18-13.研究組統制案の松竹梅(中編)
前回のあらすじ:ラージヒル事変は、旅人の往来、通信・物流については行き来ができるようになりました。そこまで行けば、あとはニコラスさんの領域なので、何とかしてくれるでしょう。研究組の統制案三種(松、竹、梅)について、どーんと提示、お勧めは松、早い、安い、安心とアピールしましたが、何故か皆さんの反応は何とも渋い感じでした。(アキ視点)
新年あけましておめでとうございます。今年も週二回(水、日)の定期投稿をしてきますので、のんびりお付き合いください。
さて、情に訴える、と言っても、それだけじゃ、ピンとこないよね。先ずはそこから説明しよう。
「皆さんはとても聡く、経験も豊富で、僕のような小娘が先を示して牽引していくのなんて現実的じゃありませんよね? 実際、召喚しての活動に前のめりになり過ぎた賢者さんのことを、理詰めで説得することも、シャーリス様が権力で縛ることも上手く行きませんでした」
身近な例なので御免なさい、と話したけど、賢者さんは居心地が悪そうに、ふんと鼻を鳴らした。
「そこで、賢者さんを止めたのは、前に進むのを止めて周りを見回すことを促したのは、家族、特に可愛がっていたお孫さんからの強い働きかけがあったから、と聞いてます」
研究メンバーとして後から参加してきた面々も、このエピソードは聞いていたようで、あぁ、それか、と納得してくれた。
「ところで、僕はここに集って下さっている皆さんにとても感謝しています。種族や年齢の違いを超えて、親愛の情を向けていただけてることを、大変喜ばしく思っています」
パンッと手を合わせて、満面の笑みと感謝の気持ちを示したんだけど、何故かな、皆が一斉に身構えるのが感じられた。
失礼な。
おっと。笑顔、笑顔。
「心を触れ合わせる心話って便利ですよね。言葉で語ると長々となってしまうようなことも、言葉にするのが難しい感情とかもそのまま、伝えられるのだから」
そこで、実際にこれまで心話をしてきた竜族の二柱や、心話への理解がある面々に視線を向けてみたけど、先を見越してか、なんか聞きたくない、聞きたくないって目が語ってる。
「これはミア姉からの受け売りなんですけど、相手が親愛の思いを向けてくれているというのは、心の合鍵を渡されているようなモノなんだそうです。なんの関係もない通りがかりの人から言われるのと、大切に思う誰かからの言葉では、心への響き方が違うでしょう?」
「つまり、アレかい。アキの言葉は、合鍵のおかげで私らの心によく響く。そして対面して語っていくまだるっこしさ無しに、自身の思いを、相手の情に訴えるように切々と心話で語りかけようって話かい」
師匠が上手く要約してくれた。ん、その通り。
「以前、ケイティさんと心話をした時も感じたんですけど、相手の行い、振る舞いに対して、悲しかったり、悔しかったり、怒ってたり、冷静に分析してたり、笑ってたり、嬉しかったりと、いろんな感情や思いが渦巻く時ってあるじゃないですか。仕方ない事でも納得行かないみたいな。そういう心の内を、相手に言葉で伝えようとしても、話す順番だけでも意味が歪むし、話す口調一つ、話の長さだけでも伝わり方が意図しない方向に転がったりしかねなかったりしますよね?」
そこで周りを見回すと、皆さん、僕より歳上な方ばかりなこともあって、思い当たり事は山程あるようだった。
「そこで心話の出番です。皆さんの身を案じる気持ち、粗雑に行動した事を嘆く気持ち、失望や悲しみ、思いが届かなかった事への怒り、無力感、僕を忘れて熱中していた事への嫉妬などなど、事前に想定した事や、事故が起きてしまったと仮定して、その状況を強くイメージして、そうなってしまった自分の役に入った上で、全身全霊を掛けて、皆さんに思いを伝えたいと思ってます。子供っぽい振る舞いですけどね。でも泣いて縋って、相手の情に訴えるというのは、全てを飛び越えて心に届くモノでもありますから。ほら、身分違いの恋、でも惹かれる自分を偽れない。恋する彼の手を取って、地位も柵も何もかも捨てて愛の逃避行をしちゃう、みたいに」
