ざって混乱する問題に直面して、問題解消に尽力したり、幻影の銀竜を連邦大使館で出すことの是非について問い合わせ対応したりと何気に疲れる対応が多かった。

コメントするようなシーンではないから何も言わなかったが、白岩様が幻影で創り出した銀竜を、アキが真似て出して、最終的には止め絵ではなく生きてるように自在に扱う様など、自身の価値観が崩れ去るのをハッキリと自覚できるほどであった。普通は幻影術式なんてのは最初のうちはぼんやりとしていてしっかりとした姿を描くだけでも一苦労するモノだからである。

自由に語れる状況であれば、細部まで異様に再現されている銀竜の姿と、他の幻影を出した際の差異について比較するとか、他の存在、例えばケイティといった身近な人物を幻影で表現させてみるとか、あれこれやらせてみたいこと、確認してみたいことは山盛りだった。

磨けば輝く宝石の原石、なんてのは見どころのある弟子に向けて語られる表現ではあるが、アキの場合、原石の癖に一時間もすれば、勝手に磨かれて宝石になってしまうといった具合で、師としては面白くもあり、悩ましくもあったのだ。本人が幻影術師になりたい訳ではない、と話していたので、あまりに歪な術者としての在り方を正す意味で、幻影術式の指導を増やすとしても、基礎を一通り学んでバランスを正す程度とは考えているのだった。


それと召喚術式の手直しについては、効率改善の方は賢者の弟子に任せるとして、異種族召喚については、身体に応じて身体記憶が分かれるという発見、人形操作マリオネットを活用して竜族に人族の身体記憶を持たせる可能性など、かなりの知見が得られたことに大喜びしている。アキに竜の身体記憶を更に学ばせるのは色々と問題がありそうだが、自己イメージを完全に確立している黄竜様なら問題はなさそう、それならアキかリアから心話で人族の身体記憶に深く触れて貰うことで、人族の身体記憶を成立させて、人族としての異種族召喚を試してみよう、なーんて考えてたりする。

あと、竜族の見立てでは召喚術式に地の種族は耐えられないという事だが、自己イメージ強化を進めて行けば負担にも耐えられるようになるのか、とかとか、考えてることは山盛りだ。連邦大使館で行った召喚術式と同期率の検証作業後の宴会では、賢者、トウセイと共にそういった先を見越した話題で大いに盛り上がったのだった。


【街エルフの人形遣い達(大使館領勤務)】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の神様】

→特筆すべき内容はなし。


【ヴィオ(連樹の巫女)】

今は交流祭りで逢引デートするのが第一、と言って自己確立に励んでいる依代の君ではあるが、気になる蝉がいるからと高い木に登った挙句、落ちてケロリとしてたり、妖精がハンググライダーで飛ぶ様を見れば、自分も飛んでみたいと言い出したりと、何ともやんちゃで困ったものだった。行動のトリガーは子供らしい微笑ましいモノではあるのだが、大人が青くなるような行動を平然と選ぶ様は、見ていると危なっかしいことこの上ない。その癖、神力を使えることもあってか、本人は傷一つないのだ。一応、服が破れる、汚れる、連樹が望まぬ位置の枝を折ってはいけない、などなど、注意すればちゃんと理解して、それは避けてくれるから学習能力がない訳ではない。

ただ、よくもまぁ見つけてくると感心するくらい、次から次へと叱るような事をしでかすのだ。


まぁ、まだこの世に降りて一ヶ月未満、乳幼児から幼児期までを駆け足で走り抜けていると思えば、やらかし頻度も並みの子供程度には落ち着きそうではあるのだが。おかげで、神官のダニエルも時間に余裕があれば、頻繁に連樹の社に足を運ぶようになり、二人掛かりで依代の君の対応に追われる、なんてことも増えてきた。


ただ、手の掛かる弟分ではあるが、その行動に邪気がある訳でもなく、惜しみなく親愛の情を向けてくるので、小憎らしいよりは、可愛いの方が勝ってはいるのだった。


【連樹の神官達】

→特筆すべき内容はなし。


【連樹の民の若者達】

→特筆すべき内容はなし。


【世界樹の精霊】

→特筆すべき内容はなし。


樹木の精霊(ドライアド)達】

→特筆すべき内容はなし。


【マコトくん(マコト文書信仰により生まれた神)】

→特筆すべき内容はなし。


【依代の君(世界樹の枝から作りし依代人形に降りたマコトくん)】

彼は人伝に黄竜の人形操作マリオネットについて聞いたが、さほど興味を示さなかった。今は自分の身体を動かし、五感を味わうことが何でも新鮮で楽しいので、わざわざ自身が動けず、人形だけ動かすことへの魅力を感じなかったのだ。そんなことよりも、自身が自由に空を飛べるハンググライダーのほうが断然楽しみだったりする。


ただ、彼の保護者となってる巫女ヴィオ、神官ダニエルの二人からは、木登りをして落ちるのとは訳が違う、と自重するよう求められてしまい、希望通りに初飛行、とはなりそうもなかったりする。ドワーフのヨーゲルに相談しに行った際にも、あれこれ安全措置を多重に用意するくらいなら、いっそ、召喚して召喚体で楽しめばいい、などと言われる始末。


それはそれで楽しそうではあるので、研究組の検討課題として貰ったが、まぁ、許可はでないだろう。


アキが白岩様との心話で自己イメージが揺らいだ問題は、精神的には一切負荷は無かっただけに、外部から危険性を認識して止めるのは難しいと判断していた。同時に自分には心話はまだまだリスキーだとも。というか、アキは平然と他存在に対して心話をしてるが、自己を育んでる最中の彼からすれば、なぜそれほど無防備に飛び込んでいけるのか不思議ですらあった。


この差は、実際に心話を延々とやって経験豊富なアキと、心話を延々とやっていたという設定の依代の君では、自己認識に雲泥の差があるから、という話だろう。どうせ、依代の君だって、竜達から自己イメージは十分とお墨付きを貰えれば嬉々として心話を試みるに違いないのだから。


あと、異種族召喚の方はそれなりに楽しみではある。彼の場合は大人になった自身、という別イメージで召喚されるのが希望だ。まだまだ先の話と思っていたが、召喚術式の起動、維持のハードルが大きく下がれば、案外、試せる日も近いかも、なんて思ってたりもする。


ただ、今の彼にとっての最優先事項は、自身の経験を育んで「マコトくん」からの神力流入を抑えて、一般魔導師程度の圧になることなのだ。それが達成できれば、ヴィオと一緒に交流祭りで逢引デートできる約束なのだから。気が早いけれど、当日に着る衣装一式もそれぞれ用意してたりするくらいだ。


そんな彼は、ヴィオと一緒に楽しむことが目的なので、交流祭りのパンフレットをヴィオと一緒に眺めながら、当日はどう観て回ろうか、どこで食事にしようか、なんて事を話し合ったりしている。ヴィオも何度目だろう、とか内心思いながらも、彼の話に付き合ってるのだから、まぁ、微笑ましい関係だった。


【樹木の精霊ドライアド探索チームの探索者達】

→特筆すべき内容はなし。


【多種族による「死の大地」観察登山の参加者達】

→特筆すべき内容はなし。


【邪神、祟り神(「死の大地」の呪いに対する呼称)】

→特筆すべき内容はなし。


【マコト文書の神官】

→特筆すべき内容はなし。


【心話研究者達】

→特筆すべき内容はなし。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございます。自分では気付けないことが多いので助かります。


<今後の投稿予定>

二十章スタート          六月二十八日(水)二十一時五分

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