第十五章の施設、道具、魔術
掲載順を十四章と同様、技術→勢力→人物の順に変更します。
今回は、十五章でいろいろと施設や道具、魔術が登場したので整理してみました。
◆施設、機材、道具
【鬼族の短剣】
三メートル近い巨躯に合わせた短剣は、人族が持てば、小太刀くらいの長さとなり、その刀身は斧よりも分厚く、蛤刃のため、頑丈さも十分。ただ、本編でアキも話したように、到底、人族には扱いきれない超重量武器でもある。それと人族が持つと握りが太過ぎて、まともに持てなかったりする。
鬼族は自らの技に自信があるので、耐久性強化の術式付与がされてる程度である。
盾を構えても、突きに対して正面から受けたなら、盾を貫通して持ち手を串刺しにされるのを避けられないだろう。盾で抗う場合、攻撃の向きを反らし受け流す技は必須だ。
【港湾施設や海路】
船には航行可能な水深があり、大型船であるほどにその深さは必要で、下手に浅い所に寄ると座礁してしまうので注意が必要だ。座礁すれば航行不能、浸水、横転、沈没の危険性すら出てくるのだから。全長約三百メートル、十一万トンの大型客船でも座礁して浸水、転覆した事故を起こしたくらいである。
それに大型船は小回りも効かない。水深は一日の間に変化する干潮、満潮と、新月と満月の時の大潮、小潮でかなり違う。それに潮の流れや風の変化も、帆船では影響が大きいので、それらを含めて水先案内人を求めた連邦の要求は妥当なものだろう。ただ、浚渫されて大型船も通れる安全な航路、港湾設備の充実具合、接岸可能な港は何処か、なんて話は軍事機密であり、普通は非公開扱いである。
【立体地図】
森や川、都市などを竜目線で観るのに大活躍しているが、そもそも高精度な平面地図すら一般には出回っていないだけあって、毎回、必要に応じて作っている一品モノだ。置き場所の問題もあるので、縮尺も用途に応じて異なり、統一規格もない状況である。また、高低差は理解しやすいよう強調してある。広さに対して高さもそのままリアルにすると、僅かな凹凸になってしまい意図と合わないからだ。
◆魔術、技術
【ブセイの短剣捌き】
刃渡りのある太刀をきちんと両手で振れば、長さのおかげで、遠心力を活かして切っ先の速度を稼いで、空を切る鋭い音は出しやすい。また両手で持てば梃子の原理で太刀筋も安定させやすい。
これに対して、脇差しのように短い刀は速度が稼ぎにくいので、それで空を切る音を出すのはなかなかに難しいものである。また、片手持ちだと手の握りだけで刀を安定させねばならず、両手の場合より難度は格段に上がってしまう。ブセイはこれを短剣を片手で振って、空を斬り裂いてあるので、かなりの達人であるとわかる訳だ。また、鎧を袈裟懸けではなく切り上げで両断していたのも、振り下ろしのように重力を利用できない分、難度は上がるのだ。魔刃は何でも斬り裂くと言っても、刃筋の通った振りができているからこそ、両断された的や鎧も異様に綺麗な切断面を見せたのである。
【鬼人形】
街エルフが人形遣いの技の全てを結集して創り上げたワンオフ、鬼族を模した魔導人形である。他の魔導人形と同様、呼吸や瞬きはフレーバー要素であり、人よりも遥かに長く全力行動を行うことができる。
体に刻まれた呪紋によって、鬼族の技である大盾、武器創造、魔刃、身体強化、重量操作、それと範囲攻撃技の神鳴の行使を可能とし、これと戦闘用の魔導人形が定番で持つ閃光目潰し、輪郭幻惑、各種障壁の部分展開も併せ持つという、正に全部載せだ。
魔導人形は宝珠を載せ替えればボディを変更でき、彼も始めは普通の魔導人形であった。そこで戦闘技術だけでなく、武への熱意や人格も考慮し、本人の希望もあって、今の体になった。
鬼の技は師もいないので、蓄積された膨大な戦闘記録を元に編み出した我流だったりする。
そのため、ロングヒルに鬼族がやってきて学ぶ機会を得るまでは、外から観て解りやすい技を体術と組み合わせて行使できる程度であった。
ちなみに、上の話は素の話で、魔導人形達は惜しみなく魔導具の装備で全身を固めるので、その戦闘力は素の時の何倍にも跳ね上がる事になる。
なお、何故、ここまで高性能を目指したのかというと、一部の戦場で、一人で戦況をひっくり返すような化け物じみた活躍をした鬼族の武人達がいたからだった。街エルフは鬼族との直接的な交戦はしていないが、蹴散らされた人族の生き残り達から得た情報を元に、仮想敵役として、どうせ創るなら、達人レベルとすべきと判断されたからだった。
達人なら手加減できるが、並みの戦士が達人の真似はできないというのもある。訓練は実戦を想定し、難度を高めに設定しなくては意味がない、という街エルフなら定番の思考だった。
【緊急杭打】
主に登山で用いる術式であり、金属製の杭を岩に打ち付けることで、ロープを通して落下防止に用いる事ができる。普通ならハンマーで杭を打ち付ければいいが、この術式はその名の通り、ハンマーも杭を支える手も使わず、いきなりロープを通した杭を根本まで打ち付けられる特徴がある。反動もないので、不安定な状況下、片手で杭を打つようなシーンで役立つのだ。
