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18-22.桜竜の物言いへの対応(前編)

前回のあらすじ:ヤスケさんに相談に乗って貰ったおかげで、竜族のリバーシ騒ぎも、争いが起こる前に対応できそうです。ただ、ちょっとヤスケさんへの対応は最後でミスってしまいました。次はラインを踏まないように気を付けます。(アキ視点)

雲取様の緊急相談も一応、対応方針が決めることができた。僕も毎朝、雲取様と認識合わせの時間を設けて、場合によっては心話でフォローを入れる役目を担うことに。


これまでに見聞きしてきた情報から、雲取様の部族に関しては、相関図もあらかたカバーできてるから、僕のほうで介入していくこともできるけど、先ずは自分達の中で対策を決めていき、僕の心話による活動は補助としたい、と言われたからね。


確かに、僕やリア姉が心話で直接語りかけるというのは、人間社会で言えば、いきなりアポなしで為政者の元を訪れるようなモノで、序列破りも甚だしい、なーんて考える竜もいるに違いない。


その事について、僕はペット枠みたいなモノですから、猫が勝手気ままに、あちこち出歩いて、飼い主も知らないうちに人脈を広げているようなモノ、と例えたら、雲取様に呆れられてしまった。


為政者達と、対等か、場合によってはそれ以上に話をできる者が、勢力に関係なく、どんな場所でも好き勝手出入りできる。そして、直接、対話してきて、更に心を直接触れ合わせることで、口にしないことまで感知する術も持つ。


<――そんな者がいるとして、為政者達はそれをどう思うだろうか?>


などと、雲取様は答えがわかっているのに、僕の意見を聞きたい、と目を細めた。


「それはまぁ、ちょっと扱いに困るでしょうね。無害な子供でも、あまり好き勝手すると、TPOを弁えろ、とか言われそう」


<そういうことだ。今のところ、危険視する者は出ていないが、緊急性がない限り、まつりごとに絡む話には近づかない方がいいだろう>


無害と主張したことに笑いながらも、雲取様は活動方針を示してくれた。


僕は、竜族にとっては気軽に話のできるペット枠であるべきで、あちこちに顔を出して暗躍している、などと邪推されては、良好な関係だって崩れないとも限らない。


「竜族の皆さんは、伝えたくないことには蓋をして、触れさせない事もできるのだから、そこまで危険視されたりはしないと思いますけどね。でも、雲取様が心配してくれているのはありがたい事ですし、探りを入れるような真似は、お願いされない限りは控えますね」


<そうしてくれ。それに、傍受による諜報活動(シギント)だったか。何気ない会話や行動でも、集めて分析する技は恐ろしささえ覚える程だ>


 おや。


「公開情報から何でも判る訳でもないんですけどね。ところで、恐ろしさを覚えた例って何か教えていただけます?」


<我ら部族の相関図を以前見せて貰ったが、アレは全体を俯瞰できる良いモノだった>


「交流している竜の皆さんもだいぶ増えてきましたからね。話をする前に、どこの誰だったか、前回、何を話したか、思い出したりするのに重宝してます」


<うむ。アキやリアにとっては必須の品だろう。ただ、な。我らは文字も図表もほぼ使わん。だから、当事者でありながら、部族の竜達の関係を把握している気にはなっているが、俯瞰する真似はできておらんのだ。アキやリアはある意味、部族の誰よりも、部族内の関係を理解できていると言える。福慈様より詳しい、と言えば、我が恐ろしさを覚えた事も当然と思える筈だ>


 ふむ。


「竜族の皆さんは圧倒的に地力が違うから、地の種族の為政者ほど、その事に危機感を持つ必要はない気はしますけど。でも、そうですね。相関図の取り扱いには注意します。竜神子が増えてくれば、本人にその気はなくても、平穏をかき乱し兼ねないですから」


<そうしてくれ。アキの研究課題だが、この件も入れて、研究組が行っているように基準を明らかにしてくれれば安心だ。個人情報保護だったか? 日本あちらでは、知り得た情報を取り扱う範囲を定め、不必要な乱用を諫めるとも聞いている。期待しているぞ>


 げ。


「これまた新しいネタを持ち出してきましたね。その辺りは僕も概要くらいしか知らないですよ?」


仕事で取り扱ってるような人ならまだしも、学生じゃ、ネットに個人を特定できるような情報は流さないようにとか、卒業アルバムの取り扱いには注意、なんてことくらいしか知らないし。


日本あちらの話をそのまま持ち込めるモノでもあるまい。その辺りの匙加減を探るのも研究のうちだ>


 ぐぅ。


「善処します」


って感じで、新たな宿題まで課されてしまった。


だいたい、僕が見聞きした内容について、適宜、サポートメンバーの皆さんに情報を横展開している訳で、その先の扱いについてはマサトさんやロゼッタさんといった財閥の方々に一任してたからね。


無闇矢鱈とばら撒いてはいないだろうけど、公開情報として竜神子に横展開してる情報も、竜族からしたら、広く公開して欲しくなかったりするかもしれない。


というか、書物という形で膨大な量の情報を、いつでも見返せる状態で流布していく、というのが竜族にとっては未知の体験だ。


下手な伝わり方をすると、確かに思わぬところで火を噴きかねない話だ。うーん、これって竜神子同士の情報交換にも関わってくるから、思ったより面倒事かも。


もう竜神子達も何回も若竜と話をしているし、この件は、来年、新たな竜神子達が増える前には指針を示せるようにしていこう。


思わぬところから、春先までの研究課題確定になってしまった。次元門構築には繋がらない話だけど、竜神子や竜族との良好な関係を維持していく為には欠かせない話ではある。


面倒だけど、頑張っていこう。





急ぎの内緒話も雲取様の持ち帰りとなって、ヤスケさんも一緒に話を聞いていたので、詳しい報告をする必要もなくなり、さて、別邸に帰ろうか、というところで、更に割り込み案件が入ってきた。


