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第十九章の各勢力について

十九章は三日間という超短期間なので、各組織側の動きは殆どありません。ただ、やたらと濃い三日間、アキがやらかした内容はどの勢力にも大きな影響を与える出来事なので、それらについて各勢力側からの認識を記します。連日、連邦大使館に籠って打ち合わせに明け暮れている代表達の苦労を思うと目頭が熱くなる思いですよね。アキはなんかお忙しそう、くらいにしか思ってませんが。


そして、衝撃的なのは十八章末で纏めた、要相談案件リストの一部(4件)しかまだ触れてません。代表達からすれば、事務方同士で片付けられる話はもうすっ飛ばすくらいに諦めの境地に辿り着いたんじゃないでしょうか。

各勢力の基本説明は八章の「第八章の各勢力について」をご覧ください。このページでは、十九章での状況を中心に記載してます。


<代表達が集ってから明らかになった情報、イベント>

・雲取様、地の種族達向けの窓口に就任


・竜族のリバーシ騒動を各勢力に相談する許可を得る。


・黄竜による人形操作マリオネットの試技、異種族召喚成功の可能性も?


・竜の圧に耐える訓練を代表達は帰国して、それぞれの地の竜から手解きを受ける


人形操作マリオネットの人形供給をどう行うのか


・三柱(黄竜、青竜、金竜)に絵本を読み聞かせる

 →その為にも各勢力から絵本を集める

 →また、その絵本を研究する専門家達もロングヒルに集める

 →竜達に読み聞かせのできる話者の選定


・休戦協定や参戦義務を伴う軍事同盟の締結、平和の果実としての食料の相互供給条約を結ぶ提案


・各種締結後の竜族達による地上監視業務

 →これも平和維持への助力、竜族によるサービスと看做せるのでアキは大喜び


・ロングヒルのセシリア王妃、エリーを中心とした連合の女衆の交流増


・現身を得た神である依代の君と、各勢力代表の顔合わせ


・電波を用いた無線標識(ビーコン)受信機(アンテナ)の試作機による公開演技(デモンストレーション)


・妖精さん用のハンググライダーの飛行、模型飛行船の飛行


・竜用リバーシの対戦風景を実演


・アキが創造した盤や駒を白岩様が竜爪で消滅させる作業を代表達の前で実演


・生態の遠い種族間で身体記憶に触れることのリスク(が明らかになったこと)


・世界樹と黒姫様の交流で、黒姫様も種族間の違いにお疲れ。暫し休むことに。


・アキと参謀達の初接触(ファーストコンタクト)

 →からの代表、研究組、調整組、参謀達間での忌憚なき意見交換実施。


・アキによる幻影の銀竜お披露目


・召喚術式の召喚対象との常時接続に関する実験実施

 →研究の新方式のお披露目を兼ねている。

 →召喚術式の消費魔力大幅削減が見込める。

 →召喚術式への理解が大きく進むことにもなる。

 →世界を超えて繋がる経路(パス)の性質への理解も進むだろう。



【ミアの財閥】

絵本を集めよう、というアキの提案は、財閥としてもかなり尽力できることが確定しているので、この事業に強く関与していくつもりだった。というのも、ミアがリアの件で高位存在に関する情報を漁りまくってた時期に、共和国や連合の文献、伝承の詳細な調査を行っていたからだ。ただ、絵本という形にはなってないので、それらの情報を取り纏める作業をさっそく始めようと動き出すことになった。

また、人形操作マリオネットの人形提供の件は、ケイティ経由で情報が齎された結果、商機、それもかなりどでかい商機であることがわかったので、これもマサト&ロゼッタは長老達が動くよりも前に人形制作技術を持つ古老達への働きかけを行うことを決めた。同時に協力が得られないことも見越して、現存する人形操作マリオネットの人形の所在確認及び、同人形への現代技術での解析なんてところも、リアの研究所の協力も得て行うことを決めた。


何せ先々を見越せば、竜族全員、三万柱に人形と人形の館(ドールハウス)を提供しようか、という大商いだ。技術的なハードルはかなり高いものの、人形遣いとしての矜持もあり、これを他勢力に任せるつもりなどさらさらなかった。


竜用リバーシ盤の改良バージョンもその使い勝手が良好であったことから、運搬も考慮した設計作業に入ることになった。他の竜達からの報告でも、帆船用の布地を使った巻いて運べるリバーシ盤は、強度面でやはり問題が出ていたからだ。残念ながら今のままでは一シーズンごとに交換するしかなさそうなペースで摩耗していたのである。良好な打ち味の得られる強度的にも優れたリバーシ盤となれば、長く使っても貰えるだろう。それは道具を長く使うことを良しとする街エルフの文化にも沿うものだった。


