第十七章の施設、道具、魔術
今回は、十七章でいろいろと施設や道具、魔術が登場したので整理してみました。
◆施設、機材、道具
【魔力測定用の木樵人形】
魔法陣の耐久を超えて、破壊する形でしか計測できていなかったアキやリアの魔力だったが、毎回それではコスパが悪過ぎるので、電気系のヒューズに対するブレーカーのように、何度でも計測することを目的として創られた魔導具である。本編でも描写されていたように、計測したい人物がレバー操作をすると木樵人形が斧を振り下ろし、積み重なっていた板がぱたぱたと割れていく形で、魔力強度を可視化できるのだ。なお、一流魔導師のケイティが操作して1枚も割れない時点で、一般向けにはまったくニーズのない品であることがわかる。依代の君なら何枚かは割れることだろう。
【透明な層を重ねた地図】
地形図に重ねる形で、透明なフィルムに地名や国境などを描いた層を加えた物。CGなら簡単なのだが、こちらの世界にはまだコンピュータはテキスト処理ができる簡素なものしかないので、全部手書きのアナログ作成だ。それでも、自国領だけならともかく、三大勢力全体にまで同じ粒度で情報を描いていることもあって、この地図の有用性は計り知れないものがあった。ただし、空から眺めるという、天空竜目線での有用性が高い、という意味であり、地の種族が人為的に敷いた国境など、政治的な色彩の強い情報について大雑把なレベルに留まっていた。
【街エルフの栄養剤セット】
疲労がポンッと取れて、精神が覚醒する製剤だが、身体的な依存性はないとされている。また、製剤の種類も多く、それぞれ飲むタイミングや効能の違いもあり、服用期間にも厳密な条件が制定されているので、乱用は厳禁。あくまでも、街エルフの定める用法用量を守って服用するから、問題が起きないだけで、守らなければ副作用が出るのは避けられないのだ。幸い、ニコラス大統領の下には、女中人形達が大勢派遣されているので、適切な服用が成されることだろう。
なお、確実な効果が出るために、精神的な依存が生じる問題は指摘されている。疲れて辛いときにも、コレを飲めばバリバリ働けて悩みも吹っ飛ぶ、と言った具合だ。当然、それは健全な精神とは言い難いので、栄養剤セットの提供と共に、最大限、心身の疲労を回復させるための生活スタイル確立についても、女中人形達が指導していく事になる。
【真空瓶(魔法瓶)機能を持つティーポット】
魔力を使うことなく、中の液体の温度を保ち続ける、地球で言うところの魔法瓶、こちらでの名称は真空瓶機能を持つティーポットだ。真空断熱層を備えることで、熱い液体は熱いまま、冷たい液体は冷たいままの状態が維持される。しかも魔力を使わずに、だ。科学技術の賜物であり、リアが触れても壊れたりしない点も素晴らしい。
◆魔術、技術
【巡回セールスマン問題】
本編でも説明されているように、多数の拠点を最短距離で巡回しようというのは、拠点数が増えると急激に難度が上昇してしまう難問である。2022年時点では近似解を求める辺りまでしか実用化されていないが、まぁ、それでも人が勘でルートを決めていたよりはかなり高効率になってはきた。ただし、「死の大地」の呪いの基点となると、そもそも前提が違ってくる。呪いの基点は、天空竜が巡回してくるまで何もせず待っていたりはしてくれないからだ。実際には攻勢作戦編成が基点潰しを始めれば、奥にある基点群は防衛行動を起こすのは確実であり、そうなると事前に立案した予定通りに作戦を遂行しようにも状況が変わっていて、そのままでは実行できないという事にもなるだろう。
【イージスシステム】
数百の目標について、それぞれの飛行高度、速度、距離、対象の種類(飛行機、ミサイルといった感じ)などから、脅威度を判定してくれるとっても賢くてお高い対空迎撃システムである。一般的には全周囲同時索敵を可能とするレーダー、数秒間隔でバンバン発射できる垂直発射装置(VLS)を組み合わせて使う。脅威度に応じて自動発射もできるし、脅威度判定まではするけど発射は手動ということもできる。一般の艦船は個艦防衛を行うのに対してイージス艦は艦隊全体の防空を担う点が異なる。最近は、艦隊全体でネットワークを組んで、更に無駄なく艦隊全体の迎撃能力を統合する運用もしてたりする。本編でも説明されていたように、これと似たような仕組みで、「死の大地」全体について呪いの基点を全て脅威度判定して、二十五の攻勢作戦編成に攻略指示を行えれば最高だね、というのがアキの提案である。言うは易く行うは難しの典型例だ。
【模擬的検証】