あら。ここは苦笑されると思ったんだけど、エリーと師匠以外反応が鈍い、というか例えがピンと来てない感じか。うーん、ちょっと演技を見せて、心に響くことを体験して貰って、強引だけど場を動かそう。
ここは、んー、好きな遊びにうつつを抜かして、足元に縋った孫にも気付かず蹴飛ばしてしまい、その悲鳴に、やっと意識を向けた賢者さんなんて感じでどうかな。その時の孫の気持ちになって。
ちょっと俯きながら、胸に手を当てて、そっと相手を伺うように。
『……ねぇ、忘れちゃったの? 私はここにいるよ。ちゃんと見て! 行っちゃヤダ!』
ぐちゃぐちゃに混ざった感情を言葉に乗せて、皆の心に届くよう声にしてみたけど、ん、我ながらいい感じに演技できたと思う。
ただ、ちょっと役に入り過ぎて涙目になっちゃったのは失敗だった。
まぁ、賢者さんなんて、目を見開いて、悔やむような逃げたくなるような、そんな表情を浮かべたから、実演行動としては十分。
そう思ったんだけど、ここで駄目出しが入った。
<……アキ、やり過ぎだ。多くの者達が心の平静さを失ってしまった。それにアキもまるで本当にそうなったように感情が乱れていて、議論どころではあるまい>
雲取様の包み込むような優しい思念波が届いて、自分もちょっとどころでなく、心が全然落ち着かない事に気付いた。
「……すみません、ミア姉からも、演技で役に入り過ぎと言われてたんでした。休憩を入れて仕切り直しましょう」
そう宣言すると、皆からも異論はなく、休憩を挟むことになった。
◇
ケイティさんからふわふわタオルを受け取って、顔を埋めつつ、そんな僕に寄り添ってくれたトラ吉さんの毛並みに手を添えたりしてる内に、少しずつ、気持ちを落ち着かせていくことができた。
気付けば、師匠が隣に来ていた。
「アキが、現実を自身の思いで上書きする魔術のイメージに長けているのは、想像力が豊かで、本当の事として自身のイメージを現実より優先できるからなんだろうね」
「ミア姉から、その辺りは色々と教えられてきたので、そのせいかも」
「だけどね、アキはミア殿との心話に必要な部分しか学んでおらず、心話術師としてはかなり歪だ。さっきの説明で終わりじゃないんだろう? それを聞き終えたら、後でリアとの中継を繋いだ際に、欠けてる視点、問題を教えてやるからね」
ポンポンと頭と撫でると師匠は自席へと戻っていった。
昨日は調整組も交えて、色々検討したのに、欠けてた点なんて何があるんだろ?
ケイティさんやお爺ちゃんに聞いてみたけど、今は秘密とはぐらかされてしまった。
……あれ? 何か、意図してない話が混ざってきた気がする。具体的に言うと、僕への教育的指導みたいな奴だ。
◇
僕もそうだけど、会場にいる皆さんもだいぶ落ち着きを取り戻してきたので、提案再開だ。
「すみません、ここまで涙脆くなってるとは思わなくて、取り乱してしまいました。先程は二、三の感情を混ぜて言葉に乗せてみた訳ですが――」
ん? 雲取様からの割り込みだ。
<アキ、続きを話す前に、疑問を一つ解消しておきたい。先程、好意を持つ者同士が柵を捨てて愛の逃避行とか話していたが、それはどういう話なのだ? 皆もよくわかっていないようだったが>
ふむ。
「アレは場を和ませる為の冗談のつもりだったんですけど、思った以上に文化のズレがあったみたいですね。利よりも情を優先する。吟遊詩人の題材なんかでは、恋物語の定番だったりするんですよ」
<好いた者同士が番になるのは普通の事ではないか? あぁ、そうか。為政者達は国同士の関係を保つために、利で婚姻関係を結ぶのだったな>
うむうむ、と雲取様が訳知り顔で頷いたけど、これにはエリーが待ったをかけた。
「雲取様、確かにその傾向があることは認めますが、だからといってそれだけではありませんので、誤解なさらぬようお願いします。少しでも争いが減るように、性格があまりに悪いとか、年齢差が大きいという相手は選びませんし、少しでも良好な関係となるよう、許嫁の関係としてからは、互いをよく知るよう、会う機会を設けたり、文を送り合ったりするのです」
