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15-13.空から眺めた連邦領(前編)

前回のあらすじ:鬼人形ブセイさんと、兄弟子の方々三名との三連戦が行われました。時間制限もあり、各試合は短めでしたが手に汗握る激闘でした。ほんと、重機同士の対決って感じで、巻き込まれれば簡単に死傷するレベルです。しかし、互いに結構な怪我を負ったのに、好勝負に喜ぶっていうのは、娯楽作品とかだとよく目にしますが、現実に目の当たりにすると、僕にはそこまでは無理だなぁと感じました。(アキ視点)

後は会食だけとなり、会場の準備が始まると、そこで白岩様から提案があった。皆の声を魔導具で届けられるなら、白岩様はテーブルから離れた位置にしようと言うのだ。


<そもそも、距離が近過ぎるのだ。皆もテーブルの席に着く時に、場が許すならば、手を伸ばしても届かぬ程度に間を開けるであろう? 竜族も同じだ。互いに頭や翼、尻尾が当たらぬ程度に距離を空けるのが常だ>


言われてみればなるほど、と言う事で、白岩様に背を向けないように座席を配して、白岩様には丁度良い距離まで離れて貰った。その距離は二十メートルを超えるほどだった。


<せめてこれくらいは空けないと落ち着かん。こちらからはアキに絞った思念波を送るから、そちらの声は声を拾う魔導具(マイク)で届けてくれればいい。それに間を空けた方が負担も少なかろう?>


なんて話してくれた。


妖精さんも四人だけ残り、シャンタールさん達は少し離れた位置に控えて貰い、残りの魔導人形さん達は空間鞄の中へ。

何せテーブルにはレイゼン様、シセンさん、レイキさんの三人しか座ってないからね。

僕も用意してくれた椅子によじ登って準備完了。


テーブル中央に声を拾う魔導具(マイク)が置かれ、離れた位置にあるスピーカーの魔導具から、白岩様に絞って音を届ける感じだね。


突然の仕様変更にも対応できるのだから、鬼族の技術者さん達もなかなかの腕前だ。





白岩様のもとには、ゴロゴロと西瓜が入った巨大な桶と、竜族用のガラスの器にたっぷりと麦茶が用意された。テーブルでも、各人の前に切った西瓜が並び、ゴツい硝子のコップにたっぷりの麦茶が注がれている。


僕の前の分だけは、フォークと、挿して食べられるようにカットまでしてくれていて、嬉しい。


「これなら、時間に余裕も持てそうだ。アキ、翁、それと白岩様。こうして、迎えることができた事に感謝する」


「今回は身一つとまでは行きませんが、調整事項も少なかったのでサクサク決まって良かったです。ロングヒルより北なせいか、木々の緑も深くなって、良い眺めでした」


「儂もどこまでも続く堤の景色には圧倒されたわい。他の種族の地に行くと、自分達の当たり前が、他ではそうでは無いと知る事になる。良い経験じゃった」


<今回はアキが目に付くところをあれこれ説明してくれたから、漫然と飛んでいると見逃す多くの気付きがあった」


レイゼン様の挨拶に、僕、お爺ちゃん、白岩様が答えると、安堵の空気が生まれた。自分達の要望で招くとなれば、色々と思うところもあったんだろうね。


促されて、西瓜を食べてみたけど、程よい甘さと適度な歯応えがとてもいい。


お爺ちゃんも愛用のカトラリーを使って、甘い水を食べてるようじゃ、と嬉しそう。


白岩様も、まるでピーナッツを食べるように、摘んでは丸ごと食べて、これは美味いな、なんて思念波を送ってきた。乾いた喉も潤う、って気持ちと、残りの個数を気にして、少しずつ食べよう、なんて算段まで伝わってきて、なんか微笑ましい。


「程よい甘さと、適度な歯応えがいいですね。魔力量はちょっとわからないですけど」


「程良い? アキの知る品種はこれとはどう違う?」


ライキさんが不思議そうに聞いてきた。


日本あちらの話ですけど、果物は甘ければ甘いほど高級って風潮があって、育て方を工夫して、メロンや白桃より甘い西瓜なんかもあったんですよ。勿論、美味しいんですけど、水分補給も兼ねてお腹一杯食べる、って感じじゃ無いんです」