「死の大地」の呪いの基点潰しでは、祟り神が攻勢作戦編成の侵攻を受けた時点で、防衛行動を始めるので、将棋の手筋を読むように、基点潰しの手順を想定していかなくてはならない。二十五の攻勢作戦編成が平押ししていくのでは、全てが同程度までしか内陸に進めない、という状況に陥りかねない。場合によっては先行チームが基点潰しをして、呪いを引き付けている間に、同じ地点から更に内陸に向けて先へ、先へと後続チームを送り込んで、内奥の基点を手早く潰す、といった事も必要となってくるだろう。勿論、そうして一点突破を試みれば、包囲攻撃を食らうリスクも高まる。リスクとリターンを秤にかけて、可能な限り、最大の戦果を挙げたい訳だが、休めば回復する程度の疲労に留めて反復攻撃を行ってガリガリ削っていく手もありだろう。
という訳で、こちらもまた、言うは易く行うは難しの典型例だったりする。どれくらい無茶な話かというのは参謀本部が設立された辺りで明らかになるだろう。
【開放型魔法陣】
こちらでの魔法陣は、心話用魔法陣のように、所縁の品を魔法陣内にセットするとか、心話を行うアキが魔法陣の特定の位置に立つといったように、関連する物や人を魔法陣内に内包するのが基本だ。それに対して翁が告げた開放型魔法陣は、魔法陣の外に関連対象を持つ訳だ。言うのは簡単だが、こちらの世界の魔導技術には存在しない技法であり、妖精族だからこそ実現できている超技となる。耐弾障壁の術式を丸ごとコピーしたのと同レベルの話で、魔導師達が匙を投げる話だったりする。
【天空竜による自己イメージ強化指導】
魔導師達の実力を更に高めることが期待できる新しい指導法として、多くの為政者達から注目を浴びることになったが、そもそも天空竜と対峙するだけで決死の覚悟とか言ってる事を考えれば、ハイリスク・ハイリターンどころか、ハイリスク・ノーリターンにもなりかねない、と危うい手法というのが実状だろう。それでも人族のエリーが僅か一年程度、天空竜との交流を重ねたことで能力を大きく伸ばした、というのはあまりに魅力的な成果だった。これが街エルフや鬼族だけなら、そんな狂気の手法を採れるのは長命種くらいなモノと諦めもついたに違いない。しかし、もうパンドラの箱は開いてしまったのだ。アキは竜族の提供サービスが増えたと喜んでいるが、各勢力代表達は頭を抱えていることだろう。
【簡易召喚の継続運用】
翁に続いて、遂に他の妖精についても複数日継続する形での召喚が始まった。今のところは、召喚を維持していることの妖精への影響を調べる程度の意味しかない。ただ、翁を召喚し続けてだしてから、妖精界とこちらの時間が完全に同期するようになっており、時折繋がる妖精の道では時間のズレが観測されていたことから考えても、二つの世界を繋ぎ続けることの効果はありそうだ。この辺りの話に手を出すには、世界の外への知見を持つ黒姫や世界樹、それに神術を行使する依代の君といった存在の力は欠かせないだろう。
【竜神子の装身具】
仲良くなった若竜から鱗を貰って装身具を創り、それを立ち合いの際に身に付けるというのが定番となりそうだ。当然だが一品物であり、誰かに譲渡するというのも、若竜の許可なしには行えないだろう。魔術的な縛りがある訳ではないが、気に食わないと思われて、若竜が懲罰行動にでる可能性を考えたら、とてもじゃないがそんな危ない橋を渡ることはできないだろう。竜の鱗は、竜の魔力を秘めているので、身に付けていれば、竜の加護と同様、他の竜への牽制が期待できる。ただ、それは一般的な竜神子だから言える話で、アキやリアの場合、本人の突き抜けた魔力のせいで鱗の魔力など上書きされて消え去っており、単なる装飾品としての意味しかないのだ。
◆その他
【重要経路】
プロジェクトにおいて、そこが遅れると全体が遅れる、という作業部分を指す用語。本編でも描写されていたように、竜達が魔力を回復して二次攻撃に出発できる状態になったとしても、どこに向けて何をするか計画が決まって無ければ、出撃できない、といった感じ。なので進捗管理上、とっても重要な部分でそこを何としても予定通りに、前倒しでなどと贅沢は言わないので、クリアしていきたいと管理者達は祈るのだ。
いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
誤字・脱字の指摘ありがとうございます。自分では気付けないことが多いので助かります。
<今後の投稿予定>
十七章の人物について 十一月十六日(水)二十一時五分
十八章スタート 十一月二十日(日)二十一時五分