王族に自由恋愛なんてある訳ないでしょ、と言ってるエリーだけど、全く選択する権利がない訳でもない。互いに好いた者で、例えば身分的にバランスが悪いなら、どこかの貴族家の養子に入れて地位を高くするくらいの配慮はしてあげるモノだと言うからね。
これって男がいないのよねぇ、と嘆くエリーだけど、そう話すってことは、それなりに恋愛への意欲はあるし、ロングヒル王家としても、権謀術数だけでエリーの未来を縛るつもりはないってことだ。
まぁ、王女様の場合、凡庸なら他国との婚姻関係を結ぶために嫁に出す程度。他国に嫁いでも自前で足場を築けるだけの力量があるなら、それに相応しい家へと嫁がせて国同士の関係を変えることを狙う。そして今のエリーのようにあまりに非凡過ぎると、もう他国に嫁になど出すのは無理で、婿を向かい入れることになる。他国から婿を招くにせよ、自国で臣下達から選ぶにせよ、ロングヒル王家を第一に考え、エリーを支える役となっても、それに腐らない性格でないといけないから、結構面倒臭い。
「こちらではあまり例がないかもしれませんけど、長年、戦争をするほど憎み合ってきた国同士だったのに、何かの縁で出会った王子と王女が惹かれ合い、二人が一緒になれるなら、他の全てを捨ててもいい、と覚悟を決めて、二人で遠い地へと逃げていく、とかですね。もっと誰もが祝福できるであろう相手と添い遂げるよう、皆が二人の邪魔をしてくるけれど、二人は固く誓った愛だけを信じて、幾多の困難を乗り越えて――」
「はいはい、そこまで。話がズレ過ぎ。そんなの物語の中だけで、本当にある訳ないでしょ」
<やはりよくわからん。逃げるのは多勢に無勢だからとわかる。だが、意に沿わぬ者と番となっても、子育てが上手くいかないだろう?>
ふむ。
「紅竜様も同意見です?」
<皆が認めるまで、婚姻を先に伸ばせば良いのではないか? 立派に成人したなら、皆の不満も減るだろう?>
むむ。
「えっと、人族は竜族ほど長命ではないので、子を生むのに適した期間はあまり長くないんです。あと、人は群れで生きるので、それまでに築いた共同体との関係を捨てて、新しいところでゼロから生きていくのはかなり大変なんです。竜族なら縄張りがあれば、あとは番がいれば生活が成り立つでしょう?」
<それはそうだ>
「でも、人族の場合、生きていくには沢山の道具が必要で、それに自分達だけで自給自足していくのもほぼ無理なんです。人は弱いですからね。畑から獣を追い払うだけでも、徒党を組まないと上手くいきません」
そう話すと、雲取様は少し思案してから、考えを話した。
<つまり、愛の逃避行というのは、愛する者と共にいることだけを願い、安定した暮らしすらできずとも良しとする行動なのか。普通に考えれば苦労ばかり多く、子を育てるどころではないが、それでも情を選ぶ。なるほど、理詰めでは選べぬ結果を、情に訴えることで得る。アキはだから、その行いを子供のような、と評した訳か>
やっと理解できた、と雲取様は頷いた。だけど、紅竜さんはまだ疑問があるようだ。
<難解な言い回しではあったが、人族の話として理解はできた。だが、私達、竜族だけでなく、他の種族も腑に落ちぬようだった。何故か話して欲しい>
これにはまず、ジョウさんが答えてくれた。
「我々、街エルフは、成人したなら、誰もが大勢の人形達を束ねる長としての力を持ちます。なので、例え男が稼ぎを持たない甲斐性無しだとしても、女が養えば良いだけです。その逆も然り。成人するまでは婚姻はできず、成人したなら婚姻は好きにすればいい。それに恋の熱病など数年もあれば落ち着き、手間のかかる子育てとて数十年あれば、親の手は離れる。そうなれば婚姻関係も解消することのほうが多い。どうしても婚姻をしたいなら、別れるまで待てばいい。なので、そのような性急な道は選ばないのです」
あー、長命種あるあるだ。しかも、夫婦と言いながら、母さんやリア姉なら五十人近い魔導人形達が付き従うんだから、人族とは感覚が違い過ぎる。
「ジョウさん、どうしても渡したくない、自分の権力、人脈などを駆使してでも二人の仲を裂いてやる、みたいな人はいないんですか?」