「あちらの話は、極端な例が多いな。いくさがなくなれば、人の欲は果てが無いか」


「僕はこれくらいのバランスが好きですね。ほら、あれです。冷蔵庫で冷やすより、井戸水で冷やしたスイカの方が美味しいってのと同じです。程々が良い事もあります」


<あまり冷やすと、氷菓子のようになりそうだ>


「あれはあれで美味しいけど、美味しさの方向性が違いますからね」


「しかし、西瓜は大きいのぉ。儂らが食べるとしたらお祭り騒ぎじゃな。国を挙げての食事会とせねば食いきれん」


確かに、妖精さん達じゃ、一玉食べきるのに何百人といないと余らしちゃうだろう。


そんな感じに西瓜談義をして、リラックスしたところで、レイゼン様が話題を切り出した。


「こうして言葉を交わすのは楽しいが、そうも言ってられんのが残念だ。いずれ報告書も回っては来るだろうが、やはり本人から直接話を聞いておきたい。こうして連邦まで足を運んでみて、気付いた事があれば、聞かせてくれ。先ずは良い方からだ」


レイゼン様の言う通り、竜と場を共にするのは護符などがあってもキツいと聞いている。だから、ここは簡潔に答えよう。


「上空から眺めた連邦領は、治水と交通の大規模事業の成果が目に付きました。土も豊かなようで草木の育ちも良かったです。平屋造りの邸宅が多く町並みもゆったりとした感じでした。屋根の傾斜がキツいから冬の積雪はかなりのモノがありそう。リアス式海岸が多いからか沿岸漁業と養殖業は盛んなようですね。海に山が近いのも、海を豊かにしてあるのでしょう。海の幸が豊かなのは素敵です。昆布などの海藻類とかも豊かに取れるのかな」


ざっと話すと、シセンさんが少し目を見開いた感じがした。レイゼン様はほぉ、と頷く程度。ライキさんは僕と手紙であれこれ話してあるからか、僕が何処に興味を持つか推測してたっぽい。


「儂からは、帝国よりも連合、それよりも連邦の方が魔力が豊かに感じたのぉ。勿論、こちらの基準であって、儂らの感覚からすれば、どこも希薄なんじゃが」


<我は、鬼族が薄着を好み、鍛えた体に誇りを持っている様子が伺えた。何をするにも体が資本だ。良い気風と思うぞ>


ふむふむ、お爺ちゃんと白岩様はそんな感じか。鬼族は人族より上半身がマッチョな感じだから、体格差もあって、盛り上がった筋肉の迫力が半端ないからね。でも、地の種族の鍛えた体にこれ程興味を向ける竜はそう多くないと思う。


さて、次は洗礼の義かな。


「洗礼の儀では、一般ではなさそうな層の方々でしたけど、僕達や妖精さん達のような小さな相手でも、軽んじる態度が皆無だったのは嬉しかったです。前列まで寄って、見上げたり、話したりしてみたけれど、皆さん、紳士、淑女な態度を示してくれてました。無理をしない判断は、次があるからと言う長命種らしい姿勢と感じました」


お爺ちゃんと白岩様は特に追加コメントはなし、と。


「無様な真似はするな、と言い聞かせたのが効き過ぎたかもしれん」


レイゼン様にそう釘を刺されれば、そして、次の機会もあるとなれば、そりゃ、慎重な判断にもなるよね。


後はブセイさんの手合わせだね。


「後はブセイさんと兄弟子の皆さんの手合わせですけど、一撃、一撃の音の重みや激しさは、自分達とは違う、巨人同士の戦い、畏敬の念すら覚えました。白岩様が思念波で解説してくれたのも、説明に時間を別に取って、流れを止めずに済んだのも良かったです。僕だと気付かない事が多かったんですよ」