アキが白岩様の深い身体記憶に触れて、自己認識が揺らぐ問題が生じたことには、やはり強い危機意識を持つことになった。十重二十重のセキュリティ体制を構築しても、心話系技術は直接、アキの心に影響を与えてしまうのだから頭が痛い。何とか防壁を間に挟もうとマサト&ロゼッタも動くことを決めるのだった。


【共和国(街エルフの国)】

共和国からすると、過去の古い忘れられた技に過ぎなかった人形操作マリオネットの技法がこれほど注目されることになるというのはまったく予想外だった。そして、アキが示した道筋も業腹ではあるものの、竜族に地の種族への理解と協力の意識を持たせること、街エルフの技に依存した文化形態へと移行させることで、竜族との間に争いが生じる気運を減らす効果については認めざるを得なかった。


参戦義務を伴う軍事同盟の締結と、同盟参加勢力間での食料供給の取り決め、それと竜族達を活用した弧状列島全域の監視網構築、については、これもまたその有用性を認めざるをえなかった。なにより腹立たしいのは、その提案を自分達、街エルフの中から出せなかったことだったりする。

三大勢力間の三竦み状態と、そこから距離を置いた共和国となれば、いくら昨年まで介入する気が無かったとしても、長命種として百年、二百年先を見越した策に辿り着けたのではないか……とまぁ、八つ当たりのような思考が湧いて出てくるのも仕方ないことだった。


ただ、それは後知恵であって、共和国は連邦や帝国の事の詳細は把握できていなかったし、働きかける国交ルートも確立してはいなかった。竜族の協力を得るなんてのは夢にも考えたことは無かったし、ある意味、鬼札ジョーカー足りえる妖精族という第三勢力の介入も、当然だが想像しようがなかった。


そんな鬱屈した思いも抱えつつ、自分達を振り回し続けるアキの事を手の掛かる子だとは思っても、疎ましく思ったりはしてないのだから、共和国の長老達も苦笑するしかなかった。それより二十年も生きてない街エルフ視点ではまだまだ幼子といった子に、良いように翻弄される民に、もっと奮起しろ、と苦言を呈したくなるのもまぁ、当然と言えば当然だろう。


【探索船団】

→影響なし。


【探索者支援機構】

→影響なし。


【対樹木の精霊(ドライアド)交渉機構】

→影響なし。


【竜神子支援機構】

黄竜が魅せた人形操作マリオネットの演技は、竜神子達向けの雑誌の特集記事となることが確定した。当代の竜神子達がこれに直接関わる可能性は低そうだが、竜族との交流を担うとなれば、いつ話題として人形操作マリオネットの話が出てきても不思議ではないのだ。その時にどう答えるべきか。個別の竜を相手にするだけでは済まない、竜族全体に対してどう接していくのか、を問われる話である。それだけに各地の竜神子達も、この件には興味津々だった。


【ロングヒル王国】

セシリア王妃とエリザベス王女による連合の女衆への働きかけ、男衆がこれまで担ってきた連合の表の結束、交流とは別に、女衆による交流網を創り上げて行こう、という提案は、幸先の良いスタートを切ることができた。アキが提案した、勢力間の同盟や食料供給は連合の一勢力に過ぎないロングヒル王国にとっては手に余る話なので、そこはもうすっぱり気にしないことにした。話の流れがどちらに行くか注視はしているけれど、そこに関与していく気はさらさらなかった。

それでも、ロングヒルの地において、今後、竜族との間で密接な活動をしていくであろうことが確定している参謀本部に対しては、最善の選択を続けられるよう、王女エリーを筆頭に応援を惜しまず行うつもりだった。なにせ険悪なムードなんぞになったなら、最初に迷惑を被るのはきっとロングヒルなのだ。

また、各勢力から絵本を集めて、相互の文化理解を深めていく提案も、ロングヒルを文化の中心地域としていこうという方針に沿うものなので、その活動を支えていき、できれば推進役として活躍することも考えていた。


【人類連合】

連合にとってこの秋の成人の儀、帝国からの定期限定戦争が行われるか否かは、大きな問題だった。毎年のように続く争いによって、少しずつではあるが確実に連合側の被害が増していて、長期的な評価で見れば、国土を削られ続けていたからだ。だからこそ、アキが来てからの一年、戦争は避けられてきたが、防衛戦の準備を怠る事はなかった。