青竜さんの用事が予定通り終わって、次の予定でやってきた緑竜さんが僕に言付けがある、と伝えてきたからだ。なお雲取様は要件も済んだので先に飛び去っていてこの場には残っていない。


ちなみに青竜さんは、帰る前に緑竜さんとリバーシの対戦をしていくということで、自分も聞いておこうと、緑竜さんの隣に並んだ。


緑竜さんは手首につけていた鞄から、小さな鱗を一つ取り出した。桜の花びらのような綺麗な色合いだ。


<アキ、この鱗の主から言付けがある。アキが竜族社会に放り込んだリバーシについて、一言物申したいそうだ>


緑竜さんは落ち着いた言い方をしてくれたけど、思念波からは、色々と気に入らない出来事があったからガツンと一発言ってやるぜ、って感じに息巻いている鱗の持ち主のイメージが透けて見えた。桜色の竜だから、桜竜さんってとこかな。若い、多分、白竜さんと同じくらいの歳の若い雌竜さんだけど、ロングヒルにきている竜の皆さんと違って、落ち着きが足りないというかエネルギーが有り余ってる感じだ。


そして、緑竜さんは、そんな桜竜さんに好感を持っていて、面白い事になってきた、と成り行きをワクワク見守る意識すら抱いているっぽい。


「綺麗な鱗ですね。桜竜さんと呼ぶことにしますけど、所縁(ゆかり)の品を渡された、ということは心話をすれば良いですか?」


<それでいい。ただ、第二演習場からした方が手間が省けていいと思う>


などと、なんとも楽しそうだ。


……心話をすると言いながら、ここにいた方がいい、って事は。


「心話だけでは終わらず、ここまで飛んでくると?」


<アキと心話をすれば、きっと、直接視たい、会いたいと言い出すだろうね。悪い子ではないから、望まれたら会ってあげて欲しい>


思念波からすると、雲取様には及ばないものの、同年代の中では断トツに速く飛べて、あれこれ考えるより、会った方が早い、という即断即決な性格らしい。


おや、青竜さんまで楽しげな声をあげた。


<前は興味ないとか話してたのに、何とも忙しない事だ>


渡された思念波からは、竜族の中で話題になっていた僕の事も、興味ないわーって軽くスルーしてた振る舞いが伝わってきた。興味があること以外はばっさり切り捨てるタイプっぽい。


同時に、興味を持ったら持ったで、全速力で突撃していくような子でもある、と。


確かに忙しないね。極端から極端に振れる子だ。


「トラブルって感じではないので、取り敢えずお話してみることにします。お二人も残られる感じですか?」


<私はリバーシを一試合遊んだら退散するとしよう>


青竜さんは帰る、と。予定通り帰るというより、居合わせると話が拗れそう、巻き込まれるのはごめんだ、なんて打算が垣間見えた。


<私は隅で用事を済ませているから気にしないでいい。桜竜も多分、今回の件なら私のことは気にしないから>


緑竜さんはさらりとしたものだ。伝えてくれた感触からすると、活動している高度が違うから互いに干渉しないってとこらしい。緑竜さんは自分の縄張りの樹木をガーデニングするくらいで目線は地表に近い。ソレに対して桜竜さんは亜音速で上層雲をぶち抜いていくような飛び方が好みで、主な活動は高空域と。


 ふぅ。


要件は済んだと、二柱はスタッフが用意したリバーシの盤を囲む位置にふわりと移動した。どちらも無言の思念波で、頑張れ、と応援してくれちゃったりして、何とも楽しげである。


仕方ないので、ケイティさんに心話魔法陣に、桜色の鱗をセットして貰った。


あー、ヤスケさんもスタッフの方々の待機室でことの成り行きを見守ることにしたようだ。


「何とも慌ただしい話ですね」


「桜竜様との心話の前に一旦、小休憩としましょう。疲れてないように思えても、疲労は溜まっているものです」


そう言って、ケイティさんはケーキセットを用意してくれた。ビター風味のガトーショコラだ。抑えた甘さがいいんだよね。合わせて出してくれた紅茶とセットにすると、更に美味しさが引き立つ感じ。アイリーンさんの心遣いがありがたい。


お爺ちゃんが風を操って、二柱には小休憩を挟んでから心話をする旨も伝えて貰い、どちらからもしっかり回復した方がいいぞ、と応援する思念波が届いた。


 むぅ。


……回復して頑張れ、と二柱にせっせと応援されるという、少し不安を感じさせるフラグ乱立って感じだけど、まぁ、慌ててどうにかなるものでもなし。スタッフさん経由で、ヤスケさんにも事の仔細を伝えて貰ったからね。後は、心を触れた時の感触で臨機応変に対応していこう。

いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。


本日は千客万来、第二演習場には次々と竜が舞い降りてきて大変です。雲取様からは情報の取り扱いについて宿題も貰ってしまいました。馴染みのない文化であろうと、話を聞けば、そこから自分達への影響を類推できるだけの知性もあるだけに、適当に済ましても後々ボロが出るだけでしょう。何気に面倒な話です。


桜竜は悪い子ではないよ、と言いながらも青竜は巻き込まれるのは嫌、と退散するくらいなので、竜達の関係も色々とあるようです。これまでにロングヒルにやってきていた竜達は、雲取様も認めているように、竜達の中でもかなりの上澄みでしたからね。今後はだんだん、癖のある竜との交流も増えてくるでしょう。


次回の投稿は、二月五日(日)二十一時五分です。


<活動報告>


以下の内容で投稿しました。


雑記:動画制作って大変だ

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