「勿論、そういった事を考える者はいる。だが、短い人族の人生なら、その間だけ望み通りになればいいと無理を通そうともするだろうが、我々の人生は長い。無理筋に手を貸すような真似をすると、先々の信用を失ってしまうから、そもそも協力が得られないんだ」
ふむ。
ん、今度はセイケンが手を上げてくれた。
「鬼族の場合、特に昨今は男女比が大きく崩れていることもあって、妻が夫を独り占めする事はまず無理で、夫も何人も妻を持つことが多く、他人が夫婦になるのを邪魔するような事はそうそう起きない。それに夫婦となるには力が足りないとなれば、力をつけるまで待つものだ」
あー、こっちも長命種故か。あと男に対して女が多過ぎる、というか男が死に過ぎて少ないから、種族全体としては、とにかく婚姻しろ、子を育てろ、が第一になってるんだね。
次はガイウスさんか。
「私達、小鬼族は、男女が分かれて集団で育てられます。互いに好いて婚姻する例もありますが、殆どの場合は、成人を迎えた時に見合いによる婚姻なのです。親が誰であろうと、子は子の人生があり、そこに親が口を挟むのは道理に外れるモノとして蔑まれます」
ぐぅ。今度は短命種故の割り切りだ。
最後はシャーリスさんだね。
「妾達、妖精族は生きていくだけならばさほど労はなく、時間通貨を使うのも仲間との交流を促す為に過ぎない。それに人族のように生き急ぐこともない。親同士の仲が悪かろうと、夫婦となり子を生せば、子は皆の宝。だから愛の逃避行のような話にはならぬのじゃ。あまりに相手が好き過ぎて、四六時中イチャイチャしていて、皆から追い払われる者達はいるが、それとて節度をわきまえぬから、見えぬところに行け、と煙たがれるだけで、共同体の一員から追い出す訳ではないぞ」
自分達しか見えないカップルが飽きもせず、延々とイチャついておると、いくら恋愛に寛容な我らであっても、追い出したくもなる、とジェスチャー混じりに胸焼けするわ、と笑いを取ってくれた。
◇
ちょっとした例え一つでも、これだけズレがあるというのは結構驚きだね。ただ、ザッカリーさんも話を戻せ、とジェスチャーしてきてるから、この話はここまでだ。
「それでは疑問も解消したので、話を戻します。休憩前の演技では、二、三の感情を混ぜて言葉に乗せたお試しといった程度でしたが」
む、雲取様が思念波で割り込んできた。異議ありと。
<アキ。試しと軽く言うが、アレは心が締め付けられるようだった。情に訴えるなら、もう十分だ。実験で何か問題が起きたなら、先程の演技を超えてくるのだろう? それを喜んで聞きたい等と思う者はこの場にはいまい>
雲取様が皆にどうか、と問うと、異論が出ることはなく、それよりも、勘弁してくれ、といった空気が重く立ち込める程だった。
「個で生きる竜族にとって、寂しいという気持ちにはあまり共感が持てないのではありませんでしたっけ?」
これには、紅竜さんが答えてくれた。
<確かに成長した私達くらいになれば、自身の縄張りで独りでいるのが当たり前ではある。しかし、幼竜はそうではない。幼い頃は親の庇護下になければ生きていけず、だからこそ、幼竜は独りになると、寂しい、私はここにいるよ、助けて、と鳴くのだ。若竜も子育てを手伝うから、誰もがその声は聞き覚えがあり、だからこそ、あのような声を聞くと、幼竜の悲しむ姿が脳裏に浮かんでしまうのよ>
更に師匠が顔を顰めながら補足する。
「アキが自己イメージ強化の訓練をした後、意思を乗せた言葉を聞いたのは今回が初だが、感情が乗った分、更に心の底まで響くようだったよ。それで、アキは今のが体験版程度というなら、その発展は何を考えてたんだい?」
口調は優しいけど、さぁ吐け、と目が語っててちょっと怖い。
「言葉に感情を乗せるのは、これ以上は難しいので、更に必要なら依代の君に頼もうかと。心話の方は、嘘、誤魔化し、理詰めの反論なんかをしようとするとどうしても沢山考えないといけないじゃないですか。でも、何か刺激を受けた心は必ずそれに関連する記憶や感情を想起してしまい、これは無意識かつ瞬時に行われるから止められない。そして心を触れ合わせているなら、そうした相手の心の動きは手に取るようにわかるから、ごちゃごちゃ余計な反応を相手が取る前に、更に想起された変化に応じた刺激を与えるんです。コレが入ると力尽きるまでは相手に詰め寄れて、それに超密度で生々しい感情が投げ渡せて、理解が追い付いてないとか、意識が逃げているとかも感知できるから、しっかり全ての思いを渡せます」