白岩様も勝負を見ながらだから、僕に向けて絞らず、拡散型の思念波を使ってたんだよね。だから、何か伝えてたと言うのはレイゼン様達も認識していた。


「思念波で伝えているのは感じたが、断片的でそこまではわからなかった。シセンはどうだ?」


「言葉を用いず、観た光景を示しているようでしたが、理解したのはその辺りまでです」


おや、そんな感じなのか。


<言葉を介さず、一方的に送っているのだ。意図した通りに伝わってるとは限らん。受け取ってそれを解釈するには慣れも必要だろう>


うん、そこが心話系の便利な所で、危ういところでもある。イメージやそれに付随する感情、注目してるポイントと一連の流れから、こんな感じだろう、と推測で埋めてるからね。


「例えば、三人のそれぞれの試合で――」


僕は、試合の時の受け取った思念波から、推測で埋めた説明、注目すべきポイントなどをざっと話してみた。


<概ねズレは無かったか。強いて言えば、魔力を広げる技は、閃光で目が眩んでから発動して、ブセイの次手を読んだ速さも特筆すべきところがあった。言葉は正確に話すと冗長になって加減が難しいな>


そう話す思念波で、閃光に目が眩んで、驚いた心を切り替えて、一瞬で魔力を広げる選択を行い、更にブセイさんの狙いを理解すると、躊躇なく痛み分けを選んだ思考の速さを褒めるのが伝わってきた。


「眩しいと感じてから、相打ち上等と判断して、ブセイさんの突きに間に合わせて反撃するのは、改めて聞いても驚きですね。状況把握と対応の流れは妖精さんにも通じるところがあるんじゃない?」


「空中戦では互いに飛び回っているからのぉ。劣勢な側は状況を複雑にして混乱を誘い、優勢な側はその逆にシンプルにして冷静な対応に徹する。確かに通じるモノもあるのぉ」


うむうむ、とお爺ちゃんも頷いてくれた。


おや、ライキさんが苦笑しつつ、その辺りで、と止めに入ってきた。


「アキは、空の戦いへの知見も深いようだが、こちらは、そうでは無いので、興味深い話だが、空中戦の話は別の機会に聞かせて欲しい」


あぁ、なるほど。


「お爺ちゃん、竜同士の空中戦の話だけじゃなく、妖精さん達の方も映画化した方が良さそうだね。本で伝えるより、動きのある映像の方が伝わるんじゃない?」


「うむ、そうじゃのぉ――うむ、アキ、名残惜しいがこの話はここまででとしよう。時間も押しておる」


「ごめんなさい、それじゃ、ここまでで」


「映画の話か。そういう面白い話はセイケンを通じて、どんどん相談してくれ。考えるだけなら無料だ」


レイゼン様も聞きたそうな顔をしながらも、話の流れを戻した。

評価、いいね、ありがとうございます。執筆意欲が大幅にチャージされました。

連邦領を空から眺めて、好印象を受けた点について、色々と話し合われました。

キリがいいので今回はここまでとします。

規格化された道路網が整備されており、河川の流れも意図的に曲げるなど、日本あちらにかなり近い連邦領。

と言う訳で、良くも悪くも日本あちらに似た話になってくるのでした。

次回の投稿は、二月十三日(日)二十一時五分です。


<雑記>

明日は、大雪の可能性があるとの予報が出ていることもあって、八百屋に行くと、普段と違って売り切れて多くの棚が空になっている状況でした。鉄道は長い距離を相互乗り入れしていることもあって、遥か彼方の積雪が響いてダイヤが乱れることもあるので要注意ですね。氷雪路面用の靴にしておくとちょっと安心かも。注意していきましょう。

気温も殆ど上がらないし、風も吹くようなので寒そうですね。


<おまけ>

新機能「いいねボタン」が実装されました。認知度が低い気がするので、二月中の投稿はこの紹介を書いておくことにします。良かったら気軽にクリックしてくださいませ。貰えると執筆意欲がチャージされます。広告下に出るので気付きにくい位置なのと、ログインしないと押せないのがネックでしょうか。デフォルト状態がOFFなので、作者が意図的にONにしないと有効にならず、定期更新してる作品でもOFFのままのものも多い感じです。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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