アキの連邦訪問によって、連邦に休耕田が多くある情報は齎されていた。ただ、これを活用して、休戦時期の帝国に食料を輸出するという案は、帝国が強大化するだけであり、連邦はそれを選ばないだろう、と考える程度だった。連合への輸出はあるかもしれないが嗜好品の域を出ることはないだろうとも。


そこにアキの提案、参戦義務を伴う軍事同盟を弧状列島の全勢力が結ぶこと、また同盟国同士で不足する勢力に食料供給を行う案が示されたのは衝撃的であった。そもそも集団安全保障の概念自体がこちらには無かったのだ。終わることのない戦いを繰り広げてきた帝国に対して、例え休戦を取り決めたとしても、所詮それは仮初の平和に過ぎず、彼らは彼らの文化としての成人の儀、多産多死故に必要不可欠な争いを仕掛けてくるのが目に見えていたからだ。


だから、アキの提案が単なる集団安全保障だけだったなら、結局は問題の先送りに過ぎず、人口増に耐えきれなくなった帝国が戦端を開いて、平和の時は破綻するだけ、と冷ややかな反応を返すだけで終わっていただろう。けれど、アキは多産多死から、少産少死への路線変更の道も合わせて示してきていた。それに弧状列島全域で軍を動かす事を困難とする竜族による監視網の構築も示唆して。


連邦は昔から引き籠り気質があって領土拡大意欲は乏しかった。であれば対帝国で考えれば、連合が防衛している間に連邦が南下して帝国領を脅かし、共和国の船団が南の大洋から帝国の海沿いの地域を襲うだけでも、帝国は戦争に専念し続けることはできなくなるだろう。まして、今回の件では、妖精女王シャーリスも全勢力による軍事同盟締結に大いに興味を示していた。弧状列島統一を前に、同同盟への参加をしても良い、と告げたのだ。


召喚によって編成される妖精達の部隊は味方にすれば心強いが、敵に回るのは悪夢以外の何物でもない。何せ召喚によって、こちらでの死は召喚体を失うことに過ぎず、空を自在に飛び回り、魔力も尽きず、いくらでも魔術を連射できるのだ。しかもその魔術は瞬間発動、魔力属性も完全無色透明で感知不能ときた。


大統領ニコラスとその幕僚達も、アキの提案、何世代も先まで見越した軟着陸シナリオには唸らざるを得なかった。


【鬼族連邦】

連邦としては、対連合、帝国の国境維持をすること自体はそう難しいことではなく、自分達から打って出る力はないものの、現状維持は十分できると考えられていた。なので、この秋、帝国からの戦争が回避できれば、先になるほど戦争を行うことは困難になっていくことは火を見るよりも明らかだったから、徐々に戦乱の世から平和の世へと移行していくだろう、と想像していたのだった。

この辺りは、長命種であり、大きく減った男手を回復させることに専念せざるをえない鬼族固有の問題意識があり、短命種の人口回復ペースに疎いからこそ起きた認識と言えるだろう。小鬼族が多少増えようと蹴散らすのは簡単なのだから。


だが、戦争を回避し続けて、帝国の人口がこれまでの路線を維持し続けて倍増したなら、数百万という小鬼兵達が国境線の全てから北上して連邦領の全てを蹂躙していく、という大戦略を選んだなら、どうなっていたことか。

いくら鬼族が強くとも数が少なく、国境線の全てを完全に漏らさず防御するような体制は構築できていない。だからこそ、参謀として参加してるシゲンが戦術を駆使して帝国軍を打ち破ろうと、ファビウスに後背地を脅かされて撤退を余儀なくされることになっているのだ。それが単に後背地を脅かすだけでなく、連邦全土の非戦闘員を全て殺害することを目的として、天性の暗殺者である身軽な小鬼族が大軍を向けてきたなら?

きっと連邦は連戦連勝を続けながら、全土を食い散らかされて滅亡の時を迎えていただろう。ファビウスが選んだ戦略「強い鬼族の軍とは戦わない」これを徹底されてはいくら鬼族とて補給抜きに戦い続けられはしないのだ。


そんなところにアキが集団安全保障の概念と、食料供給の相互支援網の構築を提案してきた。軍が動けば即座にそれが露呈するだろう監視網の構築もセットで、だ。鬼王レイゼンも含めて同行している幕僚達も、長命種をも唸らせる百年先を見越した計略は、目の色を変えて取り組むだけの価値があった。特に休耕田を活用して連邦が食料供給というカードを使える、というのは魅力的だった。何せ人手が足りないのもあるが自分達が食べる分、備蓄する分を考慮しても、余って捨てるだろうことが見えてる田畑を休ませていたのだ。ただ放置してただけの土地が、食料供給のカードとして使えるとなれば、思いつく戦略も一つや二つではなかった。


