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15-20.「マコトくん」、アキ、マコト(前編)

前回のあらすじ:登山のほうは現地調整と引率役の雄竜達への説明も上手くいったんですけど、依代に降りた「マコトくん」がどうにも、仲良くしようねって雰囲気ではなく、あちらの指定で第三演習場で顔合わせすることになりました。黒姫様も立ち会うというし、彼が言うには片付けたい私事があるってことですけど……。(アキ視点)

僕は第三演習場に向かう馬車の中で、リア姉から渡された手紙を読んでいた。

手紙によると、リア姉も昨晩、依代に降りた「マコトくん」と会い、色々と話したそうだ。

そして、「マコトくん」の要望を聞き、詳しく話を聞いた結果、今日の対面を認めたと書かれていた。


リア姉が第三演習場で立ち会わないのは、結果の揺らぎを減らす為だと言う。


何のことやら、読んでも意味はわからないけど、リア姉は「マコトくん」と話をして、今日の対面が悪い結果にならないと確信したとある。


何とも抽象的で、イメージしにくいけど、どうも今日の対面は、結果がどう転ぶかわからない内容を秘めていて、だけど、リア姉は結果は揺るがない、悪い方には転がらないと確信した……って事だろう。


気になったのは、最後に、今だけでなく将来性も考慮してあげよう、と書かれていたこと。


……相手は神様という話なのに、随分と保護者的な物言いだった。



手紙を封筒に戻したけど、二人もリア姉の手紙の内容は知らない、と話してた。


まぁ、一応、聞いてみよう。


「ケイティさんは、今日の対面はどう思ってます?」


「私はアキ様がアキ様であれば、相手が「マコトくん」ならば、落ち着くところに落ち着くと思いました。私の対処できる範疇を超えてしまってますが、黒姫様も立ち会ってくださる以上、大丈夫だと、そう思うことにしました」


そう言いながらも、なぜ、という思いは消えないとも話してくれた。


「お爺ちゃんは?」


「儂もケイティと同じで、アキなら良い落としどころを見つけると思うとる。それに「マコトくん」自身が、自身の行いがどうなるか確信しておるようにも思うた。黒姫殿に同席を求めてきたのがそもそも「マコトくん」じゃからのぉ」


 ふむ。


 自身のことだから対面はしたい、どうなるかも十中八九予想してて、でも万一にも備える、か。



「それだけ備えを用意すれば、彼がマコトなら、前に出るでしょうね」


なんとも、らしい振舞いとも思える。なら、どうしても必要なことなんだろう。


「にゃ?」


俺には聞かないのかよ、と膝の上にいたトラ吉さんが体を起こして、頬に鼻を擦り付けてきた。


「本当に危ないなら、トラ吉さんなら行くなって止めてくれそうだから。こうして膝の上に乗ってくれてるのは、落ち着けってことでしょ?」


「にゃー」


わかってるなら宜しい、とばかりに体を擦り付けると、膝の上で丸くなってくれた。






第三演習場に到着すると、既に黒姫様は降り立っていて、離れたところには障壁を展開する魔導具が設置され、その奥で大勢が椅子に座ってこちらに目を向けた。


ロングヒル王家の人達は勿論、師匠や研究組、調整組などなど、僕との接点が多い人でいないのはリア姉くらい、というほどの出席率だ。妖精界からもシャーリスさんを含めた主な面々が勢揃いだ。母さんが不安そうで父さんが寄り添ってるのが少し気になるかな。ダニエルさんと揃いの宗教家っぽい服を着ている集団だけは見覚えが無い。


「あの方々は?」


「マコト文書の神官の方々です。全員が秘密保持の術式を受け入れて、この場にいます」


「マコトくん」が口外するな、と神託を下せば、彼らはそれを死守しそうなものだけど、そこに更に術式で縛るという時点で、危険な香りがぷんぷんする感じだ。


とは言え、依代に降りた神様に竜神、そして竜神の巫女だって言うんだから、話だけ聞くとどこの神話の世界だよってとこだよね。口外したって、そもそも信じて貰えないと思う。


黒姫様も今日は身を起こしていて、のんびりお話モードって雰囲気ではない。


で。



その前で、ぽつんと立っている黒髪の幼女っぽい夏向けのワンピースを着た子が「マコトくん」か。


僕でも弱いけど魔力、この場合だと神力が感じられるあたり、並の存在じゃないって話なんだろうね。


整った雰囲気はなかなか利発そうで、でもなんというか生気に欠けるというか人形的な雰囲気が濃い。


「お爺ちゃんの言う通り、生きてる感じが薄い子だね」


「じゃろう?」


「それではアキ様。私達も他の方々の元に行きます。アキ様の事を思い、多くの者がこの場に集いました。こちらに来てから一年、アキ様が育てた絆です。お忘れなきように」


「無いと思うが、不安を感じたら儂らの方を見て、支えたがっておる者がこれだけおると思い出すことじゃ。あそこにはシャーリス様達も来ておる。本当に不味そうなら何とでもしてやるわい」