逃がさず、逸らさず、不十分な解釈も許さず、派生する考えの連鎖も果てまで追いつめる感じです、と身振り手振りを交えて、説明していくと、何か、こう、全員がドン引きする意識が伝わってきた。
<……そんな真似を心話の思考の連鎖でやると?>
雲取様が遠慮がちに聞いてきた。
「言葉にすると意味がしっかりする分、会話が枠に嵌っちゃいますから。それにやりたい事は情に訴える、ただそれだけだから、余計な混ぜ物が入るより、飾りのない気持ちが伝わればそれで十分と思ってます」
誤解無く理解しあった上で、どうしても譲れないところがあるなら、その時はその時、と話を纏めると、師匠が深い、とっても深い溜息をついてから、口を開いた。
「アキが研究メンバーに安全側に倒した判断、検討をするよう促す為に用意した情に訴える手法は三つ。一つは感情を言葉に乗せる妖精族由来の技、二つ目は依代の君による語り掛け、最後の三つ目は言語化を廃した心話による説得、ということだね」
「そうなりますね。召喚の経路経由で心話みたいに心を触れ合わせることができるなら、妖精族の皆さんとも心話でしっかりお話しておきたいと思ったんですけど、声を送る程度が精一杯だったので、それは今後の課題です」
「四つ目かい。まぁ、手札が多いのはいいことさ。その感情を反射に任せて叩き込むような心話もミア殿直伝かい?」
「あ、いえ。僕が小さい頃、原因は覚えてないんですけど、ミア姉が僕が我儘ばかり言ってると嫌いになる、的な事を言ってきた事があったんですよ。それで僕が悲しさとか絶望とかいろんな感情が爆発しちゃって、その勢いのまま、もうこれ以上動くの無理ってとこまで、ミア姉に思いをぶつけ続けちゃったんですよね。ミア姉はその時の大激突を感情攪拌って命名してました」
「ミア殿にしちゃ悪手だったねぇ。親に見捨てられそうになれば、子は絶望するもんさ。そして泣いて、縋って、何とかして愛情を取り戻そうとするだろうね。その辺りは後で、リアと中継を繋いだ時に当時の話を聞かせて貰うとしようか。この件は一旦保留にして、もう一つ、実験の被害を防ぐんじゃなく、起きても被害出る前に竜族の力を借りて消す件、そっちも説明してから、中継だ。いいね」
師匠は、ベリルさんに今の四点について、後から追記できるようホワイトボードに箇条書きにして貰うと、さぁ、もう一つの話だ、と催促してきた。
後で纏めて、と言ってるけど、どう考えても、よく考えたね、と褒める流れじゃないっぽい。うーん、結構頑張って考えたのに。でも、もう一つ、実験被害を減らす簡略案は自信があるからね。気持ちを切り替えて行こう。
評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
誤字・脱字の指摘ありがとうございます。自分ではなかなか気付けないので助かります。
情で訴える策は、アキ渾身の演技によって、もう十分と皆がギブアップするほどしっかり心に届きました。言葉に思いを乗せられる妖精の技は便利なものです。
恋の逃避行については、各種族での常識や時間感覚のズレが露呈しました。一事が万事この通りなので、アキが旗振りすれば皆がさらりと理解してくれるかというと、まぁ、そんな話にはならないのでした。これはこれで面白いとアキが思うのは、比較文化学の下地があるからでしょう。ソレの下地というかルーツは、ミアとの心話で、ミアの持つ街エルフの文化や視点と、地球の文化や視点のズレについて、十年間も付き合っていれば、そんな子にも育つってもんです。
次パートは、実験被害を減らす簡略案、大札たる竜族の助力を用いた策の披露です。アキは自信満々ですがさてさて……。
次回の投稿は、一月四日(水)二十一時五分です。
<活動報告>
以下の内容で投稿しています。
雑記:新年あけましておめでとうございます。