【小鬼帝国】

この秋の成人の儀、定例限定戦争を回避するか否かというところで、ユリウス帝とその幕僚達は頭を悩ませていた。そんなところに、それは何とかできたとして、とアキは何段階もすっ飛ばした多国間同盟による戦争抑制策と食料相互提供の仕組みを提案してきた。アキの連邦訪問の成果として、休耕田が多くあるとの情報は得られていたものの、連邦と帝国の間で食料供給を目的とする条約締結をする、というアイデアは、出たものの頓挫していた。帝国側から出せる対価があまりに乏しかったからだ。


定期限定戦争を行わないことによる人口増が生じる問題は帝国上層部でも認識されており、一、二年ならまだしも十年、二十年とは続けられない、帝国の乏しい地では多くの人口を養えず、内乱が起こるか、外に向けて戦争を行わざるを得なくなるだろう、と。

アキの示した防疫体制の確立、医療体制強化による多産多死から、少生少死へとシフトしていくのにはあまりに時間が足りないだろう、と考えられ、竜族の圧もあるので、暫くは戦争回避への気運は続けるとしても、きっと破綻すると考えられていた。


それだけに、弧状列島の全勢力が参戦義務を伴う軍事同盟を結び、同盟国間の争いを回避するとするアイデアは衝撃的だった。単なる不戦協定ではない。例えば帝国が連合に対して戦端を開いたなら、残りの勢力、共和国と連邦、それに妖精の国が連合側に組して抵抗してくる事になる。そうなれば戦線を維持するどころではない。帝国は他勢力合同軍によって大きく食い破られることになる。同じ事は連合、連邦にも言えた。三大勢力が三つ巴の状態で睨み合ってるのは、一勢力が残り二勢力と戦って勝てるだけの国力が無かったからだ。

しかも、単なる戦争抑制政策だけ、ではなく、新同盟が維持される間は、食料不足の勢力に対しては残勢力が食料を供給して相互に支えよう、という果実まで用意されてきた。これはあまりに魅力的な提案だった。

竜神子と若竜達の交流が促進され、弧状列島全域に竜と地の種族の交流網が広がっていくことが不可避な今、もう戦争を吹っ掛けて、領土を削り取るという戦略は色褪せていた。


……と言ったように、今回、アキは集団安全保障の概念を叩きつけて、いきなりゴールを明示する行動を選んだ。弧状列島の関係者達の中から集団安全保障や相互支援関係の締結というゴールに一足飛びに辿り着くのは無理だろうなぁ、と直観で見切っていたからだった。いきなりゴールへの最短経路だけ示すのは、本来行う試行錯誤をすっ飛ばすことであり、困難を打ち破る力強さを育む地力が育たない弊害があるから、必要がなければ避けるように、と釘を刺されていたから、その問題はちゃんと意識していた。この辺りは二十章で誰かが聞けばアキも提案した理由を答えるだろう。


【森エルフの国】

→影響なし。


【ドワーフの国】

→影響なし。


【妖精の国】

異種族召喚について、翁の閃きはその道を開く可能性があるとして大いに歓迎されることになった。妖精達は魔力の乏しい異界、刺激に満ちた世への訪問を齎したアキを、ぜひ妖精界に招いて、自分達の住む世界も堪能して欲しいと思っているからだ。それに召喚術式の改良によって起動と維持のコストが大幅に削減できる可能性も示唆された。これもまた素晴らしい。魔力に満ちた妖精界であっても、召喚は手に余る稼働効率最悪の術式なのだ。改良抜きに召喚をしてはこちらでの以前の召喚と同様、数分といった短時間で魔力は尽きてしまう。妖精の国には共和国のように船舶用大型宝珠のように、膨大な魔力を蓄積できる品は存在していないからだ。妖精達が大技を使いたい時も、これまでは多人数の集団術式にすればそれで事足りていた。しかし召喚術式はそれでは起動はともかく、維持ができないと思われていた。どうせ召喚するなら一日、二日と満喫して欲しいという願いからすれば、それではまるで足りない。

そんな訳で、今回の出来事は妖精女王シャーリスや賢者、翁だけでなく、多くの妖精達が興味を示し、協力を申し出ることになっていく。


それと、アキが提案した休戦協定と参戦義務を伴う軍事同盟の締結、そうして得られる平和の果実として、食料不足国への相互供給条約を結ぶ件は、説明を受ければなるほど、と思えるアイデアだが、自分達から単独で出せたモノでは無かっただけに、それが何を意味するのか喧々諤々の論争を生むことに繋がった。何せ妖精の国は周辺国との交流が無く、合同軍に襲われるくらいには孤立しているのだ。周辺国の一つと国交を結ぶだけでも前例のないことだが、そうして周辺国間に楔を打ち込むのが良いのか、全周辺国との間で多国間条約を結む道が良いのか、なんてことも、議題に上がってくるのだった。その為、今回の話では宰相も追加召喚して調整の場に参加させるなど、かなり熱の入ったものとなっている。