「ニャ」


ケイティさんも、お爺ちゃんも、それにトラ吉さんもそれぞれの言葉で僕を励ますと、他の人達の元に合流した。

そして、師匠が合図を送ると、障壁の魔導具が虹色のドームを形成して皆を包み込んだ。

常時展開、最大出力ってあたり、ちょっとドキドキだ。


さて、待たせても悪いし、僕も黒姫様、それと「マコトくん」の前に行こう。





こうして数メートルの距離で対面すると、ほんと小っちゃな子だ。小学一年生くらいかな。

というか、顔立ちからして日本人にしては目鼻立ちがはっきりしてて、こっちの人好みの外見だし、元々のマコトの原型なんて黒髪と黒い瞳くらいじゃないだろうか。


 だいたい、僕はあんなに髪を長く伸ばしたこともないっ!


<大仰な事になったが、求められ、必要と思うたからこそ、立ち会うこととした。それでは好きに話すがよい。よほどの事が無ければ手は出さぬ>


黒姫様がそう宣言したけど、思念波から伝わってきた感じだと、子供同士の争いに駆り出された近所のお姉さんってところで、仕方ないなぁって気持ちと、でも大真面目にお願いしてきた子の顔も立てよう、という優しさに満ちてるってとこか。


<アキ、話し相手は妾ではないぞ?>


おっと、ちゃんと相手をしてあげろ、と怒られてしまった。



ん。



「えっとそれじゃ、「マコトくん」、初めまして。知っていると思うけど、僕がアキだよ。この距離感は触ると不味いって奴?」


そう問うと、「マコトくん」はこくりと頷いた。動きも人形臭い。


『アキが触れば依代が壊れる、そうでなくとも存在が揺らいで、この在り方が破綻しかねない。だからこその距離だ。他の者からも言われているとは思うが、念の為伝えておく。ボク達はミア姉救出という一点で間違いなく合意できる。他の何があろうと、それだけは確信している。それを忘れるなよ?』


見た目、女の子なのにボクっ子かぁ。それに背伸びしている子供っぽさと、深い賢者のような眼差し、それでいて、可愛らしい声で、硬質な印象を受ける話し方。なんとも不思議な子だ。


「うん、忠告ありがとうね。で、そう言うってことは、穏便に仲良くしましょ、って話じゃないと」


というか、言葉に乗せられてきている意思、多分、術とかじゃなく、その在り方自体が、発する言葉に力を与えているんだろうけど、いやー、無理やり丸めてる感じの刺々しさ満載、さぁガチでやりましょってピリピリした意識だ。



『そう。マコトの好きな、雨降って地が固まる、って奴。それじゃ、回りくどい言い方も好きじゃないし、ハッキリ言うよ。ボクはお前が嫌いだ』


 う、整った顔で内なる激情を視線に込めて睨んできた。


こんな小さな子に親の仇とばかりに睨まれるのはけっこう悲しい。



……それにしても、意思ある言葉ってこんな感じに、心を直接叩く感じなのか。



「会ったばかりなのに? それとも前に言ってた、愚痴を向けてたから?」


ミア姉がいなくてイライラしてて、同じマコトなのだからと遠慮なく、ささくれ立った意識を向けてたのは、今思えばちょっと悪かったかなぁ、と思わないでもない。




そんな僕の問いに、「マコトくん」はゆっくりと首を振り、そして疲れ果てた老人のような目を向けてきた。




『そんな事は些細なことだよ。ボクはお前の存在自体が嫌いだ。この世界から消えてくれ、と言うか消えろ』



願いではなく、そうアレと命ずる神の言葉。

それは、怒気を孕んだ白岩様からの思念波くらいの強さで僕の心を叩いてきた。

ブックマーク、いいね、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

さて始まりました、第三演習場での「マコトくん」とアキの対面。

ちょっと短いけどキリがいいので今回はここまで。

会えばこうなるとわかっていたからこその第三演習場であり、黒姫様の立ち合いな訳で、何とも物騒なスタートとなりました。初手、神の一撃「世界からの根絶」でした。

次回の投稿は、三月九日(水)二十一時五分です。


<雑記(連投中は宣伝継続)>

新作の短期集中連載始めてます。


作品名:ゲームに侵食された世界で、今日も俺は空を飛ぶ


現代社会+ゲーム+サラリーマン+空を飛ぶ+変身+アクション(戦闘)+恋愛って感じの作品です。ジャンル「アクション」ってことで、サクサク読めると思います。


2022年2月16日から毎朝7:05に投稿してます。


26話まではストックしてあり、35話くらいで終わる予定です。上手くいけばラストまで連投できるでしょう。

興味がありましたら、ぜひ読んでみてください。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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