本編では、これをブーツに仕込んで、踏ん張った際に地面に杭を打ち込んで、体を支えてみようとした。勿論、そんなブーツがある訳もなく、ドワーフのヨーゲルが呼ばれることともなった。
結局、役立つシチュエーションが限定的なのと、下手に固定すると脚が折れると言うことでボツとなった。
【地中探査】
この術式は、弱い振動波を地面に放ち、反射してきた振動波を受け取って地面の中の構造を術者に知覚させる探査の技だ。発動だけなら魔導師なら誰でもできるレベルだが、受け取った反射波から、構造を推測するのには、術者の経験が物を言う、使いこなすのは専門の術者もいるほどの高難度技である。何でもできる街エルフは、成人してれば誰でも埋設物や亀裂、土や石、水の分布などを把握できるが、他の種族はそうではない。竜は竜眼で、妖精は飛べるから気にしない、森エルフなら精霊がある程度教えてくれる、ドワーフは長年の経験から土木系なら把握はお手の物となるが、小鬼、人、鬼でそれができるのは僅かな専門家だけだ。だから、発言に呆れた反応が返ってきたのである。
【消失術式】
本編でも語られているように、術式というが、地の種族では手の届かない神の奇跡、対象自体に働き掛けて、過程を経ずにいきなり結果を出してしまう現象、神罰に属する。
これの直撃を受けた対象は世界から消失してしまう。無かったことになるので、元に戻すことはできない。アキと、アキの足が触れている地面は耐えられたが、周囲の地面や大気は耐えられずに消失した。だから術式の直後に周りから空気が流れ込んで風が吹き荒れることになったのだ。
アキが耐えられたことに師匠のソフィアも、結果は判っていても驚いていたが、並みの魔導師では到底耐えられず消失していたからに他ならなかった。
消失は他者との経路や記憶にすら作用する。存在すら誰も覚えていない、そんなレベルで、無かった事にする、正に神罰と言えるだろう。
アキも気付いたように、竜爪の切断や空間跳躍とも作用は近い。
依代の君、黒姫、世界樹と何れも神と称される存在であり、そんな協力者を得られたことは、幸運だったと言えるだろう。
【依代の君の言葉】
本編でソフィアが語ったように、神である彼の言葉は、意識して相手の心に働きかけようと話せば、それだけで高度な精神系術式と同じ効果を及ぼしてしまう。信仰を揺るがせば神術の行使も危うくなるだろう。友好化、魅了、精神の鎮静化、興奮化、説得、混乱、恐怖など、精神に及ぼす効果は多岐に渡る。だが、彼にとってはそれに干渉することは、小石を指で弾くくらい簡単な事なのである。悪気はないが、つい加減を間違える事は十分にあり得る。そして、彼であっても変化した心を元に戻すことはできない。せいぜい、更に干渉することで、表面的には問題無しとする程度が限界だろう。そしてそれほどに弄り回された心が何も問題ないかと言えば、問題しかないのだ。
妖精女王シャーリスも警戒していた通り、召喚体ではなく、心に作用するので、本体も影響を受ける可能性は高い。
一般人なら被害甚大だろう。何とか自らを制するまでは監視付きにするのも当然だった。
【自身を覆う魔力を広げる技】
兄弟子のシフウが使った鬼の上級武技であり、広げられる範囲は熟達するほどに広くなる。シフウの場合、三メートル、鬼族の一足一刀の間合いをカバーできる。この範囲内の変化は肌感覚のように感知できる。ただし、相手の魔力との反発を感知しているので、あまり微細な動きは把握できない。相手の姿勢や手足の動きは追えても表情は判らないといった精度だ。
ちなみに逆に狭める事もできる。相手に魔力を感知されにくくなるので、膨大な魔力を持つ鬼族にとっては、そちらは隠形術の一種と言えるだろう。
【鬼の武技】
鬼族は、魔力を活性化して武術と同時に術式を併用できる。そして、身体強化や自重操作のように体の内に働きかける術式と、魔刃や神鳴のように外に働きかける術式の二つの体系を持つ。
街エルフは過去の文献や、交戦した人族から見聞きした内容を元に、鬼人形に呪紋を施したが、外からは把握しにくい内向けの術式の多くは、そもそも知らないので載せる事はできなかった。
そのため、鬼人形ブセイは近接武技こそ達人級だが、鬼の武人としてみるとかなりバランスが悪い状態だった。
勿論、魔導人形としての能力や街エルフの技と重複している部分もあるのだが、鬼族の技は常に武術との併用が前提で、平易な技でも併用すれば化けるモノも多いのだ。
ブックマーク、いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
作品の中では経過時間は一か月ということで、今回の新規情報は少な目でした。
次回からの投稿予定は以下の通りです。
第十五章の各勢力について 四月十日(日) 二十一時五分
第十五章の人物について 四月十三日(水)二十一時五分
第十六章スタート 四月十七日(日)二十一時五分