元々は弧状列島で統一国家が樹立されてから国交を結ぶとしていたが、全勢力が参戦義務を伴う軍事同盟を結んで、同盟国間の争いを抑えていくとなれば、それは統一国家の前身と言っても十分な成果と評価していいだろう。

そんな訳で、異種族召喚と多国間の平和条約締結、という二つは妖精の国に揺るがしていくのだった。


【竜族達】

アキと白岩様が深いレベルの心話を行うことで、在り方の異なる種族の身体記憶に触れることの危険性が明らかになった。また、心話ではないものの、樹木の精霊(ドライアド)、特に世界樹との交流もまた、竜の世界認識を揺るがすほどの衝撃があることが黒姫様の例で明らかになり、多種族との交流について、よくよく注意すること、問題と思わしき事が生じた際には速やかに長に報告する旨が通達されることになった。これによって、人形操作マリオネットで人形を扱っている黄竜に対しても、心話を通じてアキやリアから人族の身体記憶に触れる行為をする際には、アキの例に倣って、手だけ、のように範囲を限定し、その後、速やかに人形操作マリオネットを使い、その記憶を人形と結びつけるよう注意されることになった。黄竜がアキのように違和感に苛まれる、とは思わないが念の為の措置だった。この辺りは二十章で黄竜から語られることになるだろう。


樹木の精霊(ドライアド)達】

→影響なし。


【「マコトくん」の信者達】

→影響なし。

ブックマーク、いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。


僅か三日間なのに、随分と濃い内容になってましたね。三日前、ロングヒルを訪れた時点の代表達は、まさかこんな条約締結に向けて奔走することになるなどとは夢にも思ってなかったことでしょう。ロングヒル滞在中に大筋の合意にまで至って、各勢力が条約案を持ち帰って国元で関係者の同意を得て批准する。いやー、大変そうですね。


でも、先送りにする意味は薄いし、各国が批准せずとも、竜族による軍レベルの動きの監視網は成立してしまうし、毎年増えていく若竜と竜神子の交流拠点も、どんどん増えていくのは確定ですからね。そして前向きな姿勢を示して、他勢力よりも平和に向けた態度を明らかにした方が、どう考えても将来への得に繋がる。


竜の監視網も、単なる好意に過ぎず、確実に発見できる訳でも、報告すぐ義務がある訳でもないんですが。でも、その可能性があるというだけで、軍を動かすのはあまりにリスクある行為となり果ててしまうんですよね。そして、そこまでリスクを負って隠蔽した軍勢をもって他国に攻め込んだとして、得られる利点に対して、問題があまりに多過ぎる。割に合わない行為になり果てたのは間違いないでしょう。


アキが取る行動はと言えば、雲取様を窓口にちょっとお願いするだけ。動くのはあまりに容易です。二十章では、その提案はまだやるな、まぁ待て、動くな、と皆から止められることでしょう。今のままなら、「実はこんな話があったんですよぉ」などと雑談感覚で話を振りそうですから。


ちなみに大国の脅威に対して、小国が共同でこれに対抗する、というのはよくある同盟関係ですが、ここから、仮想敵国も含めて全当事国が、参戦義務を伴う軍事同盟の締結をしてしまおう、というのはステップを何段も飛ばしまくっています。地球(あちら)でそこに皆が思い至ったのは、これ以上戦争するのは不味い、と世界中の国々が思い至ったからであって、それまではブロック化した勢力間での競争に明け暮れる日々でしたからね。


この辺り、各勢力から、ボトムアップにこの域の思想に辿り着くのは無茶というモノでしょう。この辺りも二十章で語ろうと思います。地球(あちら)ですらもう二度と世界大戦など起こすまいと1920年に国際連盟を創り上げたのに、1939年、僅か19年後には二度目の世界大戦を起こしたくらいですから。そして1945年に設立した国際連合は三度目の世界大戦を防ごうとした訳ですが、2021年常任理事国のロシアが戦争を起こしたことで、組織としての限界が露呈しました。悩ましい話です。


<今後の投稿予定>

十九章の施設、道具、魔術     六月二十一日(水)二十一時五分

十九章の人物について       六月二十五日(日)二十一時五分

二十章スタート          六月二十八日(水)二十一時五分

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